krns-linkのブログ

まだ仮公開で、今後も本公開までドタバタします。コメント欄は有りません。ちなみに、拙ブログ作者は医療関係者ではありません。拙ブログは訪問者の方々がお読みになるためのものですが、鵜呑みにしない等、自己責任でお読み下さい(念のため記述)。

本態性多種化学物質過敏状態の研究に関する文書について

≪主な改訂の履歴≫

2015年6月19日、21日:項目の追記をはじめとした改訂を行いました。
2016年10月4日、2018年6月8日、11日:文書の追記をはじめとした改訂を行いました。
注:【追記1】や【余談1】以外の項目においては日付は記載していません。

ツイートの拝見

化学物質過敏症電磁波過敏症 資料bot 様の次のツイートを拝見しました。https://twitter.com/MCS_and_EHS/status/610683013089722369又はここ参照。

このツイートで紹介されている文書『「本態性多種化学物質過敏状態」の研究*1を読んだところ、本エントリ作者は問題意識と興味をそれぞれ持ちましたので、以下に示します。

問題意識

この文書の『2.「本態性多種化学物質過敏状態」の呼称と経緯』項における一部の記述を次に引用します。

MCSの定義としては,1987年の米国のCullenの定義を満たすものが採用されていたが,米国では1999年に米国政府,医師会等の合意事項として表1の条件を満たすこととされた。

MCSの定義として、「米国では1999年に米国政府,医師会等の合意事項として表1の条件を満たすこととされた」事実は無いと私は考えます。仮に、このような事実があるのならば、是非、具体的に御提示下さい。


[ご参考1] MCSのコンセンサス1999について
日本におけるMCSのコンセンサス1999に対する見解に関する記述例を以下に示します。

① WEBページ『 「室内空気質健康影響研究会報告書:~シックハウス症候群に関する医学的知見の整理~」の公表について 』の「(3)MCSに関する学会等の見解」項における記述の一部を次に引用します。

一方、「コンセンサス1999」と題する見解が、米国の研究者34名の署名入り合意文書として1999年に公表され、MCS を次のように定義している:(1)再現性を持って現れる症状を有する、(2)慢性疾患である、(3)微量な物質への暴露に反応を示す、(4)原因物質の除去で改善又は治癒する、(5)関連性のない多種類の化学物質に反応を示す、(6)症状が多くの器官・臓器にわたっている。(中略)また、コンセンサス1999についても、研究者間の合意事項であり、米国政府機関の公的見解ではないことに留意する必要があります。

② 室内空気質健康影響研究会[編集]の本、「室内空気質と健康影響 解説 シックハウス症候群」(2004年発行)中の、文書 「化学物質過敏症について -総説-」 P276~P287[著者は、加藤貴彦(宮崎大学医学部衛生・公衆衛生学)]の「1 欧米における状況」項における記述の一部(P278)を次に引用します。

以上のような状況から、概念および定義の統一努力として米国立衛生研究所(National Insitutes of Health,NIH)は、1999年のアトランタ会議においてMCSを定義するための6項目を提示し、臨床環境医の間での合意事項として決議した(表1)。しかし、この合意も標準的な基準として広く認識されるには至っておらず、いまだMCSの明確な定義を欠いているのが現状です。

注:上記引用中の「(表1)」の内容の記述は省略しました。

③ 資料「化学物質過敏症に関する情報収集、解析調査(平成20年1月、公害等調整委員会事務局)*2の表-4.1.1(2)の「化学物質過敏症等に係る主な歴史的な経緯 海外」(1999年7月)における記述(P8)を次に引用します。

アメリ国立衛生研究所(NIH)主催のアトランタ会議において、MCSを定義する6項目が示され、臨床環境医らの合意事項として決議(コンセンサス1999)

日本医師会編(車谷典男監修)の本、「環境による健康リスク (日本医師会生涯教育シリーズ) 」[2017年発行]中の内山巌雄著の文書「化学物質過敏症」の「化学物質過敏症の定義」項における一部の記述(S264)を次に引用します。

その後,1999年に米国国立衛生研究所(National Institutes of Health; NIH)主催のアトランタ会議において,臨床医や研究者が中心となり,MCS に関する診断のためのクライテリアの合意事項として“Consensus 1999”1) が決議された.

