読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

krns-linkのブログ

まだ仮公開で、今後も本公開までドタバタします。コメント欄は有りません。ちなみに、拙ブログ作成者は医療関係者ではありません。拙ブログは訪問者の方々がお読みになるためのものですが、自己責任でお読み下さい(念のため記述)。

条件付けへの対処について

本エントリ内の用語又は文章のリンクを次に示します。

化学物質過敏症等の診断時における鑑別、 化学物質過敏症又はシックハウス症候群における不定愁訴ここ及びここ*2
嗅覚嫌悪条件づけ(ここここ及びここ)、 馴化(消去学習を含む) *3、 臭い(嗅覚)における嫌悪感を伴うノセボ効果
転換性障害(変換症)、 妄想性障害
強迫症強迫性障害関連:強迫性障害における分類、 誰にも汚されたくない聖域を作り、必死に守ろうとする *4
OCD(強迫症強迫性障害)における脳機能関連:OCDの病像又は脳機能的病態、 OCD-loop仮説 *5、 強迫症状誘発研究(ここここ
環境汚染についてのメディアの警告は、化学物質への応答に対する症状の獲得を促進する、 サイバー心気症(ここ及びここ)  不確実性への不耐性

ちなみに、用語「条件付け」についての他の拙エントリにおけるリンクは、ここここここここ及びここを参照して下さい。

ご参考:他の拙エントリのリンク集(ここ及びここ参照)にも、一部ですが本エントリに関連した用語のリンクがあります。

目次に戻る

前書き

ご参考:ちなみに、本エントリ作成のプロセスは他の拙エントリのここで示すものと似ている点があります。

シックハウス症候群及び化学物質不耐症を例とした化学物質に関連する条件付け(次の脚注参照)*6について以下に記述します。ちなみに、i) 本エントリにおいて、以下の記述「超微量の化学物質」は、臭わない化学物質をも意味します。他の拙エントリのここを参照して下さい。 ii) 本エントリにおいて、 a) 用語「MCS」は Multiple chemical sensitivity[多種化学物質過敏状態]の略です。 b) 用語「IEI」は Idiopathic Environmental Intolerance[本態性環境不耐症]の略です。他の拙エントリのここを参照して下さい。 iii) 本エントリにおいて以下に紹介するノセボ効果、強迫症状誘発及び嗅覚嫌悪条件づけ等の論文要旨又は資料を読む前に、他の拙エントリのここを読んだ方が良いかもしれません。

[ご参考1]に例を示すようなトラウマ*7を負ったことによるフラッシュバックを含む条件付け*8によりもたらされる症状と、中毒等の原因化学物質が直接的に人体に作用することにより引き起こされる症状とを鑑別する必要があると本エントリ作者は考えます。なぜならば対処法が両者では大きく異なると本エントリ作者は考えるからです。さらに、誤診により化学物質過敏症と診断されてしまうと、生活が不適切に制約されるリスクがあります(≪余談2≫参照)。本エントリでは前者の対処法(心理的治療法を含む)についての検討を本エントリの「条件付けへの対処」項以下において試みます。*9

ちなみに、MCS又は化学物質過敏症において前者の症状と後者の症状とを鑑別するには、二重盲検法による負荷(誘発)試験を行うことしか、本エントリ作者には思いつきません*10。ただし、i) 疾患概念MCSの存在を証明する証拠は蓄積されていなく、否定されていることを示す論文があります。 ii) さらに世界の医学会等によるMCSの見解があります。 iii) 一方、シックハウス症候群において次のような指摘があります。 これらについては以下に示す他の拙エントリの項目をそれぞれ参照して下さい。 「(2)」項、「(1)」項、「※2 [ご参考3]」項

さらに、電磁波過敏症においても、前者の症状と後者の症状とを鑑別するには、二重盲検法による負荷(誘発)試験を行うことしか、本エントリ作者には思いつきません。ただし、疾患概念である電磁波過敏症の存在を証明する証拠は蓄積されていなく、否定されていることを示す論文の紹介を初めとした、電磁波過敏症に否定的な資料については、次に示す他の拙エントリの項目を参照して下さい。「(12)」項

注:改訂について
2015年12月20日:長文化されたこともあり、目次の追加を含み大幅に改訂しました。
2016年1月9日、5月28日:文章の追記をはじめとして、様々な部分を改訂しました。
2016年6月4日:項目の追加をはじめとして、様々な部分を改訂しました。
2016年6月8日、7月16日、9月5日:文章の追記をはじめとして、様々な部分を改訂しました。
2016年10月3日、12月25日:項目の追加をはじめとして、様々な部分を改訂しました。
2017年3月3日、4月2日、10日、20日、30日、5月5日、14日:文章の追記をはじめとして、様々な部分を改訂しました。

目次に戻る

条件付けへの対処

上記条件付け*11による症状の対処に関しては、a) トラウマを負ったことによるフラッシュバック(再体験症状)によるもの、 b) パニック症をはじめとした不安症のカテゴリー*12における症状 c) 強迫症における症状 の三つに大別し、それぞれの治療法について以下に紹介します。

上記 a) の治療法については、他の拙エントリの【余談4】を参照した方が良いかもしれません。例えば、他の拙エントリのここで紹介されている「持続エクスポージャ―法」は、トラウマ記憶に対して持続的にエクスポージャ―(曝露)することによる馴化*13を目指したもののようです。一方、上記 b) の治療法について、「不安症 - 脳科学辞典」によると、薬物療法認知行動療法が挙げられています。ちなみに、不安障害に対する認知行動療法及びパニック症(パニック障害)の治療に関する資料例はそれぞれ次を参照して下さい。「不安障害に対する認知行動療法」、「パニック障害の治療ガイドライン」、「みんなのメンタルヘルス総合サイト パニック障害・不安障害」の「治療法」及び「精神療法」項、及び「パニック障害の認知行動療法」 また、上記 c) の治療法については、≪余談6≫において、薬物療法心理療法としてのERP(エキスポージャーと反応妨害又は曝露反応妨害法*14)が挙げられます。

ちなみに、≪余談3≫における引用*15によると、化学物質過敏症神経症性障害,ストレス関連障害及び身体表現性障害のカテゴリー*16とは異なると主張しているようです。すなわちこの引用からは、症状としてのトラウマを負ったことによるフラッシュバック、過度な不安、恐怖、嫌悪感による強迫観念(特に不潔恐怖・洗浄強迫)を伴う場合には、化学物質過敏症の症状ではないと見なすことができると本エントリ作者は考えます。

目次に戻る

=====

余談

≪余談1≫参考集

[ご参考1] 条件付け*17の例
以下に示す①と⑦*18は引用であり、②~⑥は本エントリ作者が想定した仮想患者の例です。ただし、後者において実際にこのような患者がいるのかどうかは本エントリ作者には不明です*19

①条件付け
シックハウス症候群又は化学物質不耐症をはじめとする様々な疾患に関連するかもしれない条件付けは、「前書き」項における最初の脚注にもあるように、ここを参照して下さい*20。以下に示す例にも条件付けが関わっている可能性があります。

②予期不安によるもの
A氏は、タバコの煙に症状が誘発されると確信している。ある時、路上のX地点でたまたまタバコを吸っている人に10mまで近づいた時に症状が現れた。これ以後、X地点に行くと症状が現れるとの過度な不安に苛まれることによりX地点に行くことができなくなった。

注:上記のような「過度な不安」はパニック症等においては予期不安と呼ばれます*21。これについては、「パニック症 - 脳科学辞典」の「典型例」項を参照して下さい。ちなみに、本エントリ作者が興味を持ったパニック症の予期不安に対する治療の報告例は次を参照して下さい。「パニック障害に対するEMDRの効用と限界

③トラウマによるもの
B氏は過去にある大量の臭気有機物質の曝露により酷い急性の中毒症状が生じ、これがトラウマとなった。その後、多種類の有機物質それぞれによるわずかな臭気をきっかけとして、上記状態の再体験症状(フラッシュバック)が生じて、体調不良を引き起こしている。再体験症状は持続している。

C氏は化学物質過敏症に関してネット活動をしている。過去にネット上で他者から攻撃を受け、これがトラウマとなった。その後、ネット又はリアルにおける些細なできごとをきっかけとして、上記状態の再体験症状(フラッシュバック)が生じて、体調不良を引き起こしている。再体験症状は持続している。

注:i) C氏の例は化学物質とは直接の関係はありません。 ii) 上記「トラウマ」及び「フラッシュバック」については、共に他の拙エントリにおける「リンク集」を参照して下さい。 iii) ちなみに、他の拙エントリのここも参照した方が良いかもしれません。

D氏は香水をつけた上司から過去にパワハラを受け、これがトラウマとなった。現在でも、この香水又はにおいが類似した香水のにおいを嗅ぐと、上記状態の再体験症状(フラッシュバック)が生じて、体調不良を引き起こしている。再体験症状は持続している。

注:i) 上記「トラウマ」及び「フラッシュバック」については、共に他の拙エントリにおける「リンク集」を参照して下さい。 ii) ちなみに、他の拙エントリのここも参照した方が良いかもしれません。

④恐怖を煽る本や記事に影響を受けたもの
E氏は「健康を脅かす電磁波の恐怖!」等と煽る様々な本、記事やWEBページ等の影響を受けて、電磁波が怖くなってから体調不良を引き起こした。

これは、ノセボ効果と解釈しても良いと本エントリ作者は考えます(他の拙エントリのここ参照)。

⑤その他の非常な不安、恐怖及び/又は嫌悪に関するもの
避けられない超微量の化学物質への曝露が非常に不安(恐怖、嫌悪感が大)なので……

このような化学物質過敏症の文脈において、(自分自身の症状として)非常な不安、恐怖及び/又は嫌悪感*22を話題にすることは、化学物質過敏症では無い状況証拠の一つと本エントリ作者は考えます。電磁波過敏症でも同様です。その理由は次に示します。

臨床環境医の宮田医師は化学物質過敏症は不安障害=神経症のカテゴリー(ICD-10)とは異なると主張しているようです。さらに、彼が主張する化学物質過敏症の症状とされるもの(≪余談4≫ここ参照)には、非常な不安、恐怖及び嫌悪は含まれていません*23

ちなみに、≪余談4≫ここで引用した化学物質過敏症の症状とされるものは、≪余談4≫のここに示すように、「不定愁訴」、すなわち、自律神経失調症をはじめとした心身症又は身体表現性障害の症状と概ね重なる身体症状が多く、よしんば、これらの症状に当てはまるとしても化学物質過敏症であるとは判断できないと本エントリ作者は考えます。その理由は≪余談4≫のここを参照して下さい。

⑥聖域について
超微量の化学物質への曝露を減らすために、寝室等の領域を設定し、その中では置く物や持ち込む物を必要最小限とし、活性炭脱臭剤を置き、(取り付けた)換気扇を必ず回し、掃除を非常に頻繫に行い……

これは強迫性障害強迫症)の不潔恐怖における症状である「誰にも汚されたくない聖域を作り、必死に守ろうとする」(リンク集参照)であったとしても、本エントリ作者には違和感がありません。強迫性障害の治療法の一つである、ERP(エクスポージャーと反応妨害:ここ参照)では、この聖域を壊し、症状をもたらすとされる化学物質にエクスポージャー(曝露)する方向で治療が行われます。従って、上記に記述したように、化学物質過敏症なのか強迫性障害*24なのかのしっかりとした鑑別*25が重要であり、この鑑別においては、項で示した非常な不安、恐怖及び/又は嫌悪があれば、後者であると本エントリ作者は考えます。ちなみに pdfファイル「科学的根拠に基づくシックハウス症候群に関する相談マニュアル(改訂新版)」の「3.4.4. 化学物質過敏状態が引き起こされるメカニズム」項(P53)がこの鑑別にとって参考になるかもしれません。

⑦妄想性障害
隣家が農薬を撒いて嫌がらせをしている

この文章は次に引用する、日本臨床環境医学会編の本、「シックハウス症候群マニュアル 日常診療のガイドブック」(2013年発行、日本医師会推薦)の Ⅱ.診断の手順 の 5.鑑別疾患 の 5-3 精神心理 の 5)精神病性障害 の「(2)妄想性障害」項における記述の一部(P44)です。

妄想性障害では,奇異でない,現実生活の限られた状況に関する妄想が1ヵ月以上続くことで診断されるために,統合失調症よりも鑑別は難しくなる.しかし,この場合も,注意深く話を聞くことで,現実との食い違いが明らかになることが多い.
妄想の内容が,自分が何らかの方法で悪意を持って扱われている(例えば,隣家が農薬を撒いて嫌がらせをしている)といった被害型の場合は,比較的容易に診断を疑うことはできるが,精神科への紹介も含めてその後の治療には難渋することも多い.

