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krns-linkのブログ

まだ仮公開で、今後も本公開までドタバタします。コメント欄は有りません。ちなみに、拙ブログ作成者は医療関係者ではありません。拙ブログは訪問者の方々がお読みになるためのものですが、自己責任でお読み下さい(念のため記述)。

MCS(多種化学物質過敏状態)リンク集

前書き

twilog を見ると、mortan 様がある著名ネット民に対し、あるWEBサイトの修正を非常に熱心に求めています(ツイート例)。本エントリは、mortan 様の求めに応じるものかどうかは本エントリ作者には不明ですが、本エントリ作者なりの回答例(このWEBサイトの補足例)のような何かとしても、疾患概念であるMCS(Multiple Chemical Sensitivity、多種化学物質過敏状態*1)に興味をお持ちの読者様のために、次の特徴を有するMCSに関するリンク集を本エントリ作者の独断と偏見で一部作成し、仮公開しました。英語資料への依存を少なくする方向(含和訳の付与)での作成を目指しています。熟練したニセ科学批判者各位におかれては、作成方針に違和感があるかもしれませんが・・・
(A)対象は日本のみならず海外も含みます。英語の論文、資料、文書等は、可能であれば日本語訳や解説のあるブログ、コメント等にリンクしました。一次情報は必要に応じてリンク先における(一次情報への)リンクを利用してください。リンクは情報が入手容易なものをなるべく選んでいます。一方、本エントリの一部は化学物質過敏症、その他の話題となります。
(B)本エントリは、本文と余談から構成されます。これの利用法はMCS又は化学物質過敏症に関する情報収集等を想定しています。さらに、2013年6月頃からの、ネット上の一部であるMCS界隈における論争*2についても考慮し、リンク及び引用の内容を設定しています(本エントリ作者の知る範囲内においてですが)。
(C)本エントリ作者はMCS又は化学物質過敏症の患者であることを主張していません。さらに、本エントリ作者は医療従事者ではありません。本エントリの文章、リンク先又は引用の内容・エビデンスレベル等の評価は読者各位でご判断下さい。
(D)本エントリは、予告なく適宜改訂されることが有ります。改訂内容は具体的に示さないことがあります。次の見出し「リンク集」の右側に Ver.を示します。
(E)本エントリの最初の仮公開日は 2015年2月4日 ですが、本公開時には日付変更の予定です。
(F)超長文に注意して下さい。目次作成及び本エントリ内リンクの充実により、さらに読みやすくしました。” ”部は短い引用です(本エントリでは通常の引用及び別途に示す脚注における特別な引用と併存します)。

-臨時追記- 現時点で本エントリはあくまでも仮公開段階(例えば一部リンクが機能しません)であり、早くとも本公開までは、本エントリの改訂(追加・修正・削除等)を実施する予定です。予告なく改訂することがあります。

ちなみに、MCSはIEI(Idiopathic Environmental Intolerance、本態性環境不耐症 又は 本態性環境非耐症)とも呼ばれています。

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リンク集 Ver. 0.35

(2017年2月1日改訂・仮公開、改訂の経緯はここを参照)

(1)MCSに対する世界の医学会等の見解(例:存在、診断法)

ちなみに引用はしませんが、同様な標記見解まとめの例は、次に示す pdfファイルの「3.4.1. 疾病概念」項(P50~P51)に記述されています。 「科学的根拠に基づくシックハウス症候群に関する相談マニュアル(改訂新版)

(a) Multiple chemical sensitivities--public policy.
文中に”It has been rejected as an established organic disease by・・・”[拙訳]確立された器質性疾患として・・・に拒絶されている と記述されています。

(b) 米国内科学会(American College of Physicians)のポジションペーパー
NATROMの日記 見出し:アメリカ内科学会

(c) 米国医師会(American Medical Association)の公式見解
NATROMの日記 見出し:アメリカ医師会

(d) 米国職業環境医学会(American College of Occupational and Environmental Medicine)のポジションステートメント
忘却からの帰還(1999年)
NATROMの日記 見出し:アメリカ職業環境医学会の主張(1990年)

(e) 英国王立医師協会によるアレルギー診療のガイドラインにおける、「もうひとつのアレルギー」≒MCSの記述
NATROMの日記 見出し:英国王立医師協会

(f) カリフォルニア医学協会としてのコメント
NATROMの日記 見出し:カリフォルニア医学協会

(g) Indoor Air Pollution: An Introduction for Health Professionals(1994年報告書)(該当部)
NATROMの日記

注:この報告書は、American Lung Association[拙訳]米国肺協会、Environmental Protection Agency[拙訳]米国環境保護庁、Consumer Product Safety Commission[拙訳]米国消費者製品安全委員会、American Medical Association (AMA)[拙訳]米国医師会がスポンサーとなって作成されたようです。

(h) AAAAI(American Academy of Allergy Ashthma & Immunology、[拙訳]米国アレルギー・喘息・免疫学学会)のポジションステートメント(1999年)
このポジションステートメントにおける Position Statements 項、及び Summary 項の一部をそれぞれ次に引用します。一方、AAAAI のジャーナルから(2)項に示すMCSの(誘発試験に対する)システマティック・レビューが発表されています。

Position Statements
Several medical societies and organizations have issued position statements pointing out the shortcomings of the IEI diagnosis, the unreliability and misuse of certain diagnostic procedures, and the lack of scientific support for and clinical evidence of the alleged toxic effects from environmental chemicals in these particular patients. In 1986, the AAAI was the first to do so.(5) The American College of Physicians published a position paper in 1989,(84) which was later adopted by the American College of Occupational and Environmental Medicine. The Council on Scientific Affairs of the American Medical Association published a critical review in 1992.(85) The Ministry of Health of the Province of Ontario(86) and the California Medical Association(65) have published results of their investigations of the IEI phenomenon. The US National Academy of Sciences,(87) the World Health Organization,(1) and the International Society of Regulatory Toxicology and Pharmacology(88) have held symposia on the subject. The American Council on Science and Health(89) and the Royal College of Physicians and Royal College of Pathologists in Great Britain(90) have also published reports detailing the unscientific basis for IEI.


[最初の部分(Several medical ・・・ particular patients.)の拙訳]
いくつかの医学会や医学組織は、IEIの診断の欠点、いくらかの診断法の信頼性の欠如や誤用、及び特定の患者における環境化学物質からの毒性効果とされる臨床的証拠に対する科学的サポートの欠如を指摘するポジションステートメントを発行しています。

注:上付き文字 5 は、(5)に変換しました。他の()で囲まれた数字は同様に変換した後のものです。

Summary
IEI-also called environmental illness and multiple chemical sensitivities-has been postulated to be a disease unique to modern industrial society in which certain persons are said to acquire exquisite sensitivity to numerous chemically unrelated environmental substances. The patient experiences wide-ranging symptoms, but evidence of pathology or physiologic dysfunction in such patients has been lacking in studies to date. Because of the subjective nature of the illness, an objective case definition is not possible. Allergic, immunotoxic, neurotoxic, cytotoxic, psychologic, sociologic, and iatrogenic theories have been postulated for both etiology and production of symptoms, but there is an absence of scientific evidence to establish any of these mechanisms as definitive.


[拙訳]
概要
IEIは環境病(environmental illness)やMCSとも呼ばれ、多くの化学的に関連しない環境物質に対し、強烈な感受性を得たと言われる特定の方々における現代の産業社会に特有の疾患であることが仮定されている。患者は幅広い症状を経験するが、これら患者において病理学的又は生理学的な機能障害の証拠は、これまでの研究では欠けている。病気の主観的な性質のため、客観的な症例定義は可能ではない。アレルギー、免疫毒性、神経毒性、細胞障害性、心理学、社会学及び医原性の理論は病因と症状の引き起こしの両方のために仮定されているが、これらの決定的なメカニズムのいずれかを確立するための科学的な証拠が欠如している。

(i) 日本臨床環境医学会
先ず、日本臨床環境医学会編の本「シックハウス症候群マニュアル 日常診療のガイドブック」(2013年発行、日本医師会推薦)の「IV. Q & A Q03.」(P70~P71)と「IV. Q & A Q03.」(P73)をそれぞれ次に引用します。本医学会のMCS又は化学物質過敏症に対する正式な見解ではありませんが、これらの引用により、上記本の発行時における「日本臨床環境医学会」の(事実上の)見解は、「日本において、化学物質過敏症を診療報酬上の傷病名(ICD-10)にすることと、MCSや化学物質過敏症の医学的な定義が確立されることは別である」こと及び「MCSや化学物質過敏症の医学的な定義はまだ確立されていない」であると本エントリ作者は考えます*3

Q03. MCS(Multiple Chemical Sensitivity:多種化学物質過敏状態),化学物質過敏症(CS)とはどんな病気ですか.

・MCSは,1987年マーク・カレンによって「過去に大量の化学物質に一度曝露された後、または長期間慢性的に化学物質の曝露を受けた後,非常に微量の化学物質に再接触した際にみられる不快な臨床症状」として定義・提唱された.
・定義された MCS(Multiple Chemical Sensitivity:多種化学物質過敏状態)の考え方を基本に化学物質による健康障害をめぐる議論が行われてきている.ただ,医学的な定義はまだ確立されておらず,社会的な関心が先行し言葉が独り歩きし,混乱が生じている.
・日本においては,北里研究所病院の石川哲らによって独自に化学物質過敏症の診断基準が設けられている.
・原因としては建材や家具等に使用される,揮発性有機化合物に起因する室内空気汚染や大気汚染,食品中の残留農薬などが考えられるが,特定の化学物質との因果関係や発症のメカニズムなど未解明な部分が多く,今後の研究の蓄積や成果が待たれている.
・2009年10月1日,厚生労働省は診療報酬上の傷病名(ICD-10)とした.


Q13.シックハウス症候群化学物質過敏症の診断では,どのような検査を行うのですか.

・既往症のアレルギー疾患など,他の疾患との区別が非常に難しいため,現状では正確に診断できる検査・診断方法はない.
・診察例
(1) 徹底した問診(発症時期・症状,住環境の変化があったか,症状の変化があったかなど)
(2) 問診をふまえた診察:症状・兆候の把握,他疾患の除外
(3) 必要に応じて,血液生化学検査やアレルギー検査,生理機能検査等を行う.瞳孔検査,眼球運動検査,視覚空間周波数特性検査,免疫検査,内分泌検査,誘発試験などを行っている検査機関もある.
(参考)化学物質の曝露情報を得るために,住宅の揮発性有機化合物濃度数値等を求められる場合もある.

注:日本臨床環境医学会は日本学術会議協力学術研究団体ではありません。

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(2)MCSのシステマティック・レビュー

ひょっとすると、先ず以下に引用した「コラム 化学物質過敏症は存在するか?」に目を通す方が良いかもしれません。

著者は Das-Munshi氏 等で、彼らは The Journal of Allergy and Clinical Immunology に発表しました。この誘発研究*4により疾患概念MCSの存在の評価が十分可能で、否定されたと本エントリ作者は考えます。
・タイトルと本文:Multiple chemical sensitivities: A systematic review of provocation studies.
・要旨(ここ参照)の和訳例:9-6 化学物質過敏症:刺激試験結果の総合解析(III-85)
ただし、この訳が必ずしも要旨に忠実(正確)でないと本エントリ作者は考えます。
・NATROM先生等は次のはてブPubMed におけるこの論文の要旨に対するコメントを紹介しています。
・これに関する総説的なものとして、斎藤博久著の本「アレルギーはなぜ起こるか ヒトを傷つける過剰な免疫反応のしくみ」(2008年発行)の「コラム 化学物質過敏症は存在するか?」における記述(P25~P26)を次に引用します。

コラム 化学物質過敏症は存在するか?

