krns-linkのブログ

まだ仮公開で、今後も本公開までドタバタします。コメント欄は有りません。ちなみに、拙ブログ作成者は医療関係者ではありません。拙ブログは訪問者の方々がお読みになるためのものですが、自己責任でお読み下さい(念のため記述)。

MCS(多種化学物質過敏状態)リンク集

前書き

twilog を見ると、mortan 様がある著名ネット民に対し、あるWEBサイトの修正を非常に熱心に求めています(ツイート例)。本エントリは、mortan 様の求めに応じるものかどうかは本エントリ作者には不明ですが、本エントリ作者なりの回答例(このWEBサイトの補足例)のような何かとしても、疾患概念であるMCS(Multiple Chemical Sensitivity、多種化学物質過敏状態*1)に興味をお持ちの読者様のために、次の特徴を有するMCSに関するリンク集を本エントリ作者の独断と偏見で一部作成し、仮公開しました。英語資料への依存を少なくする方向(含和訳の付与)での作成を目指しています。熟練したニセ科学批判者各位におかれては、作成方針に違和感があるかもしれませんが・・・
(A)対象は日本のみならず海外も含みます。英語の論文、資料、文書等は、可能であれば日本語訳や解説のあるブログ、コメント等にリンクしました。一次情報は必要に応じてリンク先における(一次情報への)リンクを利用してください。リンクは情報が入手容易なものをなるべく選んでいます。一方、本エントリの一部は化学物質過敏症、その他の話題となります。
(B)本エントリは、本文と余談から構成されます。これの利用法はMCS又は化学物質過敏症に関する情報収集等を想定しています。さらに、2013年6月頃からの、ネット上の一部であるMCS界隈における論争*2についても考慮し、リンク及び引用の内容を設定しています(本エントリ作者の知る範囲内においてですが)。
(C)本エントリ作者はMCS又は化学物質過敏症の患者であることを主張していません。さらに、本エントリ作者は医療従事者ではありません。本エントリの文章、リンク先又は引用の内容・エビデンスレベル等の評価は読者各位でご判断下さい。
(D)本エントリは、予告なく適宜改訂されることが有ります。改訂内容は具体的に示さないことがあります。次の見出し「リンク集」の右側に Ver.を示します。
(E)本エントリの最初の仮公開日は 2015年2月4日 ですが、本公開時には日付変更の予定です。
(F)超長文に注意して下さい。目次作成及び本エントリ内リンクの充実により、さらに読みやすくしました。一方、『 』部は短い引用です(本エントリにおいてこの短い引用は、通常の引用と併存します)。加えて、脚注における引用も基本的にこの方式を採用しています。
(G)下記で紹介する「科学的根拠に基づくシックハウス症候群に関する相談マニュアル(改訂新版)」は厚生労働省WEBページで公開されています。加えて、下記で紹介する「平成27年度 環境中の微量な化学物質による健康影響に関する調査研究業務 報告書」は環境省WEBページで公開されています。

-臨時追記- 現時点で本エントリはあくまでも仮公開段階(例えば一部リンクが機能しません)であり、早くとも本公開までは、本エントリの改訂(追加・修正・削除等)を実施する予定です。予告なく改訂することがあります。

ちなみに、MCSはIEI(Idiopathic Environmental Intolerance、特発性環境不耐症、本態性環境不耐症 又は 本態性環境非耐症)とも呼ばれています。

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リンク集 Ver. 0.36

(2017年7月22日改訂・仮公開、改訂の経緯はここを参照)

(1)MCSに対する世界の医学会等の見解(例:存在、診断法)

ちなみに引用はしませんが、同様な標記見解まとめの例は、マニュアル「科学的根拠に基づくシックハウス症候群に関する相談マニュアル(改訂新版)」の「3.4.1. 疾病概念」項(P50~P51)に記述されています。*3 

(a) Multiple chemical sensitivities--public policy.
文中に『It has been rejected as an established organic disease by・・・』[拙訳]確立された器質性疾患として・・・に拒絶されている と記述されています。

(b) 米国内科学会(American College of Physicians)のポジションペーパー
NATROMの日記 見出し:アメリカ内科学会

(c) 米国医師会(American Medical Association)の公式見解
NATROMの日記 見出し:アメリカ医師会

(d) 米国職業環境医学会(American College of Occupational and Environmental Medicine)のポジションステートメント
忘却からの帰還(1999年)
NATROMの日記 見出し:アメリカ職業環境医学会の主張(1990年)

(e) 英国王立医師協会によるアレルギー診療のガイドラインにおける、「もうひとつのアレルギー」≒MCSの記述
NATROMの日記 見出し:英国王立医師協会

(f) カリフォルニア医学協会としてのコメント
NATROMの日記 見出し:カリフォルニア医学協会

(g) Indoor Air Pollution: An Introduction for Health Professionals(1994年報告書)(該当部)
NATROMの日記

注:この報告書は、American Lung Association[拙訳]米国肺協会、Environmental Protection Agency[拙訳]米国環境保護庁、Consumer Product Safety Commission[拙訳]米国消費者製品安全委員会、American Medical Association (AMA)[拙訳]米国医師会がスポンサーとなって作成されたようです。

(h) AAAAI(American Academy of Allergy Ashthma & Immunology、[拙訳]米国アレルギー・喘息・免疫学学会)のポジションステートメント(1999年)
このポジションステートメントにおける Position Statements 項、及び Summary 項の一部をそれぞれ次に引用します。一方、AAAAI のジャーナルから(2)項に示すMCSの(誘発試験に対する)システマティック・レビューが発表されています。

Position Statements
Several medical societies and organizations have issued position statements pointing out the shortcomings of the IEI diagnosis, the unreliability and misuse of certain diagnostic procedures, and the lack of scientific support for and clinical evidence of the alleged toxic effects from environmental chemicals in these particular patients. In 1986, the AAAI was the first to do so.(5) The American College of Physicians published a position paper in 1989,(84) which was later adopted by the American College of Occupational and Environmental Medicine. The Council on Scientific Affairs of the American Medical Association published a critical review in 1992.(85) The Ministry of Health of the Province of Ontario(86) and the California Medical Association(65) have published results of their investigations of the IEI phenomenon. The US National Academy of Sciences,(87) the World Health Organization,(1) and the International Society of Regulatory Toxicology and Pharmacology(88) have held symposia on the subject. The American Council on Science and Health(89) and the Royal College of Physicians and Royal College of Pathologists in Great Britain(90) have also published reports detailing the unscientific basis for IEI.


[最初の部分(Several medical ・・・ particular patients.)の拙訳]
いくつかの医学会や医学組織は、IEIの診断の欠点、いくらかの診断法の信頼性の欠如や誤用、及び特定の患者における環境化学物質からの毒性効果とされる臨床的証拠に対する科学的サポートの欠如を指摘するポジションステートメントを発行しています。

注:上付き文字 5 は、(5)に変換しました。他の()で囲まれた数字は同様に変換した後のものです。

Summary
IEI-also called environmental illness and multiple chemical sensitivities-has been postulated to be a disease unique to modern industrial society in which certain persons are said to acquire exquisite sensitivity to numerous chemically unrelated environmental substances. The patient experiences wide-ranging symptoms, but evidence of pathology or physiologic dysfunction in such patients has been lacking in studies to date. Because of the subjective nature of the illness, an objective case definition is not possible. Allergic, immunotoxic, neurotoxic, cytotoxic, psychologic, sociologic, and iatrogenic theories have been postulated for both etiology and production of symptoms, but there is an absence of scientific evidence to establish any of these mechanisms as definitive.


[拙訳]
概要
IEIは環境病(environmental illness)やMCSとも呼ばれ、多くの化学的に関連しない環境物質に対し、強烈な感受性を得たと言われる特定の方々における現代の産業社会に特有の疾患であることが仮定されている。患者は幅広い症状を経験するが、これら患者において病理学的又は生理学的な機能障害の証拠は、これまでの研究では欠けている。病気の主観的な性質のため、客観的な症例定義は可能ではない。アレルギー、免疫毒性、神経毒性、細胞障害性、心理学、社会学及び医原性の理論は病因と症状の引き起こしの両方のために仮定されているが、これらの決定的なメカニズムのいずれかを確立するための科学的な証拠が欠如している。

(i) 日本臨床環境医学会
先ず、日本臨床環境医学会編の本「シックハウス症候群マニュアル 日常診療のガイドブック」(2013年発行、日本医師会推薦)の「IV. Q & A Q03.」(P70~P71)と「IV. Q & A Q03.」(P73)をそれぞれ次に引用します。本医学会のMCS又は化学物質過敏症に対する正式な見解ではありませんが、これらの引用により、上記本の発行時における「日本臨床環境医学会」の(事実上の)見解は、「日本において、化学物質過敏症を診療報酬上の傷病名(ICD-10)にすることと、MCSや化学物質過敏症の医学的な定義が確立されることは別である」こと及び「MCSや化学物質過敏症の医学的な定義はまだ確立されていない」であると本エントリ作者は考えます*4

Q03. MCS(Multiple Chemical Sensitivity:多種化学物質過敏状態),化学物質過敏症(CS)とはどんな病気ですか.

・MCSは,1987年マーク・カレンによって「過去に大量の化学物質に一度曝露された後、または長期間慢性的に化学物質の曝露を受けた後,非常に微量の化学物質に再接触した際にみられる不快な臨床症状」として定義・提唱された.
・定義された MCS(Multiple Chemical Sensitivity:多種化学物質過敏状態)の考え方を基本に化学物質による健康障害をめぐる議論が行われてきている.ただ,医学的な定義はまだ確立されておらず,社会的な関心が先行し言葉が独り歩きし,混乱が生じている.
・日本においては,北里研究所病院の石川哲らによって独自に化学物質過敏症の診断基準が設けられている.
・原因としては建材や家具等に使用される,揮発性有機化合物に起因する室内空気汚染や大気汚染,食品中の残留農薬などが考えられるが,特定の化学物質との因果関係や発症のメカニズムなど未解明な部分が多く,今後の研究の蓄積や成果が待たれている.
・2009年10月1日,厚生労働省は診療報酬上の傷病名(ICD-10)とした.


Q13.シックハウス症候群化学物質過敏症の診断では,どのような検査を行うのですか.

・既往症のアレルギー疾患など,他の疾患との区別が非常に難しいため,現状では正確に診断できる検査・診断方法はない.
・診察例
(1) 徹底した問診(発症時期・症状,住環境の変化があったか,症状の変化があったかなど)
(2) 問診をふまえた診察:症状・兆候の把握,他疾患の除外
(3) 必要に応じて,血液生化学検査やアレルギー検査,生理機能検査等を行う.瞳孔検査,眼球運動検査,視覚空間周波数特性検査,免疫検査,内分泌検査,誘発試験などを行っている検査機関もある.
(参考)化学物質の曝露情報を得るために,住宅の揮発性有機化合物濃度数値等を求められる場合もある.

注:日本臨床環境医学会は日本学術会議協力学術研究団体ではありません。

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(2)MCSのシステマティック・レビュー

ひょっとすると、先ず以下に引用した「コラム 化学物質過敏症は存在するか?」に目を通す方が良いかもしれません。

著者は Das-Munshi氏 等で、彼らは The Journal of Allergy and Clinical Immunology に発表しました。この誘発研究*5により疾患概念MCSの存在の評価が十分可能で、否定されたと本エントリ作者は考えます。
・タイトルと本文:Multiple chemical sensitivities: A systematic review of provocation studies.
要旨の和訳例:9-6 化学物質過敏症:刺激試験結果の総合解析(III-85) ただし、この訳が必ずしも要旨に忠実(正確)でないと本エントリ作者は考えます。
・NATROM先生等は次のはてブPubMed におけるこの論文の要旨に対するコメントを紹介しています。
・これに関する総説的なものとして、斎藤博久著の本「アレルギーはなぜ起こるか ヒトを傷つける過剰な免疫反応のしくみ」(2008年発行)の「コラム 化学物質過敏症は存在するか?」における記述(P25~P26)を次に引用します。

コラム 化学物質過敏症は存在するか?