注:i) 引用中の「妄想」に関連する「心的等価モード」については、他の拙エントリのここを参照して下さい。 ii) 引用中の「統合失調症」については、他の拙エントリの「リンク集」を参照して下さい。 iii) 妄想性障害の他の説明例として、American Psychiatric Association 原著、滝沢龍訳の本、「精神疾患メンタルヘルスガイドブック DSM-5から生活指針まで」(2016年発行)の 第2章 統合失調症スペクトラム障害および他の精神病性障害群 の「妄想性障害 Delusional Disorder」における記述の一部(P40~P41)を次に引用します。

妄想性障害 Delusional Disorder

妄想性障害は,実際にはない何かに対する誤った信念(妄想)があり,統合失調症の症状に似ている。しかし,幻覚,まとまりのない思考・発語・行動,陰性症状といった他の統合失調症の症状がない点で異なっている。統合失調症と同様に奇異であったり奇異でなかったりする妄想をもっている。奇異ではない妄想とは,現実生活でも起こりうるが,実際にはほとんどあり得ない出来事に対する誤った信念である。例えば,後をつけられたり,毒を入れられたり,欺かれたり,陰謀を企てたり,見知らぬ人や有名人と恋人になっていたり,といったことを信じている。奇異な妄想とは,現実には起こる可能性がない出来事に対する誤った信念である。例えば,見知らぬ人が傷跡1つ残さずに自分の臓器を取り出して,他の誰かの臓器と取り換えてしまった,といったことである。
妄想性障害があっても,世間ではほとんど通常に機能しているようにみえる。妄想について語りだしたり,それに対処し始めるまでは,一見しただけでは他人には何らかの病気があったり,異常であったりするようにはみえない。
妄想性障害は,他の精神病性障害よりも多くない。成人の生涯罹患率は約0.2%である。誤った信念を除けば,重症な症状がないので,仕事をもっており,支援も求めないことが多い。若い人にも起きるが,多くは中年から高齢になってから起きる場合が多いようである。男女比に差はなく罹患する。(後略)

注:引用中の「統合失調症」については、他の拙エントリの「リンク集」を参照して下さい。

[ご参考2] NIRS に関する論文紹介及びパニック症における情動の特徴
NIRS as a tool for assaying emotional function in the prefrontal cortex.[拙訳]前頭前皮質における情動機能の分析ツールとしての NIRS
情動処理における前頭前皮質の役割を調査するためのツールとしての近赤外分光法(NIRS)に関する議論が次の論文に示されているようです。この論文の要旨を次に引用します。

Despite having relatively poor spatial and temporal resolution, near-infrared spectroscopy (NIRS) has several methodological advantages compared with other non-invasive measurements of neural activation. For instance, the unique characteristics of NIRS give it potential as a tool for investigating the role of the prefrontal cortex (PFC) in emotion processing. However, there are several obstacles in the application of NIRS to emotion research. In this mini-review, we discuss the findings of studies that used NIRS to assess the effects of PFC activation on emotion. Specifically, we address the methodological challenges of NIRS measurement with respect to the field of emotion research, and consider potential strategies for mitigating these problems. In addition, we show that two fields of research, investigating (i) biological predisposition influencing PFC responses to emotional stimuli and (ii) neural mechanisms underlying the bi-directional interaction between emotion and action, have much to gain from the use of NIRS. With the present article, we aim to lay the foundation for the application of NIRS to the above-mentioned fields of emotion research.


[拙訳]
比較的低い空間及び時間分解能を有するにもかかわらず、近赤外分光法(NIRS)は他の神経活性化の非侵襲的測定法に比較していくつかの方法論的な利点を有する。例えば、NIRS のユニークな特徴により、情動処理における前頭前皮質(PFC)の役割を調査するためのツールとしての可能性が有る。しかしながら、情動研究への NIRS 適用においていくつかの障害が有る。このミニレビューにおいて、情動に関する PFC 活性化の効果を評価するための NIRS を使用した研究の知見を我々は議論する。特に、我々は情動研究の分野に関する NIRS 測定の方法論的挑戦に取り組み、これらの問題を緩和する潜在的な戦略を考慮する。加えて、我々は二つの研究分野、すなわち (i) 情動刺激への PFC 応答に影響を与える生物学的素因 (ii) NIRS の使用から得ることが多い、情動と行動間の双方向の相互作用の基礎となる神経機構 を調査することを示す。本稿では、我々は情動研究の上記分野への NIRS の応用のための基礎を築くことを目指す。

注:i) 引用中の「前頭前皮質」に関連する「前頭前野」については次のWEBページを参照して下さい。「前頭前野 - 脳科学辞典」 ii) ちなみに、NIRS の代表的な応用例については、他の拙エントリのここを参照して下さい。 iii) さらに、引用中の「情動」、その関連用語の「情動系神経回路」に関しては、それぞれ次のWEBページを参照して下さい。「情動 - 脳科学辞典」、「情動系神経回路 - 脳科学辞典」。加えて、引用中の「情動」に関しては、メンタライジングの視点から他の拙エントリのここを参照して下さい。 iv) 一方、比較対象(参考)としてパニック症における情動の特徴については、次に引用する山脇成人、西条寿夫編の本、「情動の仕組みとその異常」(2015年発行)の 11. パニック障害[著者は熊野宏昭] の「おわりに」項の記述(P200~P201)にまとめられています。

(前略)その結果,PD では,恐怖ネットワークの過活動が実際に認められ情動喚起が強まっていることが裏づけられた.そして,橋と中脳がかかわる驚愕反応の指標に関しても明らかな異常が認められ,驚愕反応の増強による感覚情報に対する過度な反応と前頭前野における情動処理の過敏性によって,PD にかかわる刺激に対する注意バイアスや解釈バイアスの原因となる認知機能異常が引き起こされる可能性が示された.
その一方で,情動制御にかかわる前頭前野の機能不全も様々な形で認められ,情動ストロープ課題を用いた研究結果では,情動が喚起される葛藤状態に対して背側前帯状回・背内側前頭前野の活動を強めることで対応するが,葛藤状況が持続すると同部位の働きが持続できなくなり,扁桃体や海馬の活動を抑制することが困難になるといった結びつきも窺われた.また,CBT によって症状が改善する際には,背内側前頭前野の機能改善が一定の役割を果たしていることも示唆された.
以上より,PD では,扁桃体など大脳辺縁系の過活動に止まらず,脳幹部まで含めた形での情動喚起の異常があり,前頭前野がそれに過大な反応を示す一方で,様々な情動が喚起される葛藤状況に対して前頭前野が正常な抑制効果を示さないといった異常もあり,両者があいまって PD の病態が維持されるものと考えられた.(後略)

注:i) 引用中の「PD」、「CBT」はそれぞれパニック症(パニック障害)、認知行動療法のことです。 ii) 引用中の「橋」は脳の部位のことです。 iii) 引用中の「背側前帯状回」に関連する「前帯状皮質」については、次のWEBページを参照して下さい。「前帯状皮質 - 脳科学辞典」 iv) 引用中の「前頭前野」については、次のWEBページを参照して下さい。「前頭前野 - 脳科学辞典」 v) 引用中の「恐怖ネットワーク」については、「パニック症 - 脳科学辞典」の「病態仮説」項を参照すれば良いかもしれません。 vi) 引用中の「情動」については、WEBページ「情動 - 脳科学辞典」及びメンタライジングの視点から他の拙エントリのここを参照して下さい。 vii) 引用中の「大脳辺縁系」については、例えば次の pdfファイルを参照して下さい。「ストレス反応の身体表出における大脳辺縁系 - 視床下部の役割」 一方、情動の視点より例えば次のWEBページを参照して下さい。「恐怖する脳、感動する脳」の「情動と脳」及び「恐怖情動の神経回路」項 また、PTSD又は複雑性PTSDの視点より他の拙エントリのここを参照して下さい。 viii) ちなみに、a) 上記パニック症における刺激に対する情動と、MCS又はシックハウス症候群における嗅覚刺激に対する情動([ご参考1]における2番目の脚注を参照)とを比較すると興味深いのかもしれません。
 b) 引用中の「前頭前野が正常な抑制効果を示さない」に関連するかもしれない、「辺縁系の過剰反応性及び推論的に顕著な外部刺激の抑制不能」については、他の拙エントリのここを参照して下さい。

[ご参考3] 前頭前皮質又は前帯状皮質と偏桃体との機能結合に関連する論文又は資料の紹介
国立精神・神経医療研究センター・三島和夫部長らの研究グループが、睡眠不足で不安・抑うつが強まる神経基盤を解明

Impaired Functional Connectivity in the Prefrontal Cortex: A Mechanism for Chronic Stress-Induced Neuropsychiatric Disorders[拙訳]前頭前皮質における機能結合障害:慢性的なストレスが引き起こす神経精神障害のメカニズム

Chronic stress-related psychiatric diseases, such as major depression, posttraumatic stress disorder, and schizophrenia, are characterized by a maladaptive organization of behavioral responses that strongly affect the well-being of patients. Current evidence suggests that a functional impairment of the prefrontal cortex (PFC) is implicated in the pathophysiology of these diseases. Therefore, chronic stress may impair PFC functions required for the adaptive orchestration of behavioral responses. In the present review, we integrate evidence obtained from cognitive neuroscience with neurophysiological research with animal models, to put forward a hypothesis that addresses stress-induced behavioral dysfunctions observed in stress-related neuropsychiatric disorders. We propose that chronic stress impairs mechanisms involved in neuronal functional connectivity in the PFC that are required for the formation of adaptive representations for the execution of adaptive behavioral responses. These considerations could be particularly relevant for understanding the pathophysiology of chronic stress-related neuropsychiatric disorders.


[拙訳]
うつ病心的外傷後ストレス障害、及び統合失調症等の慢性ストレス関連精神疾患は、患者のウェルビーイングに強く影響する行動応答の不適応な体系化によって特徴付けられる。現在の証拠は、前頭前皮質(PFC)の機能障害がこれらの疾患の病態生理学に関与していることを示唆する。従って、慢性的なストレスは、行動応答の適応的な編成に必要な PFC 機能を損なうかもしれない。本レビューにおいては、ストレスに関連する神経精神障害において観察されるストレス誘発の行動機能不全を扱う仮説を提唱するために、認知神経科学から得られたエビデンスと動物モデルを伴う神経生理学的研究とを我々は統合する。適応的な行動応答の実行のための適応的な表象の形成が必要とされる PFC におけるニューロンの機能的結合に関与するメカニズムを慢性的なストレスが損なうことを我々は提案する。これらの考察は、慢性ストレス関連の神経精神障害の病態生理学を理解するのに特に関連し得るだろう。

注:引用中の「表象」については他の拙エントリのここを参照して下さい。

Amygdala functional connectivity as a longitudinal biomarker of symptom changes in generalized anxiety.[拙訳]全般不安症における症状変化の縦断的バイオマーカーとしての扁桃体の機能的結合性

Generalized anxiety disorder (GAD) is characterized by excessive worry, autonomic dysregulation and functional amygdala dysconnectivity, yet these illness markers have rarely been considered together, nor their interrelationship tested longitudinally. We hypothesized that an individual's capacity for emotion regulation predicts longer-term changes in amygdala functional connectivity, supporting the modification of GAD core symptoms. Sixteen patients with GAD (14 women) and individually matched controls were studied at two time points separated by 1 year. Resting-state fMRI data and concurrent measurement of vagally mediated heart rate variability were obtained before and after the induction of perseverative cognition. A greater rise in levels of worry following the induction predicted a stronger reduction in connectivity between right amygdala and ventromedial prefrontal cortex, and enhanced coupling between left amygdala and ventral tegmental area at follow-up. Similarly, amplified physiological responses to the induction predicted increased connectivity between right amygdala and thalamus. Longitudinal shifts in a distinct set of functional connectivity scores were associated with concomitant changes in GAD symptomatology over the course of the year. Results highlight the prognostic value of indices of emotional dysregulation and emphasize the integral role of the amygdala as a critical hub in functional neural circuitry underlying the progression of GAD symptomatology.


[拙訳]
全般不安症(GAD)は、過剰な心配、自律神経調節不全及び機能的な偏桃体結合不全により特徴づけられるが、これらの病気のマーカーはほとんど連携して考慮されておらず、相互関係も縦断的に検査されていない。我々は、感情調節のための個体の能力が、扁桃体の機能的結合性の長期的変化を予測し、GAD の主症状の変容を支持すると仮定した。 16人の GAD を伴う患者(14人は女性)及び個別にマッチさせた対照群は、1年間で隔てられた2つの時点で調査された。安静状態の fMRI データ及び迷走神経性にメディエイトされた心拍変動性の同時測定は、保続的な認知の誘導前後に得られた。誘導後の心配のレベルにおける大きな上昇は、右扁桃体と腹内側前頭前皮質との間の結合性における強い低下を、そしてフォローアップにおける左扁桃体腹側被蓋野の強化された連結をそれぞれ予測した。同様に、誘導に対する増幅された生理学的な応答は、右扁桃体視床との間の増加した結合性を予測した。機能的結合性スコアの異なるセットにおける縦方向のシフトは、一年を通した GAD の症候学における付随した変化に関連した。結果は情動調節不全の指標の予後値を目立たせ、GAD 症候学の進行の根底にある機能的神経回路における重要な中枢としての偏桃体の不可欠な役割を強調する。

注:i) 引用中の「全般不安症」については、例えば次のWEBページを参照して下さい。 「不安症 - 脳科学辞典」の「不安症の下位診断名とその症状」項 ii) 引用中の「扁桃体」については、PTSD又は複雑性PTSDの視点から他の拙エントリのここ及びここを参照して下さい。 iii) 引用中の「腹内側前頭前皮質」に関連する「内側前頭前皮質」ついては、PTSD又は複雑性PTSDの視点から他の拙エントリのここを参照して下さい。加えて、これに関連する「前頭前野」ついては次のWEBページを参照して下さい。 「前頭前野 - 脳科学辞典」 iv) 引用中の「fMRI」(機能的磁気共鳴画像法)については、例えば次の pdfファイルを参照して下さい。 「機能的磁気共鳴機能画像法を用いた脳機能計測方法とその応用