化学物質過敏症は、米国アレルギー学会雑誌が掲載したもっともエビデンスレベル(疫学研究の信頼度に関する科学的な格付け)が高い研究と位置づけられているシステマティックレビューにおいて、その存在が否定されています。この論文の著者らは、多種類の化学物質に対する過敏症に関する論文のすべてのデータを解析した結果、従来のほとんどの研究は適切なコントロールを欠いていること、および、被験者が反応を示したのは、それが化学物質であると知らされた場合に限るという結論を導きました。
過敏症とは「健常被験者には耐えられる一定量の刺激への曝露により、客観的に再現可能な症状または徴候を引き起こす疾患をいう」と定義されていますので、化学物質過敏症は過敏症の定義からはずれます。今後は、過敏症としてアレルギー学者が扱う研究課題ではなく、心理学者、神経学者が扱う研究課題になるということです。いずれにしても、これらの症状を訴える方々に対する慎重な配慮が必要です。

注:i) 引用中の「エビデンスレベル」については、ここ又は pdfファイル「文献評価のための疫学・EBM基礎知識」の P37を参照して下さい。 ii) ちなみに、著者の斎藤博久医師はここにおける一部のリンク先にも登場します。

ちなみに、このシステマティック・レビュー発表以降の研究*5状況は次の資料(pdfファイル)を参照すれば良いかもしれません。『特発性環境不耐症(いわゆる「化学物質過敏症」)患者に対する単盲検法による化学物質曝露負荷試験』、「新シックハウス症候群に関する相談と対策マニュアル(P40)*6

注:前者資料が投稿されたジャーナルを発行している日本職業・災害医学会は日本学術会議協力学術研究団体です。この会誌のインパクトファクターは本エントリ作者には見つけられませんでした。

一方、2016年に発表された論文(タイトル:Association of Odor Thresholds and Responses in Cerebral Blood Flow of the Prefrontal Area during Olfactory Stimulation in Patients with Multiple Chemical Sensitivity.[拙訳]MCS を伴う患者における、嗅覚刺激中の前頭葉領域の脳血流量変化での臭気閾値と応答の関連、 全文 *7の「Introduction」において、上記システマティック・レビューを参照した記述があり、その部分を次に引用します。

Past provocation studies identified no clear dose–response relationship between exposure and reaction in MCS [18].


[拙訳]
MCS における過去の誘発研究では、曝露と反応との明確な用量反応関係を確認できなかった [18]。

注:i) 引用中の文献番号「[18]」はシステマテック・レビューのことです。 ii) この引用に対応するのが、2016年に作成された上記資料「新シックハウス症候群に関する相談と対策マニュアル(P40)」における次に引用する(『 』内)記述であると本エントリ作者は考えます。 『科学的には化学物質曝露と身体反応には関連はなく,症状の原因が化学物質とはいえない。』 ちなみに、この論文の第一著者が分担著者として作成した、平成27(2015)年度の報告書「科学的エビデンスに基づく「新シックハウス症候群に関する相談と対策マニュアル(改訂版)」の作成」の一部分(P69~P81)を含む pdfファイル「2015225012A0004.pdf」をダウンロードするリンクが次のWEBページの最下位部にあります。 「文献番号201525012A*8 さらに、この報告書には、関連資料として、「科学的根拠に基づくシックハウス症候群に関する相談マニュアル(改訂新版)」(ドラフト版)(P101~)が添付されています。①この資料の「3.4. シックハウス症候群といわゆる化学物質過敏症の違い」(P38~P42)に化学物質過敏症に関連した記述があります。②加えて、この資料の第11章に「本態性環境不耐症」(P199~P204)の記述があります。ここの P199 には3章と11章の記述分担について簡単に示されています。前者の部分を含む pdfファイル「2015225012A0007.pdf」、「2015225012A0008.pdf」、及び後者の部分を含む pdfファイル「2015225012A0015.pdf」をダウンロードするリンクも次のWEBページの最下位部にあります。 「文献番号201525012A*9

≪ご参考≫システマティック・レビューについては例えば次に概略を示します。
疫学研究デザインP14~P15
文献評価のための疫学・EBM基礎知識P49~P54。

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(3)MCS=IEIの総説的な資料

(a) 『化学物質過敏症』とは何か?
ちなみに、この資料中の引用文献24)で示された日本の環境省研究班が実施した二重盲検法による曝露(負荷)試験結果等を紹介するWEBページを次に紹介します。「本態性多種化学物質過敏状態の調査研究報告書

(b) 化学物質過敏症に関する情報収集、解析調査(平成20年1月、公害等調整委員会事務局)
ちなみに、この資料中に日本語訳として一部を引用されたデンマークEPAの報告書(英文)は次に紹介します。「Environmental Project no. 988, 2005 Multiple Chemical Sensitivity, MCS

(c) Mark R Cullen, M.D. の講演予稿
The Perplexing Problem of Multiple Chemical Sensitivities: A Perspective for Toxicologists (Invited lecture)日衛誌(Jpn J. Hyg.)第64巻 第2号 2009年3月の拙訳のみを次に引用として示します。ちなみに、Mark R Cullen氏はMCSの名付け親です。

表題:「MCSのやっかいな問題 毒物学者からの観点から」


背景
1980年代の間に、産業医及び環境医は、多様な刺激性又は毒性化学物質の非常に低いレベルの曝露後に発生する呼吸器、中枢神経等の症状によって特徴づけられる新しい症候群を報告した。典型的には、回復するように思われる患者から、これは汚染や過曝露等の十分に特徴づけられた環境”イベント”の後に発生した。この現象を説明するために、講演者により、MCSと名付けられ、これを説明するための神経毒性の新しい形態、神経毒性独特の残留形態、又は精神状態の理論が誕生した。なぜならば、患者の多くは非常に障害を負い、しかも、毒物学の単純な説明が欠如したために、議論が拡大し、新たなケースが世界中から報告されるようになったため。このプレゼンテーション(講演)で、典型的なケースを説明し、20年の研究で学んできたことをまとめよう。


ケーススタディ
44歳の熟練機械工のM氏(男性)は、「石油化学製品」のごくわずかな痕跡を嗅ぐことによる毎回の激しい頭痛、混乱及び息切れを訴えるためにクリニックに現れた。3ヶ月前の仕事中における換気装置の故障で彼と他の人が脱脂溶剤(大部分が 1,1,1 トリクロロエタン)に過剰に曝露されたこと以前は、彼はうまくやっていた。(この過剰曝露で)多くの人は頭痛や吐き気が生じたが、2日後に換気装置が修理されると彼以外の全ての人は回復した。しかし、換気装置の改善後も、M氏が仕事に戻った時に症状が続いて、働くことができなかった。さらに妙なことに、彼はバスやトラックの後ろを運転していた時、あるいは店にいる時に同じ事態であることに気づき始めた。家庭用製品は、彼に悪影響を与えるようになり、彼は(防毒)マスクを着用し始めた。しかし、彼がクリニックに来る前の3ヶ月超、彼の妻の香水を含めたより多くの化学物質により彼は悩んでいた。家庭用製品の全てが彼の家から除去された後の家にいた時にのみ、彼はより良く感じた。クリニックにおいて脳のMRI及び肺機能検査はもちろん、充分な診察と日常的な血液検査を彼は受けた。全ての検査結果は正常であった。彼の職場における検査では、溶剤及び加工液の全てのレベルがTLV(訳注:Threshold Limited Values、許容濃度の域値)の10%未満と、非常に清浄な工場であることが判明した。彼はMCSと診断された。


MCSの定義
臨床的な症候群を定義する多くの試みが有ったが、まだ基本的な所見又は検査所見での異常が存在しないので、すべての定義は、病歴及び他の原因が発見されないことに依存する。鍵となる主な特徴は次の通り。1)環境曝露後の発症 2)多くの状態における、さまざまな臭いや刺激物の超微量での曝露後の予測可能な方法での多様な症状の再発 3)試験、検査が全て正常である。すなわち症状の説明が不可能 4)症状を説明する他の主要な疾患(身体的又は精神的)が存在しないこと


疫学
最初は、これらのケースは非常にまれなものと思われたが、1980年代及び1990年代の臨床報告は、これらはどこにでも発生することを示唆した。さらに、1990年~1991年の湾岸戦争からの退役軍人の健康調査(多くのケースが明らかになった)を含むいくつかの大規模調査が実施された。これらの調査により、2~6%の人々は、症状を引き起こす化学物質を避けるために、彼らが転職や引越しをした事実に基づく軽い又はより重いMCSの変異型(variants)を有することが示された。臨床研究により、いくつかの手がかりが提供されている:女性は男性よりも約3倍発症し、ほとんどの場合は30~50才の間で発症する。多くの患者はまた、慢性疲労や線維筋痛症を経験しており(これもよく解っていないが)、さらに、多くの患者は過去に不安や抑うつが有った。少なくとも米国では貧しい人々の間よりも高い社会階級で発症するが、アトピーも家族の背景もどちらも関係しないようである。


病因
もちろん大きな疑問は、傷害の機序です。当初MCSはある種のアレルギーや免疫性の障害と考えられていたが、多くの研究でこれは誤りであることが判明している。さらに、「生化学」経路、すなわちP-450(訳注1)又はグルタチオン還元酵素等の解毒経路のいくつかの表現型の欠損に対し広範囲に調査されたが、これは有りそうもないことが判明している。症状を誘発する臭いや刺激物への反応の中心的役割によって、より最近の注目は第1脳神経(訳注2)及び、CNS(訳注3)における大脳辺縁系(訳注4)の応答のパターンに向いている。これらの神経経路の混乱(disruption)に対するエビデンスは(肯定と否定で)混在しており、説得力が有る動物モデルが存在しないままである。代わりに、多くの人々がMCSを行動又は生化学的にメディエイト(訳注5)された不安障害として解釈されている。DSM-IV(訳注6)ではMCSはこのカテゴリー(訳注7)に分類される[注:MCSに対するICD-10(訳注8)のコードは無い(訳注9)]。この仮説を支持するのは、患者における不安障害の頻繁な履歴と心的外傷後ストレス障害(訳注10)に似た反応のパターンである。