注:i) 引用中の文献番号「1)」の引用は省略します。 ii) ちなみに同項におけるこの引用の後に、次に引用(『 』内)する記述があります。 『わが国では,北里大学の石川らが提唱した「化学物質過敏症」の名称が一般的に用いられている.このように,化学物質過敏症は,未だに医学的・病理学的な定義は国際的にも統一されておらず,客観的な診断方法も確立されていないこともあり,(後略)』

⑤ 資料「化学物質過敏症 ―歴史,疫学と機序―」(2018年発行)の「2.化学物質過敏症の歴史」における記述の一部(P2)を次に引用します。

1999年,米国立衛生研究所(National Institutes of Health: NIH)主催のアトランタ会議において,MCS を定義するための 6 項目(表 3)が臨床環境医らによる合意基準として設けられた (3)。しかし,この合意さえも標準的な基準として広く認識されるには至っておらず,MCS の明確な定義を欠いているのが現状である。

注:引用中の「表 3」及び文献番号「(3)」の引用は共に省略します。原文をお読み下さい。

⑥ 資料「化学物質過敏症を見落とさないために ──各診療科へのお願い」(2022年発行)の「1999年合意を基準に診断」項(P20)における記述の一部(P2)を次に引用します。

多種類化学物質過敏症(MCS:Multiple Chemical Sensitivity)の定義には国際的な基準として認定されたものはありませんが、本症の特徴をよく捉えたものとして「1999年合意」を推奨します(表2)。1999年に開催された米国の国立衛生研究所(NIH)後援のアトランタ会議において、本症を定義するための6項目が示され、臨床環境医89人の合意事項として決議されました2)。

注:引用中の「表2」及び文献番号「2)」の引用は共に省略します。原文をお読み下さい。

ちなみに、上記コンセンサス1999の日本語訳は、次のWEBページ「多種化学物質過敏症(MCS)1999年合意」で読むことができます。ただし、上記コンセンサス1999の一次情報には、問題点が有ると本エントリ作者は考えます。問題点は次のWEBページに示されています。 「多種類化学物質過敏症は公認されたか?

[ご参考2] MCS対するポジション・ステートメントについて
上記コンセンサス1999が署名された 1999年には、米国の医学会から次に示す複数のポジションステートメントが発表されています。

・米国職業環境医学会(American College of Occupational and Environmental Medicine)のポジションステートメント:拙エントリのここ参照。
・米国アレルギー・喘息・免疫学学会(American Academy of Allergy Ashthma & Immunology)のポジションステートメント:拙エントリのここ参照。

興味

この文書の『5.まとめ』項における一部の記述を次に引用します。

MCSの臨床的診断の困難なこと,化学物質曝露との因果関係のあいまいなこと,メカニズムが未解決なこと,更に化学物質過敏症の治療法を確立することなど早急に解決すべき多くの課題が山積されており多くの研究者を動員してとりくむべき緊急の問題と考える。

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【追記1】(2015年6月19日追記)

ツイートの拝見

化学物質過敏症電磁波過敏症 資料bot 様の次のツイートを拝見しました。https://twitter.com/MCS_and_EHS/status/611350271852032002又はここ参照。

このツイートで紹介されている文書「多種類化学物質過敏 - 1999年合意事項 -*3を読んだところ、上記同様、本エントリ作者は問題意識を持ちましたので、以下に示します。

問題意識(その1)

先ず、この文書の著者が明記されていません。一方、この文書の抄録における一部の記述を次に引用します。

このような患者数の多さ、およびアメリカ胸部学会、アメリカ医師会、合衆国環境保護局および消費者製品安全委員会の1994年の「多種類化学物質過敏症の患者の愁訴を精神的なものとして見過ごしてはならず、十分な検査が必須である」とする合意事項を基に、われわれは次のごとく勧告する:(後略)

この引用部では、コンセンサス1999一次情報の問題点を解消しないまま、誤解したまま文章を作成していると私は考えます※1。一方、[ご参考1]及び上記WEBページ「多種類化学物質過敏症は公認されたか?」で示されたように、コンセンサス1999は研究者又は臨床環境医間の合意事項である(これを超えるものでは無い)と本エントリ作者は考えます。


※1:引用に対する1994年報告書の該当部分*4における一部の記述を次に引用します。*5

The current consensus is that in cases of claimed or suspected MCS, complaints should not be dismissed as psychogenic, and a thorough workup is essential.