化学物質過敏症は、米国アレルギー学会雑誌が掲載したもっともエビデンスレベル(疫学研究の信頼度に関する科学的な格付け)が高い研究と位置づけられているシステマティックレビューにおいて、その存在が否定されています。この論文の著者らは、多種類の化学物質に対する過敏症に関する論文のすべてのデータを解析した結果、従来のほとんどの研究は適切なコントロールを欠いていること、および、被験者が反応を示したのは、それが化学物質であると知らされた場合に限るという結論を導きました。
過敏症とは「健常被験者には耐えられる一定量の刺激への曝露により、客観的に再現可能な症状または徴候を引き起こす疾患をいう」と定義されていますので、化学物質過敏症は過敏症の定義からはずれます。今後は、過敏症としてアレルギー学者が扱う研究課題ではなく、心理学者、神経学者が扱う研究課題になるということです。いずれにしても、これらの症状を訴える方々に対する慎重な配慮が必要です。

注:i) 引用中の「エビデンスレベル」については、ここ又は pdfファイル「文献評価のための疫学・EBM基礎知識」の P37を参照して下さい。 ii) ちなみに、 a) 著者の斎藤博久医師はここにおける一部のリンク先にも登場します。 b) 同著者により最近に出版された本、「Q&Aでよくわかるアレルギーのしくみ」(2015年発行)の P37 にも上記引用と類似した記述があり、この部分を次に引用(『 』内)します。 『たとえば、化学物質過敏症にまつわる論文のすべてのデータを解析した結果がアメリカのアレルギー学会誌に掲載されましたが、そこでは「症状を起こすのはそれが化学物質であると知らされた場合に限る」という結論が導き出されています(注1)。「システマティック・レビュー」と呼ばれる科学的に信頼性の高いレベルの調査において、その存在自体が否定されてしまったのです。』(注:引用中の「注1」は標記システマティック・レビューのことです)

ちなみに、このシステマティック・レビュー発表以降の研究*6状況は次のマニュアルを参照すれば良いかもしれません。 「科学的根拠に基づくシックハウス症候群に関する相談マニュアル(改訂新版)」の「3.4.2. どのような化学物質のばく露に起因するのか?を調べるために」項(P51~P52) ちなみに、この項におけるあまり古くない誘発(負荷)試験に関連した文献番号と実際の資料や論文とのリンク関係(提示可能なものに限る)を次に示します。 20) :「Double-blind placebo-controlled provocation study in patients with subjective Multiple Chemical Sensitivity (MCS) and matched control subjects.」、 21) :「平成16年度 本態性多種化学物質過敏状態の調査研究 研究報告書」(参考としてのWEBページ 「本態性多種化学物質過敏状態の調査研究報告書」)、 23) :「化学物質過敏症の診断 -化学物質負荷試験51症例のまとめ」、 24) :「特発性環境不耐症(いわゆる「化学物質過敏症」)患者に対する単盲検法による化学物質曝露負荷試験

一方、2016年に発表された論文(タイトル:Association of Odor Thresholds and Responses in Cerebral Blood Flow of the Prefrontal Area during Olfactory Stimulation in Patients with Multiple Chemical Sensitivity.[拙訳]MCS を伴う患者における、嗅覚刺激中の前頭葉領域の脳血流量変化での臭気閾値と応答の関連、 全文 *7の「Introduction」において、上記システマティック・レビューを参照した記述があり、その部分を次に引用します。

Past provocation studies identified no clear dose–response relationship between exposure and reaction in MCS [18].


[拙訳]
MCS における過去の誘発研究では、曝露と反応との明確な用量反応関係を確認できなかった [18]。

注:i) 引用中の文献番号「[18]」はシステマテック・レビューのことです。 ii) 引用中の「用量反応関係」については、例えば次のWEBページ又は pdfファイルを参照して下さい。 「3. 化学物質の用量・反応関係(2)」、「化学物質のリスクと環境教育(P30)」 iii) ちなみに、a) 資料「新シックハウス症候群に関する相談と対策マニュアル」の P40 には次に引用する(『 』内)類似の記述があります。 『科学的には化学物質曝露と身体反応には関連はなく,症状の原因が化学物質とはいえない。』 b) 加えて、資料「Chemical Sensitivity-The Frontier of Diagnosis and Treatment 」の日本語要約においても次に引用する(『 』内)類似の記述があります。 『しかしながら, 化学物質過敏症状を訴える患者が存在することは明らかであるにも関わらず, その病態解明が未だ進展していないために, 取り扱う臨床家・医療機関によって患者への対応は大きく異なっているのが実状である。その最大の理由として, 環境中の大量ではなく, 極めて微量な化学物質との因果関係の証明が非常に困難であることがあげられる。』

≪ご参考≫システマティック・レビューについては例えば次に概略を示します。
疫学研究デザインP14~P15
文献評価のための疫学・EBM基礎知識P49~P54。

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(3)MCS=IEIの総説的な資料

ちなみに引用はしませんが、マニュアル「科学的根拠に基づくシックハウス症候群に関する相談マニュアル(改訂新版)」の「3.4. シックハウス症候群といわゆる化学物質過敏症の違い」項(P50~P54)及び「第11章 本態性環境不耐症」(P204~P208)の一部に本態性環境不耐症又はいわゆる化学物質過敏症に関する記述があります。

(a) 『化学物質過敏症』とは何か?
ちなみに、この資料中の引用文献24)で示された日本の環境省研究班が実施した二重盲検法による曝露(負荷)試験結果等を紹介するWEBページを次に紹介します。「本態性多種化学物質過敏状態の調査研究報告書

(b) 化学物質過敏症に関する情報収集、解析調査(平成20年1月、公害等調整委員会事務局)
ちなみに、この資料中に日本語訳として一部を引用されたデンマークEPAの報告書(英文)は次に紹介します。「Environmental Project no. 988, 2005 Multiple Chemical Sensitivity, MCS

(c) Mark R Cullen, M.D. の講演予稿
The Perplexing Problem of Multiple Chemical Sensitivities: A Perspective for Toxicologists (Invited lecture)日衛誌(Jpn J. Hyg.)第64巻 第2号 2009年3月の拙訳のみを次に引用として示します。ちなみに、Mark R Cullen氏はMCSの名付け親です。

表題:「MCSのやっかいな問題 毒物学者からの観点から」


背景
1980年代の間に、産業医及び環境医は、多様な刺激性又は毒性化学物質の非常に低いレベルの曝露後に発生する呼吸器、中枢神経等の症状によって特徴づけられる新しい症候群を報告した。典型的には、回復するように思われる患者から、これは汚染や過曝露等の十分に特徴づけられた環境”イベント”の後に発生した。この現象を説明するために、講演者により、MCSと名付けられ、これを説明するための神経毒性の新しい形態、神経毒性独特の残留形態、又は精神状態の理論が誕生した。なぜならば、患者の多くは非常に障害を負い、しかも、毒物学の単純な説明が欠如したために、議論が拡大し、新たなケースが世界中から報告されるようになったため。このプレゼンテーション(講演)で、典型的なケースを説明し、20年の研究で学んできたことをまとめよう。


ケーススタディ
44歳の熟練機械工のM氏(男性)は、「石油化学製品」のごくわずかな痕跡を嗅ぐことによる毎回の激しい頭痛、混乱及び息切れを訴えるためにクリニックに現れた。3ヶ月前の仕事中における換気装置の故障で彼と他の人が脱脂溶剤(大部分が 1,1,1 トリクロロエタン)に過剰に曝露されたこと以前は、彼はうまくやっていた。(この過剰曝露で)多くの人は頭痛や吐き気が生じたが、2日後に換気装置が修理されると彼以外の全ての人は回復した。しかし、換気装置の改善後も、M氏が仕事に戻った時に症状が続いて、働くことができなかった。さらに妙なことに、彼はバスやトラックの後ろを運転していた時、あるいは店にいる時に同じ事態であることに気づき始めた。家庭用製品は、彼に悪影響を与えるようになり、彼は(防毒)マスクを着用し始めた。しかし、彼がクリニックに来る前の3ヶ月超、彼の妻の香水を含めたより多くの化学物質により彼は悩んでいた。家庭用製品の全てが彼の家から除去された後の家にいた時にのみ、彼はより良く感じた。クリニックにおいて脳のMRI及び肺機能検査はもちろん、充分な診察と日常的な血液検査を彼は受けた。全ての検査結果は正常であった。彼の職場における検査では、溶剤及び加工液の全てのレベルがTLV(訳注:Threshold Limited Values、許容濃度の域値)の10%未満と、非常に清浄な工場であることが判明した。彼はMCSと診断された。


MCSの定義
臨床的な症候群を定義する多くの試みが有ったが、まだ基本的な所見又は検査所見での異常が存在しないので、すべての定義は、病歴及び他の原因が発見されないことに依存する。鍵となる主な特徴は次の通り。1)環境曝露後の発症 2)多くの状態における、さまざまな臭いや刺激物の超微量での曝露後の予測可能な方法での多様な症状の再発 3)試験、検査が全て正常である。すなわち症状の説明が不可能 4)症状を説明する他の主要な疾患(身体的又は精神的)が存在しないこと


疫学
最初は、これらのケースは非常にまれなものと思われたが、1980年代及び1990年代の臨床報告は、これらはどこにでも発生することを示唆した。さらに、1990年~1991年の湾岸戦争からの退役軍人の健康調査(多くのケースが明らかになった)を含むいくつかの大規模調査が実施された。これらの調査により、2~6%の人々は、症状を引き起こす化学物質を避けるために、彼らが転職や引越しをした事実に基づく軽い又はより重いMCSの変異型(variants)を有することが示された。臨床研究により、いくつかの手がかりが提供されている:女性は男性よりも約3倍発症し、ほとんどの場合は30~50才の間で発症する。多くの患者はまた、慢性疲労や線維筋痛症を経験しており(これもよく解っていないが)、さらに、多くの患者は過去に不安や抑うつが有った。少なくとも米国では貧しい人々の間よりも高い社会階級で発症するが、アトピーも家族の背景もどちらも関係しないようである。


病因
もちろん大きな疑問は、傷害の機序です。当初MCSはある種のアレルギーや免疫性の障害と考えられていたが、多くの研究でこれは誤りであることが判明している。さらに、「生化学」経路、すなわち P-450(訳注1)又はグルタチオン還元酵素等の解毒経路のいくつかの表現型の欠損に対し広範囲に調査されたが、これは有りそうもないことが判明している。症状を誘発する臭いや刺激物への反応の中心的役割によって、より最近の注目は第1脳神経(訳注2)及び、CNS(訳注3)における大脳辺縁系(訳注4)の応答のパターンに向いている。これらの神経経路の混乱(disruption)に対するエビデンスは(肯定と否定で)混在しており、説得力が有る動物モデルが存在しないままである。代わりに、多くの人々がMCSを行動又は生化学的にメディエイト(訳注5)された不安障害として解釈されている。DSM-IV(訳注6)ではMCSはこのカテゴリー(訳注7)に分類される[注:MCSに対するICD-10(訳注8)のコードは無い(訳注9)]。この仮説を支持するのは、患者における不安障害の頻繁な履歴と心的外傷後ストレス障害(訳注10)に似た反応のパターンである。

しかし、薬理的及び行動介入(訳注11)は治療においてあまり役立たないので、ほとんどの精神科医はこのように症状を解釈することに抵抗する。

[注1]拙訳を読みやすくするために、このパラグラフでは訳注を次に記述しました。
訳注1:シトクロム P-450 は、日本で発見されたヘムタンパク質であり、一酸化炭素と結合して、波長450nmの青い光の吸収が増加する色素という意味で命名されました。加えて、次のWEBページも参照して下さい。 「シトクロムP450」、「健康食品安全情報ネットの関連用語」の「チトクロームP450酵素」項、「Human P450 data
訳注2:匂いの刺激を中枢に伝える嗅神経のことです。
訳注3:Central Nervous System:中枢神経系。
訳注4:大脳辺縁系については、PTSD又は複雑性PTSDの視点より他の拙エントリのここを参照して下さい。 一方、情動の視点より例えば次のWEBページを参照して下さい。「恐怖する脳、感動する脳」の「情動と脳」及び「恐怖情動の神経回路」項
訳注5:漢字としては「媒介」又は「仲介」と翻訳されるようです。
訳注6:DSMは Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders の略語で、「アメリカ精神医学会が定めた精神障害の診断と統計の手引き」のことです。
訳注7:DSM-IVにおける不安障害のカテゴリーは、ここを参照して下さい。
訳注8:死因や疾病の国際的な統計基準として世界保健機関(WHO) によって公表された分類、詳細はここを参照して下さい。
訳注9:日本において化学物質過敏症はICD-10の T65 その他及び詳細不明の物質の毒作用 T65.9 詳細不明の物質の毒作用 に分類されています。*8
訳注10:アルファベットの短縮形で「PTSD」と表記される場合が有ります。PTSDについては、他の拙エントリのリンク集を参照して下さい。
訳注11:「介入」とは医学においては、疾患を予防または治療するため、あるいはその他の方法によって健康状態を改善するために行われる治療や行為のことです。ちなみに、他の拙エントリ「シックハウス症候群(又はMCS) 心身医学の見地からに関する文書について」の公開時において、PTSDの治療法は薬物療法のみならず、様々な心理療法が開発されつつあります。このエントリのリンク集を参照して下さい。