しかし、薬理的及び行動介入(訳注11)は治療においてあまり役立たないので、ほとんどの精神科医はこのように症状を解釈することに抵抗する。

[注1]拙訳を読みやすくするために、このパラグラフでは訳注を次に記述しました。
訳注1:シトクロム P-450 は分子量約45000から60000の酸化酵素で,異物(薬物)代謝においては主要な第一相反応の酵素のことです。動物では主に肝臓に存在し、NADPH (還元型のニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸)の存在下で基質を水酸化します。
訳注2:匂いの刺激を中枢に伝える嗅神経のことです。
訳注3:Central Nervous System:中枢神経系。
訳注4:大脳辺縁系は内分泌系と自律神経系に影響を与えることで機能しているとされています。
訳注5:漢字としては「媒介」又は「仲介」と翻訳されるようです。
訳注6:DSMは Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders の略語で、「アメリカ精神医学会が定めた精神障害の診断と統計の手引き」のことです。
訳注7:DSM-IVにおける不安障害のカテゴリーは、ここを参照して下さい。
訳注8:死因や疾病の国際的な統計基準として世界保健機関(WHO) によって公表された分類、詳細はここを参照して下さい。
訳注9:日本において化学物質過敏症はICD-10の T65 その他及び詳細不明の物質の毒作用 T65.9 詳細不明の物質の毒作用 に分類されています。*10
訳注10:アルファベットの短縮形で「PTSD」と表記される場合が有ります。
訳注11:「介入」とは医学においては、疾患を予防または治療するため、あるいはその他の方法によって健康状態を改善するために行われる治療や行為のことです。


自然史
現在、MCSのいくつかの主な特徴を説明するのに十分な症例が存在する: 1)それは自発的に解決するように見えなく、しかもまだ証明された治療法はない 2)最初の受診後、多くの患者は疲労や筋骨格の痛み等のより「慢性の」訴えを除いて、(病状が)進行する又は合併症につながるようには見えない。重要なのは、社会的、経済的に派生するひどい結果にもかかわらず、多くの人が行う極端な孤立を患者が選択するのか、又は彼らが正常に機能し続け、かつ度重なる症状が有るのかにかかわらず、これらの観察が真実である。実際には、全体的に後者のグループが引きこもる人よりも経年的に良い行為のように見える。


予防と治療
多くの異なった臨床的及び心理的な処置が試みられているが、暴露に対する根本的な反応を変える方法は無いようである。ほとんどの努力は、症状そのものの緩和やコントロールよりも、症状に直面している生活機能の向上を目的としている。より実用的には、過度の曝露後のMCSへの進展を防止する努力はより成功するかもしれない。この成功への鍵は、1)自己限定又は良性かもしれないとはいえ、有害な化学物質に曝露される患者へのとても緊密なフォローアップ 2) MCS様な反応の発生に対する早期の探求 3)最初にMCSの症状が生じた時に、ほとんどの個々の患者が信じている、症状は当初の曝露によるより深刻な中毒反応である証拠はないことを強化する早期の教育

[注2]この項における一次情報の記述「however self-limited or benign it my seem;」は、 「however self-limited or benign it may seem;」として翻訳しました。


未来
MCSの有病率と重症度のために、機序に関する研究があり続けるが、この作業は研究主体としてのこれらの患者の非常な困難さと良い動物モデルの欠如により妨げられている。

注:引用中の「動物モデル」に関連する「モデル動物」ついては、例えば、次のWEBページを参照して下さい。「モデル動物 - 脳科学辞典

(d) 環境省の業務における総括責任者:坂部貢による「平成27年度 環境中の微量な化学物質による健康影響に関する調査研究業務 報告書」*11
この報告書は、次の pdfファイルを参照して下さい。「平成27年度 環境中の微量な化学物質による健康影響に関する調査研究業務 報告書

ちなみに、i) 他の拙エントリにおいてこの報告書の一部を引用しています。ここここにおける脚注及びここにおける第二の脚注を参照して下さい。 ii) 引用はしませんが、この報告書では「これらを踏まえると、いわゆる化学物質過敏症とは1つの疾患というよりも、化学物質ばく露も含めた、いくつかの要因による身体の反応や精神的なトラウマが重なって表現される概念と考えることが、現在の時点では妥当と考えられる」及び「ライフイベントが患者にとってどれほどストレスフルなのかを客観的に評価し病態を把握する必要性が指摘されている」(共にこの報告書の「1.概念」において)との主旨が記述されており、これに関連する、すなわち、ライフイベントの評価及びトラウマに言及した資料の例は次に示します。『特発性環境不耐症患者(いわゆる「化学物質過敏症」)の発症における心理負荷*12 注:a) この資料が投稿されたジャーナルを発行している日本職業・災害医学会は日本学術会議協力学術研究団体です。この会誌のインパクトファクターは本エントリ作者には見つけられませんでした。 b) ちなみに、この資料の「考察」中の研究の位置づけに関する記述「本研究は辻内らの提起に応じた研究になる」における辻内らの引用文献12)「辻内優子,辻内琢也,中尾睦宏,他:化学物質過敏症における心身医学的検討.心身医学 42:206―216, 2002.」については、次の pdfファイルが参照できます。「化学物質過敏症における心身医学的検討

(e) Chemical intolerance.[拙訳]化学物質不耐症*13
この論文の要旨を次に引用します。ちなみに、この全文は次のWEBページで参照できます。「Chemical intolerance.

Chemical intolerance (CI) is a term used to describe a condition in which the sufferer experiences a complex array of recurrent unspecific symptoms attributed to low-level chemical exposure that most people regard as unproblematic. Severe CI constitutes the distinguishing feature of multiple chemical sensitivity (MCS). The symptoms reported by CI subjects are manifold, involving symptoms from multiple organs systems. In severe cases of CI, the condition can cause considerable life-style limitations with severe social, occupational and economic consequences. As no diagnostic tools for CI are available, the presence of the condition can only be established in accordance to criteria definitions. Numerous modes of action have been suggested to explain CI, with the most commonly discussed theories involving the immune system, central nervous system, olfactory and respiratory systems as well as altered metabolic capacity, behavioral conditioning and emotional regulation. However, in spite of more than 50 years of research, there is still a great deal of uncertainties regarding the event(s) and underlying mechanism(s) behind symptom elicitation. As a result, patients are often misdiagnosed or offered health care solutions with limited or no effect, and they experience being met with mistrust and doubt by health care professionals, the social care system and by friends and relatives. Evidence-based treatment options are currently unavailable, however, a person-centered care model based on a multidisciplinary treatment approach and individualized care plans have shown promising results. With this in mind, further research studies and health care solutions should be based on a multifactorial and interdisciplinary approach.


[拙訳]
化学物質不耐症(CI)は、ほとんどの人々が問題ないとみなす低レベルの化学物質の暴露に起因する再発性の非特異的症状の複雑な列挙を経験した状態を説明するために使用される用語である。重度な CI は、多種化学物質過敏状態(MCS)の際立った特徴を構成する。 CI 患者により報告された症状は、複数の器官系からの症状を意味し多種多様である。CI の重症例において、この異常は深刻な社会的、職業的及び経済的な結果を伴う相当なライフスタイルの制限を引き起こしうる。CI の診断ツールは利用できないので、この異常の存在は判定基準の定義に従って確立されることができるだけである。変化した代謝能、行動学的な条件付け及び情動調節はもちろん、免疫系、中枢神経系、嗅覚及び呼吸器系に関係する最も一般的に論議されている理論を伴った CI の説明を、多数の作用様式は示唆する。しかしながら、50年を超える研究にもかかわらず、事象及び症状の誘発の陰に隠れたメカニズムに関するかなり多くの不確実なものが存在する。結果として、患者はしばしば誤診され、効果が限定的な又は効果の無いヘルスケアソリューションを提供され、そして、彼らの体験はヘルスケア専門家、社会養護システム、友人及び親戚による不信と疑惑を受ける。エビデンスに基づいた治療法の選択肢は現在得られないものの、集学的治療アプローチに基づく人中心のケアモデル及び個別化ケアプランは有望な結果を示している。これを念頭に置いて、さらなる調査研究やヘルスケアソリューションは多因子及び学際的アプローチに基づくべきである。

注:i) 引用中の「条件付け」については、他の拙エントリ及び他の拙エントリのここ及びここを参照して下さい。 ii) 引用中の「情動調節」に関連した論文例は、他の拙エントリのここ及びここを参照して下さい*14。一方、引用中の「情動」については、次のWEBページ「情動 - 脳科学辞典」及びメンタライジングの視点から他の拙エントリのここを参照して下さい。 iii) 引用中の「免疫」については、例えば次のWEBページを参照して下さい。「免疫学Q&A

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(4)ウィキペディア化学物質過敏症」の一部解説

ウィキペディア「化学物質過敏症」(2016年7月31日現在)における一部の記述を例にして、疫学及び科学的根拠に基づいた医療(エビデンスレベル)の視点から考察しましょう。この中の「化学物質過敏症に関する議論」項における記述を次に引用します。ただし、下記「懐疑的見解」項は一部のみの引用です。

肯定的見解
化学物質の人体に及ぼす影響については未だ解明が進んでいないが、一部の専門家の間では、近年激増の傾向にある自律神経失調症やうつなどを含めた現代病は、化学物質の曝露が原因である、という意見がある[6]。また、化学物質過敏症は様々な症状を呈するため、適切な診断が下されない場合がある。具体的には、眼に症状が現れている場合では、アレルギー性結膜炎及びドライアイなどの診断が、呼吸器系の症状では風邪や喘息が、その他では自律神経系異常に関連する疾患または精神科領域の疾患として診断されてしまう可能性がある[7][8]。なお、化学物質過敏症は煙草の受動喫煙により生じる受動喫煙症の悪化で生じたり[9]、あるいは新築あるいは改築した住宅で発症するシックハウス症候群の悪化により生じる場合もある[10][11]。不定愁訴、咳喘息、気管支炎、ドライアイ、アレルギー性結膜炎、アレルギー性鼻炎、自律神経系の病、脳や神経系の病、うつ病などの様々な病名の診断がなされ手術や投薬を重ねても改善されなかった、および逆に悪化した症例で、化学物質過敏症としての診断と治療によった後、病状の現状維持または改善及び社会復帰に結びついた例があるとの主張がある[12][13]。また、functional MRIによる脳画像解析を用いた客観的診断手法についての研究がある[14]。


懐疑的見解
化学物質過敏症とされる症状については科学的・疫学的な立証を経たものは少ない。微量の化学物質が多彩な症状を引き起こしているとする客観的な証拠がなく、においや先入観により引き起こされていると考えられる[15]ことなどから、「化学物質過敏症」という名称自体が適当でないとする意見があり、主要な学会からはその診断名称を拒否されている[16][17][18]。

上記引用の懐疑的見解における「微量の化学物質が多彩な症状を引き起こしているとする客観的な証拠がなく、においや先入観により引き起こされていると考えられる[15]」等のエビデンスレベル(証拠のレベル)が適用可能な(医学的)文章を読む際に、その信頼性を検討するならば、エビデンスレベルの考慮が必要不可欠であると本エントリ作者は考えます。すなわち、ウィキペディアなので、専門家が文章を作成したかどうかは保証の限りでは無いこともあり、それぞれの文章において引用した文献の内容及びエビデンスレベルの評価を重視する必要があると本エントリ作者は考えます。