目次に戻る

≪余談2≫化学物質過敏症とされる患者における生活の制約

標記の複数例を以下に引用します。これらの引用以外にも、「窓を開けるのが困難」も挙げることができるかもしれません。すなわち真夏において、エアコン嫌いの方が窓を開けないで室内にいると、熱中症が生じるリスクが高まるかもしれません。ちなみに、身体疾患と精神疾患を併病している患者の方々の中で、精神疾患を受け入れ難い患者様が身体疾患と診断されるリスクについては、線維筋痛症を例にして、他の拙エントリの【細かな説明3】に示しています。

(1) 柳沢幸雄、石川哲、宮田幹夫著の本「化学物質過敏症」(2002年発行)の 第一章 シックハウスに殺される! の「化学物質はどこからでもやってくる」項の西村さんを例にした記述の一部(P42~P43)を次に引用します。

いま一番の心配は薬品そのものが使えないことだ(化学物質過敏症の治療には現在のところ有効な薬物治療はない。したがって、ここでいう薬品とは、過敏症以外の病気を併発してしまったときに治療するための一般的な薬品という意味である)。化学物質過敏症でなくとも、特定の薬にアレルギー反応を示す人は珍しくないが、西村さんの場合は、身体に合う薬を見つけること自体が難しい。通常なら悪影響がないとされる、きわめて微量の化学物質でも、拒絶反応が出てしまうからだ。薬品ばかりかさまざまな医療機器にも化学物質が含まれているから、ことは複雑だ。「何かあっても病院という建物に入れませんし、薬剤による治療ができないことに非常に不安を感じています。これから先、交通事故や癌になったときは、いったいどうしたらいいんだろう。手術もできないし、化学療法も、放射線治療もできない。もしも病気をしたら、もう死ねしかない。私は看護婦としてICU(集中治療室)で働いた経験もあるので、患者さんの死には毎日のように直面していましたが、自分自身の死を想像したことはなかった。でも、いまは死ぬっていうことが、ものすごく身近ですね。毎日、ああ今日もまだ生きていたのか、っていう感じです」 病気にかかったときにまともな治療が受けられない恐怖は余人には測りがたい。
化学物質過敏症の患者は、食物アレルギーを併発しているケースが少なくないが、ある患者はそのために十分に食事がとれなくなり、衰弱して病院に運ばれたことがある。ところが、過敏症の知識のない医師が栄養チューブを鼻から入れたところ、ショック症状を起こしてしまった。塩化ビニル製のチューブに反応してしまったのである。点滴も受けつけない。その結果、治療の施しようがないと、家に帰されてしまったのだという。塩ビのチューブには、ブラスチックを軟らかくするために添加されるフタル酸系の可塑剤のDEHPなどが含まれている。こうした素材の脱・塩ビ化は少しずつ進んでいるが、いまも医療用として広く使用されている。

(2) エントリ「化学物質過敏症に関する私の発言について - NATROMの日記」における記述の一部を次に引用します。

化学物質からの回避も、意外と侵襲性が高い。野菜をスーパーで買わずに無農薬のものを取り寄せる、とか、シャンプーを香料・添加物の少ないものにする、とかならまだよい(本当は良くないのだが)。Environmental Control Unit(ECU, 環境施設)といって、「化学物質」の発生を最低限に押え込んだクリーンな施設*1に入るという治療法がある。入るときは良い。問題は出るときだ。なにしろ外は「汚染社会」である。

ECUから「直接汚染社会に復帰することが難しい例(P157)」は、ECUに準じたコロニー(隔離された無味乾燥した施設)に入所する。コロニーに転地した三分の二は完治するが「残りの三分の一は、コロニーと自宅の間を行ったり来たりしています(P158 )」。社会復帰ができないということである。三分の一が社会復帰できないかもしれないような侵襲性の高い治療法はなかなかない。「コロニーと自宅の間を行ったり来たり」している残りの三分の一の患者さんが、本当に超微量の化学物質の曝露によって症状が誘発されていて、社会復帰ができないのが「汚染社会」のせいであれば、まだこうした治療も容認されうる余地がある。しかし、もし化学物質の曝露は関係なかったとしたら?複数の二重盲検法による負荷テストの結果は、症状の誘発と超微量の化学物質の曝露に関係がないことを示している。

(中略)

「野菜をスーパーで買わずに無農薬のものを取り寄せる、とか、シャンプーを香料・添加物の少ないものにする、とかならまだよい(本当は良くないのだが)」という発言について、掲示板にてご質問があった(■化学物質過敏症についての掲示板 - 進化論と創造論の掲示板3)。症状が出てしまう食品・製品を避けることがなぜ「本当は良くない」のか、疑問に思われるのはもっともなことである。掲示板でもお答えしたが、この場でも追記したほうが良いとのご提案を受け、確かにその通りであるのでこうして追記することにした。

MCSの特徴として、症状を引き起こす「化学物質」の種類がどんどん広がっていくという「過敏性の拡大」というものがある。臨床環境医は、しばしばコップにたとえられる「総身体負荷量」という概念によって、過敏性の拡大を説明する。「有害な化学物質」がコップに貯まりきってあふれている状態では、これまで平気であった「化学物質」に対しても反応するのだという。しかし、この臨床環境医の主張には医学的な根拠は無い(「総身体負荷量」の概念に対する簡単な批判は■臨床環境医の主張で行った)。

「過敏性の拡大」は、「総身体負荷量」のような医学的に証明されていない概念を持ち出さなくても、条件反射や学習で妥当な説明が可能である。たとえば、野菜の残留農薬に反応すると信じている化学物質過敏症患者が、スーパーで売られている野菜をさけ、特別に取り寄せた「○○農園の無農薬野菜」を食べたのちに症状が生じたとしよう。その症状の原因が野菜でなくても、患者の主観では、その「無農薬野菜」が原因だと認識しうる。「生産者がこっそり農薬を使ったのかもしれない。あるいは、○○農園は無農薬でも近隣の農家が使用した農薬が混入したのかもしれない。もうここの野菜は信用できない」。患者は次からは「○○農園の無農薬野菜」を回避するであろう。過敏性の拡大はこうして起こっている可能性がある。

こうした回避を繰り返すと、どんどん使用できる食品・製品が狭まってくる。社会生活や日常生活にも支障をきたす。症状が出てしまうのに無理にその食品・製品と使うと条件反射の強化となってしまうので難しいが、やみくもに回避するのも弊害がある。こうした病態には認知行動療法が効果がありそうに私には思われる。ただ、現時点では、有望であるとはみなされているものの、確固としたエビデンスがあるわけではない。いずれにせよ、「化学物質からの回避」が副作用を伴う治療法であることは、もっと周知されてしかるべきだと考える。

過度な化学物質からの回避への批判は複数あるが、たとえば、以下。「医師は、さまざまな低用量の化学物質への暴露を避けるように患者に勧めてはならない」「化学物質の曝露からの長期間の回避の推奨は禁忌である」とある。

注:i) 引用では一次情報にあった脚注及びリンクは外れています。 ii) 引用中の「条件反射や学習」及び「回避」に関連するかもしれないシックハウス症候群についての引用例は、他の拙エントリのここを参照して下さい。

(3) Multiple chemical sensitivities: review *26の「Clinical Ecology」項における記述を次に引用します。この引用においては、主に治療費の支出に注目します。

Clinical ecology
A survey [59] of people reporting MCS in the United States reported that more than 100 types of treatment were commonly used by people reporting MCS. These included treatments as diverse as nutritional supplements, filters, saunas, special diets, as well as more intrusive procedures, such as amalgam-filling removal, colonic irrigation, gall bladder/liver flushes and the use of over-the-counter/prescription medications such as antibiotics, antifungal medications and acyclovir. The evidence base for most of these therapies is limited; in addition, some therapies have iatrogenic effects [60,61]. Survey responders admitted spending, on average, $51 000 on treatments, of which $7000 was spent in the previous year, averaging 15% of their annual household income, and had spent an average of $57 000 in attempting to make their homes safer [59]. Participants rated chemical avoidance, creating a chemical-free living space and prayer as the three most useful interventions [59].


[拙訳]
臨床環境医学
米国において、MCS を申告する人々の調査[59]では、100種類以上の治療法が一般的に MCS を申告する人々により使用されたことを報告した。これらの治療法には、より侵襲的な方法である、アマルガム充填除去、結腸洗浄、胆嚢/肝臓洗浄、及び抗生物質、抗真菌薬やアシクロビル(訳注:抗ウイルス薬)等のOTC(市販)/処方箋医薬品等はもちろん、多種多様な栄養補助食品、フィルタ、サウナ、特別な食事療法を含む。これらの治療法のほとんどは、エビデンスが限られている。加えて、いくつかの治療法は、医原性の(訳注:医師の診断、治療によって生じた)効果を持っている[60,61]。本調査への応答者は、平均 51,000 ドルを治療への支出に容認し、前年に 7,000 ドルを支出し、これは、平均して年間世帯収入の15%であり、自分の家をより安全にする試みに、平均 57,000 ドルを支出した[59]。当事者は、化学物質の回避、ケミカルフリーの生活空間、祈りを3つの最も有用な介入と格付けした[59]。

注:i) 引用文中の 「[59]」、「[60,61]」はそれぞれ文献番号です。 ii) ちなみに、[59]の文献は、治療法を中心に次の日本語のエントリで紹介されています。『メモ「自己申告ベースのMCSに効く治療法」 - 忘却からの帰還

目次に戻る

≪余談3≫化学物質過敏症精神疾患との境界線

次のWEBページ「 ピコ通信/第135号 化学物質問題市民研究会発行」 の 第1部 基調講演(概要)「Ⅱ 健康保険のこと、今後の課題 宮田幹夫先生(北里大学名誉教授) 」 の「◆精神疾患との境界線のあいまいさをどうするか」項における記述を次に引用します。

近縁疾患には、アレルギー(皮膚、呼吸器、食物)、慢性疲労症候群線維筋痛症、上気道過敏、うつ、不安障害がある。うつ、不安障害との境界線があいまいである。
一番問題なのは、不安障害=神経症で、ICD10(国際病名分類)では、神経性障害・ストレス関連障害・及び身体表現性障害の項目に分類されている。ここには、全身性不安障害、パニック障害、恐怖症性不安障害、強迫性障害解離性障害、身体表現性障害、適応障害が入っている。
化学物質過敏症の患者さんの症状だけで見ると、この分類に押し込めることができる。精神科の医師たちに化学物質過敏症を理解してもらうには、まだ時間がかかるだろう。

注:引用中の「うつ」という言葉を安易に使うと誤解を招きやすいと本エントリ作者は考えます。例えば、拙エントリのここを参照して下さい。

目次に戻る

≪余談4≫化学物質過敏症の症状例

化学物質過敏症の症状とされるものは、以下に引用するように一般に不定愁訴*27といわれるような症状が多く、以下に理由を示すようにこれらの症状は化学物質過敏症に特異的でないと本エントリ作者は考えます。

某WEBサイトを見習って、「化学物質過敏症の症状」とされるものとして、宮田幹夫著の本「化学物質過敏症 忍び寄る現在病の早期発見と治療」(2001年発行)の 「PART1 どんな症状が現れるのか?」における記述の一部(P5~P7)を引用します。

化学物質過敏症」の特徴のひとつは、同じ化学物質が原因でも、ある人は頭痛がでるのにある人は下痢をする、というように、人によって現れる症状が違うということです。また、目や鼻、耳、皮膚、呼吸器、循環器、消化器、神経、内分泌など、広範囲の症状が現れるのも特徴です。
主な症状を挙げてみましょう。
【目】目がかすむ/視力が落ちる/物が二つに見える/目の前に光が走るように感じる/まぶしい/目がちかちかする/目が乾く/涙が出やすい/目がごろごろする/目がかゆい/目が疲れる/目の前が暗く感じる

【鼻】鼻水が出る/鼻が詰まる/鼻がかゆい/鼻が乾く/鼻の奥が重い/後鼻腔に何か流れる感じがする/鼻血が出る

【耳】耳鳴りがする/耳が痛い/耳がかゆい/音が聞こえにくい/音に敏感になった/耳のなかがぼうっとする感じがする/耳たぶが赤くなる/中耳炎をおこす/めまいがする

【口やのど】口やのどが乾く/よだれが出る/口のなかがただれる/食べ物の味がわかりにくい/金属の匂いがする/のどが痛い/のどが詰まる/ものが飲み込みにくい/声がかすれる/喉頭に浮腫ができる

【消化器】下痢や便秘を起こす/むかむかして吐き気がする/おなかが張る/おなかに圧迫感を感じる/おなかの痛くなったりや痙攣が起こる/空腹感がある/胸やけがする/げっぷやおならがよく出る/胃酸の分泌過多になる/小腸炎や大腸炎を起こす

【腎臓・泌尿器】トイレが近くなる/尿がうまく出ない/尿意を感じにくくなる/夜尿症になる/膀胱炎を起こす/腎臓障害が起きる/性的な衝動が低下する/インポテンツになる/性的な衝動が過剰になる

【呼吸器・循環器】せきやくしゃみが出る/呼吸がしにくい/呼吸が短くなったり呼吸回数が多くなる/胸が痛む/息遣いが荒くなる/ぜんそくを起こす/脈が速くなる/不整脈になる/血圧が変動しやすい/皮下出血を起こす/寒さに対して皮膚の血管が過敏になる/血管炎を起こす/にきびのような吹き出物が出やすい/むくみができる