自然史
現在、MCSのいくつかの主な特徴を説明するのに十分な症例が存在する: 1)それは自発的に解決するように見えなく、しかもまだ証明された治療法はない 2)最初の受診後、多くの患者は疲労や筋骨格の痛み等のより「慢性の」訴えを除いて、(病状が)進行する又は合併症につながるようには見えない。重要なのは、社会的、経済的に派生するひどい結果にもかかわらず、多くの人が行う極端な孤立を患者が選択するのか、又は彼らが正常に機能し続け、かつ度重なる症状が有るのかにかかわらず、これらの観察が真実である。実際には、全体的に後者のグループが引きこもる人よりも経年的に良い行為のように見える。


予防と治療
多くの異なった臨床的及び心理的な処置が試みられているが、暴露に対する根本的な反応を変える方法は無いようである。ほとんどの努力は、症状そのものの緩和やコントロールよりも、症状に直面している生活機能の向上を目的としている。より実用的には、過度の曝露後のMCSへの進展を防止する努力はより成功するかもしれない。この成功への鍵は、1)自己限定又は良性かもしれないとはいえ、有害な化学物質に曝露される患者へのとても緊密なフォローアップ 2) MCS様な反応の発生に対する早期の探求 3)最初にMCSの症状が生じた時に、ほとんどの個々の患者が信じている、症状は当初の曝露によるより深刻な中毒反応である証拠はないことを強化する早期の教育

[注2]この項における一次情報の記述「however self-limited or benign it my seem;」は、 「however self-limited or benign it may seem;」として翻訳しました。


未来
MCSの有病率と重症度のために、機序に関する研究があり続けるが、この作業は研究主体としてのこれらの患者の非常な困難さと良い動物モデルの欠如により妨げられている。

注:引用中の「動物モデル」に関連する「モデル動物」ついては、例えば、次のWEBページを参照して下さい。「モデル動物 - 脳科学辞典

(d) 環境省の業務における総括責任者:坂部貢による「平成27年度 環境中の微量な化学物質による健康影響に関する調査研究業務 報告書*9

ちなみに、i) 他の拙エントリにおいてこの報告書の一部を引用しています。ここここにおける脚注及びここにおける第二の脚注を参照して下さい。 ii) 引用はしませんが、この報告書では「これらを踏まえると、いわゆる化学物質過敏症とは1つの疾患というよりも、化学物質ばく露も含めた、いくつかの要因による身体の反応や精神的なトラウマが重なって表現される概念と考えることが、現在の時点では妥当と考えられる」及び「ライフイベントが患者にとってどれほどストレスフルなのかを客観的に評価し病態を把握する必要性が指摘されている」(共にこの報告書の「1.概念」において)との主旨が記述されており、これに関連する、すなわち、ライフイベントの評価及びトラウマに言及した資料の例は次に示します。『特発性環境不耐症患者(いわゆる「化学物質過敏症」)の発症における心理負荷*10 注:a) この資料が投稿されたジャーナルを発行している日本職業・災害医学会は日本学術会議協力学術研究団体です。この会誌のインパクトファクターは本エントリ作者には見つけられませんでした。 b) ちなみに、この資料の「考察」中の研究の位置づけに関する記述「本研究は辻内らの提起に応じた研究になる」における辻内らの引用文献12)「辻内優子,辻内琢也,中尾睦宏,他:化学物質過敏症における心身医学的検討.心身医学 42:206―216, 2002.」については、次の pdfファイルが参照できます。「化学物質過敏症における心身医学的検討」 iii) 坂部貢による化学物質過敏症のご教授についての資料は次を参照して下さい。 「化学物質過敏症

(e) Chemical intolerance.[拙訳]化学物質不耐症*11
この論文の要旨を次に引用します。ちなみに、この全文は次のWEBページで参照できます。「Chemical intolerance.

Chemical intolerance (CI) is a term used to describe a condition in which the sufferer experiences a complex array of recurrent unspecific symptoms attributed to low-level chemical exposure that most people regard as unproblematic. Severe CI constitutes the distinguishing feature of multiple chemical sensitivity (MCS). The symptoms reported by CI subjects are manifold, involving symptoms from multiple organs systems. In severe cases of CI, the condition can cause considerable life-style limitations with severe social, occupational and economic consequences. As no diagnostic tools for CI are available, the presence of the condition can only be established in accordance to criteria definitions. Numerous modes of action have been suggested to explain CI, with the most commonly discussed theories involving the immune system, central nervous system, olfactory and respiratory systems as well as altered metabolic capacity, behavioral conditioning and emotional regulation. However, in spite of more than 50 years of research, there is still a great deal of uncertainties regarding the event(s) and underlying mechanism(s) behind symptom elicitation. As a result, patients are often misdiagnosed or offered health care solutions with limited or no effect, and they experience being met with mistrust and doubt by health care professionals, the social care system and by friends and relatives. Evidence-based treatment options are currently unavailable, however, a person-centered care model based on a multidisciplinary treatment approach and individualized care plans have shown promising results. With this in mind, further research studies and health care solutions should be based on a multifactorial and interdisciplinary approach.


[拙訳]
化学物質不耐症(CI)は、ほとんどの人々が問題ないとみなす低レベルの化学物質の暴露に起因する再発性の非特異的症状の複雑な列挙を経験した状態を説明するために使用される用語である。重度な CI は、多種化学物質過敏状態(MCS)の際立った特徴を構成する。 CI 患者により報告された症状は、複数の器官系からの症状を意味し多種多様である。CI の重症例において、この異常は深刻な社会的、職業的及び経済的な結果を伴う相当なライフスタイルの制限を引き起こしうる。CI の診断ツールは利用できないので、この異常の存在は判定基準の定義に従って確立されることができるだけである。変化した代謝能、行動学的な条件付け及び情動調節はもちろん、免疫系、中枢神経系、嗅覚及び呼吸器系に関係する最も一般的に論議されている理論を伴った CI の説明を、多数の作用様式は示唆する。しかしながら、50年を超える研究にもかかわらず、事象及び症状の誘発の陰に隠れたメカニズムに関するかなり多くの不確実なものが存在する。結果として、患者はしばしば誤診され、効果が限定的な又は効果の無いヘルスケアソリューションを提供され、そして、彼らの体験はヘルスケア専門家、社会養護システム、友人及び親戚による不信と疑惑を受ける。エビデンスに基づいた治療法の選択肢は現在得られないものの、集学的治療アプローチに基づく人中心のケアモデル及び個別化ケアプランは有望な結果を示している。これを念頭に置いて、さらなる調査研究やヘルスケアソリューションは多因子及び学際的アプローチに基づくべきである。

注:i) 引用中の「条件付け」については、他の拙エントリ及び他の拙エントリのここ及びここを参照して下さい。 ii) 引用中の「情動調節」に関連した論文例は、他の拙エントリのここここ及びここを参照して下さい*12。一方、引用中の「情動」については、次のWEBページ「情動 - 脳科学辞典」及びメンタライジングの視点から他の拙エントリのここを参照して下さい。 iii) 引用中の「免疫」については、例えば次のWEBページを参照して下さい。「免疫学Q&A

(f) 資料「Chemical Sensitivity-The Frontier of Diagnosis and Treatment」[拙訳]化学物質過敏症-診断と治療の最前線」の「Ⅴ Course, treatment and prognosis」における記述の一部及び「Ⅶ Future prospects」における記述を次に引用します。ちなみに、英文中の「(中略)」は本エントリ作者が追記したものです。

Ⅴ Course, treatment and prognosis(中略)

As noted above, since there are many unknown aspects of the pathophysiology, specialized treatments for this disease have not been established. At the moment, the most effective remedy is to avoid the causative agent that is believed to induce symptoms. Since there is a high co-existence rate of allergic disease with CS, it is also necessary to enhance the QOL to fully control the allergic symptoms. In addition, since the co-existence rate of mental illness with CS is as high as 80%, a psychosomatic and psychiatric approach is also effective3).

Ⅶ Future prospects
CS usually presents as a reaction to a small amount of chemicals which would not induce any toxicological effects. It is generally a disease exhibiting the various symptoms, as defined above. In addition to the diversity of developmental factors, and the onset of symptoms and severity, a method for diagnosing the disease is still being established. Since it is the "small amount effect" of chemicals, because of the so-called concept of addiction, it is difficult to describe the conditions (dose-response relationship); additionally, individual differences are considerable at the same time and certain tendencies for the patient are difficult to understand. In this paper, the disease was generally described in the following question-answer form, which is the subject theme of pros and cons: 1) Can CS be considered as a chemical hypersensitivity, a mental illness, or otherwise? 2) Do the chemical exposure and appearance of symptoms match? 3) Can the allergic mechanisms incidentally be explained? 4) Do differences exist in gene analysis? We focused on these questions and others. According to recent research, 1) in groups of patients and healthy people, there is a possibility that differences from the brain physiology point of view may appear, so, for the future, it is very important to deepen the knowledge of the psychosomatic approach if possible, and, 2) when this disease is treated from the immunological aspects, the relationship between some immune responses, mainly pathophysiologically allergic reactions, are strongly suggested to be clarified; 3) individual differences cause chemical sensitivity; it can be mentioned that genetic factors (genomic information) are deeply involved, so, in the future, focused basic research is required with respect to these points, as it would allow for the promotion of interdisciplinary clinical research.


[拙訳]
Ⅴ 経過、治療及び予後(中略)

上述のように、病態生理の多くの未知の側面が存在するため、この疾患に対する特定の治療法は確立されていない。現時点での最も効果的な療法は症状を誘発すると思われる原因物質を避けることである。 アレルギー性疾患の CS との併病割合が高いので、アレルギー症状を十分にコントロールするための QOL(生活の質)を高める必要もある。加えて、精神疾患の CS との併病割合は80%と高いため、心身医学的及び精神医学的アプローチも有効である3)。

Ⅶ 将来の見通し
CS は通常、毒物学的影響を引き起こさない少量の化学物質に対する反応として提示される。これは、一般的に、以上で示されるように、様々な症状を示す疾患である。発生要因の多様性、症状の徴候及び重症度に加えて、疾患を診断するための方法はまだ確立中である。いわゆる中毒の概念によるため、それは化学物質の「少量効果」であるので、状態(用量-応答関係)の記述は困難である。加えて、同時に個人差はかなりのものであり、患者に対するある傾向の理解は困難である。本論文では、この疾患は一般的な賛否両論の主題である次の質問-回答形式で記述された: 1)CS は化学物質過敏症、精神的な病気又はその他とみなすことができるか? 2)化学物質への曝露と症状の出現は一致するか? 3)アレルギーのメカニズムを付随的に説明することはできるか? 4)遺伝子解析において違いがあるのか​​? 我々はこれらの質問等に焦点を当てた。最近の研究によると、1)患者及び健常者のグループにおいては、脳生理学の視点からの差異が現れるかもしれない可能性があるので、将来的には、可能であれば心身医学的アプローチの知識を深めることが非常に重要である。そして、2) この疾患が免疫学的側面から治療される場合、主に病態生理学的アレルギー反応であるいくつかの免疫応答間の関係が明確にされることが強く示唆される; 3)個人差が化学物質への感受性を引き起こす;遺伝的要因(ゲノム情報)が深く関与している、 それで将来においては、学際的な臨床研究の推進が可能となるであろう、これらの点についての集中的な基礎研究が必要となる。