エビデンスレベルについては、次の国立がん研究センターがん対策情報センター がん情報サービスのWEBページ4.2)項を参照すると良いかもしれません。

ちなみに、上記4.2)項で示された、エビデンスレベルの表を次に引用します。

Ⅰ システマティック・レビュー/RCTのメタアナリシス
Ⅱ 1つ以上のランダム化比較試験による
Ⅲ 非ランダム化比較試験による
Ⅳa 分析疫学的研究(コホート研究)
Ⅳb 分析疫学的研究(症例対照研究、横断研究)
Ⅴ 記述研究(症例報告やケース・シリーズ)
Ⅵ 患者データに基づかない、専門委員会や専門家個人の意見

注:Ⅰがエビデンスレベル最高で、Ⅵが最低とされます。非専門家の体験談はランク外です。

上記懐疑的見解における、引用文献[15]は、エビデンスレベルは最高とされるMCSのシステマティック・レビューのことです。さらに、文章「主要な学会からはその診断名称を拒否されている[16][17][18]」は、(1)MCSに対する世界の医学会等の見解(例:存在、診断法)の一部と重なります。

一方、上記肯定的見解においては、[6]~[13]は全て新聞記事からの引用で、エビデンスレベルは最低とされる「専門委員会や専門家個人の意見」とするのにも疑問があります。[14]は日本化学工業協会 研究支援自主活動 Annual Report 2006 (P79) (注:現在リンク切れです)の表題「化学物質過敏症診断体系確立の試み:問診票、匂い認知・情動検査、脳画像検査を用いた総合的診断」の研究概要のようです(研究期間:2005年9月1日-2006年8月31日)。また、引用中の「functional MRIによる脳画像解析を用いた客観的診断手法についての研究がある」に関連して、嗅覚刺激中の脳画像解析についての2013年以降に発表された論文例の紹介は他の拙エントリのここを参照して下さい。

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(5)米国環境医学アカデミー、William J Rea 医師、石川医師、宮田医師

注:Clinical Ecologists(和訳:臨床環境医)と(日本の)臨床環境医(日本臨床環境医学会に所属する大半の人々)を区別すべきであることについては、他の拙エントリにおける次の余談(及び)を参照して下さい。

(f) William J Rea 医師(含米国環境医学アカデミー)
・忘却からの帰還 その1その2その3その4その5その6その7
NATROMの日記
食品安全情報blog
・次の Quackwatch のWEBページによると、米国環境医学アカデミー(AAEM)のメンバーに対する規制措置が示されています。一次情報の拙訳のみを以下に引用します。「 Regulatory Actions against AAEM Members

米国環境医学アカデミー(American Academy of Environmental Medicine:AAEM) は、Theron Randolph により1965年に臨床環境医学会(Society for Clinical Ecology)として設立され、主に医師及びオステオパシーの医師で構成されている。ほとんどの AAEM のメンバーは、MCS、毒性カビ、酵母の異常増殖の怪しげな概念を支持する。1996~1997年の AAEM のメンバーリストには429人が各々登録されていた。彼らの約75%が米国内で活動している医師であった。2015年6月には217人が各々登録され、その中の150人が米国内でライセンスを持つ(西洋医学の)医師又はオステオパシーの医師で、少なくとも25人(以下にリストアップする:訳注 本引用では省略しています。一次情報を参照して下さい)は、ライセンス会議の措置に服従している。アスタリスク(*)は、元 AAEM の会長(president)であることを示す。個々のケースの詳細へのアクセスはリンクをクリックして下さい。

参考:本項又は以下の引用に示すように、William J Rea 医師は、電磁波過敏症及びホメオパシーにも関係しています。

電磁波過敏症に関する最新知見と今後の課題 の「Ⅰ.1. 歴史」における記述の一部を次に引用します。

1991年、米国の医師 William J Rea 24) は「送電線や携帯基地局などから発生するマイクロ波などにより、主に自律神経系などを中心に影響を受ける健康障害で、化学物質過敏症と密接な関係がある」として、電磁波過敏症(electrical hypersensitivity, ES)という病名を提起した。

注:引用中の文献番号 24) は、Rea WJ, Pan Y, Fenyves EJ, Sujisawa I, Samadi N, Ross GH.: Electromagnetic field sensitivity. J Bioelectricity. 10: 241-256, 1991 のことです。

(g) 石川医師(日本臨床環境医学会の初代理事長等を歴任)
1) NATROMの日記 その1その2その3その4

2) 多種類化学物質過敏症は公認されたか?

3) 誘発中和法
室内空気質健康影響研究会[編集]の本、「室内空気質と健康影響 解説 シックハウス症候群」(2004年発行)中の、文書 「北里研究所病院における知見-治療を中心として-」 P295~P299(著者は、石川 哲(北里研究所病院臨床環境医学センター))の「Ⅵ 米国における中和療法」項 (P297) における記述を次に引用します。

北里研究所病院では、未だ施行していないが、米国においては、患者の過敏性症状を誘発する原因化学物質に対する中和療法が積極的に行われている13-14)。元来食物アレルギー患者に対して始められた治療法15)を化学物質過敏症に応用したものである。アレルゲンの用量を徐々に上げていく従来の減感作療法と異なり、中和療法では逆に濃度の高いものから低いものを順番に皮内に投与し、生じた膨疹の状態から個人の中和量を決定し、それを投与することにより症状の軽減化を図るというものである。今後本邦においても有効な治療法の一つとして考慮されるものと思われる。

ただし、この引用文中の「13-14)」及び「15)」は引用番号であり、それぞれ、上付き文字を半角文字に変更しました。

さらに、標記誘発中和法に批判的なWEBページを次に紹介します。誘発中和法 -疑わしい治療法-

4) かびんのつまインタビュー (次に引用するように、「――石川先生は電磁波過敏症については、どうお考えですか?」項及び「――電磁波過敏症もやはりなかなか世間一般で理解されているとは思えず、苦しんでいる人が多いと思います。化学物質過敏症と併発しているのなら、なおさらですが。」項において、下記電磁波過敏症にまで言及しています。)

――石川先生は電磁波過敏症については、どうお考えですか?

化学物質過敏症の世界的な権威でもあるドイツのルノー先生も、電磁波過敏症については20年前から治療を行っていますね。本エントリ作者や北里大学の宮田幹夫教授、ダラスのレイ教授とも一緒に研究を続けていましたが、彼はバート・エムスタール(Bad Emstal)という地域に温泉付きの治療室をつくったんです。そこの入院室は電磁波を極力防ぐための工事が、アースも含めて厳重に行われていました。”

――電磁波過敏症もやはりなかなか世間一般で理解されているとは思えず、苦しんでいる人が多いと思います。化学物質過敏症と併発しているのなら、なおさらですが。

電磁波過敏症について詳しく研究しているのは、北里大学医学部名誉教授で、現在は東京の荻窪で"そよ風クリニック"を開業している宮田幹夫先生です。彼に診てもらえば、適確に指導してくれると思います。

注:これらの引用中の宮田幹夫教授、宮田幹夫先生は宮田医師のことです。また、ダラスのレイ教授とは、William J Rea 医師のことです。

5) その他
(5-1)(i)及び(j)余談5(c)及び余談6項も参照して下さい。

(h) 宮田医師
1) NATROMの日記 その1その2その3

2) 誘発中和法 -疑わしい治療法-

3) かびんのつまインタビュー
上記(5)(g)4)項参照。

4) その他
他に(5-1)(i)及び(j)項も参照して下さい。

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(n) 化学物質過敏症(Chemical Sensitivity)において、William J Rea 医師石川医師宮田医師との関係を示す例
室内空気質健康影響研究会[編集]の本、「室内空気質と健康影響 解説 シックハウス症候群」(2004年発行)中の、文書 「心療内科的知見」 P300~P317(著者は、熊野宏昭、齊藤麻里子、辻内優子、吉内一浩、辻内琢也、中尾睦宏、久保木富房、小久保奈緒美、青柳直子、大橋恭子、山本義春、篠原直秀、柳沢幸雄、坂部貢、松井孝子、宮田幹夫、石川哲)の「1 はじめに 2)病態・発症機序」項の P301 における記述の一部を次に引用します。

一方、Rea は、セリエのストレス学説に基づいて、化学物質の刺激に対する体の反応としての仮説を唱えている。最初の化学物質の刺激に対して単純な刺激症状を示す警告期のあと、刺激が持続すると次第に適応・馴化がおこり症状が隠蔽されてしまうマスキング期となる。さらに刺激が持続すると適応能力が疲弊して種々の異常反応を示す器官疾病期となる。発症には物理的・化学的・生物的・心理的ストレッサー全てに対する感受性を含む生化学的な感受性の個人差(individual susceptivity)と、体内に侵入した化学物質の総負荷量(total body load)が関係し、中毒発生量以下の毒性(subtoxic dosis)という問題も関与しているとしている。石川・宮田らは、上記の Rea とほぼ同様の説を主張しており、化学物質過敏症という用語も Rea の唱えるものとほぼ同義であると考えられる。

注:i) 引用中の「Rea」は、William J Rea 医師のことです。 ii) この引用中の文献番号の表示は省略しています。

注目点は、著者「宮田幹夫、石川哲」と引用における最後の文章「石川・宮田らは、上記の Rea とほぼ同様の説を主張しており、化学物質過敏症という用語も Rea の唱えるものとほぼ同義であると考えられる。」です。

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(8)シックハウス症候群

(a) 狭義のシックハウス症候群(又は2型のシックハウス症候群)の定義と診断基準(案)
日本臨床環境医学会編の本、「シックハウス症候群マニュアル 日常診療のガイドブック」(2013年発行、日本医師会推薦)の Ⅰ.シックハウス症候群の概念 の「3-2 狭義のシックハウス症候群」項における記述(含表I-6)(P6)を次に引用します。

シックハウス症候群の概念は前述したように広範囲の病態を含むため,中毒,アレルギーなどの疾患以外で,微量の化学物質により発生する病態未解明の状態を,狭義のシックハウス症候群として扱うことを,2007年に厚生労働科学研究費補助金による合同研究班(主任研究者:秋山一男および相澤好治)で合意した.化学物質により発生する狭義のシックハウス症候群は,「建物内環境における,化学物質の関与が想定される皮膚・粘膜症状や,頭痛・倦怠感等の多彩な非特異的症状群で,明らかな中毒,アレルギーなど,病因や病態が医学的に解明されているものを除く」と定義された(相澤,2008).
また狭義のシックハウス症候群の診断基準を前述した合同研究班会議で検討し,平成19(2007)年12月に合意し,さらに平成20(2008)年12月の班会議で基準を改定した(表I-6).特定の部屋,建物内で症状が出現し,そこを離れれば症状が改善することがシックハウス症候群の特徴であり,症状発生時点で,室内空気中の化学物質濃度が指針値を超えていれば,強い根拠となるとした.しかしながら測定値が低くても症状が発生する場合もあり,また発生時に測定されていない場合でも,診断を否定する根拠にはならないと考えられる.すなわち,表I-6の1,2,3項目は必須,4番目の項目は参考としてよいと思われる.