[拙訳]多種類化学物質過敏症だと主張している、あるいは疑われている場合において、訴えを精神的なものとして退けるべきでなく、十分な検査が不可欠であるというのが、現在のコンセンサスである。

このように、1994年報告書の引用は上記「多種類化学物質過敏症の患者」ではなく、「多種類化学物質過敏症だと主張している、あるいは疑われている方々」に対して言及している*6と本エントリ作者は考えます。

問題意識(その2)

この文書の「化学物質過敏症の治療」項における一部の記述を次に引用します。

(前略)および、積極的に毒物を微量与え免疫力をつける中和療法 neutralization therapy も行う。

引用中の「中和療法」については、次のWEBページで批判されています。「誘発中和法 -疑わしい治療法-*7

(2015年6月19日追記はここまで)

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【余談1】(2015年6月21日追記、2016年10月4日改訂)

ツイートの拝見

化学物質過敏症電磁波過敏症 資料bot 様の次のツイートを拝見しました。https://twitter.com/MCS_and_EHS/status/612225380913549312又はここ参照。

このツイートで紹介されているパンフレット「化学物質過敏症 思いのほか身近な環境問題」(このパンフレットは、化学物質過敏症支援センターのWEBページ「リンク」の「厚生労働省」において『厚生省長期慢性疾患総合研究事業アレルギー研究班「化学物質過敏症」 ~思いのほか身近な環境問題~パンフレット見開きPDF版』としてリンクされています)を読んだところ、本エントリ作者は問題意識を持ちましたので以下に示します。ちなみに、化学物質過敏症支援センターの上記WEBページは、以下に示すものを含めて、2016年10月4日改訂の際の本エントリ作者による調査に基づいて紹介しています。

問題意識

このパンフレットの P2 における一部の記述を次に引用します。

化学物質過敏症という言葉が本邦に紹介されて数年になり、やっとこの言葉も市民権を得てきました。しかし概念が掴みづらく、まだ聞き慣れない人も多いかと思います。病名や定義も完全に決まっておらず、国際化学物質安全性計画会議では、「本態性環境非寛容症」と呼ぶことを提唱しています。

さらに、このパンフレットの P3 における一部の記述を次に引用します。

化学物質過敏症は未解明の部分が多い疾患ですが、このようにアレルギー性と中毒性の両方に跨る疾患、あるいはアレルギー反応と急性・慢性中毒の症状が複雑に絡み合っている疾患であると考えています。

上記のように、化学物質過敏症はその定義が完全に決まっていなく、未解明の部分が多い疾患だと主張しているにもかかわらず、このパンフレットでは治療法が記述されています(P10~P11)*8上記と同様に、私が特に問題意識を持った中和法に関する記述(P11)もあり、これについて次に引用します。

また原因物質の投与による中和法が必要となることもあります。中和法とは、ある患者さんに、ある原因物質の症状に対して適度な量の原因物質を投与すると、症状を軽減あるいは消去できるという治療です。二日酔いに対して迎え酒をするようなものと考えて下さい。投与量は原因物質の検査同様、皮内反応の所見、症状によって決められます。

ちなみに、a) 日本臨床環境医学会編の本「シックハウス症候群マニュアル 日常診療のガイドブック」(2013年発行、日本医師会推薦)における化学物質過敏症に関する記述は他の拙エントリのここを、 b) 「平成27年度 環境中の微量な化学物質による健康影響に関する調査研究業務 報告書」*9は他の拙エントリのここを それぞれ参照して下さい。後者の報告書は、化学物質過敏症支援センターのWEBページ「リンク」の「環境省」における「本態性多種化学物質過敏状態(MCS)の調査研究」としてのリンク先である環境省のWEBページ「環境中の微量な化学物質による健康影響に関する調査研究」にてリンクにより紹介されています。

一方、パンフレット報告書を共に特別な注記なしの直接的又は間接的なリンクで紹介している化学物質過敏症支援センターの信頼性評価*10は、これらの記述内容を比較すれば可能かもしれません。例えば、前者の記述はここを、後者の記述はここの脚注をそれぞれ参照して下さい。

(2015年6月21日追記、2016年10月4日改訂はここまで)