注:i) 引用中の文献番号「3)」は次の論文です。 「Symptom profile of multiple chemical sensitivity in actual life.」 ii) 引用中の「疾患を診断するための方法はまだ確立中である。」に関連して、この資料の Abstract における記述では「Therefore, establishing and standardizing highly specified objective diagnostic parameters is required.[拙訳]従って、高度に特異化した客観的な診断パラメータの確立と標準化が必要である。」となっています。 iii) 引用中の「CS」は「Chemical Sensitivity、化学物質過敏症」の略です。 iv) 引用中の「アレルギー性疾患の CS との併病割合が高い」に関連して、この資料の第一著者である坂部貢氏がご教授する他の資料「化学物質過敏症」中の P30 における記述を次に引用(『 』内)します。 『一般の集団でだいたい30~35%ぐらいがアレルギーを持っている方だと思うのですが、この病気の場合は受診される方の70~80%ぐらいが何らかのアレルギーを持っている、あるいはその既往がありますので、アレルギーが何かの成立に関係していると思うのです。ただ、症状をアレルギー機序で科学的にはまだ説明できないところがあります。 』(注:引用中の「この病気」とは化学物質過敏症のことです) v) 引用中の「遺伝的要因(ゲノム情報)」に関連するかもしれない臨床試験については、次のWEBページを参照して下さい。 「日本人多種化学物質過敏症に関連する遺伝要因の解明*13 ちなみに、科学的根拠に基づくシックハウス症候群に関する 相談マニュアル(改訂新版)の「3.4.3. 環境化学物質に対する遺伝的感受性(遺伝子多型)との関係」項には次に引用する(『 』内)記述(P53)があります。 『このように現在までの内外の研究では化学物質過敏症を遺伝的な感受性の違いで説明するのは難しい状況です。』 vi) 引用中の「心身医学」に関しては、例えば他の拙エントリのここ及び次のWEBページを参照して下さい。 「こころとからだ」 vii) 引用中の「脳生理学」と「免疫」に関連するかもしれない、科学研究費助成事業データベースに登録されている化学物質過敏症に関する研究課題については、次のWEBページを参照して下さい。 「化学物質に対する非特異的な過敏状態の解明とその改善方法に関する研究」(注:このページ中の「キーワード」も参照して下さい) viii) 引用中の「免疫」については、例えば次のWEBページを参照して下さい。 「免疫学Q&A

(g) 次のマニュアルにおける突発性環境不耐症の治療についての記述、すなわち、「Idiopathic Environmental Intolerance - MSD Manual Professional Version」(2017年1月レビュー/改訂)の「Treatment」項における記述を次に引用します。

Treatment

・Sometimes avoiding suspected triggers

・Psychologic treatments

Despite an uncertain cause-and-effect relationship, treatment is sometimes aimed at avoiding the suspected precipitating agents, which may be difficult because many are ubiquitous. However, social isolation and costly and highly disruptive avoidance behaviors should be discouraged. A supportive relationship with a primary care physician who offers reassurance and protects patients from unnecessary tests and procedures is helpful.
Psychologic evaluation and intervention may help, but characteristically many patients resist this approach. However, the point of this approach is not to convince patients that the cause is psychologic but rather to help them cope with their symptoms and improve quality of life (1). Useful techniques include psychologic desensitization (often as part of cognitive-behavioral therapy) (1) and graded exposure (see Specific Phobic Disorders : Treatment). Psychoactive drugs can be helpful if targeted toward coexisting psychiatric disorders (eg, major depression, panic disorder).


[拙訳]
治療

・時には疑わしいトリガーを避ける

心理療法

不確実な原因と結果の関係にもかかわらず、(誘発剤の)多くが遍在しているため困難かもしれない、疑わしい誘発剤を避けることを、治療は時に目的とする、しかしながら、社会的な隔離及び損失が大きく非常に破壊的な回避行動は避けるべきである。プライマリケア医との支持的な関係は、安心感を提供し、不要な検査や処置から患者を保護するのに役立つ。
心理的な評価と介入が助けになるかもしれないが、特色として多くの患者がこのアプローチに抵抗する。しかしながら、このアプローチのポイントは、原因が心理的なものであることを患者に納得させることではなく、むしろ、症状に対処して、そして生活の質を向上させるのを助けることである(1)。有用なテクニックには、心理学的な脱感作(しばしば認知行動療法の一​​部として)(1)及び段階的曝露(Specific Phobic Disorders : Treatment を参照)が含まれる。向精神薬は、併存する精神障害(例えば、うつ病パニック障害)を対象とする場合には有用であり得る。

注:i) この部分の執筆者は Donald W. Black, MD、Roy J. 及び Lucille A. です。 ii) 「Specific Phobic Disorders : Treatment」(拙訳:特定の恐怖症:治療)等のこの引用部におけるリンクは外れています。リンクは標記WEBページを利用して下さい。 iii) 引用部における「(1)」は以下に示すマインドフルネス認知療法(MBCT)に関連する論文です。ちなみに、この論文の紹介については、他の拙エントリのここを参照して下さい。 「Mindfulness-based cognitive therapy (MBCT) for multiple chemical sensitivity (MCS): Results from a randomized controlled trial with 1 year follow-up.」 iv) 引用中の「うつ病」、「パニック障害」については、共に他の拙エントリのリンク集を参照して下さい。 v) ちなみに、MSDマニュアル プロフェッショナル版における「特発性環境不耐症」のWEBページ(日本語)は次を参照して下さい。 「特発性環境不耐症 - MSDマニュアル プロフェッショナル版

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(4)ウィキペディア化学物質過敏症」の一部解説

ウィキペディア「化学物質過敏症」(2016年7月31日現在)における一部の記述を例にして、疫学及び科学的根拠に基づいた医療(エビデンスレベル)の視点から考察しましょう。この中の「化学物質過敏症に関する議論」項における記述を次に引用します。ただし、下記「懐疑的見解」項は一部のみの引用です。

肯定的見解
化学物質の人体に及ぼす影響については未だ解明が進んでいないが、一部の専門家の間では、近年激増の傾向にある自律神経失調症やうつなどを含めた現代病は、化学物質の曝露が原因である、という意見がある[6]。また、化学物質過敏症は様々な症状を呈するため、適切な診断が下されない場合がある。具体的には、眼に症状が現れている場合では、アレルギー性結膜炎及びドライアイなどの診断が、呼吸器系の症状では風邪や喘息が、その他では自律神経系異常に関連する疾患または精神科領域の疾患として診断されてしまう可能性がある[7][8]。なお、化学物質過敏症は煙草の受動喫煙により生じる受動喫煙症の悪化で生じたり[9]、あるいは新築あるいは改築した住宅で発症するシックハウス症候群の悪化により生じる場合もある[10][11]。不定愁訴、咳喘息、気管支炎、ドライアイ、アレルギー性結膜炎、アレルギー性鼻炎、自律神経系の病、脳や神経系の病、うつ病などの様々な病名の診断がなされ手術や投薬を重ねても改善されなかった、および逆に悪化した症例で、化学物質過敏症としての診断と治療によった後、病状の現状維持または改善及び社会復帰に結びついた例があるとの主張がある[12][13]。また、functional MRIによる脳画像解析を用いた客観的診断手法についての研究がある[14]。


懐疑的見解
化学物質過敏症とされる症状については科学的・疫学的な立証を経たものは少ない。微量の化学物質が多彩な症状を引き起こしているとする客観的な証拠がなく、においや先入観により引き起こされていると考えられる[15]ことなどから、「化学物質過敏症」という名称自体が適当でないとする意見があり、主要な学会からはその診断名称を拒否されている[16][17][18]。

上記引用の懐疑的見解における「微量の化学物質が多彩な症状を引き起こしているとする客観的な証拠がなく、においや先入観により引き起こされていると考えられる[15]」等のエビデンスレベル(証拠のレベル)が適用可能な(医学的)文章を読む際に、その信頼性を検討するならば、エビデンスレベルの考慮が必要不可欠であると本エントリ作者は考えます。すなわち、ウィキペディアなので、専門家が文章を作成したかどうかは保証の限りでは無いこともあり、それぞれの文章において引用した文献の内容及びエビデンスレベルの評価を重視する必要があると本エントリ作者は考えます。

エビデンスレベルについては、次の国立がん研究センターがん対策情報センター がん情報サービスのWEBページ4.2)項を参照すると良いかもしれません。

ちなみに、上記4.2)項で示された、エビデンスレベルの表を次に引用します。

Ⅰ システマティック・レビュー/RCTのメタアナリシス
Ⅱ 1つ以上のランダム化比較試験による
Ⅲ 非ランダム化比較試験による
Ⅳa 分析疫学的研究(コホート研究)
Ⅳb 分析疫学的研究(症例対照研究、横断研究)
Ⅴ 記述研究(症例報告やケース・シリーズ)
Ⅵ 患者データに基づかない、専門委員会や専門家個人の意見

注:Ⅰがエビデンスレベル最高で、Ⅵが最低とされます。非専門家の体験談はランク外です。

上記懐疑的見解における、引用文献[15]は、エビデンスレベルは最高とされるMCSのシステマティック・レビューのことです。さらに、文章「主要な学会からはその診断名称を拒否されている[16][17][18]」は、(1)MCSに対する世界の医学会等の見解(例:存在、診断法)の一部と重なります。

一方、上記肯定的見解においては、[6]~[13]は全て新聞記事からの引用で、エビデンスレベルは最低とされる「専門委員会や専門家個人の意見」とするのにも疑問があります。[14]は日本化学工業協会 研究支援自主活動 Annual Report 2006 (P79) (注:現在リンク切れです)の表題「化学物質過敏症診断体系確立の試み:問診票、匂い認知・情動検査、脳画像検査を用いた総合的診断」の研究概要のようです(研究期間:2005年9月1日-2006年8月31日)。また、引用中の「functional MRIによる脳画像解析を用いた客観的診断手法についての研究がある」に関連して、嗅覚刺激中の脳画像解析についての2013年以降に発表された論文例の紹介は他の拙エントリのここを参照して下さい。

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(5)米国環境医学アカデミー、William J Rea 医師、石川医師、宮田医師

注:Clinical Ecologists(和訳:臨床環境医)と(日本の)臨床環境医(日本臨床環境医学会に所属する大半の人々)を区別すべきであることについては、他の拙エントリにおける次の余談(及び)を参照して下さい。

(f) William J Rea 医師(含米国環境医学アカデミー)
・忘却からの帰還 その1その2その3その4その5その6その7
NATROMの日記
食品安全情報blog
・次の Quackwatch のWEBページによると、米国環境医学アカデミー(AAEM)のメンバーに対する規制措置が示されています。一次情報の拙訳のみを以下に引用します。「 Regulatory Actions against AAEM Members

米国環境医学アカデミー(American Academy of Environmental Medicine:AAEM) は、Theron Randolph により1965年に臨床環境医学会(Society for Clinical Ecology)として設立され、主に医師及びオステオパシーの医師で構成されている。ほとんどの AAEM のメンバーは、MCS、毒性カビ、酵母の異常増殖の怪しげな概念を支持する。1996~1997年の AAEM のメンバーリストには429人が各々登録されていた。彼らの約75%が米国内で活動している医師であった。2015年6月には217人が各々登録され、その中の150人が米国内でライセンスを持つ(西洋医学の)医師又はオステオパシーの医師で、少なくとも25人(以下にリストアップする:訳注 本引用では省略しています。一次情報を参照して下さい)は、ライセンス会議の措置に服従している。アスタリスク(*)は、元 AAEM の会長(president)であることを示す。個々のケースの詳細へのアクセスはリンクをクリックして下さい。

参考:本項又は以下の引用に示すように、William J Rea 医師は、電磁波過敏症及びホメオパシーにも関係しています。

電磁波過敏症に関する最新知見と今後の課題 の「Ⅰ.1. 歴史」における記述の一部を次に引用します。

1991年、米国の医師 William J Rea 24) は「送電線や携帯基地局などから発生するマイクロ波などにより、主に自律神経系などを中心に影響を受ける健康障害で、化学物質過敏症と密接な関係がある」として、電磁波過敏症(electrical hypersensitivity, ES)という病名を提起した。

注:引用中の文献番号 24) は、Rea WJ, Pan Y, Fenyves EJ, Sujisawa I, Samadi N, Ross GH.: Electromagnetic field sensitivity. J Bioelectricity. 10: 241-256, 1991 のことです。

(g) 石川医師(日本臨床環境医学会の初代理事長等を歴任)
1) NATROMの日記等 その1その2その3その4

2) 多種類化学物質過敏症は公認されたか?