表I-6 狭義(化学物質による)シックハウス症候群の定義と診断基準(案)
(2008.12 秋山・相澤合同班会議合意)
--------------------------
定義
建物内環境における,化学物質の関与が想定される皮膚・粘膜症状や,頭痛・倦怠感等の多彩な非特異的症状群で,明らかな中毒,アレルギーなど,病因や病態が解明されているものを除く.
診断基準
1.発症のきっかけが,転居,建物*の新築・増改築・改修,新しい備品,日用品の使用等である.
2.特定の部屋,建物内で症状が出現する.
3.問題になった場所から離れると,症状が改善する.
4.室内空気汚染が認められれば,強い根拠になる.
--------------------------
(*建物とは,個人の住宅のほかに職場や学校等を含む)

注:i) 狭義のシックハウス症候群は2型のシックハウス症候群とも言われています。シックハウス症候群の(型の)分類については、例えば、講演「室内空気質が健康に与える影響」 又は シックハウス症候群診療マニュアル 厚生労働科学研究(健康安全・危機管理対策総合研究事業)の表1 (P10) を参照して下さい。 ii) この引用では「定義と診断基準(案)」となっていることに注意して下さい。

(b) MCS(IEI)とシックハウス症候群における症状が明確に異なることを主張する資料
特発性環境不耐症の臨床所見 ―シックハウス症候群との比較―

(c) 化学物質過敏症(本態性環境不耐症)とシックハウス症候群は異なる疾患であることを主張する資料
新シックハウス症候群に関する相談と対策マニュアル(P39) *15

(d) シックハウス症候群患者の脳科学的アプローチに関する資料
他の拙エントリの「※2 [ご参考3]」項参照。これによると、「シックハウス症状の要因を室内空気汚染のみに求めることには、臨床上大きな問題があると考えられる」とのことのようです。

(e) 「新シックハウス症候群に関する相談と対策マニュアル(改訂版)」のドラフト版
標記ドラフト版を含む平成27(2015)年度の報告書『科学的エビデンスに基づく「新シックハウス症候群に関する相談と対策マニュアル(改訂版)」の作成』の分割された複数の pdfファイルが公開されました。これらの pdfファイルをダウンロードするリンクが次のWEBページの最下位部にあります。 「文献番号201525012A

ちなみに、この報告書に関連して、ここ及びここも参照すれば良いかもしれません。

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(12)電磁波過敏症

標記英名:idiopathic environmental intolerance attributed to electromagnetic fields (IEI-EMF)
(a) システマティック・レビュー、総説、調査資料等*16
① システマティック・レビュー(2010年) 忘却からの帰還第7回電磁界フォーラム(東京)~電磁過敏症:臨床および実験的研究の現状~の講演資料(配布資料)P9~P10
② システマティック・レビュー(2005年) Electromagnetic Hypersensitivity: A Systematic Review of Provocation Studies
総務省-電波の人体に対する影響
身のまわりの電磁界について 平成 25 年 3 月 環境省 環境保健部 環境安全課 の 「[参考] 電磁過敏症(電磁波過敏症)」項 (P26~P29)*17
⑤ 平成27(2015)年度の報告書『科学的エビデンスに基づく「新シックハウス症候群に関する相談と対策マニュアル(改訂版)」の作成』中に、電磁波過敏症についての調査結果の記述(P71~P72)があります。次のWEBページの最下位部には、この調査結果を含む pdfファイル「2015225012A0004.pdf」をダウンロードするリンクがあります。 「文献番号201525012A

注:i) 資料③及び④は総説として、一方、資料⑤は調査資料としての位置づけで紹介しています。 ii) 「WHO ファクトシート 296」 は資料④の P26 にリンク先が示されています。一方、「ファクトシート EU COST Action BM0704」は第7回電磁界フォーラム(東京)~電磁過敏症:臨床および実験的研究の現状~の講演資料(配布資料)P11~P14 において簡単に紹介されています。

「生体電磁環境に関する検討会 第一次報告書(案)」に対する意見募集の結果及び第一次報告書の公表

COST(欧州科学技術研究協力機構)からの電磁過敏症に関するファクトシート公表について このWEBページ中の 電磁界を原因と考える本態性環境不耐症 または“電磁過敏症”
オーストラリア放射線防護・原子力安全庁 ファクトシート「電磁過敏症」発行

(b) 電磁波過敏症とノセボ効果の関係を示すWEBページ、資料、論文例
第7回電磁界フォーラム(東京)~電磁過敏症:臨床および実験的研究の現状~のパネルディスカッション資料
第7回電磁界フォーラム(東京)~電磁過敏症:臨床および実験的研究の現状~の講演資料(配布資料)
第7回電磁界フォーラム(東京)~電磁過敏症:臨床および実験的研究の現状~の記録
第7回電磁界フォーラムに東海大学医学部教授の坂部貢氏(坂部医師)が参加して、発言しています。本記録文書の 5.パネルディスカッションの内容 (P2~P16) は本エントリ作者にとって興味深いです。

・電磁過敏症の原因はノセボ効果の疑い、メディア報道により病気の症状を引き起こす。元記事のリンク:(日本語文)(英文)
一次情報としての論文の要旨「Are media warnings about the adverse health effects of modern life self-fulfilling? An experimental study on idiopathic environmental intolerance attributed to electromagnetic fields (IEI-EMF).[拙訳]現代生活の反健康効果についてのメディア警告は、自己実現的*18ですか? IEI-EMF に関する実験的な研究」を次に引用します。

OBJECTIVE:
Medically unsubstantiated 'intolerances' to foods, chemicals and environmental toxins are common and are frequently discussed in the media. Idiopathic environmental intolerance attributed to electromagnetic fields (IEI-EMF) is one such condition and is characterized by symptoms that are attributed to exposure to electromagnetic fields (EMF). In this experiment, we tested whether media reports promote the development of this condition.

METHODS:
Participants (N=147) were randomly assigned to watch a television report about the adverse health effects of WiFi (n=76) or a control film (n=71). After watching their film, participants received a sham exposure to a WiFi signal (15 min). The principal outcome measure was symptom reports following the sham exposure. Secondary outcomes included worries about the health effects of EMF, attributing symptoms to the sham exposure and increases in perceived sensitivity to EMF.

RESULTS:
82 (54%) of the 147 participants reported symptoms which they attributed to the sham exposure. The experimental film increased: EMF related worries (β=0.19; P=.019); post sham exposure symptoms among participants with high pre-existing anxiety (β=0.22; P=.008); the likelihood of symptoms being attributed to the sham exposure among people with high anxiety (β=.31; P=.001); and the likelihood of people who attributed their symptoms to the sham exposure believing themselves to be sensitive to EMF (β=0.16; P=.049).

CONCLUSION:
Media reports about the adverse effects of supposedly hazardous substances can increase the likelihood of experiencing symptoms following sham exposure and developing an apparent sensitivity to it. Greater engagement between journalists and scientists is required to counter these negative effects.


[上記要旨の拙まとめ]
この実験で、メデイア報道が電磁波過敏症の進行を促進するのかどうかをテストした。147人の参加者は、先ず無作為に76人と71人の両グループに分けられ、前者はWiFi機器の健康への悪影響に関するテレビ報道を見て、後者は対照となる(健康への悪影響と無関係な)映画を見た。その後、両グループの全員は偽のWiFi電波に15分間暴露された。82人(参加者の54%)は、偽の暴露による症状を訴えた。上記テレビ報道を見たことにより次の事項が増大した。 1) 電磁波過敏症に関する心配 2) 強い不安を持っている人々における偽の暴露後の症状の可能性 3) 症状は偽の暴露によるもので、電磁波過敏であると信じる人々の可能性
おそらく有害物質の悪影響についてのメディア報道は、偽の暴露後の症状を経験する及び明らかな過敏に進行する可能性を増大させることがあり得る。ジャーナリストと科学者との間のより強い関与は、これらの負の影響に対処するために必要とされている。

注:ちなみに、化学物質の反応におけるメディアの警告の影響に関連する論文の要旨は他の拙エントリのここを参照して下さい。

一方、電磁波過敏症発症者の現状のアンケートによると、次に引用するように i) 回答者75人のうち、45.3%が病院でEHS(電磁波過敏症)と診断された[電磁波過敏症と診断する医者がいるようだ] ii) 回答者の76%は、電磁波にも化学物質にも過敏性を持っていると思われる iii) 回答者の33.3%がホメオパシーを利用していた との結果になっています。

有効回答は75通で、女性が71人、男性は4人、平均年齢は51.2歳だった(中略)

病院でEHSだと診断されたのは45.3%で、49.3%は自己診断でEHSだと考えていた。また、EHSではないが電磁波には敏感だと思う、と答えた人は5.3%だった(中略)

一方、MCSと診断されたのは49.3%で、自己判断でMCSだと考えている人は26.7%、MCSではないが化学物質に敏感だと答えたのは14.7%、MCSではないと答えたのは9.3%だった。回答者の76%は、電磁波にも化学物質にも過敏性を持っていると思われる。(中略)

回答者のほとんど(72.0%)は、サプリメントの摂取(46.3%)や運動(38.9%)、入浴(35.2%)、食事療法(35.2%)、ホメオパシー(33.3%)など、何らかの補完代替療法(CAM:Complementary and Alternative Medicine)を利用していた。

さらに、このアンケートでは次に引用するように、経済的な不利益について記述されています。

5.経済的な不利益
回答者75人中、40人(53.3%)は発症前まで何らかの仕事を持っていたが、EHS発症後、その50%が仕事を失い、15%は労働時間が短くなったと答えた。影響を受けた人の業種は、会社員とパートタイマーが各23.1%、教育関係と医療関係が各19.2%だった。
有職者の65%が失業や労働時間短縮で経済的な困難に直面している一方、回答者の85.3%が電磁波を防ぐ対策を取り、経済的負担が発生していた。無線周波数電磁波を遮蔽するシールドクロスの購入が53.3%(対策実施者の合計で約600万円)、電磁波の少ない地域への転居や住宅の購入・新築が24.0%(約1億5100万円)、蛍光灯から白熱灯への買替えが30.7%(約73万円)電磁波の少ない家電への買替えが22.7%(約300万円)だった。対策の総費用は1億6800万円に達した。

(c) その他関連資料
ヒトの中枢神経への影響:人での携帯電話による電磁波曝露実験より

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余談

その他余談

(1)MCSのシステマティック・レビューにおける William J Rea 医師の論文紹介(2016年1月4日に追記)
標記システマティック・レビューにおいて、William J Rea 医師が発表した複数の論文がレビュー対象となっています。この中で一番古いのは「Environmentally triggered thrombophlebitis.」であり、1976年に発表されています*19。遅くともこの発表前には、William J Rea 医師等はMCSの存在を証明すための二重盲検法による誘発(負荷)試験を考案していた*20ものと本エントリ作者は考えます。この論文発表時期はシステマティック・レビューが発表された時点から約30年、本エントリのこの部分が追記された時点から約40年遡ります。

ちなみに、ここに示す資料の発表以降に、盲検法による誘発(負荷)試験の結果が論文又は資料として発表されているのでしょうか?