【皮膚】湿疹、じんま疹、赤い斑点が出やすい/かゆい/引っ掻き傷ができやすい/汗の量が多い/皮膚が赤くなったり青白くなったりしやすい/光の刺激に対して過敏になる

【筋肉・関節】筋肉痛がある/肩や首が凝る/関節が痛む/関節が腫れる

産婦人科関連】のぼせたり、顔がほてったりする/汗が異常に多くなる/手足が冷える/おりものが増える/陰部のかゆみや痛みがある/生理不順になる/不妊症になる/生理が始まる前にいらいらしたり、頭痛、むくみなどがある/感染症にかかりやすくなる

【精神・神経】頭が痛くなったり、重くなったりする/手足がふるえたり、痙攣したりする/うつ状態躁状態になる/不眠になる/気分が動揺したり不安になったり精神的に不安定になる/記憶力や思考力が低下する/食欲が落ちる/苛立ちやすく、怒りっぽくなる

【その他】貧血を起こしやすくなる/甲状腺機能障害を起こす

(中略)

化学物質過敏症の症状は、一般に不定愁訴といわれるような症状が多いため、原因不明のまま、かぜ、自律神経失調症更年期障害、ヒステリー、ノイローゼ、過敏症、アレルギー、感受性の亢進、職場嫌いなどと診断されます。

注:ただし、i) 引用中の「ヒステリー」は、以下に引用する十一元三著の本、「子供と大人のメンタルヘルスがわかる本 精神と行動の異変を理解するためのポイント40」の「22 グループ6:解離症状(自分による心身の支配が失われる)」における記述の一部(P70~P71)に示すように「転換性障害」[変換症](変換症 - 脳科学辞典身体表現性障害 - 脳科学辞典の「転換性障害」項、他の拙エントリの「リンク集」を参照)に相当します。 ii) 引用中の「ノイローゼ」は、不安症(不安障害)に相当するようです。 iii) ちなみに、シックハウス症候群の症状も、pdfファイル「シックハウス症候群の発症機構」の「5. 心療内科学的側面から」項における記述の一部(P844)を以下に引用するように不定愁訴であるようです。

心理的葛藤による症状が記憶のような認知機能でなく、運動機能や感覚機能(視覚・聴覚など)に現れる(つまり体の機能障害に転化される)ことがあり、それが主症状となる精神疾患を「転換性障害」といいます。転換性障害では、体に異常がないのに”立てない・歩けない・音が聞こえない・視野の一部しかみえない”などの症状が現れます。これらは、かつての精神医学で”ヒステリー”と呼ばれた症状に相当します。

5. 心療内科学的側面から
シックハウス症候群は,その多彩な自覚症状がいわゆる「不定愁訴」であること(後略)

上記引用(ここ及びここ参照)に示すように、化学物質過敏症における一般に不定愁訴といわれるような症状は、自律神経失調症をはじめとした心身症又は身体表現性障害の症状(身体症状)*28と概ね重なります。心身症、身体表現性障害、自律神経失調症については、それぞれ、例えば以下に示すWEBページ、pdfファイル及び本エントリの≪余談5≫を参照して下さい。 「心身症 - 脳科学辞典」、「身体表現性障害 - 脳科学辞典」、「http://kompas.hosp.keio.ac.jp/contents/000071.html:title=身体症状症(旧:身体表現性障害) - KOMPAS]」、「自律神経失調症」。これらの身体症状は例えば複数の精神疾患(他の拙エントリ参照)においても見られ*29化学物質過敏症に特異的な症状ではありません。化学物質過敏症(又は MCS)に特有なものとして「超微量の化学物質により症状が誘発される」ことがあり、これを証明するための臨床環境医が考案した二重盲検法による誘発(負荷)試験もあるのですが、「超微量の化学物質により症状が誘発される」こと(すなわち、疾患概念 MCS の存在)は、システマティック・レビュー(他の拙エントリ参照)により否定されています。

不定愁訴といわれるような症状は化学物質過敏症に特異的では無いことを支持する記述例を以下に示します。先ず、宮田幹夫著の本「化学物質過敏症 忍び寄る現在病の早期発見と治療」(2001年発行)「Part4 化学物質過敏症の診断」における記述の一部(P37)を次に引用します。

他の病気ではないと鑑別したうえで、患者さんの症状と、これらの検査の結果により、化学物質過敏症の診断がつきます。

引用中の「他の病気」がどこまでの範囲を示すのか不明確です。中毒及びアレルギーはともかくとして、例えば、更年期障害参照)、甲状腺機能亢進症(バセドウ病参照又は参照)、線維筋痛症参照)、慢性疲労症候群、不安症(DSM-5)[不安障害、これにはパニック症、特定の恐怖症、広場恐怖症を含む](参照)、うつ病双極性障害境界性パーソナリティ障害摂食障害(まとめて他の拙エントリのリンク集参照)、自閉スペクトラム症(他の拙エントリ参照)、PTSD(他の拙エントリのリンク集参照)、複雑性PTSD、解離性障害(共に他の拙エントリのリンク集参照)が含まれるのかどうか? の記述は同本にはありません。

さらに、日本臨床環境医学会編の本、「シックハウス症候群マニュアル 日常診療のガイドブック」(2013年発行)の Ⅲ.対応 の「1-1 初診時の対応」項における一部の記述(P51)を次に引用します。

シックハウス症候群(SHS)の症状は多彩で多臓器にわたるため鑑別診断が重要となる.内科学的な臨床を習得した医師にとって,本症の鑑別診断はさほど困難ではないが,症状に応じて,循環器科,呼吸器科,アレルギー科,内分泌・代謝内科,心療内科,耳鼻科,眼科への紹介を考慮する.すなわち,既存の疾患では説明できない患者の場合,本症を疑うという側面もあり,除外診断を旨とすべきである.

加えて、pdfファイル「新シックハウス症候群に関する相談と対策マニュアル(P38)」の ⑤ シックハウス症候群といわゆる「化学物質過敏症」(本態性環境不耐症)[P38~P42] の 『「化学物質過敏症」の訴えへの対応』(P41) における記述の一部を次に引用します。

2. 身体不調を化学物質のためと決めつけず、心理社会的ストレスによる体調不良やメンタルヘルスの問題など,他の既存の考え得る疾患を除外診断する必要がある。

上記引用中の文章「他の病気ではないと鑑別したうえで(中略)化学物質過敏症の診断がつきます」「除外診断を旨とすべき」「他の既存の考え得る疾患を除外診断する必要がある」より、不定愁訴等の化学物質過敏症及びシックハウス症候群の症状とされるものと合致したからといえども、直ちにこれらの診断ができないと本エントリ作者は考えます。一方、前2者では、どこまで「除外診断」又は「鑑別診断」を実際に行うのかが明確でないと本エントリ作者は考えます。最後の文章では、「他の既存の考え得る疾患を除外診断する必要がある」であり明確であると本エントリ作者は考えます。

目次に戻る

≪余談5≫自律神経失調症

最初に、平井孝雄著の本、「仏陀の癒しと心理療法 20の症例にみる治癒力開発」(2015年発行)の 第6章 五取蘊苦と自律神経失調症 の「第2項 自律神経失調症とは?」における記述又は記述の一部(P136~P137)を次に引用します。

自律神経失調症とは、身体に特別な異常(癌とか膠原病といった) がないにもかかわらず、いろいろな訴え (主に、全身倦怠感、めまい、頭痛、頭重感、動悸等)をし、背後に交感神経や副交感神経の過緊張・機能低下が関与している病態を指す。
自律神経は、それこそ身体のあらゆる臓器に影響を及ぼしているが、その主な特徴は自分の意思とは無関係(厳密にいうと少し関係するが)に、自律的に機能する内臓や内分泌器官を支配しているということである(だから自分の意思に随って動く筋肉系の随意運動神経系と区別される)。
自律神経は、また交感神経と副交感神経に分かれるわけだが、たいたいにおいて両者は、反対の作用をして、それで生体のバランスを保っている。すなわち、交感神経はどちらかと言うと闘う、逃げる、活動するといったエネルギーを出す方向(異化作用、向力動作用とも言う)に向かう。具体的に言うと交感神経が優位に働いている時は、脈拍の増加、血圧上昇、気管支の拡張、胃腸運動の抑制、頻尿、発汗といったことが起きやすくなる。
逆に副交感神経は、エネルギーを取り入れる方向(同化作用、向栄養作用とも言う)で、これが優位になり過ぎると胃腸症状(吐き気、下痢、腹痛など)、低血圧、徐脈といったことが出やすいと言える。
自律神経は、普段は二つの神経系がほどよく調和して働いているのだが、気掛かり、心配、不安、憂鬱といった精神的ストレス(精神的だけではなくあらゆるストレス)があると、バランスが崩れ、精神身体反応というような生理的変化が生じる。そして、動悸、呼吸困難、めまい、頭痛、疲労、食欲不振など多彩な症状をもたらす。
自律神経失調症には、さまざまなタイプがあり、心因がかなり関与するタイプと、そうでないタイプがある。また心理的原因が大きい場合のなかに、神経症的特徴をかなり有するタイプがあり、それはもう神経症と言っていいぐらいである。
自律神経失調症は、見た目にはひどい病気と見られないし、また特別な異常もない故、周りには「たいしたことはない。気のせいだ」ぐらいに見られがちだが、本人にしたら、辛い症状を強く感じさせられ、それこそ自分の肉体を持て余すといったぐらいに苦しんでいることが多い。

加えて、各臓器に現れる自律神経失調症の症状例を、村上正人、則岡孝子著の本、「自律神経失調症の治し方がわかる本」(2011年発行)の 第1章 あなたは、どれだけ知っていますか? の「自律神経失調症が引き起こす体の”異常”」における記述の一部(P16~P17)を引用します。ただし、この引用元の P17 は本来イラストであるものの、引用の一部を作成するために文字を抜き出しています。

次ページのイラストのように、自律神経失調症状はあらゆるところに現れます。(中略、以下の引用元はイラストです)

各臓器に現れる自律神経失調症
いくつかの症状が一見関連のない臓器に現れることが多い

●全身
微熱、だるさ、倦怠感、不眠

●神経
片頭痛、筋緊張性頭痛、頭重感、乗り物酔い、目まい、立ちくらみ

●耳
耳鳴り、耳閉

●目
眼精疲労、まぶたのけいれん、ドライアイ(目の乾燥)

●咽喉
のどの異物感

●呼吸器
過換気症状(息を吸いすぎて呼吸が苦しい)

●循環器
高血圧、低血圧、レイノー症状(手足の冷感、蒼白)、不整脈、頻脈、胸痛

●皮膚
かゆみ、円形脱毛、多汗(汗をかきやすい)、じんましん

●筋肉
筋肉痛、肩こり、腰痛

●手
書痙(手がふるえて文字が書けない)、手のひらの汗

●消化器
慢性胃炎、神経性嘔吐、過敏性腸症状(下痢をしやすい)、おなかが張る、食欲不振、過食

●泌尿器
神経性頻尿、残尿感、尿失禁

生殖器
月経前の不調、月経痛、産後のうつ気分、更年期障害、性機能不全

目次に戻る

≪余談6≫不潔恐怖・洗浄強迫、強迫性障害における分類及び発達障害との関連

最初に、「嗅覚嫌悪条件づけ」(リンク集参照)に関連する強迫性障害*30における「不潔恐怖・洗浄強迫」に関して、原井宏明、岡嶋美代著の本「図解 やさしくわかる強迫性障害」(2012年発行)から主に引用して以下に記述します。

本の「不潔恐怖・洗浄強迫①」及び「不潔恐怖・洗浄強迫①」における記述の一部(P26~P28)をまとめて次に引用します。

不潔恐怖・洗浄強迫①

いくつかのタイプがあり、執拗に手洗いや入浴を続ける(中略)

誰にも汚されたくない聖域を作り、必死に守ろうとする

不潔恐怖・洗浄強迫は、自分の手や体が汚染されているという感覚に支配され、しつこく手を洗ったり、シャワーを浴び続けるといった洗浄行為を続けます。汚染はいわゆる不潔なものから化学薬品や嫌悪感的イメージなど多岐にわたります。これにはいくつかタイプがあり、自分の手や身体が世の中で一番きれいでいたいから、というのが「不潔恐怖・洗浄強迫タイプ」、自分の汚れた手や身体で大事な人や世間を汚したくない、という「加害恐怖・洗浄強迫タイプ」、縁起の悪いイメージを手洗いによって払拭しょうとする「縁起強迫・洗浄強迫タイプ」などがあり、恐怖の対象を見極めることが治瘡の上でとても重要になります。
ここでは恐怖の対象の違いを分けずに、不潔恐怖・洗浄強迫として解説します。不潔恐怖・洗浄強迫の人には、どうしても汚したくない「聖域」があります。それは家全体だったり、自分の部屋、ベッドや布団と色々で、人によって、バッグやクローゼットの中、何か思い入れのある化粧品やアクセサリーということもあります。

強迫儀式に何時間も要して日常生活が立ち行かなくなる

例えば、不潔恐怖・洗浄強迫のAさんは、自分のベッドを聖域とみなし、ベッドに入るまでに次のような儀式をします。まず部屋のゴミを捨てて、次にトイレに入り、排泄のあと、多いときはトイレットペーパーを1、2ロール使って、お尻を拭きます。それが終わると、洗面所でハンドソープを泡立てて、納得できるまで手を洗い、次は入浴です。ボディソープを泡立てて、気のすむまで体を洗い続け、ようやくパジャマに着替えてベッドに入ります。この一連の行為は「ベッド」という聖域に汚れをつけたくないがゆえの必死の強迫行為(儀式)です。
Aさんの場合、入浴までの儀式で約5、6時間もかかりますが、当然、これだけ強迫儀式に時間をとられれば、日常生活が立ち行かなくなります。そうすると、自分のベッド(聖域)を汚さないようにリビングルームなどで寝ることもありますし、友達の家や交際相手の部屋を泊まり歩くこともあります。その代わり、自宅に戻って聖域に入るというときは、前にも増して強迫儀式をエスカレートさせ、大事な聖域を守ろうとします。あるいは、儀式行為に疲れると、聖域に一歩も入れなくなり、他の部屋に引きこもることもあります。(中略)