3) 誘発中和法
室内空気質健康影響研究会[編集]の本、「室内空気質と健康影響 解説 シックハウス症候群」(2004年発行)中の、文書 「北里研究所病院における知見-治療を中心として-」 P295~P299(著者は、石川 哲(北里研究所病院臨床環境医学センター))の「Ⅵ 米国における中和療法」項 (P297) における記述を次に引用します。

北里研究所病院では、未だ施行していないが、米国においては、患者の過敏性症状を誘発する原因化学物質に対する中和療法が積極的に行われている13-14)。元来食物アレルギー患者に対して始められた治療法15)を化学物質過敏症に応用したものである。アレルゲンの用量を徐々に上げていく従来の減感作療法と異なり、中和療法では逆に濃度の高いものから低いものを順番に皮内に投与し、生じた膨疹の状態から個人の中和量を決定し、それを投与することにより症状の軽減化を図るというものである。今後本邦においても有効な治療法の一つとして考慮されるものと思われる。

ただし、この引用文中の「13-14)」及び「15)」は引用番号であり、それぞれ、上付き文字を半角文字に変更しました。

さらに、標記誘発中和法に批判的なWEBページを次に紹介します。誘発中和法 -疑わしい治療法-

4) かびんのつまインタビュー (次に引用するように、「――石川先生は電磁波過敏症については、どうお考えですか?」項及び「――電磁波過敏症もやはりなかなか世間一般で理解されているとは思えず、苦しんでいる人が多いと思います。化学物質過敏症と併発しているのなら、なおさらですが。」項において、下記電磁波過敏症にまで言及しています。)

――石川先生は電磁波過敏症については、どうお考えですか?

化学物質過敏症の世界的な権威でもあるドイツのルノー先生も、電磁波過敏症については20年前から治療を行っていますね。本エントリ作者や北里大学の宮田幹夫教授、ダラスのレイ教授とも一緒に研究を続けていましたが、彼はバート・エムスタール(Bad Emstal)という地域に温泉付きの治療室をつくったんです。そこの入院室は電磁波を極力防ぐための工事が、アースも含めて厳重に行われていました。”

――電磁波過敏症もやはりなかなか世間一般で理解されているとは思えず、苦しんでいる人が多いと思います。化学物質過敏症と併発しているのなら、なおさらですが。

電磁波過敏症について詳しく研究しているのは、北里大学医学部名誉教授で、現在は東京の荻窪で"そよ風クリニック"を開業している宮田幹夫先生です。彼に診てもらえば、適確に指導してくれると思います。

注:これらの引用中の宮田幹夫教授、宮田幹夫先生は宮田医師のことです。また、ダラスのレイ教授とは、William J Rea 医師のことです。

5) 例えば引用も考慮して、資料(参照)の著者になっているのは、一体全体どうゆうことなのでしょうか? 賢明な読者の皆様方へ、ご教授下されば幸いです。

6) その他
(5-1)(i)及び(j)余談5(c)及び余談6項も参照して下さい。

(h) 宮田医師
1) NATROMの日記等 その1その2その3

2) 誘発中和法 -疑わしい治療法-

3) かびんのつまインタビュー
上記(5)(g)4)項参照。

4) 電磁波で悪性腫瘍ができる? 現代病“電磁波過敏症”とは *14

5) 例えば引用、他の拙エントリの引用も考慮して、資料(参照)の著者になっているのは、一体全体どうゆうことなのでしょうか? 賢明な読者の皆様方へ、ご教授下されば幸いです。

6) その他
他に(5-1)(i)及び(j)項も参照して下さい。

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(n) 化学物質過敏症(Chemical Sensitivity)におけるWilliam J Rea 医師と、石川医師宮田医師との関係を示す例について、室内空気質健康影響研究会[編集]の本、「室内空気質と健康影響 解説 シックハウス症候群」(2004年発行)中の、文書 「心療内科的知見」 P300~P317(著者は、熊野宏昭、齊藤麻里子、辻内優子、吉内一浩、辻内琢也、中尾睦宏、久保木富房、小久保奈緒美、青柳直子、大橋恭子、山本義春、篠原直秀、柳沢幸雄、坂部貢、松井孝子、宮田幹夫、石川哲)の「1 はじめに 2)病態・発症機序」項の P301 における記述の一部を次に引用します。

一方、Rea は、セリエのストレス学説に基づいて、化学物質の刺激に対する体の反応としての仮説を唱えている。最初の化学物質の刺激に対して単純な刺激症状を示す警告期のあと、刺激が持続すると次第に適応・馴化がおこり症状が隠蔽されてしまうマスキング期となる。さらに刺激が持続すると適応能力が疲弊して種々の異常反応を示す器官疾病期となる。発症には物理的・化学的・生物的・心理的ストレッサー全てに対する感受性を含む生化学的な感受性の個人差(individual susceptivity)と、体内に侵入した化学物質の総負荷量(total body load)が関係し、中毒発生量以下の毒性(subtoxic dosis)という問題も関与しているとしている。石川・宮田らは、上記の Rea とほぼ同様の説を主張しており、化学物質過敏症という用語も Rea の唱えるものとほぼ同義であると考えられる。

注:i) 引用中の「Rea」は、William J Rea 医師のことです。 ii) この引用中の文献番号の表示は省略しています。

注目点は、著者「宮田幹夫、石川哲」と引用における最後の文章「石川・宮田らは、上記の Rea とほぼ同様の説を主張しており、化学物質過敏症という用語も Rea の唱えるものとほぼ同義であると考えられる。」です。

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(8)シックハウス症候群

最初にシックハウス症候群については、次のマニュアルを参照して下さい。 「科学的根拠に基づくシックハウス症候群に関する相談マニュアル(改訂新版)」 ちなみにこのマニュアルは、次のWEBページにおいて公開されています。 「厚生労働省 シックハウス対策のページ

(a) 狭義のシックハウス症候群(又は2型のシックハウス症候群)の定義と診断基準(案)
日本臨床環境医学会編の本、「シックハウス症候群マニュアル 日常診療のガイドブック」(2013年発行、日本医師会推薦)の Ⅰ.シックハウス症候群の概念 の「3-2 狭義のシックハウス症候群」項における記述(含表I-6)(P6)を次に引用します。

シックハウス症候群の概念は前述したように広範囲の病態を含むため,中毒,アレルギーなどの疾患以外で,微量の化学物質により発生する病態未解明の状態を,狭義のシックハウス症候群として扱うことを,2007年に厚生労働科学研究費補助金による合同研究班(主任研究者:秋山一男および相澤好治)で合意した.化学物質により発生する狭義のシックハウス症候群は,「建物内環境における,化学物質の関与が想定される皮膚・粘膜症状や,頭痛・倦怠感等の多彩な非特異的症状群で,明らかな中毒,アレルギーなど,病因や病態が医学的に解明されているものを除く」と定義された(相澤,2008).
また狭義のシックハウス症候群の診断基準を前述した合同研究班会議で検討し,平成19(2007)年12月に合意し,さらに平成20(2008)年12月の班会議で基準を改定した(表I-6).特定の部屋,建物内で症状が出現し,そこを離れれば症状が改善することがシックハウス症候群の特徴であり,症状発生時点で,室内空気中の化学物質濃度が指針値を超えていれば,強い根拠となるとした.しかしながら測定値が低くても症状が発生する場合もあり,また発生時に測定されていない場合でも,診断を否定する根拠にはならないと考えられる.すなわち,表I-6の1,2,3項目は必須,4番目の項目は参考としてよいと思われる.


表I-6 狭義(化学物質による)シックハウス症候群の定義と診断基準(案)
(2008.12 秋山・相澤合同班会議合意)
--------------------------
定義
建物内環境における,化学物質の関与が想定される皮膚・粘膜症状や,頭痛・倦怠感等の多彩な非特異的症状群で,明らかな中毒,アレルギーなど,病因や病態が解明されているものを除く.
診断基準
1.発症のきっかけが,転居,建物*の新築・増改築・改修,新しい備品,日用品の使用等である.
2.特定の部屋,建物内で症状が出現する.
3.問題になった場所から離れると,症状が改善する.
4.室内空気汚染が認められれば,強い根拠になる.
--------------------------
(*建物とは,個人の住宅のほかに職場や学校等を含む)

注:i) 狭義のシックハウス症候群は2型のシックハウス症候群とも言われています。シックハウス症候群の(型の)分類については、例えば、講演「室内空気質が健康に与える影響」 又は シックハウス症候群診療マニュアル 厚生労働科学研究(健康安全・危機管理対策総合研究事業)の表1 (P10) を参照して下さい。 ii) この引用では「定義と診断基準(案)」となっていることに注意して下さい。 iii) 「科学的根拠に基づくシックハウス症候群に関する相談マニュアル(改訂新版)」においては、用語「狭義のシックハウス症候群」又は「2型のシックハウス症候群」を使用した説明はありません。

(b) MCS(IEI)とシックハウス症候群における症状が明確に異なることを主張する資料
特発性環境不耐症の臨床所見 ―シックハウス症候群との比較―

(c) 化学物質過敏症(本態性環境不耐症)とシックハウス症候群は異なる疾病として考えることが必要であることを主張する資料
・「科学的根拠に基づくシックハウス症候群に関する相談マニュアル(改訂新版)」の 内容と相談別回答例(Q&A) の『Q2. 「シックハウス症候群」と「化学物質過敏症」の違いは何でしょうか?』項(P209)を参照して下さい。ちなみに引用はしませんが、同マニュアルの 3.4. シックハウス症候群といわゆる化学物質過敏症の違いについて の「3.4.1. 疾病概念」項(P50~P51)において、両者の違いについての記述があります。

(d) シックハウス症候群患者の脳科学的アプローチに関する資料
他の拙エントリの「※2 [ご参考3]」項参照。これによると、「シックハウス症状の要因を室内空気汚染のみに求めることには、臨床上大きな問題があると考えられる」とのことのようです。

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(12)電磁波過敏症

*15
標記英名:idiopathic environmental intolerance attributed to electromagnetic fields (IEI-EMF)
(a) システマティック・レビュー、総説、調査資料等*16
① システマティック・レビュー(2010年) 忘却からの帰還第7回電磁界フォーラム(東京)~電磁過敏症:臨床および実験的研究の現状~の講演資料(配布資料)P9~P10
② システマティック・レビュー(2005年) Electromagnetic Hypersensitivity: A Systematic Review of Provocation Studies (ここでは全文が示されています)
総務省-電波の人体に対する影響
身のまわりの電磁界について 平成 25 年 3 月 環境省 環境保健部 環境安全課 の「[参考] 電磁過敏症(電磁波過敏症)」項 (P26~P29)*17
科学的根拠に基づくシックハウス症候群に関する相談マニュアル(改訂新版) の「11.4. 電磁過敏症について」項 (P207~P208)
電磁波の健康影響と電磁波リスクとのつきあい方 Web セミナー

注:i) 資料③及び④は総説、資料⑤は相談マニュアル、そして資料⑥は Web セミナーの位置づけでそれぞれ紹介しています。 ii) 「WHO ファクトシート 296」 は資料④の P26 にリンク先が示されています。一方、「ファクトシート EU COST Action BM0704」は第7回電磁界フォーラム(東京)~電磁過敏症:臨床および実験的研究の現状~の講演資料(配布資料)P11~P14 において簡単に紹介されています。

「生体電磁環境に関する検討会 第一次報告書(案)」に対する意見募集の結果及び第一次報告書の公表

COST(欧州科学技術研究協力機構)からの電磁過敏症に関するファクトシート公表について このWEBページ中の 電磁界を原因と考える本態性環境不耐症 または“電磁過敏症”
オーストラリア放射線防護・原子力安全庁 ファクトシート「電磁過敏症」発行

(b) 電磁波過敏症とノセボ効果の関係を示すWEBページ、資料、論文例
第7回電磁界フォーラム(東京)~電磁過敏症:臨床および実験的研究の現状~のパネルディスカッション資料
第7回電磁界フォーラム(東京)~電磁過敏症:臨床および実験的研究の現状~の講演資料(配布資料)
第7回電磁界フォーラム(東京)~電磁過敏症:臨床および実験的研究の現状~の記録
第7回電磁界フォーラムに東海大学医学部教授の坂部貢氏(坂部医師)が参加して、発言しています。本記録文書の 5.パネルディスカッションの内容 (P2~P16) は本エントリ作者にとって興味深いです。

・電磁過敏症の原因はノセボ効果の疑い、メディア報道により病気の症状を引き起こす。元記事のリンク:(日本語文)(英文)
一次情報としての論文要旨「Are media warnings about the adverse health effects of modern life self-fulfilling? An experimental study on idiopathic environmental intolerance attributed to electromagnetic fields (IEI-EMF).[拙訳]現代生活の反健康効果についてのメディア警告は、自己実現的*18ですか? IEI-EMF に関する実験的な研究」を以下に引用します。ちなみに、この論文の全文はここを参照して下さい。

OBJECTIVE:
Medically unsubstantiated 'intolerances' to foods, chemicals and environmental toxins are common and are frequently discussed in the media. Idiopathic environmental intolerance attributed to electromagnetic fields (IEI-EMF) is one such condition and is characterized by symptoms that are attributed to exposure to electromagnetic fields (EMF). In this experiment, we tested whether media reports promote the development of this condition.