(2016年1月4日の追記終了)

(2)オーストラリアの資料の玉石混淆性(2016年1月4日に追記)
オーストラリアの資料( pdfファイル)「Multiple Chemical Sensitivity: identifying key research needs」の一部を引用して、上記システマティック・レビューの批判を試みる動きがあるようですが、この資料は玉石混淆であると本エントリ作者は考えます。この考えの説明のために、「石」の部分を以下に引用しながら指摘します。

この資料中の P79 に医学会?である BSAENM(British Society for Allergy, Environmental and Nutritional Medicine)が悪くても中立的に紹介されています。さらに、引用はしませんが、次の引用において示されたレポートの要旨が紹介されています。

In 2000, the BSAENM issued a lengthy report on MCS (Eaton et al., 2000) which included discussion on individuals at risk, eliciting agents, possible mechanisms, patient management and research priorities.(後略)


[拙訳]
2000年に BSAENM は、リスクのある個人、誘発する薬剤、考えられるメカニズム、患者管理及び研究の優先順位についての議論を含む MCS に関する長いレポートを発行した(Eaton et al., 2000)。

しかし、BSAENM は次のエントリで批判され、さらに、以下のWEBページの「Professional Organizations」項に Questionable Organizations(拙訳:疑わしい組織)としてリストアップされています。ただし、具体的な引用は省略します。

・『「MCSの本物の性質が認識されている公式な報告書」って、どれ? - NATROMの日記
・「Questionable Organizations: An Overview - Quackwatch

従って、この資料は、「玉」の部分なのか、それとも「石」の部分なのかを考慮しながら読みこなす必要があると本エントリ作者は考えます。さらに、この資料の一部を引用する場合には、その部分が「玉」であることを説明する必要があると本エントリ作者は考えます。

(2016年1月4日の追記終了)

(3)アレルギー性疾患と化学物質過敏症とは異なる(2016年1月13日に追記)
引用の Q13 に加えて、上記引用で示されているように、アレルギー医が執筆したアレルギー関連の一般医学書のコラムで化学物質過敏症が否定されていることからも、アレルギー性疾患と化学物質過敏症とは異なります。

≪ご参考≫:様々なアレルギー性疾患におけるネット情報のご紹介
・様々なアレルギー性疾患のガイドライン

注:これらのガイドラインの中に、シックハウス症候群診療マニュアル(2009.3.31掲載)がありますが、日本臨床環境医学会編の本「シックハウス症候群マニュアル 日常診療のガイドブック」(2013年発行、日本医師会推薦)の方が新しいです。

接触皮膚炎診療ガイドライン
アトピー性皮膚炎診療ガイドライン

注:両ガイドラインは、共に 2009年に発行されています。

よくわかる食物アレルギー

(2016年1月13日の追記終了)

[その他特記事項](2016年3月24日に追記)

「遅延型」食物アレルギー検査に注意 - NHK 生活情報ブログ
血中食物抗原特異的IgG抗体検査に関する注意喚起 - 日本小児アレルギー学会
〔学会見解〕血中食物抗原特異的IgG抗体検査に関する注意喚起 - 日本アレルギー学会(注:このリンクのみ2016年5月28日に追記)

(2016年3月24日の追記終了)

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(4)先天性の化学物質過敏症とは?(2016年6月4日に追記、ただし、一部は23日に追記)
William J Rea 医師が提唱した Chemical Sensitivity の流れを汲む化学物質過敏症において、先天性のものがあるとの主張には無理があると本エントリ作者は考えます。理由は化学物質過敏症では「トータルボディロード」(TBL:総負荷量)の考え方があり、これによると様々なストレスが蛇口から風呂桶に水として入ってきて、この総量(トータルボディロード)が風呂桶から溢れ出すと発症するというものです(例えばこの pdfファイルの P8 参照)。いくらこの風呂桶が小さいとしても、出生時には既に水が溢れ出ていたということは無いであろうと本エントリ作者は考えます*21。さらに、Mark R Cullen, M.D. の講演予稿によると、MCSの疫学では、「女性は男性よりも約3倍発症し、ほとんどの場合は30~50才の間で発症する。」とのこと。化学物質過敏症は先天性であるとこの疫学の結果とはあまり整合しないと本エントリ作者は考えます。

一方、臨床環境医学において、一部の環境化学物質と発達障害との因果関係を示す実験データが有るという意見があります*22(例えば次の文書「自閉症・ADHDなど発達障害の原因としての環境化学物質」参照)。このメカニズムとしてエピジェネティックが注目されています。ちなみに、トータルボディロードとエピジェネティックスとは全く関係がありません。加えて、精神医学の視点から、この意見に対する一見解を示す引用を次に紹介します。すなわち、金沢大学子どものこころの発達研究センター監修、竹内慶至編の本、「自閉症という謎に迫る 研究最前線報告」(2013年発行)の 第1章 自閉症は治るか――精神医学からのアプローチ(著者:棟居俊夫) の「落語と自閉症」における記述の一部(P49~P55)を次に引用します。

目を遺伝に転じよう。一卵性双生児が二卵性に比べてはるかに、両方が自閉的となる割合が高く、第一子が自閉症の場合第二子が自閉症になる確率が高くなることから、自閉症発現に遺伝が関与していると以前から指摘されてきた。最近ではゲノム解析がすすみ、遺伝的な多型や変異が次々発見されている。2008年段階では次のことがわかっている。自閉症に見られる一塩基多型(SNPs)、染色体異常、それに受精後の遺伝子コピー数変異が合わせて100種類を超える。自閉症遺伝子というべきものはない。個々の遺伝的多型や変異で説明できる自閉症発現は多くても2、3%にすぎない。
起きているのは、多重的な遺伝的影響と環境の影響の加算的効果または遺伝と環境の相互作用としてのエピジェネティクス(註3)と推定される。これは糖尿病などと同じだ。自閉症に関連する遺伝的多型や変異を多く持っている個体が、環境にある危険因子ないしは予防因子によって症状を発現したりしなかったりすると考えられる。
ここで威力を発揮するのは、自閉症の双生児研究やきょうだい研究だ。アメリカではそれが現在大規模に展開中だ。研究者たちの予測は、遺伝と環境の累積効果がある闇値に達した場合に自閉症が発現するというものだ。近い将来解答が出るだろう。ホットトピックの一つは、アレルギー・炎症反応・自己免疫疾患など過剰免疫問題と自閉症の関連だ。脱工業化社会でのヒトの生物的環境(土壌菌・人体菌・寄生虫)の枯渇、ビタミンD不足、運動不足やストレス過剰が自閉症を含む一連の問題の根底にあるのではという仮説も立てられている。
このように書くと、「自閉症は親の育て方のせい」という理不尽な偏見に悩まされてきた人々は困惑するだろう。自分が親として悪かったのではないかと。それは違う。そもそも子どもに遺伝的な脆弱性があることは親にはわからないし、環境の危険因子や予防因子もまだ科学的には明らかになっていない。糖尿病や癌のようにエピジェネティクスの詳しい説明がつくようになれば、対処が可能になる。危険因子と予防因子がわかれば、社会政策や家族支援、子育て支援が再調整されることになる。
これらを進めるうえで必要なのは大規模な疫学調査だ。それも子どもが生まれて成人するまで(理想的には高齢化するまで)の人生全体にまたがるものだ。遺伝の諸変数と環境の諸変数(例えば大気汚染、緑化の程度)の影響を追跡していく、ライフコース疫学が必要だ。そこでは脳のイメージング(本書第3章)、細胞レベルでの遺伝環境相互作用の研究、心理学的検査の実施などが必須だ。相当な資源の投入が求められるだろう。英米ではすでにそれが始まっている。先に述べた国や民族による発現の差をエピジェネティクスの観点から明らかにするためには、日本もこの流れに参入していくことが期待される。(中略)

註3 エピジェネティクス DNAの塩基配列の変化を伴わない細胞分裂にも継承される遺伝子発現を研究する学問領域をさす。遺伝的形質の発現が、先天的な遺伝子配列だけでなく後天的な要因によって生じる現象を追究する。

注:i) 引用中の「本書第3章」の引用は省略します。 ii) 引用中の「エビジェネティクス」については、次のWEBページを参照して下さい。「エピジェネティクス - 脳科学辞典」 iii) 以下の例外を除き、引用はしませんが類似した記述が次にそれぞれ示されています。 ①杉山登志郎著の本、「発達障害のいま」(2011年発行)の 第一章 発達障害はなぜ増えているのか (P25~P41)の一部*23 ②鷲見聡著の本、「発達障害の謎を解く」(2015年発行)の [第2章] 遺伝と環境・総論 の 遺伝要因と環境要因を考える――人間の多様性の1つとして捉える (P40~P51)*24

上記例外として、すぐ上の引用中の用語「エピジェネティクス」について、鷲見聡著の本、「発達障害の謎を解く」(2015年発行)の [第2章] 遺伝と環境・総論 の 遺伝要因と環境要因を考える――人間の多様性の1つとして捉える の「1.生まれか育ちか」及び「2.エピジェネティクス――遺伝子分野の革命的概念」の記述又は記述の一部(P52~P56)を次に引用します。

1.生まれか育ちか
昔からよく使われることわざに「蛙の子は蛙」「瓜の蔓に茄子はならぬ」などがある。これらは、親と子の特徴が似ていることを示す例えであり、遺伝要因、すなわち、『生まれ』の影響の大きさを示すものである。ところが一方で、「氏より育ち」「朱に交われば赤くなる」というのも、よく言われる。こちらは、環境要因、すなわち、『育ち』が人の発達成長に大きく関わることを表している。
一見、相反する内容のことわざが、どちらかがすたれる事も無く今日まで伝わってきたのは、どうしてであろうか。古来から人々は、遺伝要因と環境要因そのどちらもが、子どもの成長発達に重要な影響を及ぼす事を感じ取っていたに違いない。
しかし、近年の学術論争を振り返ると、「遺伝か、環境か」という二者択一の中で論争が続いてきた。そこには、遺伝と環境とは、別々の相反する要因であるという大前提があった。自閉症を例にとるならば、以前は、その発症原因を「母親の育て方が悪いことで起きる」という心因論、つまり環境要因説が信じられてきた。それが、1990年代以降、「生まれつきの脳障害」という器質論、すなわち、遺伝要因を重視した説に取って代わられた。
ところが最近、そのような「遺伝か環境か」という二者択一の論議の根底を揺るがす新たなメカニズムが発見された。それは、環境要因が遺伝子に影響を与えて、その働き方を変化させる「エピジェネティクス」というものである1)。この発見は「遺伝と環境は別々の要因」「遺伝要因は変化しない」という既成の概念を覆すものであった。エピジェネクスの登場以来、病気の発症や子どもたちの発達にとって、遺伝と環境の相互作用は非常に重要であることが認識されるようになってきた。
本節では、このような新しい知見が具体的にどのようなものであるがを示し、その上で、遺伝と環境の相互作用の視点から、自閉症スペクトラム(ASD)について論じる。