不潔恐怖・洗浄強迫②

恐怖の対象は、目に見えるものだけではない(中略)

不潔恐怖・洗浄強迫の人の多くが自分や他人の排泄物や生ゴミなど、実際に衛生的でないものが強迫観念を引き起こすスイッチ(トリガー)になります。しかし、強迫行為(儀式)を繰り返し、強迫観念が肥大すると、目に見えないものまでが恐怖の対象となります。それは、自分の体から落ちる汚れだったり、ドアノブや電車のつり革、受話器、机、イス、コップや食器などについている汚れだったりします。
こうした場合、複数の人が触れるドアノブや受話器をつかむときに、ティッシュで覆ってからつかむような行動が見られたり、あるいは周囲の手前、仕方なくつり革やドアノブなどを触ったあと、人前では平気を装い、家に帰ると洗面所に飛び込んで手を洗い続けることもあります。
こうした行為は、自分自身への汚染を食い止めるため、あるいは加害恐怖・洗浄強迫の場合、自分についた汚れを人に広めないためのもので、「何年もあとに自分の体から汚れが染み出てくるのではないか」と、通常では考えられないことを危惧しています。一方で「人に感染を広めたことで、非難されるのではないか」と考えるとしたら加害恐怖より自分自身への被害を恐れているといえます。(後略)

注:i) ちなみに、強迫性障害の治療法の主な例は薬物療法本の P90 参照)と行動療法の一種のERP(エクスポージャーと反応妨害:本の 3章[P83~P137]参照)です*31 加えて、OCD(強迫性障害)患者とその家族の生活向上を目指す「OCDの会」が、同本の P138 に紹介されています。さらに、強迫性障害(OCD)と潔癖症との違いについて、原井宏明監修の本、「強迫性障害に悩む人の気持ちがわかる本」(2013年)の「本人① 不潔恐怖」における記述の一部(P13)を次に引用します。 ii) 引用中の「不潔恐怖」(又は「汚染不安」)の対象例として、 a) 同項における記述の一部(P12)を形式を変えて以下に引用します。 b) 上島国利監修、有薗正俊著の本、「よくわかる 強迫性障害」(2010年発行)の「とらわれ ①汚染/洗浄」における記述の一部(P16)を以下に引用します。 iii) 引用中の「不潔恐怖」(又は「汚染不安」)における「感覚と実際との区別が難しいことがあること」について、上島国利監修、有薗正俊著の本、「よくわかる 強迫性障害」(2010年発行)の「疲れる病気 強迫行為はとても疲れる」における記述の一部(P28~P29)を以下に引用します。 iv) 標記「強迫性障害」一般における「暇は強迫の餌になる」については、本の「便利な社会がOCD発症の温床となっている」における記述の一部(P22)を以下に引用します。

潔癖症との違いは
OCDは潔癖症とどう違うのか、疑問に思う人は少なくありません。常に汚れが気になり、身のまわりをきれいにしておかなければ気がすまない点では潔癖症と同じです。
OCDの場合、洗浄行為や汚れを避ける行動により、生活にまで支障がでるのが特徴です。

不潔恐怖の対象(例)
自分のものも他人のものも、汚くて気持ち悪いと感じる。

汗、血液、排泄物、唾液、ばい菌、生ごみ、毒、放射性物質

とらわれ ①汚染/洗浄
汚染が怖くて、洗わずにはいられない(中略)

○汚染・危険を感じるもの
・排泄物
・つばや汗など、体から出る分泌物
・ウイルスや菌
・血や、注射器などの医療廃棄物
・虫(ゴキブリなど)、動物
・薬品、洗剤
放射能
・水銀、アスベストなどの環境汚染物質
・ごみ、土
・ガラスの破片
・ネバネバしたもの
・不潔だったり病気に思える人(後略)

疲れる病気
強迫行為はとても疲れる
症状の特徴(中略)

⑥感覚と実際との区別が難しいことがある
強迫症状が起きているときは、敏感に警戒しています。そのため、実際には何も起こっていないと思う反面で、何かをしてしまったような気もすることがあります。たとえば、「手が汚れにさわっていないのに、さわってしまったかもしれないような気もする」というような場合です。
また、普通の人は気にも留めないような、小さな点のようなものでも、体からの分泌物が嫌いな人には、それが分泌物かもしれないと見え、害虫が嫌いな人には、害虫のふんかもしれないというように見えてしまいます。(後略)

便利な社会がOCD発症の温床となっている(中略)

また、大人の暮らしぶりにしても、昔は一家総出で野良仕事や、主婦は家事で一日中忙しく過ごしていました。現在は、インターネットの普及や家電製品の進化で、人間が体を動かしてやる仕事は減り、時間を作ることができます。暇になると、色々なことを考える余裕ができ、これが強迫的な発想の呼び水になります。「暇は強迫の餌になる」ということです。(後略)

ちなみに、発病のきっかけに関して、原井宏明監修の本、「強迫性障害に悩む人の気持ちがわかる本」(2013年)の「解説 発病のきっかけがあった人も多い」における記述の一部(P27)を次に引用します。

OCDは、強迫観念を引き起こす刺激(トリガー)によって、いてもたってもいられない強迫行為に駆り立てられていきます。
なにがトリガーになるかは、人によってさまざまですが、症状が進むほどトリガーの数が増え、強迫行為も深刻になっていくのか特徴です。
気づいたらOCDになっていたという人がほとんどですが、なかにはきっかけがあったという人もいます。進学や就職、結婚、出産などのライフイベントや環境の変化、大きな事件・失敗などのできごとを体験した後にこだわりが増えた人たちです。(中略)

こんなことがきっかけに
公衆トイレに携帯電話を落とし、とっさに拾った
中学のとき、いじめにあった。親友だと思っていた人が主犯格だった
交通事故を目撃。道路に流血していた
子どもが生まれ、ミルクを飲ませていたとき、吐いた。吐いたものを見た

注:ちなみに、a) 上記「発病のきっかけ」については、WEBページ強迫症 - 脳科学辞典の「病因」項にも次に示す記述(『 』内)があります。『また多くの患者では、対人関係や仕事上のストレス、妊娠・出産などのライフ・イベントが、発症契機となる。』 加えて、同様の記述が次のWEBページにもあります。 「強迫性障害」の「原因・発症の要因」 さらに、上島国利監修、有薗正俊著の本、「よくわかる 強迫性障害」(2010年発行)の「発症の背景 大きな出来事やストレスがきっかけになることも」(P46)にも次に示す記述(『 』内)があります。『強迫性障害を発症する原因はストレスだけではありませんが、発症した人のそれまでの生活歴を調べると、なんらかのストレスに長時間さらされたという人が多くいます。また、火事や交通事故のような、恐ろしい体験をしたあとに発症する人もいます。そして、強迫性障害をすでに発症している人が、大きなストレスとなる出来事を経験すると、症状が悪化することもあります。』 b) パニック障害(パニック症)発症のリスク因子としてのストレスについては、他の拙エントリのここを参照して下さい。

一方、強迫性障害におけるピゴットの分類について、北西憲二、久保田幹子編の本、「森田療法で読む 強迫性障害 その理解と治し方」(2015年発行)の Ⅰ 森田療法で読む「強迫性障害」 の「2 強迫性障害の病理と治療選択」より複数部分を以下に引用します。最初に「強迫性障害のサブタイプ」における記述の一部(P37)を以下に引用します。ちなみに「森田療法」については、他の拙エントリのリンク集を参照して下さい。

強迫性障害のサブタイプ
薬物や精神療法への反応性を見ても、強迫性障害は必ずしも均質なグループではないことが推測される。強迫性障害に共存する精神障害についての研究や強迫スペクトラム障害の提唱にも触発されて、強迫性障害にいくつかのサブタイプ(亜型)を区別しようとする議論も活発になってきた。たとえばピゴットらは、強迫性障害を以下の三つのサブタイプに分類している。①危険に対する評価の変異した群=不安や疑惑とそれを打ち消すための反復的行為を特徴とする、②不完全/習慣スペクトラム群=不全感が強迫行為の動因であり、行為を妨げられたときには緊張や不安が生じる、③精神病スペクトラム群=強迫症状の合理性について確信を有し、洞察不良であることを特徴とする。(後略)

注:i) この引用部の著者は中村敬です。 ii) 引用中の「強迫スペクトラム障害」については、WEBページ強迫症 - 脳科学辞典の「併発症」項を参照して下さい。

加えて、本の Ⅰ 森田療法で読む「強迫性障害」 の「症例のアセスメントと治療方針の選択」における記述の一部(P47~48)を次に引用します。

(前略)(4)強迫性障害のサブタイプ
ピゴットの分類のうち、「危険に対する評価の変異した群」は、先にも述べたように症状の自我異質性、非合理性の洞察、症状への抵抗性といった神経症的特徴をもっとも保有しており、症状は不安、恐怖が主たる動因と考えられる。またこうしたタイプの背景には神経質性格傾向やニューロティシズムといった不安感受性の高いパーソナリティの存在が推測される。このようなサブタイプにはSSRIや三環系抗うつ薬の一種であるクロミプラミンなどの薬物療法とともに、精神療法的アプローチも奏功しやすい。
次に「不完全/習慣スペクトラム群」は、「危険に対する評価の変異した群」のように不安、恐怖が症状形成の動因になるわけではなく、衝動行為に近い症状であるだけに、精神療法への動機づけがより難しい。こうしたタイプには、後にも述べるように行動の次元できめ細やかな助言が必要となる。
最後の「精神病スペクトラム群」は、もっとも難治性のサブタイプである。このタイプは非合理性の洞察や症状への抵抗性に乏しく、常同的色彩を帯びているため、洞察志向的精神療法はもちろんのこと、森田療法や行動療法であっても単独の適用は困難である。(後略)

注:i) この引用部の著者は中村敬です。 ii) 引用中の「ニューロティシズム」(neuroticism)は「神経症的傾向」と訳されるようです。 iii) 引用中の「SSRI」(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)及び「クロミプラミン」についてはWEBページ強迫症 - 脳科学辞典の「併発症」項を参照して下さい。

さらに、「精神病スペクトラム群」の補足説明として、上記「症例のアセスメントと治療方針の選択」における記述の一部(P47~48)を次に引用します。

(前略)③「精神病スペクトラム群」のサブタイプは、統合失調症、統合失調型パーソナリティ障害や妄想性パーソナリティ障害のような重症のパーソナリティ障害が共存することが多い。強迫症状の合理性について確信を有し、洞察不良であることが特徴なだけに、森田療法や行動療法のように非探索的な精神療法であっても適用はかなり難しい。(後略)

注:i) この引用部の著者は中村敬です。 ii) 引用中の「統合失調症」については、他の拙エントリのリンク集を参照して下さい。 iii) 引用中の「統合失調型パーソナリティ障害」及び「妄想性パーソナリティ障害」は次のWEBページで簡単に紹介されているので、参照すると良いかもしれません。「パーソナリティ障害 - 脳科学辞典」 加えて、「妄想性パーソナリティ障害」に関連する「妄想性障害」については、リンク集も参照して下さい。

ちなみに、森田療法による強迫性障害の特徴について、本の Ⅰ 森田療法で読む「強迫性障害」 の「強迫性障害に対する精神療法」における記述の一部(P43)を次に引用します。

(前略)それでは森田療法による強迫性障害の治療とはどのようなものだろうか。精神交互作用や思想の矛盾といった「とらわれ」の心理機制を打ち破ることが森田療法の基本方向であり、それは端的に「あるがまま」の心的態度を獲得することである。「あるがまま」とは、不安を排除しようとするはからいをやめて、自己の感情をそのままにおくことを意味する。それと同時に、不安の裏にある自己本来の欲望(生の欲望)を建設的な行動に発揮していくことでもある。そのような建設的な行動は結果として恐れていた状況や対象への曝露をもたらすが、森田療法では症状に関連した行動のみに焦点をおかず、生活全体の充実を目指し、症状からの脱焦点化を図るところに認知行動療法との相違がある。(後略)

注:i) 引用中の「精神交互作用」と同様な意味である「精神相互作用」については、他の拙エントリのリンク集を参照して下さい。 ii) 引用中の「森田療法」については、他の拙エントリのリンク集を参照して下さい。

一方、強迫性障害発達障害との関連について、上島国利監修、有薗正俊著の本、「よくわかる 強迫性障害」(2010年発行)の「関連する病気 発達障害を持つ人が併発することも」 における記述の一部(P50)を次に引用します。

(前略)また、発達障害の特性の中には、強迫性障害の特性と似ているものがあり、そのため、強迫性障害になりやすい人がいます。
たとえば、もともと多動性がある人は、じっとしていることが苦手なので、繰り返しの強迫行為にはまりやすいのです。(中略)

●広汎性発達障害の特性のうち強迫性障害に関連するもの
・こだわりが強い
・自分なりのルールをつくると安心できる
・同一性保持(同じものばかりを好む、位置、場所などが同じでないと嫌がるなど)
・特定のものへの感覚が鋭い
・言葉を字義どおりに受け取る
・会話が一方通行
・他人とのコミュニケーションや理解に、特徴的なかたよりがある。
・集団での活動・交流が苦手