METHODS:
Participants (N=147) were randomly assigned to watch a television report about the adverse health effects of WiFi (n=76) or a control film (n=71). After watching their film, participants received a sham exposure to a WiFi signal (15 min). The principal outcome measure was symptom reports following the sham exposure. Secondary outcomes included worries about the health effects of EMF, attributing symptoms to the sham exposure and increases in perceived sensitivity to EMF.

RESULTS:
82 (54%) of the 147 participants reported symptoms which they attributed to the sham exposure. The experimental film increased: EMF related worries (β=0.19; P=.019); post sham exposure symptoms among participants with high pre-existing anxiety (β=0.22; P=.008); the likelihood of symptoms being attributed to the sham exposure among people with high anxiety (β=.31; P=.001); and the likelihood of people who attributed their symptoms to the sham exposure believing themselves to be sensitive to EMF (β=0.16; P=.049).

CONCLUSION:
Media reports about the adverse effects of supposedly hazardous substances can increase the likelihood of experiencing symptoms following sham exposure and developing an apparent sensitivity to it. Greater engagement between journalists and scientists is required to counter these negative effects.


[拙訳]
目的:
食品、化学物質、環境毒素に対する医学的に根拠のない「不耐」は一般的であり、メディアで頻繁に議論されている。電磁場に起因する特発性環境不耐性(IEI-EMF)はそのような状態の1つであり、電磁場(EMF)への曝露に起因する症状によって特徴付けられる。この実験では、メディア報道がこの状態の進展を促進するかどうかを我々は調査した。

方法:
参加者(n = 147)は、WiFi(n = 76)による健康への悪影響についてのテレビ報道又は[訳注:健康への悪影響とは無関係な]対照映像(n = 71)[訳注:両映像を実験映像とする]を見るためにランダムに割り当てられた。実験映像を見た後、参加者は WiFi 信号による偽の暴露を受けた(15分)。主なアウトカムの尺度は、偽の暴露後の症状の報告であった。副次的アウトカムには、EMF の健康影響についての心配、偽の暴露に起因する症状及び知覚された EMF に対する過敏性における増加が含まれた。

結果:
147人の参加者のうち82人(54%)が偽の暴露に起因する症状を報告した。実験映像を見ることにより次の尺度の増加があった:EMF 関連の心配(β= 0.19; P = .019);高い既存の不安を伴う参加者の間の偽の暴露後の症状(β= 0.22; P = .008)。高い不安を伴う人々の間での偽の暴露に起因する症状の可能性(β= .31; P = .001); EMF に敏感であると信じていて、偽の暴露を症状の起因とした人々の可能性(β= 0.16; P = .049)。

結論:
おそらく危険な物質の有害影響に関するメディア報道は、偽の曝露後の体験する症状及びそれに対する見かけの感受性の発現の可能性を上昇させうる。これらのマイナスの影響に対抗するには、ジャーナリストと科学者との間のより大きな関与が必要である。

注:i) 引用中の「n = 147」、「n = 76」及び「n = 71」は共に人数を示しています。 ii) ちなみに、a) 化学物質への応答におけるメディアの警告の影響に関連する論文要旨は他の拙エントリのここを b) においにおけるノセボ効果に関連する論文要旨は他の拙エントリのここを それぞれ参照して下さい。

さらに、電磁波過敏症とノセボ効果との関連についての複数の論文要旨を以下に紹介します。この中にメディア報道に関する論文も含まれます。
Are media reports able to cause somatic symptoms attributed to WiFi radiation? An experimental test of the negative expectation hypothesis.[拙訳]メディア報道は WiFi 放射に起因する身体症状を引き起こしうるのか? ネガティブな予想仮説の実験的検証(ちなみに、全文はここにあるようです)

People suffering from idiopathic environmental intolerance attributed to electromagnetic fields (IEI-EMF) experience numerous non-specific symptoms that they attribute to EMF. The cause of this condition remains vague and evidence shows that psychological rather than bioelectromagnetic mechanisms are at work. We hypothesized a role of media reports in the etiology of IEI-EMF and investigated how somatosensory perception is affected. 65 healthy participants were instructed that EMF exposure can lead to enhanced somatosensory perception. Participants were randomly assigned to watch either a television report on adverse health effects of EMF or a neutral report. During the following experiment, participants rated stimulus intensities of tactile (electric) stimuli while being exposed to a sham WiFi signal in 50% of the trials. Sham WiFi exposure led to increased intensity ratings of tactile stimuli in the WiFi film group, especially in participants with higher levels of somatosensory amplification. Participants of the WiFi group reported more anxiety concerning WiFi exposure than the Control group and tended to perceive themselves as being more sensitive to EMF after the experiment compared to before. Sensational media reports can facilitate enhanced perception of tactile stimuli in healthy participants. People tending to perceive bodily symptoms as intense, disturbing, and noxious seem most vulnerable. Receiving sensational media reports might sensitize people to develop a nocebo effect and thereby contribute to the development of IEI-EMF. By promoting catastrophizing thoughts and increasing symptom-focused attention, perception might more readily be enhanced and misattributed to EMF.


[拙訳]
電磁場(IEI-EMF)に起因する特発性環境不耐性を患う人々は、EMF に起因する多数の非特異的症状を経験する。この状態の原因はあいまいのままである。そして、エビデンスによれば、生体電磁気的メカニズムよりも心理的メカニズムが働いていることが示される。我々は、IEI-EMF の病因学におけるメディア報道の役割の仮説を立て、身体感覚の知覚がどのように影響されるかを調査した。 65名の健康な参加者は、EMF 暴露が身体感覚の知覚の増強をもたらしうると指示された。参加者は、EMF の有害な健康影響に関するテレビ報道(訳注:WiFi 群)又は中立的な報道(訳注:対照群)のいずれかを見るためにランダムに割り当てられた。次の実験中に、参加者は試験の50%で偽の WiFi 信号に曝露されながら、触覚(電気)刺激の刺激強度を評価した。 偽の WiFi への暴露は、WiFi 群の特に高レベルの身体感覚増幅を伴う参加者における触覚刺激の強度評価の増加をもたらした。WiFi 群の参加者は、対照群よりも WiFi 曝露に関連するより強い不安を報告し、そして試験前に比較して試験後に EMF への曝露に対しより敏感になったと知覚する傾向があった。センセーショナルなメディアの報告は健康な参加者において触覚刺激の知覚の増強を促進しうる。身体症状を強烈な、不安にさせる、有害なものとして知覚する傾向がある人々は最も脆弱に見えた。センセーショナルなメディアの報告を受信することは、ひょっとして人々にノセボ効果を発現する感作をするかもしれなく、それによって IEI-EMF の発症に寄与するかもしれない。破局的思考の促進及び症状にフォーカスした注意により、知覚はひょっとしてより容易に増強され、そして誤って EMF のせいにするかもしれない。

注:i) 引用中の「身体感覚増幅」については、次のWEBページを参照して下さい。 『「医学的に説明できない症状」って?』、「感情制御にかかわる身体感覚研究の概観」 加えて、「身体感覚増幅」に関連するかもしれない「精神相互作用」については、他の拙エントリの リンク集を参照して下さい。さらに、 引用中の「身体感覚増幅」のみならず、「失感情症」、「失体感症」、「ストレス反応」、「自律神経機能」「内受容感覚」及び「気づき」にも関連した資料は次を参照して下さい。 「情動の気づき、身体の気づきと自律神経による恒常性調整プロセスの関係」 一方、化学物質過敏症と身体感覚増幅(尺度)の関連については、WEBページ「半揮発性有機化合物をはじめとした種々の化学物質曝露によるシックハウス症候群への影響に関する検討」の下部のリンクから一括ダウンロード可能なファイル 201625016A0004.pdf 中の資料「1.化学物質に対する感受性変化の要因及び半揮発性有機化合物の健康リスク評価」(P28~P42)の「C1 化学物質に対する感受性変化の要因」項(P30~P31)を参照して下さい。 ii) 引用中の「破局的思考」に関連する疼痛における「破局的思考」については、次のWEBページを参照して下さい。 「痛みに対する破局的思考と心理社会的ストレスの関連」 iii) ちなみに、a) 化学物質への応答におけるメディアの警告の影響に関連する論文要旨は他の拙エントリのここを b) においにおけるノセボ効果に関連する論文要旨は他の拙エントリのここを それぞれ参照して下さい。

Dispositional aspects of body focus and idiopathic environmental intolerance attributed to electromagnetic fields (IEI-EMF).[拙訳]ボディフォーカスの気質的な側面及び電磁界に起因する特発性環境不耐性(IEI-EMF)

Body focus is often considered an undesirable characteristic from medical point of view as it amplifies symptoms and leads to higher levels of health anxiety. However, it is connected to mindfulness, well-being and the sense of self in psychotherapy. The current study aimed to investigate the contribution of various body focus related constructs to acute and chronic generation and maintenance of medically unexplained symptoms (MUS). Thirty-six individuals with idiopathic environmental intolerance to electromagnetic fields (IEI-EMF) and 36 controls were asked to complete questionnaires assessing negative affect, worries about harmful effects of EMFs, health anxiety (HA), body awareness, and somatosensory amplification (SSA), and to report experienced symptoms evoked by a sham magnetic field. Body awareness, HA, SSA, and EMF-related worries showed good discriminative power between individuals with IEI-EMF and controls. Considering all variables together, SSA was the best predictor of IEI-EMF. In the believed presence of a MF, people with IEI-EMF showed higher levels of anxiety and reported more symptoms than controls. In the IEI-EMF group, actual symptom reports were predicted by HA and state anxiety, while a reverse relationship between symptom reports and HA was found in the control group. Our findings show that SSA is a particularly important contributor to IEI-EMF, probably because it is the most comprehensive factor in its aetiology. IEI-EMF is associated with both a fear-related monitoring of bodily symptoms and a non-evaluative body focus. The identification of dispositional body focus may be relevant for the management of MUS.


[拙訳]
ボディフォーカスは症状を増幅し、そしてより高い健康不安のレベルに導くものとして、医学の観点からしばしば望ましくない特徴と考えられる。しかしながら、心理療法においてマインドフルネス、ウェルビーイング及び自己感覚に結びつけられる。本研究は医学的に説明できない症状(MUS)の急性及び慢性の発症や維持の構成に関連する様々なボディフォーカスの寄与を調査することを目的とする。36 人の電磁界に起因する特発性環境不耐性(IEI-EMF)を伴う人々及び 36 人の対照群は、ネガティブな感情、電磁界(EMF)による有害な影響への心配、健康不安(HA)、ボディへの気づき及び身体感覚増幅(SSA)を評価するアンケートへの記入が、そして偽の磁界(MF)により誘発され、体験した症状の報告が、それぞれ要求された。ボディへの気づき、HA、SSA 及び EMF に関連した心配は IEI-EMF を伴う人々と対照群との間で良い識別力を示した。全ての変数を考慮すると、SSA は IEI-EMF の最高の予測因子であった。信じられた MF の存在において、IEI-EMF を伴う人々は対照群と比較して高レベルの不安と多くの報告された症状を示した。 症状の報告と HA との間で逆の関係が対照群において見られた一方で、IEI-EMF のグループにおいて、実際の症状は、HA 及び状態不安により予測された。SSA は IEI-EMF に対する特に重要な誘因であり、おそらく、その病因学において最も総合的な要因だからであると、我々に知見は示した。IEI-EMF は恐怖にかかわる身体症状のモニタリングと非評価のボディフォーカスの両方に関連する。気質的なボディフォーカスの同定は、MUS の管理に関連するかもしれない。