2.エピジェネティクス――遺伝子分野の革命的概念
従来の遺伝学の考え方では、両親から受け継いだ遺伝子は生涯不変で、遺伝子の働きもまた生涯不変と考えられていた。そして、遺伝子は精密な設計図、それも修正不可能なインクで書かれた設計図に例えられていた。ところが、その遺伝子の働き具合を変化させる「エピジェネティクス」というメカニズムが明らかになった。ある種の遺伝子にはその働きをコントロールするスイッチに相当するもの(メチル化修飾など)があり、その切り替えによって遺伝子の働き具合が変わるのである。このスイッチの切り替えを行うのは「環境要因」で、遺伝子本体を変化させずに働き具合のみを変える。エピジェネティクスの発見は、遺伝要因と環境要因が合わさって機能するシステムが存在することと、遺伝子機能が後天的に変わりうることを、初めて証明したものである。
例えば、生後間もない時期の精神的ストレスによって、ストレス耐性遺伝子(グルココルチコイド受容体遺伝子)のスイッチが切り替わることが、ネズミでは明らかになっている2)(図2-4)。生後すぐに母ネズミから引き離された仔ネズミのストレス耐性遺伝子を調べると、その遺伝子のスイッチはOFFFの状態になっている。ストレス耐性遺伝子が働かないため、ストレスに弱くなり、精神的に不安定になる。そして、その後もOFFの状態が続くため、その仔ネズミが大人ネズミになっても、精神的に不安定な状態が続く。
一方、母ネズミの世話を受けた仔ネズミは、ストレス耐性遺伝子のスイッチがONの状態になってストレスに強くなり、精神的に安定する。そして、いったんONになったスイッチは、大人ネズミになってもONの状態が続き、精神的に安定する。すなわち、幼少期の環境要因が遺伝子の働き方を決め、その後の精神状態に影響を与え続けている。しかし、この興味深い現象は、ストレス耐性遺伝子のみ、あるいは、母ネズミの世話のみでは起こり得ない。遺伝子と環境要因(世話)の両方が合わさって初めて、仔ネズミの精神状態に作用することが可能となる。そして、「三つ子の魂百まで」ということわざのように、生後早期に獲得した特徴が生涯持続するのである。(中略)

エピジェネティクスについての研究は、人においても開始されている。例えば妊娠中の母親が低栄養状態だった場合、生まれてくる子どもが大人になった時に肥満になりやすいことが知られているが、これにもエピジェネティクスが関与している3)。母親が低栄養になると胎児も低栄養状態に陥り、それに対する防衛反応として、胎児のエネルギー節約遺伝子のスイッチがONになる。つまり、低栄養という環境要因が節約遺伝子のスイッチをONに入れ、その後もずっとONの状態が続く。エネルギー節約遺伝子がONになっていることは、低栄養(エネルギー不足)の時には体の活動にとって都合が良い。しかし、栄養が十分にある時には必要以上にエネルギー節約をすることになり、その結果、余分なエネルギーが脂肪として蓄えられる。この場合、直接働いているのはエネルギー節約遺伝子という遺伝要因であるが、その遺伝子のスイッチをONにしたのは低栄養という環境要因である。遺伝と環境、この2つの要因がエピジェネティクスによって結びついて作用し、成人期に肥満になりやすくなるのである。(後略)

注:i) 引用中の文献番号「1)」、「2)」、「3)」はそれぞれ、1) 「エピジェネティクスのオーバービュー」 2) 「Epigenetic programming by maternal behavior.」 3) 福岡 秀興、他「肥満発症にかかわる胎生期環境の影響」『日本臨床』71巻、237-243頁、2013年 です。 ii) 引用中の「図2-4」の引用は省略します。

ちなみに、a) ヒトのエピジェネティクスに関する発表例として、論文の要旨を以下に紹介します。 b) 化学物質過敏症と自閉スペクトラム症(発達凸凹を含む)との症状における共通点は、例えば不定愁訴をはじめとした身体症状(他の拙エントリのここ及びここ参照)と嗅覚の過敏(他の拙エントリのここここ及びここ参照)です。

Methylation of the oxytocin receptor gene mediates the effect of adversity on negative schemas and depression.[拙訳]オキシトシン受容体遺伝子のメチル化は逆境がネガティブなスキーマ及びうつに及ぼす影響をメディエートする

Building upon various lines of research, we posited that methylation of the oxytocin receptor gene (OXTR) would mediate the effect of adult adversity on increased commitment to negative schemas and in turn the development of depression. We tested our model using structural equation modeling and longitudinal data from a sample of 100 middle-aged, African American women. The results provided strong support for the model. Analysis of the 12 CpG sites available for the promoter region of the OXTR gene identified four factors. One of these factors was related to the study variables, whereas the others were not. This factor mediated the effect of adult adversity on schemas relating to pessimism and distrust, and these schemas, in turn, mediated the impact of OXTR methylation on depression. All indirect effects were statistically significant, and they remained significant after controlling for childhood trauma, age, romantic relationship status, individual differences in cell types, and average level of genome-wide methylation. These finding suggest that epigenetic regulation of the oxytocin system may be a mechanism whereby the negative cognitions central to depression become biologically embedded.


[拙訳]
様々な系列の研究に基づき、オキシトシン受容体遺伝子(OXTR)のメチル化が、ネガティブなスキーマ及びその後のうつの発症への増加したコミットメントに及ぼす大人の逆境の効果をメディエイト(仲介)するであろうと我々は仮定した。100人の中年アフリカ系アメリカ人の女性のサンプルからの構造方程式モデリングと縦断データを使用した我々のモデルを検査した。これらの結果によりこのモデルに強い支持が与えられた。OXTR 遺伝子のプロモーター領域で利用可能な 12 の CpG サイトの分析で4つの要因を同定した。これらの要因の1つは、他では関連していないのに、研究変数に関連していた。この要因は、悲観主義及び不信用に関連するスキーマ(これらのスキーマは順にうつに与える OXTR のメチル化の影響をメディエイトする)に及ぼす大人の逆境の効果をメディエイトした。全ての間接的な効果は統計的に有意であり、そして、子ども時代のトラウマ、年齢、恋愛関係の状況、細胞型における個人差、ゲノムワイドのメチル化の平均レベルでコントロール(統制)した後も有意のままであった。これらの知見は、オキシトシン系のエピジェネティック制御が、これによりうつのネガティブな認知の中核が生物学的に埋め込まれるメカニズムかもしれないことを示唆する。

注:引用中の「メチル化」に関連する「DNAメチル化」及び引用中の「CpG」については、共に次のWEBページを参照して下さい。「エピジェネティクス - 脳科学辞典」の「DNAメチル化」項。

(2016年6月4日の追記終了、ただし、a) の要旨は23日の追記です)

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(5)受動喫煙と肺がんとの関連についての発表(2016年10月10日に追記)
2016年8月31日に、国立がんセンターから次の発表がありました。「受動喫煙による日本人の肺がんリスク約 1.3 倍」 この発表によると、日本人の非喫煙者を対象とした受動喫煙と肺がんとの関連について、複数の論文を統合、解析するメタアナリシス研究*25の結果を公表するもので、受動喫煙のある人はない人に比べて肺がんになるリスクが約 1.3 倍になるとのこと。

この発表に対し、JT が次に示すコメントを出しました。「受動喫煙と肺がんに関わる国立がん研究センター発表に対する JT コメント」 一方、このコメントに対し、国立がんセンターからは次の応答がありました。「受動喫煙と肺がんに関する JT コメントへの見解」 ちなみに、上記発表WEBページから次の pdfファイルがリンクされています。「受動喫煙と肺がんとの関連についてのシステマティック・レビューおよびメタアナリシス」 このファイルにおいて、(日本人を対象とした受動喫煙と肺がんの関連の)システマティック・レビューおよびメタアナリシスについて説明されています。この中の、参考1(P15)で、メタアナリシス/システマティック・レビューの証拠(エビデンス)レベルが示されています。

このやりとりはネット上で大炎上、もとい注目されました(例:はてブtogetter)。本エントリ作者には、JT のコメントが、メタアナリシスを理解しないまま作成・発表*26され、国立がんセンターに論破されたように見えます。ちなみに、本エントリのこの項の追加・公開時においては、国立がんセンターからの応答(反論)に対する JT の再反論は、本エントリ作者は見つけることができませんでした。

上記とは別に、このエビデンスレベルの高いメタアナリシス研究を持ち出して、日本人において、受動喫煙により肺がんになるリスクが高くなることを主張する人は、同様にエビデンスレベルの高いシステマティック・レビューにより疾患概念「MCS」の存在が否定されていること[(2)項参照]の主張を受け入れるしかないのでは*27と本エントリ作者は考えます。換言すると、前者を主張する人で、合理的な根拠なしに、後者の主張を頑として受け入れない人はいないことを本エントリ作者は期待しています*28

(2016年10月10日の追記終了、2016年10月14・16・23日の追記開始)

ちなみに、発表と同様なメタアナリシス(解析)を行った結果、否定されたものにホメオパシーのレメディ*29の特異的効果(注:これにはプラセボ効果は含まれません)があります。この関連リンク例は次に紹介します。
①メタアナリシス関連を含むリンク*30:『「ホメオパシー」への対応について*31、「ホメオパシーは効果が無いと判定されている 〜メタ解析の解説〜」、「イケダハヤトさんのホメオパシー紹介記事について
②主に追記時におけるホメオパシーに関する最近の炎上関連リンク:「まだホメオパシーで消耗してるの?イケダハヤトさん ついにニセ医学に手を出す」、「【米】ホメオパシーで幼児10人死亡 400人健康被害 日本でも販売」、「ミツバチのレメディ「エイピス」は何に効く?」、『繰り返されるホメオパシー騒動と「ニセ科学」 本当の問題はどこに?

(2016年10月14・16・23日の追記終了)

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(6)大脳辺縁系の kindling について(2017年2月1日に追記)
他の拙エントリのここにおいて、PTSD又は複雑性PTSDの視点からの大脳辺縁系の "kindling" に関連する引用を紹介しました。ここでは、MCS の視点からの化学的ストレスによる辺縁系の "kindling" について、オーストラリアの資料「Multiple Chemical Sensitivity:identifying key research needs.」(ここ参照)の P27 における引用を利用して、説明を試みます。

Researchers have proposed limbic kindling as a type of neural sensitisation that may occur in MCS where chemical stressors (pharmacological or environmental) are able to induce physiological effects that then are amplified with the passage of time (Bell et al. 1992; Miller, 1992; Antelman, 1994). More recently, it has been recognised that whereas there is evidence for neural sensitisation in chemical sensitivity and MCS, evidence for a limbic kindling component in neural sensitisation is limited (Bell et al., 1999a).