注:i) 引用中の「発達障害」、「広汎性発達障害」については、他の拙エントリを参照して下さい。 ii) 引用中の「多動性」については、例えば a) 他の拙エントリのここ b) WEBページ「注意欠如・多動性障害 - 脳科学辞典」の「診断・鑑別診断」項 をそれぞれ参照して下さい。

目次に戻る

≪余談7≫論文・資料紹介

最初に、a) プラセボ、ノセボ、条件反射、MCS に関するエントリ例を次の①~⑥に示します。 b) ストレスと喘息の関係例を示すWEBページを次の⑦に示します。ちなみに、引用はしませんが、化学物質過敏状態とノセボ(ノシーボ)効果との関係については、マニュアル「科学的根拠に基づくシックハウス症候群に関する相談マニュアル(改訂新版)」の「3.4.4. 化学物質過敏状態が引き起こされるメカニズム 」項(P53)も参照して下さい。一方、これらのリンクに関連する i) 「条件付け」については、目次や他の拙エントリを対象としたリンク集をそれぞれ参照して下さい。 ii) 「意識」については、次のWEBページを参照して下さい。 「意識 - 脳科学辞典

① 『メモ「意識的な認識によらないプラセボ・ノセボの可能性」 - 忘却からの帰還
② 「実体化したノセボは容易に消せるものなのだろうか? - 忘却からの帰還*32
③ 「ノセボ... - 忘却からの帰還
④ 「プラセボ ノセボ 条件反射 MCS - 忘却からの帰還
⑤ 「化学療法の条件付けのノセボの威力には驚く他ない - 忘却からの帰還*33
⑥ 「ノセボ効果:病気のことを考えると病気になる - 食品安全情報blog
⑦ 「ガイドライン 成人気管支喘息」の「4. ストレスと喘息」

加えて、条件付け、ノセボ効果及び/又はサイバー心気症に関連する複数の論文要旨を以下に紹介します。これらの論文には、メディアの環境汚染についての警告が症状に与える影響に関連する論文も含みます。ちなみに、電磁波過敏症におけるノセボ効果については他の拙エントリのここを参照して下さい。

(1) Pavlovian conditioning and multiple chemical sensitivity.[拙訳]パブロフの条件付けと MCS

Pavlovian conditioning processes may contribute to some symptoms of multiple chemical sensitivity (MCS). This review summarizes the potential relevance of the literature on conditional taste and olfactory aversions, conditional sensitization, and conditional immunomodulation to understanding MCS. A conditioning-based perspective on MCS suggests novel research and treatment strategies.


[拙訳]
パブロフの条件付けのプロセスは、多種化学物質過敏状態(MCS)のいくつかの症状に寄与するかもしれない。このレビューでは、MCS を理解するための、条件付けを引き起こす味と嗅覚嫌悪、条件付けの感作及び条件付けの免疫調節に関する文献の潜在的な関連性をまとめた。 MCS に関する条件付けに基づいた視点は、新規の研究と治療戦略を示唆する。

(2) Multiple chemical sensitivity as a conditional response.[拙訳]条件反応としての MCS

Pavlovian conditioning may contribute to some cases of multiple chemical sensitivity (MCS). On the basis of the conditioning analysis, environmental stimuli (especially olfactory cues) present at the time of a toxicant overdose become associated with the toxicant and elicit aversive conditional responses. Similar associations have been reported in patients receiving chemotherapy, and the literature on such 'pretreatment nausea' in cancer patients is relevant to understanding the role of conditioning in MCS. Evaluation of the contribution of conditioning to MCS has been complicated by confounding interpretations that emphasize conditional responses with interpretations which emphasize the psychiatric status of the patient. Appreciation of the contribution of Pavlovian conditioning to MCS will lead to a better understanding of this complex disorder.


[拙訳]
パブロフの条件付けは、多種化学物質過敏状態(MCS)のいくつかのケースの原因となるかもしれない。条件付け分析に基づき、毒物の過剰摂取時に存在する環境刺激(特に嗅覚)は毒物と関連づけられ、嫌悪条件反応を誘発する。化学療法を受けた患者おいて類似の関連が報告されてきた。そして、がん患者における「治療前の吐き気」に関する文献は、MCS における条件付けの役割の理解に関連する。MCS の条件付けへの寄与の評価は、患者の精神状態を強調する解釈による条件反応を強調する混乱させる解釈により複雑化している。MCS のパブロフの条件付けの寄与の理解は、この複雑な疾患のより良い理解につながる。

注:i) 引用中の「治療前の吐き気」は化学療法における抗がん剤投与前の吐き気のようです。ちなみに、化学療法の条件付けのノセボの威力についてのエントリはのリンク先を参照して下さい。 ii) MCS 又はシックハウス症候群と条件付けとの関係についての他の引用例は、他の拙エントリのここ及びここを参照して下さい。

(3) A Neural Mechanism for Nonconscious Activation of Conditioned Placebo and Nocebo Responses.[拙訳]条件付けられたプラセボ及びノセボ反応の無意識活性化に対する神経メカニズム

Fundamental aspects of human behavior operate outside of conscious awareness. Yet, theories of conditioned responses in humans, such as placebo and nocebo effects on pain, have a strong emphasis on conscious recognition of contextual cues that trigger the response. Here, we investigated the neural pathways involved in nonconscious activation of conditioned pain responses, using functional magnetic resonance imaging in healthy participants. Nonconscious compared with conscious activation of conditioned placebo analgesia was associated with increased activation of the orbitofrontal cortex, a structure with direct connections to affective brain regions and basic reward processing. During nonconscious nocebo, there was increased activation of the thalamus, amygdala, and hippocampus. In contrast to previous assumptions about conditioning in humans, our results show that conditioned pain responses can be elicited independently of conscious awareness and our results suggest a hierarchical activation of neural pathways for nonconscious and conscious conditioned responses. Demonstrating that the human brain has a nonconscious mechanism for responding to conditioned cues has major implications for the role of associative learning in behavioral medicine and psychiatry. Our results may also open up for novel approaches to translational animal-to-human research since human consciousness and animal cognition is an inherent paradox in all behavioral science.


[拙訳]
人間の行動の基本的な側面は、意識的な認識外で作動する。痛みのプラセボ及びノセボ効果等のヒトにおける条件反応の理論は依然として、反応を誘発する文脈的な手がかりの意識的な認知に関して大きく強調している。ここで、健康な被験者における機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いた痛みの条件反応の無意識活性化に関わる神経路を我々は調査した。意識活性化と比較した条件プラセボ無痛覚の無意識活性化は、感情の脳領域と基本報酬処理への直接的な結合を伴う構造の、眼窩前頭皮質の増加した活性化に関連していた。無意識のノセボの間、視床扁桃体及び海馬の活性化が増加した。ヒトにおける条件付けについての従来の仮説とは対照的に、我々の結果は、痛みの条件反応は意識的な認識とは独立して誘発しうることを示し、及び無意識並びに意識条件反応の神経路の階層的な活性化を示唆する。ヒトの脳は条件刺激への反応の無意識的なメカニズムを有することの実証は、行動医学と精神医学における連合学習の役割に​​大きな影響を持つ。全ての行動科学において、ヒトの意識と動物の認識は固有のパラドックスなので、我々の結果はまた、動物からヒトへの橋渡し研究への新たなアプローチも開くかもしれない。

注:i) この引用を読む前に他の拙エントリのここを読んだ方が良いかもしれません。 ii) この論文に関連するかもしれないエントリはのリンク先を参照して下さい。 iii) 引用中の「意識」については、次のWEBページを参照して下さい。「意識 - 脳科学辞典」 iv) 引用中の「機能的磁気共鳴画像法(fMRI)」については、例えば次の pdfファイルを参照して下さい。「機能的磁気共鳴画像法を用いた脳機能計測方法とその応用

(4) Emotion-specific nocebo effects: an fMRI study.[拙訳]情動に特異的なノセボ効果:機能的磁気共鳴画像法の研究

The neurobiological mechanisms of nocebos are still poorly understood. Thirty-eight women participated in a 'smell study' using functional magnetic resonance imaging. They were presented with an odorless stimulus (distilled water) together with the verbal suggestion that this fluid has an aversive odor which enhances disgust feelings. The nocebo was presented while the participants viewed disgusting, fear-inducing, and neutral images. Participants' affective and neuronal responses during nocebo administration were compared with those in a control condition without nocebo. Twenty-nine women (76%) reported perceiving a slightly unpleasant and arousing odor. These 'nocebo responders' experienced increased disgust during the presentation of disgusting images in combination with the nocebo and showed enhanced left orbitofrontal cortex (OFC) activation. It has been suggested that the OFC is involved in the generation of placebo/nocebo-related expectations and appraisals. This region showed increased functional connectivity with areas involved in interoception (insula), autobiographical memories (hippocampus), and odor imagery (piriform cortex) during nocebo administration. The nocebo-induced change in brain activation was restricted to the disgust condition. Implications for psychotherapy are discussed.


[拙訳]ノセボの神経生物学的メカニズムはまだほとんど理解されていない。38人の女性が機能的磁気共鳴画像法を用いた「におい研究」に参加した。この液体が嫌な気持ちを高める嫌悪臭を有するという口頭での示唆を伴って、彼女らに無臭の刺激(蒸留水)が提示された。参加者が、嫌悪、恐怖を誘発する、中立的な画像を見ている間にノセボが提示された。ノセボ適用中の参加者の感情的及び神経的な応答はノセボ無しの対象条件のそれらと比較された。29人の女性(76%)はわずかに不快及び喚起する臭気を知覚することを報告した。これらの「ノセボ応答者」はノセボと併用した嫌な画像の提示中に嫌悪感の増加を経験し、そして左眼窩前頭皮質(OFC)活性化の増強を示した。OFC はプラセボ/ノセボ関連の期待と評価の生成に関与していることが示唆されている。この領域は、ノセボ適用中の内受容感覚(島)、自伝的記憶(海馬)及び臭いの心象(梨状皮質)において関与する領域との機能的結合の増加を示した。脳の活性化におけるノセボに引き起こされた変化は嫌悪状態に限られた。心理療法のための含意が議論された。

注:i) 引用中の「機能的磁気共鳴画像法」については、例えば次の資料を参照して下さい。 「機能的磁気共鳴画像法を用いた脳機能計測方法とその応用」 ii) 引用中の「梨状皮質」に関連する「嗅内野」については次のWEBページを参照して下さい。 「嗅内野 - 脳科学辞典」 iii) 引用中の「自伝的記憶」に関連する「エピソード記憶」については次のWEBページを参照して下さい。 「エピソード記憶 - 脳科学辞典」 iv) 引用中の「眼窩前頭皮質」に関連する「前頭眼窩野」については次のWEBページを参照して下さい。 「前頭眼窩野 - 脳科学辞典」 v) 引用中の「島」については次のWEBページを参照して下さい。 「島 - 脳科学辞典」 vi) 引用中の「内受容感覚」については他の拙エントリのここここを参照すると良いかもしれません。 vii) 標記「情動」については、WEBページ「情動 - 脳科学辞典」及びメンタライジングの視点から他の拙エントリのここを参照して下さい。 viii) この要旨で記述されている「臭い(嗅覚)における嫌悪感を伴うノセボ効果」に関連する「嗅覚嫌悪条件づけ」についてはここを参照して下さい。 ix) 化学物質過敏状態が引き起こされるメカニズムにおける「臭い刺激によるノシーボ効果」については、他の拙エントリのここを参照して下さい。 x) ノセボに関する引用中の「嫌悪臭」に関連するかもしれない「認知的要因が特定悪臭物質の快不快に及ぼす影響」については次の資料を参照して下さい。 「認知的要因が特定悪臭物質の快不快に及ぼす影響:臭気順応計測システムによる計測」の「4. 考察」項

(5) Media warnings about environmental pollution facilitate the acquisition of symptoms in response to chemical substances.[拙訳]環境汚染についてのメディアの警告は、化学物質への応答に対する症状の獲得を促進する

OBJECTIVE:
Previous studies showed that somatic symptoms can be acquired in response to chemical substances using an associative learning paradigm, but only when the substance was foul smelling and not when it smelled pleasant. In this study, we investigated whether warnings about environmental pollution would facilitate acquiring symptoms, regardless of the pleasantness of the smell.

METHOD:
One group received prior information framing the study in the context of the rapidly increasing chemical pollution of our environment. Another group received no prior information. Conditional odor stimuli (CS) were diluted ammonia (foul-smelling) and niaouli (neutral-positive smelling); the unconditional stimulus (UCS) was 10% CO2-enriched air. Each subject breathed one odor mixed with CO2 and a control odor mixed with air in 80-sec breathing trials. The type of odor mixed with CO2 was counterbalanced across participants. Next, the same breathing trials were administered without CO2. Breathing behavior was measured during each trial; subjective symptoms were assessed after each trial.

RESULTS:
Only participants who had been given warnings about environmental pollution reported more symptoms to the odor that had previously been associated with CO2, compared with the control odor. This was so for both the foul- and the pleasant-smelling odor. Symptom learning did not occur in the group that did not receive warnings. The elevated symptom level could not be accounted for by altered respiratory behavior, nor by experimental demand effects.

CONCLUSIONS:
Raising environmental awareness through warnings about chemical pollution facilitates learning of subjective health symptoms in response to chemical substances.