注:i) 引用中の「状態不安」は特定の状況において感じる不安のようです。 ii) 引用中の「身体感覚増幅」及び「医学的に説明できない症状」については、例えば共に次のWEBページを参照して下さい。 『「医学的に説明できない症状」って?』、「感情制御にかかわる身体感覚研究の概観」 加えて、「身体感覚増幅」に関連するかもしれない「精神相互作用」については、他の拙エントリの リンク集を参照して下さい。さらに、 引用中の「身体感覚増幅」のみならず、「失感情症」、「失体感症」、「ストレス反応」、「自律神経機能」「内受容感覚」及び「気づき」にも関連した資料は次を参照して下さい。 「情動の気づき、身体の気づきと自律神経による恒常性調整プロセスの関係」 一方、化学物質過敏症と身体感覚増幅(尺度)の関連については、WEBページ「半揮発性有機化合物をはじめとした種々の化学物質曝露によるシックハウス症候群への影響に関する検討」の下部のリンクから一括ダウンロード可能なファイル 201625016A0004.pdf 中の資料「1.化学物質に対する感受性変化の要因及び半揮発性有機化合物の健康リスク評価」(P28~P42)の「C1 化学物質に対する感受性変化の要因」項(P30~P31)を参照して下さい。 iii) 引用中の「マインドフルネス」については、例えば他の拙エントリのここを参照して下さい。

上記、電磁波過敏症に関するメディア報道についての解説等に関連するリンクを以下に紹介します。
読売新聞朝刊「医療ルネサンス増える環境過敏症」に対する見解
朝日新聞朝刊「被曝 見えぬ実態」(補足説明)
河北新報朝刊「<電磁過敏症>日本人の3.0~4.6%に症状」(補足説明)
「電磁過敏症 人口の3.0~5.7%」の新聞報道について(補足説明)

注:上記を含む電磁界情報センターにおける報道解説は次のWEBページを参照して下さい。「報道解説 - 電磁界情報センター

一方、電磁波過敏症発症者の現状のアンケートによると、次に引用するように i) 回答者75人のうち、45.3%が病院でEHS(電磁波過敏症)と診断された[電磁波過敏症と診断する医者がいるようだ] ii) 回答者の76%は、電磁波にも化学物質にも過敏性を持っていると思われる iii) 回答者の33.3%がホメオパシーを利用していた との結果になっています。

有効回答は75通で、女性が71人、男性は4人、平均年齢は51.2歳だった(中略)

病院でEHSだと診断されたのは45.3%で、49.3%は自己診断でEHSだと考えていた。また、EHSではないが電磁波には敏感だと思う、と答えた人は5.3%だった(中略)

一方、MCSと診断されたのは49.3%で、自己判断でMCSだと考えている人は26.7%、MCSではないが化学物質に敏感だと答えたのは14.7%、MCSではないと答えたのは9.3%だった。回答者の76%は、電磁波にも化学物質にも過敏性を持っていると思われる。(中略)

回答者のほとんど(72.0%)は、サプリメントの摂取(46.3%)や運動(38.9%)、入浴(35.2%)、食事療法(35.2%)、ホメオパシー(33.3%)など、何らかの補完代替療法(CAM:Complementary and Alternative Medicine)を利用していた。

さらに、このアンケートでは次に引用するように、経済的な不利益について記述されています。

5.経済的な不利益
回答者75人中、40人(53.3%)は発症前まで何らかの仕事を持っていたが、EHS発症後、その50%が仕事を失い、15%は労働時間が短くなったと答えた。影響を受けた人の業種は、会社員とパートタイマーが各23.1%、教育関係と医療関係が各19.2%だった。
有職者の65%が失業や労働時間短縮で経済的な困難に直面している一方、回答者の85.3%が電磁波を防ぐ対策を取り、経済的負担が発生していた。無線周波数電磁波を遮蔽するシールドクロスの購入が53.3%(対策実施者の合計で約600万円)、電磁波の少ない地域への転居や住宅の購入・新築が24.0%(約1億5100万円)、蛍光灯から白熱灯への買替えが30.7%(約73万円)電磁波の少ない家電への買替えが22.7%(約300万円)だった。対策の総費用は1億6800万円に達した。

(c) その他関連資料
ヒトの中枢神経への影響:人での携帯電話による電磁波曝露実験より

(d) 症状を低減させる可能性を含む電磁過敏症における二重盲検法によるランダム化比較曝露試験についての論文要旨の紹介
Effects of personalised exposure on self-rated electromagnetic hypersensitivity and sensibility - A double-blind randomised controlled trial.[拙訳]自己評価された電磁過敏症及び感受性に及ぼす個別化された曝露の影響 - 二重盲検法によるランダム化比較試験

BACKGROUND:
Previous provocation experiments with persons reporting electromagnetic hypersensitivity (EHS) have been criticised because EHS persons were obliged to travel to study locations (seen as stressful), and that they were unable to select the type of signal they reported reacting to. In our study we used mobile exposure units that allow double-blind exposure conditions with personalised exposure settings (signal type, strength, duration) at home. Our aim was to evaluate whether subjects were able to identify exposure conditions, and to assess if providing feedback on personal test results altered the level of self-reported EHS.

METHODS:
We used double-blind randomised controlled exposure testing with questionnaires at baseline, immediately before and after testing, and at two and four months post testing. Participants were eligible if they reported sensing either radiofrequency or extremely low frequency fields within minutes of exposure. Participants were visited at home or another location where they felt comfortable to undergo testing. Before double-blind testing, we verified together with participants in an unblinded exposure session that the exposure settings were selected were ones that the participant responded to. Double-blind testing consisted of a series of 10 exposure and sham exposures in random sequence, feedback on test results was provided directly after testing.

RESULTS:
42 persons participated, mean age was 55years (range 29-78), 76% were women. During double-blind testing, no participant was able to correctly identify when they were being exposed better than chance. There were no statistically significant differences in the self-reported level of EHS at follow-up compared to baseline, but during follow-up participants reported reduced certainty in reacting within minutes to exposure and reported significantly fewer symptoms compared to baseline.

CONCLUSION:
Our results suggest that a subgroup of persons exist who profit from participation in a personalised testing procedure.


[拙訳]
背景:
電磁過敏症(EHS)を報告する方々の以前の誘発試験は、EHS の方々が研究している場所への移動を余儀なくされる(ストレスに満ちているように見える)理由により批判されており、そして、彼らが反応を報告する信号の種類を選択できなかった。本研究において、自宅で個別化された曝露設定(信号の種類、強度、持続時間)で二重盲検法による曝露状態を可能にする移動曝露ユニットを我々は使用した。我々の目的は、参加者が曝露状態を同定できるかどうかを査定し、そして個人の試験結果に関するフィードバックの提供が、自己報告された EHS のレベルに変化をもたらすかどうかを評価することであった。

方法:
ベースライン、試験直前及び直後、そして試験後の2ヵ月、4ヵ月時のアンケートを伴う二重盲検法によるランダム化比較曝露試験を我々は用いた。曝露から数分以内に、ラジオ波又は極低周波のいずれかを感知したと報告した場合には参加者は適格であった。参加者は自宅又は彼らが試験を経験するために快適と感じる他の場所を訪れた。二重盲検試験の前に、非盲検の曝露セッションにおいて、参加者が応答したもので曝露設定が選択されたことを参加者と一緒に確認した。二重盲検試験は、一連の10回の曝露及び偽の曝露がランダムな順序で構成され、試験結果のフィードバックは試験の直後に提供された。

結果:
42名が参加し、平均年齢は55歳(範囲は29-78歳)で、76%が女性であった。二重盲検試験中に、参加者はいつ曝露されたかを偶然より正確に同定することができなかった。フォローアップ時に、ベースラインと比較して EHS の自己報告レベルにおいて統計学的な有意差はなかったが、フォローアップ中に、数分以内の曝露への反応における低下した確信を、そしてベースラインと比較して有意に少なかった症状を参加者は報告した。

結論:
個別化されたテスト過程への参加から利益を得るサブグループが存在することを、我々の結果は示唆する。

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余談

その他余談

(1)MCSのシステマティック・レビューにおける William J Rea 医師の論文紹介(2016年1月4日に追記)
標記システマティック・レビューにおいて、William J Rea 医師が発表した複数の論文がレビュー対象となっています。この中で一番古いのは「Environmentally triggered thrombophlebitis.」であり、1976年に発表されています*19。遅くともこの発表前には、William J Rea 医師等はMCSの存在を証明すための二重盲検法による誘発(負荷)試験を考案していた*20ものと本エントリ作者は考えます。この論文発表時期はシステマティック・レビューが発表された時点から約30年、本エントリのこの部分が追記された時点から約40年遡ります。

ちなみに、ここに示す資料の発表以降に、盲検法による誘発(負荷)試験の結果が論文又は資料として発表されているのでしょうか?

(2016年1月4日の追記終了)

(2)オーストラリアの資料の玉石混淆性(2016年1月4日に追記)
オーストラリアの資料( pdfファイル)「Multiple Chemical Sensitivity: identifying key research needs」の一部を引用して、上記システマティック・レビューの批判を試みる動きがあるようですが、この資料は玉石混淆であると本エントリ作者は考えます。この考えの説明のために、「石」の部分を以下に引用しながら指摘します。

この資料中の P79 に医学会?である BSAENM(British Society for Allergy, Environmental and Nutritional Medicine)が悪くても中立的に紹介されています。さらに、引用はしませんが、次の引用において示されたレポートの要旨が紹介されています。

In 2000, the BSAENM issued a lengthy report on MCS (Eaton et al., 2000) which included discussion on individuals at risk, eliciting agents, possible mechanisms, patient management and research priorities.(後略)


[拙訳]
2000年に BSAENM は、リスクのある個人、誘発する薬剤、考えられるメカニズム、患者管理及び研究の優先順位についての議論を含む MCS に関する長いレポートを発行した(Eaton et al., 2000)。

しかし、BSAENM は次のエントリで批判され、さらに、以下のWEBページの「Professional Organizations」項に Questionable Organizations(拙訳:疑わしい組織)としてリストアップされています。ただし、具体的な引用は省略します。

・『「MCSの本物の性質が認識されている公式な報告書」って、どれ? - NATROMの日記
・「Questionable Organizations: An Overview - Quackwatch

従って、この資料は、「玉」の部分なのか、それとも「石」の部分なのかを考慮しながら読みこなす必要があると本エントリ作者は考えます。さらに、この資料の一部を引用する場合には、その部分が「玉」であることを説明する必要があると本エントリ作者は考えます。

(2016年1月4日の追記終了)

(3)アレルギー疾患と化学物質過敏症とは異なること及び喘息について(2016年1月13日に追記、2017年4月15日、5月12日に改訂、2017年6月14日に追記)
最初のアレルギー疾患と化学物質過敏症とは異なることについては、引用の Q13 に加えて、資料「化学物質過敏症」の P31 において、「(化学物質過敏症の病態が)どちらかというと、アレルギーというよりも、脳科学で説明できる状況になっている」ことについての記述があります。さらに、引用で示されているように、アレルギー医が執筆したアレルギー関連の一般医学書のコラムで化学物質過敏症が否定されていることからも、アレルギー疾患と化学物質過敏症とは異なります。

ちなみに、アレルギー疾患における心理的因子の関与についてはここを、スギ花粉症と HLA の関係についてはここを、そしてアレルギーは皮膚から起こることについてはここをそれぞれ参照して下さい。

≪ご参考≫:様々なアレルギー性疾患における日本のガイドライン(英文)のご紹介
次のWEBページのに標記ガイドライン各種がリンクされています。 「Review Series Archive」の「Japanese Guidelines for Allergic Diseases 2017」項

加えて、喘息(気管支喘息)について、宮本昭正監修・編集、森田寛・灰田美知子・保澤総一郎・庄司俊輔著の本、「ナース・患者のための喘息マネージメント入門」(2017年発行)における複数の記述の一部の引用を中心に紹介します。もちろん、化学物質過敏症と喘息は異なります。すなわち、喘息の概略と主要な症状について同本の 1 喘息を理解する の「●喘息とアレルギー」における記述の一部(P12)及び喘息発作が起こる要因について同本の 1 喘息を理解する の 「2 喘息はどうのような疾患か?」における記述の一部(P15)を以下にそれぞれ引用します。

●喘息とアレルギー
気管支喘息(喘息)は、炎症により気管支(気道)が狭くなることによって引き起こされる疾患です。アレルギーによる炎症が最も重要ですが、炎症は発作的に繰り返され、喘鳴(ヒューヒュー、ゼーゼー)や息切れ(呼吸困難)など苦しい症状を引き起こします。
喘息は一般に、アレルギーの代表的な疾患と考えられていますが、厳密にはアレルギーによらない喘息も存在します。(中略)ですから、喘息をアレルギー疾患と言い切るのは正確ではありませんが、多くの喘息にアレルギーが深く関わっているのは間違いありません。(後略)

2 喘息はどうのような疾患か?(中略)

なぜ、喘息発作が起こるのでしょうか? 喘息患者の気道は過敏な状態にあり、正常な人にはあまり気にならないような刺激、たとえば、におい、タバコの煙、ふとんのほこりなどに反応して気道が収縮して呼吸困難が起こるからです。(後略)

注:i) 引用中の「におい」に関連する「喘息と臭い」について、論文要旨を以下に引用します。 ii) 引用中の「タバコの煙」に関連する「二次喫煙曝露と喘息」について、論文要旨を以下に引用します。

Asthma and odors: the role of risk perception in asthma exacerbation.[拙訳]喘息と臭い:喘息の悪化におけるリスク知覚の役割(全文はここを参照して下さい)

OBJECTIVE:
Fragrances and strong odors have been characterized as putative triggers that may exacerbate asthma symptoms and many asthmatics readily avoid odors and fragranced products. However, the mechanism by which exposure to pure, non-irritating odorants can elicit an adverse reaction in asthmatic patients is still unclear and may involve both physiological and psychological processes. The aim of this study was to investigate how beliefs about an odor's relationship to asthmatic symptoms could affect the physiological and psychological responses of asthmatics.