[拙訳]
時間が経つにつれて増幅する生理的な効果を誘発しうる化学的ストレッサー(薬理学的、環境的)という点で、MCS において生じるかもしれない一種の神経性感作としての辺縁系 kindling を研究者達は提唱してきた(Bell et al. 1992; Miller, 1992; Antelman, 1994)。ところが、より最近に、化学物質過敏症(chemical sensitivity)及び MCS における神経性感作、そして神経性感作における辺縁系 kindling のエビデンスは乏しいことが認識されてきた(Bell et al., 1999a)。

注:i) 引用中の「(Bell et al., 1999a)」はこの論文で、全文は次に示す pdfファイルで読むことができます。「Neural sensitization model for multiple chemical sensitivity: overview of theory and empirical evidence」 一方、引用中の「Bell et al. 1992; Miller, 1992; Antelman, 1994」の紹介は「Bell et al. 1992」を除き省略します。元の資料をお読みください。一方、「Bell et al. 1992」は次に示す論文です。「An olfactory-limbic model of multiple chemical sensitivity syndrome: possible relationships to kindling and affective spectrum disorders.」 ii) 他の拙エントリのここの引用では、kindling を「小さな電気的刺激を長時間受け続けるような電気発火」として説明されています。

ちなみに、この1999年の Bell らの論文(overview)が発表されてから、本エントリのこの部分を書くまでに15年以上経過していますが、MCS の視点からの化学的ストレスによる辺縁系の "kindling" に関する研究の最近に発表された論文は、本エントリ作者による調査では見つかりませんでした。

(2017年2月1日の追記終了)

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エントリ仮公開後の追記

(A)改訂・バージョンアップ関係
(1) 2015-02-04 の初回仮公開
本リンク集を Ver. 0.2 で仮公開しました。

(2) 2015-04-26 の改訂
Ver. 0.25:文章の追加・削除・修正のマイナーな改訂をしました。

(3) 2015-06-07 の改訂
Ver. 0.28:文章の追加・削除・修正のマイナーな改訂をしました。

(4) 2015-09-05 の改訂
Ver. 0.30:文章の追加・削除・修正のマイナーな改訂をしました。

(5) 2016-01-04 の改訂
Ver. 0.31:項目「余談」の追加及びここここにおいて、追加を含む文章の追加・削除・修正のマイナーな改訂をしました。

(6) 2016-01-13、2016-03-24、2016-05-28 の改訂
Ver. 0.32:ここ及びここにおいて、項目の追加を含む文章の追加・削除・修正のマイナーな改訂をしました。

(7) 2016-06-04、2016-06-23、2016-07-15・16、2016-07-28、2016-08-01 の改訂
Ver. 0.33:ここここ及びここにおいて、項目の追加を含む文章の追加・削除・修正のマイナーな改訂をしました。

(8) 2016-10-10・14 ・16・23 の改訂
Ver. 0.34:ここにおいて、項目の追加を含む文章の追加・削除・修正のマイナーな改訂をしました。

(9) 2017-01-13・23、2017-02-01 の改訂
Ver. 0.35:ここここ及びここにおいて、項目の追加を含む文章の追加・削除・修正のマイナーな改訂をしました。さらに、ここの項目の追加を含む文章の追加・削除・修正のマイナーな改訂をしました。


ちなみに、この項はこのエントリ本公開後には削除(全面改訂)予定です。

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*1:William J Rea 医師の流れを汲む医師の方々は「多種類化学物質過敏症」と称するようです

*2:本エントリ公開の頃には収まっていました

*3:ちなみに、平成28年(2016年)に作成され、ここで紹介した pdfファイルにおける記述の一部を以下にリンクと引用をします。 a) 先ず、化学物質過敏症の概念について、同ファイルの「1. 概念」項における記述は他の拙エントリのここを参照して下さい。 b) 次に、化学物質過敏症の臨床検査について、同ファイルの「6. 臨床検査」項における一部の記述を次に引用します(『 』内)。『本症の確定診断に繋がる客観的検査は未だ存在しない。しかし、患者の多くが「嗅覚過敏」に伴う不快な症状を訴えることから、嗅覚伝導路・大脳辺縁系に関する脳科学的評価方法が最近注目を浴びている。』 注:引用中の「大脳辺縁系」については、例えば次の pdfファイルを参照して下さい。「ストレス反応の身体表出における大脳辺縁系 - 視床下部の役割」 一方、情動の視点より例えば次のWEBページを参照して下さい。「恐怖する脳、感動する脳」の「情動と脳」及び「恐怖情動の神経回路」項 さらに、他の拙エントリのここも参照して下さい。

*4:すなわち、誘発試験のシステマティック・レビューのことです

*5:注:本レビュー対象外の研究を含む

*6:このマニュアルの P40 における、「Bornscheinら2008」と「吉田ら2012」は共に前者資料を、「長谷川ら2009」は化学物質過敏症の診断 : 化学物質負荷試験51症例のまとめを、「坂部ら2005」は 『化学物質過敏症』とは何か?の「2.否定的見解」項又はここをそれぞれ参照して下さい。一方、後者資料の研究状況の言及範囲は全て前者資料でカバーできていると本エントリ作者は考えます。

*7:この論文の要旨及び論文の「Discussion」における記述の一部の引用については、他の拙エントリのここを参照して下さい。

*8:加えて、この pdfファイル「2015225012A0004.pdf」には、電磁波過敏症についての調査結果も記述されています。ここを参照して下さい。

*9:加えて、この pdfファイル「2015225012A0015.pdf」には、電磁波過敏症についても記述されています。

*10:この訳注が誤解を招かないように次の拙エントリを参照して下さい(念のためです)。

*11:この報告書は、2015年度の日本における化学物質過敏症に関する調査研究を含むようです。この報告書を紹介する環境省のWEBページは次を参照して下さい。「環境中の微量な化学物質による健康影響に関する調査研究(「本態性多種化学物質過敏状態」に関する研究を含む)

*12:ちなみに、この資料の著者らが作成した以前の関連資料は、本エントリ内で重複するかもしれませんが、次に紹介します。『特発性環境不耐症(いわゆる「化学物質過敏症」)患者に対する単盲検法による化学物質曝露負荷試験』、「特発性環境不耐症の臨床所見 ―シックハウス症候群との比較―

*13:この論文は、2015年前半における化学物質不耐症に関する調査結果をまとめたものとの位置づけが可能かもしれません。著者はデンマーク又はスウェーデンで仕事をしているようです。ただし、(d)の報告書と比較すると、発表時期の関係上か?、次の論文は考慮されていません。「Cortical activity during olfactory stimulation in multiple chemical sensitivity: a (18)F-FDG PET/CT study.

*14:ちなみに、引用はしないものの次に複数の論文の要旨例を示すように、自閉スペクトラム症やADHD等の発達障害のみならず、様々な精神疾患、メンタルヘルス、治療法の一種である認知行動療法、マインドフルネス(他の拙エントリのここ参照)及びEMDR(眼球運動による脱感作と再処理、他の拙エントリのここ及びここ参照)においても、「情動調節」に関連した研究があります。「Fronto-Limbic Brain Dysfunction during the Regulation of Emotion in Schizophrenia.[拙訳]統合失調症における情動調節中の前頭-辺縁脳機能不全」、「Emotional dysregulation in those with bipolar disorder, borderline personality disorder and their comorbid expression.[拙訳]双極性障害、境界性パーソナリティ障害及びこれらの併存症表現における情動調節不全]」、「Emotion regulation, physiological arousal and PTSD symptoms in trauma-exposed individuals.[拙訳]トラウマに曝露された個々人における情動調節、生理学的な覚醒及び PTSD 症状」、「Relation between emotion regulation and mental health: a meta-analysis review.[拙訳]情動調節とメンタルヘルスとの関係:メタアナリシスレビュー」、「Trajectories of change in emotion regulation and social anxiety during cognitive-behavioral therapy for social anxiety disorder.[拙訳]社交不安症に対する認知行動療法中の情動調節及び社交不安における変化の軌跡]」、「Mindful Emotion Regulation: Exploring the Neurocognitive Mechanisms behind Mindfulness.[拙訳]マインドフルな情動調節:マインドフルネスの背後にある神経認知メカニズムの探求」、「Integrating neurobiology of emotion regulation and trauma therapy: reflections on EMDR therapy.[拙訳]情動調節とトラウマ治療法の神経生物学の統合:EMDR治療法の反映」 一方、他の拙エントリにおいても、例えば「少しの情動喚起で闘争モードになってしまう」(ここ及びここ参照)について紹介しています。また、用語「情動調節」についての説明は、他の拙エントリのここを参照して下さい。

*15:ちなみに、この資料の最後の結語シートには、『「新シックハウス症候群に関する相談と対策マニュアル」を是非、ご活用ください。(PDFにて配信予定)』と記載されています。加えて、WEBページ「文献番号201525012A」の「概要版」の最後において、『今後は、「シックハウス症候群に関する相談と対策マニュアル(改訂新版)」のPDF配信をWEB公開するとともに、より効果的な活用に向けて、新聞やメディアを通じた周知や啓発を実施する。』と記載されています。このマニュアルのドラフト版についてはここを参照して下さい。

*16:これらの誘発研究におけるシステマティック・レビューにより、疾患概念である電磁波過敏症の存在に対する評価が可能と考えます。

*17:このリンクの URL では、最初のページが表示されます

*18:メディア警告により実現すること

*19:このレビュー中の Table II によると、この論文は二重盲検法であるようです

*20:さらなる補足説明:世界の常識によると、疾患概念であるMCSの存在を証明する責任があるのはこれを提唱している臨床環境医なので、William J Rea 医師等はこれを証明するための二重盲検法による誘発(負荷)試験を考案したのでしょう

*21:ちなみに、このトータルボディロードという考え方は、本エントリ作者は肯定しません。次の資料でも上記「総身体負荷量説」は批判されています。『特発性環境不耐症患者(いわゆる「化学物質過敏症」)の発症における心理負荷』 一方、長期の児童虐待により、脳に器質的な変化(ダメージ)が生じうることに関しては、次の pdfファイルを参照して下さい。「子育て困難を支援する“愛着障害の診断法と治療薬”の開発 ~発達障害や愛着障害の脳科学的研究~

*22:本エントリ作者は自閉スペクトラム症の発症には遺伝要因と環境要因が複雑にからみあっていると考えています。ただし、環境要因は化学物質のみとは限りません。

*23:「糖尿病」と「エピジェネティクス」がキーワードになっています。ちなみに、次の pdfファイルの P7 に「大多数の発達障害は多因子モデル」、「エピジェネティックスとは」シートがあります。

*24:「エピジェネティクス」がキーワードになっています

*25:論文の要旨はここ参照

*26:このツイート(注:95%信頼区間についてはこのツイート参照)で代表されるように、コメントにおいて、「いずれの研究も統計学的に有意でない結果を統合したもの」、「科学的に説得力のある形で結論づけられていない」等と主張しています

*27:ただし、このシステマティック・レビューが不適切であると証明できる又はシステマティック・レビュー発表後に、この結論をひっくり返すような知見が得られた場合等を除きます。ちなみに、この項の追加・公開時までの本エントリ作者の調査によると、このような知見を見つけることができませんでした。参考までにここを参照して下さい。

*28:このような人の主張には一貫性がなく(すなわち、非合理的にメタアナリシス、システマティック・レビューの可否を判断して)、説得力に欠けると本エントリ作者は考えます。一方、①坂部医師を好意的に紹介する人が、坂部医師を総括責任者とする報告書をどのように評価するのか ②石川医師、宮田医師を好意的に紹介すると同時に、坂部医師も好意的に紹介する人は、化学物質過敏症をどのように理解しているのか(他の拙エントリのここを参照、加えて②は他の拙エントリのここと同様な構図であると本エントリ作者は考えます) 両方に本エントリ作者は興味をもっています。

*29:ここにおける最後のリンク先又はここにおける最後のリンク先参照

*30:ちなみに、この主張をする人は、この特異的効果を否定しないと、一貫性を保てないと本エントリ作者は考えます。

*31:ページ中の文献番号 1 の論文がメタアナリシスに該当します。