[拙訳]
目的:
これまでの研究では、連合学習のパラダイムを用い、化学物質に応答して、身体症状を獲得しうることが示されたが、物質が悪臭であったかつ快適なニオイでなかった時のみであった。本研究では、ニオイの快適さに関わらず、環境汚染に関する警告が症状の獲得を促進するであろうかどうかを調査した。

方法:
片方のグループは、環境の化学物質汚染の急速な増加の文脈における研究で構成される情報を、前もって受け取った。もう片方のグループは、前もった情報を受け取らなかった。条件付けの臭い刺激(CS)は薄めたアンモニア(悪臭)及びニアウリ(中立的-快適なニオイ)で、一方、条件付けでない刺激(USC)は 10% CO2 の富化空気であった。それぞれの被験者は 80 秒間呼吸試験において、CO2 と混合された片方の臭気と空気と混合された対照となるもう片方の臭気を吸った。CO2 と混ぜた臭気の種類は被験者全体で釣り合わせた。次に、同じ呼吸試験を CO2 なしで実施した。呼吸行動はそれぞれの試験中に測定され、主観的な症状はそれぞれの試験後に評価された。

結果:
環境汚染についての警告を受けた参加者だけが、前もった CO2 と関連していた臭気に対し、対照となる臭気と比較してより多くの症状を報告した。これは、悪臭と快適なニオイの両方であった。症状の学習は、警告を受けていないグループでは発生しなかった。症状レベルの上昇は、呼吸行動の変化や実験的な要求効果によって説明できなかった。

結論:
化学物質の汚染についての警告を通じて環境意識を高めることは、化学物質に反応した主観的な健康症状の学習を促進する。

注:i) 引用中の「パラダイム」については、例えば次のWEBページを参照して下さい。『10分でわかる「パラダイム」の意味と使い方』 ii) 引用中の「CO2」は二酸化炭素のことです。 iii) 悪臭に関する標記「環境汚染についてのメディアの警告」に関連するかもしれない「臭気公害現場において,臭気に対する評価が風評やマスコミの影響を受けやすいこと」については次の資料を参照して下さい。 「認知的要因が特定悪臭物質の快不快に及ぼす影響:臭気順応計測システムによる計測」の「4. 考察」項 iv) 電磁波における同様な知見、すなわち、メデイア報道が電磁波過敏症の進行を促進することの報告を含む電磁波過敏症とノセボ効果の関係を示すものについては、他の拙エントリのここを参照して下さい。

(6) Cyberchondria and intolerance of uncertainty: examining when individuals experience health anxiety in response to Internet searches for medical information.[拙訳]サイバー心気症及び不確実性への不耐性:医療情報のインターネット検索に応答した健康不安を個々人が体験した時の調査

Individuals frequently use the Internet to search for medical information. However, for some individuals, searching for medical information on the Internet is associated with an exacerbation of health anxiety. Researchers have termed this phenomenon as cyberchondria. The present research sought to shed further light onto the phenomenology of cyberchondria. In particular, the moderating effect of intolerance of uncertainty (IU) on the relationship between the frequency of Internet searches for medical information and health anxiety was examined using a large sample of medically healthy community adults located in the United States (N=512). The purported moderating effect of IU was supported. More specifically, the relationship between the frequency of Internet searches for medical information and health anxiety grew increasingly stronger as IU increased. This moderating effect of IU was not attributable to general distress. These results suggest that IU is important for better understanding the exacerbation of health anxiety in response to Internet searches for medical information. Conceptual and therapeutic implications of these results are discussed.


[拙訳]
個々人はしばしばインターネットを使用して医療情報を検索する。しかしながら、一部の個々人にとって、インターネット上で医療情報を検索することは、健康不安の悪化に関連する。研究者はこの現象をサイバー心気症と名付けた。本研究では、サイバーコンドリアの現象学にさらなる光を当てようと努めた。特に、不確実性への不耐性(IU)が、医療情報のインターネット検索の頻度と健康不安の関係に及ぼす効果を、米国における医学的に健全なコミュニティの大人の大規模サンプル(N = 512)を用いて調査した。 IU の調整効果と称されるものが支持された。より具体的には、IU が増加するにつれて、医療情報のインターネット検索の頻度と健康不安の関係がますます強くなった。 IU のこの適度な効果は、一般的な苦痛に起因するものではなかった。これらの結果は、医療情報のインターネット検索に応答した健康不安の悪化のより良い理解に、IU が重要であることを示唆する。これらの結果の概念的及び治療的含意が議論された。

注:i) 標記「サイバー心気症」は、自分の健康状態が不安となり、多くのネット上の医療情報を検索し、根拠が乏しい情報であっても自分の症状に当てはめて、さらに不安に陥ってしまうような状態のようです。ちなみに、「心気症」については、例えば次のWEBページを参照して下さい。 「身体表現性障害 -脳科学辞典」の「心気症」項 ii) 引用中の「Intolerance of Uncertainty」については、例えば次の論文(英語)を参照して下さい。 「Intolerance of Uncertainty: A Common Factor in the Treatment of Emotional Disorders*34

(7) Cyberchondria: Parsing Health Anxiety From Online Behavior.[拙訳]サイバー心気症:オンライン上の行動からの健康不安の解析

BACKGROUND:
Individuals with questions about their health often turn to the Internet for information about their symptoms, but the degree to which health anxiety is related to online checking, and clinical variables, remains unclear. The clinical profiles of highly anxious Internet checkers, and the relationship to checking behavior itself, have not previously been reported.

OBJECTIVE:
In this article, we test the hypothesis, derived from cognitive-behavioral models, that individuals with higher levels of illness anxiety would recall having experienced worsening anxiety after reassurance-seeking on the Internet.

METHOD:
Data from 731 volunteers who endorsed engaging in online symptom-searching were collected using an online questionnaire. Severity of health anxiety was assessed with the Whiteley Index, functional impairment with the Sheehan Disability Scale, and distress recall during and after searching with a modified version of the Clinician's Global Impairment scale. Multiple regression analyses were conducted to determine variables contributing to distress during and after Internet checking.

RESULTS:
Severity of illness anxiety on the Whiteley Index was the strongest predictor of increase in anxiety associated with, and consequent to, online symptom-searching. Individuals with high illness anxiety recalled feeling worse after online symptom-checking, whereas those with low illness anxiety recalled relief. Longer-duration online health-related use was associated with increased functional impairment, less education, and increased anxiety during and after checking.

CONCLUSION:
Because individuals with moderate-high levels of illness anxiety recall experiencing more anxiety during and after searching, such searching may be detrimental to their health. If replicated in controlled experimental settings, this would suggest that individuals with illness anxiety should be advised to avoid using the Internet for illness-related information.


[拙訳]
背景:
健康に対する質問を有する個々人は、しばしば症状についての情報を得るためにインターネットに向かうが、健康の不安がオンラインチェックに関連する程度、及び臨床的変数は不明なままである。非常に不安なインターネットチェッカーの臨床プロファイル、及び検査行動自体との関係は、以前には報告されていない。

目的:
この論説では、認知行動モデルから導かれた仮説、より高いレベルの病気不安を有する個々人がインターネット上で安心さがしを行った後に不安を悪化させたことを想起するだろうということ、を我々は検証する。

方法:
オンラインのアンケートを用いてオンラインの症状検索に従事することを是認した731人のボランティアからのデータを収集した。健康不安の深刻さはホワイトリー指数、機能障害は Sheehan Disability Scale、検索中及び検索後の苦痛の想起は Clinician's Global Impairment scale で評価した。インターネットチェック中及びチェック後の苦痛に寄与する変数を決定するために重回帰分析が実施された。

結果:
ホワイトリー指数上の病気不安の深刻さがオンライン症状検索に関連し、その結果として生じる不安における増加の最も強い予測因子であった。低い健康不安を有する個々人は、安堵を想起した一方、高い健康不安を有する個々人は、オンラインの症状検索後により悪いと感じることを想起した。長く続くオンラインでの健康に関する使用は、チェック中及びチェック後の機能障害の増加、より少ない教育、及び不安の増加に関連した。

結論:
中-高レベルの病気不安を有する個々人は、検索中及び検索後により大きな不安の体験を想起するので、このような検索は彼らの健康にとって有害かもしれない。制御された実験設定で繰り返された場合には、病気不安を有する個々人は、病気関連情報のためのインターネット使用を避けることをアドバイスすべきであることが示唆されるであろう。

注:i) 標記「サイバー心気症」は、自分の健康状態が不安となり、多くのネット上の医療情報を検索し、根拠が乏しい情報であっても自分の症状に当てはめて、さらに不安に陥ってしまうような状態のようです。 ii) 引用中の「安心さがし」については、例えば次のWEBページを参照して下さい。 『第10回 うつ症状と「安心さがし」・「ダメ出し要求」行動

さらに、「嗅覚嫌悪条件づけ」を主とした日本語の資料を次に紹介します。*35
① WEBページ:「行動分析学との遭遇(5)
② pdfファイル:「低用量の有機溶剤を条件刺激とする嗅覚嫌悪条件づけ手続き

ちなみに、a) 強迫性障害強迫症、OCD)[他の拙エントリのリンク集参照(用語:「強迫性障害強迫症)、社交不安障害」)]と嫌悪条件づけの関連について、資料「強迫性障害の臨床像・治療・予後 ――難治例の判定,特徴,そして対応――」の はじめに の「1.OCD の病像」における記述の一部を次に引用します。 b) 加えて、強迫症の脳病態における1つの仮説として OCD-loop 仮説があります。これについて、次のWEBページの「OCDの脳機能的病態」項における記述の一部を以下に引用します。 「強迫症 - 脳科学辞典」。 c) 強迫症状の誘発における機能神経画像法の研究のメタアナリシスについて、論文「Provocation of obsessive-compulsive symptoms: a quantitative voxel-based meta-analysis of functional neuroimaging studies.[拙訳]強迫症状の誘発:機能的神経画像法の研究の定量的なボクセルベースのメタアナリシス」の要旨を以下に引用します。

1.OCD の病像(中略)

一方,強迫行為や回避,巻き込みなどの行動的反応(安全探求行動)は,きっかけとなった嫌悪(恐怖)刺激の脅威,あるいは重大性をより強く意識させ,反応閾値が下がるとともに,それらの行動の合理化,必要性の正当化によって,さらにくり返されるという悪循環に陥ってしまう.このように,他の不安障害と同様の病的不安の関与,認知と行動の相互作用,強固な恐怖条件付けや消去不全などが,典型的 OCD 患者では観察される25).

注:i) 引用中の文献番号「25)」は、次の論文です。「Obsessive-compulsive disorder: beyond segregated cortico-striatal pathways.」 ii) 引用中の「恐怖条件付け」については、次のWEBページを参照して下さい。「恐怖条件付け - 脳科学辞典」 iii) 引用中の「恐怖条件付け」に関連するかもしれない「恐怖反応」については、例えば、次のWEBページを参照して下さい。「行動分析学との遭遇(3)

OCDの脳機能的病態(中略)

OCDの脳病態に関しては、いくつかの仮説が立てられているが、その中に、Saxenaら[27]による前頭葉—皮質下回路に関する神経ネットワーク仮説(OCD-loop仮説)がある。これによれば、眼窩前頭前皮質(OFC)を主とした前頭葉領域の活性化に伴い、それらの領域からの入力を間接経路(背側前頭前野線条体淡蒼球視床下核淡蒼球視床—皮質)と直接経路(前頭眼窩面—線条体淡蒼球視床—皮質)に振り分ける尾状核において制御障害が生じ(ブレイン・ロック)、視床への抑制性の制御が弱まる。その結果視床と前頭眼窩面の間でさらなる相互活性が生じ、強迫症状が維持、増幅されるという。これらの領域の機能的役割を考えると、社会的に適切な行動をとるための検出機能をもつ眼窩前頭前皮質、行動のモニタリングと調節に主要な役割を果たす前帯状皮質 (ACC)、辺縁系前頭葉からの入力を受けるゲート機能を有する尾状核、入力された情報に対するフィルター機能をもち皮質への投射を行う視床、といったように各々の部位が連携しながら円滑な行動の遂行を担っている[26]。その後の検証によってOCD-loopにはさらに広汎な脳部位の関与を考慮する必要が出てきている[25](図3)。

注:i) 引用中の「(図3)」の引用は省略しています。一次情報である上記WEBページを参照して下さい。 ii) 引用中の文献番号「[27]」、「[25]」はそれぞれ次の論文です。「Neuroimaging and frontal-subcortical circuitry in obsessive-compulsive disorder.」、「Obsessive-compulsive disorder: beyond segregated cortico-striatal pathways.」(ただし、「[26]」については、一次情報である上記WEBページを参照して下さい。)

次の引用は標記メタアナリシスの要旨です。

OBJECTIVE:
Recent functional magnetic resonance imaging (fMRI) and positron emission tomography (PET) studies based on the symptom provocation paradigm have explored neural correlates of the cognitive and emotional processes associated with the emergence of obsessive-compulsive disorder (OCD) symptoms. Although most studies showed the involvement of cortico-subcortical loops originating in the orbitofrontal cortex and the anterior cingulate cortex, an increased activity within numerous other regions of the brain has inconsistently been reported across studies. To provide a quantitative estimation of the cerebral activation patterns related to the performance of the symptom provocation task by OCD patients, we conducted a voxel-based meta-analysis.

METHODS:
We searched the PubMed and MEDLINE databases for studies that used fMRI and PET and that were based on the symptom provocation paradigm. We entered data into a paradigm-driven activation likelihood estimation meta-analysis.

RESULTS:
We found significant likelihoods of activation in cortical and subcortical regions of the orbitofrontal and anterior cingulate loops. The left dorsal frontoparietal network, including the dorsolateral prefrontal cortex and precuneus, and the left superior temporal gyrus also demonstrated significant likelihoods of activation.