注:本エントリは仮公開です。予告のない改訂(削除、修正、追加、公開日や修飾の変更等)を行うことがあります。

*1:大気環境学会誌 第37巻 第5号 (2002) における文書で、10年を超える昔のものです

*2:この資料はここにおいてリンクされています

*3:臨床環境医学、第9巻、第2号、2000年 における文書で、10年を超える昔のものです

*4:拙エントリのここ参照

*5:WEBページ「多種類化学物質過敏症は公認されたか?」及び sivad様のブログのエントリ「NATROM氏はどこで道をあやまったのか~AMA1994をちゃんと読もう~」において、既に(「多種類化学物質過敏症の患者」とはなっていない)同様な和訳が示されており、本エントリ作者による拙訳をあえて記述する必要は無いのかもしれない

*6:アレルギー等の身体的な問題が隠れているかもしれないので、精神的なものとして退けるべきでなく、十分な検査が不可欠であることを含みます

*7:加えて、このページのみならず、Quackwatch の次のWEBページにおいても批判されています。「Multiple Chemical Sensitivity:A Spurious Diagnosisの『「Dubious Diagnosis and Treatment [拙訳]疑わしい診断と治療」項』 該当部を次に引用します(【 】内)。【The treatment clinical ecologists offer is as questionable as their diagnoses. One observer has commented that the variety of treatments they prescribe "seems limited only by their imagination and resourcefulness." The usual approach emphasizes avoidance of suspected substances and involves lifestyle changes that can range from minor to extensive. Generally, patients are instructed to modify their diet and to avoid such substances as scented shampoos, aftershave products, deodorants, cigarette smoke, automobile exhaust fumes, and clothing, furniture, and carpets that contain synthetic fibers. Extreme restrictions can involve wearing a charcoal-filter mask, using a portable oxygen device, staying at home for months, or avoiding physical contact with family members. Many patients are advised to take vitamins, minerals, and other dietary supplements. "Neutralization therapy," based on the results of provocative tests, can involve administration of chemical extracts under the tongue or by injection. [拙訳]臨床環境医が提供する治療はその診断のように疑わしい。ある観察者は、彼らが処方する治療の多様性は、「想像力と才覚のみにより制限されるようだ」とコメントした。通常のアプローチでは、怪しい物質からの回避を強調し、マイナーなものから広範囲なものまで及びうるライフスタイルの変化を巻き込む。一般的に、患者は、食事法の修正、及び香りのするシャンプー、アフターシェーブ製品、デオドラント、たばこの煙、自動車の排ガス及び服、家具及び合成繊維を含むカーペット等の物質の回避を指示される。極端な制限では、チャコールフィルターマスクの着用、ポータブルな酸素の装置の使用、数カ月の引きこもり、又は家族との身体的な接触の回避を必要としうる。多くの患者は、ビタミン、ミネラル及び他のサプリの摂取をアドバイスされる。誘発試験の結果に基づいた「中和療法」は、舌下又は注射による化学抽出物の投与を必要としうる。】

*8:治療や対処の方向(曝露又は回避)については、他の拙エントリを参照して下さい。誤診により治療や対処の方向を大きく間違えると、いつまでたっても症状が改善しない可能性があると本エントリ作者は考えます。

*9:ちなみに、この報告書の「1.概念」における記述の一部を次に2つ引用します(『 』部)。『極めて微量な化学物質ばく露と多彩な不定愁訴との関連性については、未解明な点が多いが、心理社会的ストレスによる心身相関が、本症の発症・経過・転帰に強く影響している可能性が示唆されており(中略)』 加えて、『これらを踏まえると、いわゆる化学物質過敏症とは1つの疾患というよりも、化学物質ばく露も含めた、いくつかの要因による身体の反応や精神的なトラウマが重なって表現される概念と考えることが、現在の時点では妥当と考えられる。』 注:i) 最初の引用における「心身相関」に関しては、例えば、次のWEBページにおける最初の説明文を参照して下さい。「心身症 - 脳科学辞典」 ii) この報告書の「1.概念」における記述全体の引用は、他の拙エントリのここを参照して下さい。

*10:例えば一貫性の視点から、ちなみに、化学物質過敏症支援センターのWEBページ「リンク」の「厚生労働省」において『「室内空気質健康影響研究会報告書: ~シックハウス症候群に関する医学的知見の整理~」 の公表について(2004/2/27)』としてリンクされている資料『「室内空気質健康影響研究会報告書:~シックハウス症候群に関する医学的知見の整理~」の公表について』の「2.(4)化学物質過敏症の呼称について」における記述の一部を次に引用します(【 】内)。【非アレルギー性の過敏状態としてのMCSの発症メカニズムについては多方面から研究が行われており(後略)】