CONCLUSION:
Consistent results across functional neuroimaging studies suggest that the orbitofrontal and anterior cingulate cortices are involved in the mediation of obsessive-compulsive symptoms. Based on recent literature, we suggest that activations within the dorsal frontoparietal network might be related to patients' efforts to resist the obsessive processes induced by the provocation task. Further research should elucidate the specific neural correlates of the various cognitive and emotional functions altered in OCD.


[拙訳]
目的:
症状誘発パラダイムに基づく最近の機能的磁気共鳴画像法(fMRI)及び陽電子断層撮像法(PET)の研究は、強迫性障害(OCD)症状の出現に関連する認知プロセスおよび情動プロセスの神経相関を探究している。大部分の研究は、眼窩前頭皮質及び前帯状皮質を端緒とする皮質-皮質下ループの関与を示したが、脳の他の多くの領域内での活性の増加は、研究を通して一貫して報告されていない。 OCD 患者による症状誘発課題の実行に関連する脳活性化パターンの定量的評価を提供するために、我々はボクセルベースのメタアナリシスを実施した。

方法:
我々は、PubMed と MEDLINE データベースを検索したを検索し、fMRI と PET を使用し、症状挑発パラダイムに基づいた研究を捜した。我々はデータをパラダイム駆動の活性化可能性評価のメタアナリシスにコンピュータ入力した。

結果:
眼窩前頭及び前帯状ループの皮質及び皮質下領域における活性化の有意な可能性を我々は見出した。背側前頭前皮質及び楔前部を含む左背側前頭頭頂ネットワーク、そして左上頭側回も活性化の有意な可能性を示した。

結論:
機能的神経画像法研究を跨いだ一貫した結果は、眼窩前頭皮質及び前帯状皮質強迫症状の媒介に関与していることを示唆する。近年の文献に基づき、背側前頭頭頂ネットワーク内の活性化は、誘発課題によって引き起こされる強迫的な過程に抵抗する患者の努力にひょっとして関連していることを我々は示唆する。さらなる研究により、OCD において変化した様々な認知機能及び情動機能の特異的な神経相関を明瞭にすべきである。

注:i) 引用中の「機能的磁気共鳴画像法」及び「ボクセル」については、例えば次の pdfファイルを参照して下さい。「機能的磁気共鳴画像法を用いた脳機能計測方法とその応用」 ii) 引用中の「陽電子断層撮像法」については、次のWEBページを参照して下さい。 「陽電子断層撮像法 - 脳科学辞典」 iii) 引用中の「眼窩前頭皮質」に関連する「前頭眼窩野」については、次のWEBページを参照して下さい。 「前頭眼窩野 - 脳科学辞典」 iv) 引用中の「前帯状皮質」については、次のWEBページを参照して下さい。 「前帯状皮質 - 脳科学辞典」 v) 引用中の「強迫性障害」に相当する「強迫症」については、次のWEBページを参照して下さい。 「強迫症 - 脳科学辞典」 vi) 引用中の「情動」については、次のWEBページを参照して下さい。「情動 - 脳科学辞典」 加えてメンタライジングの視点から他の拙エントリのここを参照して下さい。

目次に戻る

=====

注:本エントリは仮公開です。予告のない改訂(削除、修正、追加、公開日や修飾の変更等)を行うことがあります。

目次に戻る

*1:注:最初に「プラセボ、ノセボ、条件反射」に関するエントリ、WEBページ等を紹介しています。加えて、「嗅覚嫌悪条件づけ」についてもここで紹介しています。リンク集を参照して下さい。

*2:他の拙エントリにおいてはここを参照して下さい

*3:馴化はある刺激を繰り返し与えているうちに、反応が徐々に見られなくなっていくことです。他の拙エントリにおいては、ここここここここ及びここを参照して下さい

*4:ちなみに、『「とらわれ」の病』については次のWEBページを参照して下さい。 『「とらわれ」の病

*5:ちなみに、OCD については、他の拙エントリのリンク集(用語:「強迫性障害強迫症)、社交不安障害」)を参照して下さい。一方、≪余談6≫の不潔恐怖・洗浄強迫も、OCD に関連しています。

*6:注:本エントリでは、条件付け及びトラウマを負ったことによるフラッシュバックを含む情動学習について記述するものの、用語「条件付け」が有名であり、引用の都合(例えばここ参照)もあるので、本エントリにおいては情動学習ではなく「条件付け」を使用します。加えて、この条件付けには「嗅覚嫌悪条件づけ」(リンク集参照)を含みます。

*7:ちなみに、化学物質過敏症又は本態性環境不耐症におけるトラウマへの言及についてはここを参照して下さい。

*8:「前書き」における最初の脚注参照

*9:一方、後者の中毒やアレルギーに対する予防法の例としては、回避(注:アレルギー〔ここ参照〕の場合は、アレルゲンからの回避)が挙げれると本エントリ作者は考えます。さらに、MCS又は化学物質過敏症の一般的な対処法とされるものとしては、例えば、超微量の原因化学物質とされるものからの回避及びこれの体外への排出が挙げれるかもしれません。ただし、これらは本エントリの範囲外です。一方、自閉スペクトラム症(他の拙エントリ参照)における嗅覚過敏(他の拙エントリの「※2 [ご参考1]」項参照)への対処法について、過去に本エントリ作者は調査したものの、有効な対処法を示した資料は未だ発見できていないので、これも他の感覚過敏を含めて本エントリの範囲外です。例えば、熊谷高幸著の本、「自閉症と感覚過敏 特有な世界はなぜ生まれ、どう支援すべきか?」(2017年発行)を読んでも、嗅覚過敏に関する記述は少なく、これに対する対象法を見つけることは、本エントリ作者にはできませんでした。

*10:臨床環境医の方々も、化学物質過敏症の診断のゴールド・スタンダードは負荷(誘発)試験と考えているようです。他の拙エントリの[ご参考2]を参照して下さい。

*11:「前書き」における最初の脚注参照

*12:DSM-5(米国精神医学会(APA)の精神疾患の診断分類、改訂第5版)による分類を想定しています。「不安症 - 脳科学辞典」を参照して下さい。

*13:ある刺激を繰り返し与えているうちに、反応が徐々に見られなくなっていくこと

*14:曝露反応妨害法については、例えば次のWEBページも参照して下さい。 「OCDの治療法」の「曝露反応妨害法の実際」項

*15:William J Rea 医師の流れを汲む臨床環境医の宮田医師のご発言だと仮定します

*16:ただし、ICD-10 による分類です。神経症性障害,ストレス関連障害及び身体表現性障害を参照して下さい。このカテゴリーには、恐怖症性不安障害、その他の不安障害、PTSDを含む重度ストレスへの反応及び適応障害等が分類されています。

*17:「前書き」項における最初の脚注参照

*18:注:⑦で示す例は標記条件付けではなく、妄想性障害に関するものです

*19:しかしながら、上記このような患者の存在についての検討においては、他の拙エントリの※2の[ご参考2]及び[ご参考3]を参照すれば良いかもしれません。さらに、英語が堪能で興味とリソースがある方は、この[ご参考2]で紹介した論文を読めば良いかもしれません。さらに、以下に示す論文の要旨も読むと興味深いかもしれません。{1}「Brain responses to olfactory and trigeminal exposure in idiopathic environmental illness (IEI) attributed to smells -- an fMRI study.」(この論文の要旨は他の拙エントリのここを参照して下さい){2}Cortical activity during olfactory stimulation in multiple chemical sensitivity: a (18)F-FDG PET/CT study.」(ちなみに、次の pdfファイル[他の拙エントリのここ参照]の「6.臨床検査」において、この論文についての短い説明があります。この部分を次に引用します(『 』部)。『また、Chiaravalloti ら15)は、嗅覚刺激時の大脳皮質各部位におけるグルコース消費量が、いわゆる化学物質過敏症患者と健常者では異なったパターンを示すことを明らかにしている。』 、{3}「Involvement of Subcortical Brain Structures During Olfactory Stimulation in Multiple Chemical Sensitivity.」、{4}「Brain dysfunction in multiple chemical sensitivity.」、{5}「Odor processing in multiple chemical sensitivity.」、{6}「Odor annoyance of environmental chemicals: sensory and cognitive influences.」、{7}「Chemosensory perception, symptoms and autonomic responses during chemical exposure in multiple chemical sensitivity.」、{8}「The role of perceived pollution and health risk perception in annoyance and health symptoms: a population-based study of odorous air pollution.」、{9}Aversive learning increases sensory detection sensitivity.、{10}「Cognitive modulation of olfactory processing.」(注:{8}~{10}は化学物質過敏症関連では無いかもしれませんが、興味深い論文です)。ちなみに、MCS 関係ではありませんが、これに関連するかもしれない「ネガティブな情動刺激(他人の恐怖表情)に対する左扁桃体の活動が亢進」(注:扁桃体辺縁系の一部です)については、次のWEBページを参照して下さい。「睡眠不足で不安・抑うつが強まる神経基盤を解明」 さらに、[ご参考2]で紹介した最初の論文の「Introduction」において、Pubmed では検索されない文献[18]を参照して、「In functional magnetic resonance imaging (fMRI) studies involving exposure to odorants, a strong signal-intensity reaction was seen in the limbic system of MCS patients[18].[拙訳]臭気物質曝露に関連した fMRI 研究では、MCS 患者の大脳辺縁系において強い信号強度の反応が見られた」との主旨の記述が有ります。一方、情動処理における前頭前皮質の役割を調査するためのツールとしての近赤外分光法(NIRS)に関する議論及びパニック症における情動の特徴については、項を、ストレスによる前頭前皮質及び大脳辺縁系への影響については、[ご参考3]をそれぞれ参照して下さい。加えて大脳辺縁系については、PTSD又は複雑性PTSDの視点より他の拙エントリのここを参照して下さい。一方、情動の視点より例えば次のWEBページを参照して下さい。「恐怖する脳、感動する脳」の「情動と脳」及び「恐怖情動の神経回路」項

*20:ちなみに、本エントリ内には条件付けに類似した用語「嗅覚嫌悪条件づけ」(リンク集参照)があります

*21:予期不安はパニック症を特徴づけるものです

*22:注:嫌悪感は強迫性障害(OCD、強迫症)に関係するようです。ここを参照して下さい。ちなみに、強迫症は、DSM-5 より不安症(不安障害)のカテゴリーからは分離しました。一方、ICD-10 においては、強迫性障害強迫症)は不安障害と同じく、神経症性障害,ストレス関連障害及び身体表現性障害のカテゴリーに含まれています。

*23:さらに、この症状とされるものにはトラウマを負ったことによるフラッシュバック(他の拙エントリのリンク集参照)、解離性障害の症状(記憶の一部がごそっと欠けている等、例えば次のWEBページ「【3070】解離のような症状があるようですが、これが解離の症状なのか正常の範囲なのかわかりません - Dr 林のこころと脳の相談室[このサイトのホームページ]参照)も含まれていません

*24:強迫スペクトラム障害(ここ参照)又は不安症(他の拙エントリのリンク集[用語:不安障害(不安症)]参照)との合併を含みます

*25:ちなみに、化学物質過敏症における他の疾患との鑑別については、ここを参照して下さい。

*26:PubMed におけるURLは http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17620903

*27:不定愁訴の辞書的な意味については、例えば次のWEBページ参照「不定愁訴 - コトバンク

*28:WEBページ「心身症 - 脳科学辞典」における表1.の機能的疾患及び神経症性・一過性心身反応を参照して下さい

*29:精神疾患以外でも例えば、(女性の)更年期障害甲状腺機能亢進症に見られます。ここを参照して下さい。

*30:強迫性障害は、OCD:Obsessive Compulsive Disorder、又は強迫症とも称されます。この関連についてはここを参照して下さい。加えて、他の拙エントリのリンク集[用語:「強迫性障害強迫症)、社交不安障害」]も参照して下さい。

*31:これに関連するWEBページは例えば次を参照して下さい。「強迫症 - 脳科学辞典の「治療」項、「2.3 認知行動療法、「OCDの認知行動療法」(注:後者二つのWEBページでは主にERPが紹介されています) ただし、ERPは曝露反応妨害法とも称されます。加えて、本によるとERPは「バンジージャンプ」又は「強迫プールに飛び込むこと」に喩えられています(P102、P125、P126)。

*32:ちなみに、このエントリ中のリンク「日山 et al. 2011」がはずれています(2016年10月3日現在)。正しいリンク先はおそらくここでしょう。

*33:ちなみに、これに関連して次の pdfファイルがあります。「がん化学療法における条件付け由来の副作用と学習性食物嫌悪に関する予備的研究

*34:ちなみに、この論文の要旨における最初の記述を次に引用します(『 』内)。『Intolerance of uncertainty (IU) is a characteristic predominantly associated with generalized anxiety disorder (GAD); however, emerging evidence indicates that IU may be a shared element of emotional disorders.』[拙訳]不確実性への不耐性 (IU) は、全般不安症 (GAD) [訳注:WEBページ「不安症 -脳科学辞典」の「不安症の下位診断名とその症状」項参照]に主に関連する特徴である。しかしながら、新たな証拠は、IU が情動障害の共有要素であるかもしれないことを示す。

*35:これらの資料に関連するかもしれない a) 論文の要旨は他の拙エントリのここを b) 資料は他の拙エントリのここ項とここを それぞれ参照して下さい。ちなみに、がんの化学療法における条件付けについては、のリンク先を参照して下さい。