METHODS:
Asthmatics classified as 'moderate-persistent', according to NIH criteria, were exposed for 15 min to a fragrance which was described either as eliciting or alleviating asthma symptoms. During exposure, participants were asked to rate odor intensity, perceived irritation and subjective annoyance while physiological parameters such as electrocardiogram, respiratory rate, and end tidal carbon dioxide (etCO2) were recorded. Before, immediately after, and at 2 and 24h post-exposure, participants were required to subjectively assess their asthma symptom status using a standardized questionnaire. We also measured asthma status at each of those time points using objective parameters of broncho-constriction (spirometry) and measures of airway inflammation (exhaled nitric oxide, FeNO).

RESULTS:
Predictably, manipulations of perceived risk altered both the quality ratings of the fragrance as well as the reported levels of asthma symptoms. Perceived risk also modulated the inflammatory airway response.

CONCLUSIONS:
Expectations elicited by smelling a perceived harmful odor may affect airway physiology and impact asthma exacerbations.


[拙訳]
目的:
芳香及び強い臭いは、喘息症状を悪化させるかもしれない推定トリガーとして特徴づけられており、そして多くの喘息患者は簡単に臭いや芳香製品を避ける。しかしながら、喘息患者において有害反応を誘発しうる、純粋で非刺激性のにおい物質への曝露によるメカニズムは依然として不明であり、生理的及び心理的プロセスの両方が関与するかもしれない。この研究の目的は、喘息症状に対する臭いの関係についての信念が、喘息患者の生理的及び心理的応答にどのように影響するかを調べることであった。

方法:
NIH 基準により「中等症持続型」として分類された喘息患者は、喘息症状の誘発又は緩和のいずれかとして記載された芳香に15分間曝露された。曝露中に心電図、呼吸数、及び呼気終末二酸化炭素(etCO2)等の生理的パラメータが記録された一方で、被験者は、臭気強度、知覚された刺激及び主観的被害を評価することを依頼された。曝露前、直後、曝露の 2及び24時間後に、標準化されたアンケートを使用して喘息症状の状態を主観的に評価することが被験者には必要とされた。気管支収縮(肺活量測定)の客観的パラメータと気道炎症(呼気中一酸化窒素、FeNO)の測定値を使用して、それぞれの時点で喘息状態を我々は測定した。

結果:
予想されるように、知覚されたリスクのマニピュレーション(心理的な操作)は、喘息症状の報告されたレベルはもちろん、芳香の品質評価も変化させた。知覚されたリスクはまた、炎症性気道応答を調節した。

結論:
知覚された有害な臭いを嗅ぐことにより誘発される予期は、気道生理に影響を及ぼし、喘息増悪に大きな影響を与えるかもしれない。

注:本引用に関連するかもしれないWEBページは、例えば次を参照して下さい。 「その匂いは発作を招く 匂いとぜんそくの不思議な関係


Directly measured second hand smoke exposure and asthma health outcomes.[拙訳]直接的に測定された二次喫煙曝露及び喘息の健康アウトカム(全文はここを参照して下さい)

BACKGROUND:
Because they have chronic airway inflammation, adults with asthma could have symptomatic exacerbation after exposure to second hand smoke (SHS). Surprisingly, data on the effects of SHS exposure in adults with asthma are quite limited. Most previous epidemiological studies used self-reported SHS exposure which could be biased by inaccurate reporting. In a prospective cohort study of adult non-smokers recently admitted to hospital for asthma, the impact of SHS exposure on asthma health outcomes was examined.

METHODS:
Recent SHS exposure during the previous 7 days was directly measured using a personal nicotine badge (n = 189) and exposure during the previous 3 months was estimated using hair nicotine and cotinine levels (n = 138). Asthma severity and health status were ascertained during telephone interviews, and subsequent admission to hospital for asthma was determined from computerised utilisation databases.

RESULTS:
Most of the adults with asthma were exposed to SHS, with estimates ranging from 60% to 83% depending on the time frame and methodology. The highest level of recent SHS exposure, as measured by the personal nicotine badge, was related to greater asthma severity (mean score increment for highest tertile of nicotine level 1.56 points; 95% CI 0.18 to 2.95), controlling for sociodemographic covariates and previous smoking history. Moreover, the second and third tertiles of hair nicotine exposure during the previous month were associated with a greater baseline prospective risk of hospital admission for asthma (HR 3.73; 95% CI 1.04 to 13.30 and HR 3.61; 95% CI 1.0 to 12.9, respectively).

CONCLUSIONS:
Directly measured SHS exposure appears to be associated with poorer asthma outcomes. In public health terms, these results support efforts to prohibit smoking in public places.


[拙訳]
背景:
慢性的な気道炎症を有するため、喘息を伴う成人は二次喫煙(SHS)に曝露された後に症状が悪化するということもありうる。驚くべきことに、喘息を伴う成人における SHS 曝露の影響に関するデータはかなり限られる。以前の疫学研究のほとんどは、不正確な報告により偏るということもありうる自己報告の SHS 曝露を使用した。最近、喘息により入院した成人の非喫煙者の前向きコホート研究において、喘息の健康アウトカムに及ぼす SHS 曝露の影響が調査された。

方法:
以前の7日間での最近の SHS 曝露は、個人ニコチンバッジ(n = 189)を用いて直接測定され、そして髪のニコチン及びコチニンレベル(n = 138)を用いて、以前の3ヶ月の曝露が推定された。電話インタビュー中に喘息の重症度及び健康状態が確認され、そして、その後の喘息による入院がコンピュータ化された利用データベースから決定された。

結果:
ほとんどの喘息を伴う成人は、時間枠と方法論に依存する60%~83%の推定値を伴って SHS に曝露された。最近の SHS 曝露の最高レベルは、個人のニコチンバッジによる測定として、より大きな喘息の重症度(ニコチンレベル 1.56ポイント; 95%信頼区間(CI) 0.18~2.95 の最高の三分位値の平均スコア増加)と関連し、社会人口統計学的な共変動及び以前の喫煙履歴を統制している。さらに、前月中の髪へのニコチン曝露の第二及び第三の三分位値はより大きな喘息の入院のベースライン将来リスクに関連していた(それぞれ、HR 3.73; 95%CI 1.04~13.30 及び HR 3.61; 95%CI 1.0~12.9)。

結論:
直接的に測定された SHS 曝露は、より不良な喘息のアウトカムに関連すると思われる。公衆衛生の言い方において、これらの結果は公共の場所にける喫煙を禁止する努力を支持する。

注:i) 引用中の「n = 189」、「n = 138」は共に人数を示します。 ii) 引用中の「ニコチン」及び「コチニン」については、例えば共に次の資料を参照して下さい。 「ニコチン代謝に個人差が生じる要因

加えて、喘息の特徴について本の 1 喘息を理解する の 「2 喘息はどうのような疾患か?」における記述の一部(P16)を次に引用します。 

2 喘息はどうのような疾患か?(中略)

喘息の特徴は、第1に気道が過敏であること(気道過敏性)と、第2に気道が狭くなること(気道狭窄=気流制限)です。
この気道狭窄は自然に、あるいは治療により速やかに改善します。そのため、喘息の気道狭窄を可逆(逆戻りする)的な気道狭窄とよんでいます。
さらに近年、喘息の病態についての研究が進み、喘息の2つの特徴に加えて、気道炎症という第3の特徴の存在がわかってきました。(後略)

(2016年1月13日の追記、2017年4月15日、5月12日の改訂、2017年6月14日の追記終了)

[その他特記事項](2016年3月24日に追記)

「遅延型」食物アレルギー検査に注意 - NHK 生活情報ブログ
血中食物抗原特異的IgG抗体検査に関する注意喚起 - 日本小児アレルギー学会
〔学会見解〕血中食物抗原特異的IgG抗体検査に関する注意喚起 - 日本アレルギー学会(注:このリンクのみ2016年5月28日に追記)

(2016年3月24日の追記終了)

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(4)先天性の化学物質過敏症とは?(2016年6月4日に追記、さらに、一部は2016年6月23日又は2017年6月4日、17日にも追記)
William J Rea 医師が提唱した Chemical Sensitivity の流れを汲む化学物質過敏症において、先天性のものがあるとの主張には無理があると本エントリ作者は考えます。理由は化学物質過敏症では「トータルボディロード」(TBL:総負荷量)の考え方があり、これによると様々なストレスが蛇口から風呂桶に水として入ってきて、この総量(トータルボディロード)が風呂桶から溢れ出すと発症するというものです(例えばこの pdfファイルの P8 参照)。いくらこの風呂桶が小さいとしても、出生時には既に水が溢れ出ていたということは無いであろうと本エントリ作者は考えます*21。さらに、Mark R Cullen, M.D. の講演予稿によると、MCSの疫学では、「女性は男性よりも約3倍発症し、ほとんどの場合は30~50才の間で発症する。」とのこと。化学物質過敏症は先天性であるとこの疫学の結果とはあまり整合しないと本エントリ作者は考えます。

一方、臨床環境医学において、一部の環境化学物質と発達障害との因果関係を示す実験データが有るという意見があります*22(例えば次の文書「自閉症・ADHDなど発達障害の原因としての環境化学物質」参照)。このメカニズムとしてエピジェネティクスが注目されています。ちなみに、トータルボディロードとエピジェネティクスとは全く関係がありません。加えて、精神医学の視点から、この意見に対する一見解を示す引用を次に紹介します。すなわち、金沢大学子どものこころの発達研究センター監修、竹内慶至編の本、「自閉症という謎に迫る 研究最前線報告」(2013年発行)の 第1章 自閉症は治るか――精神医学からのアプローチ(著者:棟居俊夫) の「落語と自閉症」における記述の一部(P49~P55)を次に引用します。

目を遺伝に転じよう。一卵性双生児が二卵性に比べてはるかに、両方が自閉的となる割合が高く、第一子が自閉症の場合第二子が自閉症になる確率が高くなることから、自閉症発現に遺伝が関与していると以前から指摘されてきた。最近ではゲノム解析がすすみ、遺伝的な多型や変異が次々発見されている。2008年段階では次のことがわかっている。自閉症に見られる一塩基多型(SNPs)、染色体異常、それに受精後の遺伝子コピー数変異が合わせて100種類を超える。自閉症遺伝子というべきものはない。個々の遺伝的多型や変異で説明できる自閉症発現は多くても2、3%にすぎない。
起きているのは、多重的な遺伝的影響と環境の影響の加算的効果または遺伝と環境の相互作用としてのエピジェネティクス(註3)と推定される。これは糖尿病などと同じだ。自閉症に関連する遺伝的多型や変異を多く持っている個体が、環境にある危険因子ないしは予防因子によって症状を発現したりしなかったりすると考えられる。
ここで威力を発揮するのは、自閉症の双生児研究やきょうだい研究だ。アメリカではそれが現在大規模に展開中だ。研究者たちの予測は、遺伝と環境の累積効果がある闇値に達した場合に自閉症が発現するというものだ。近い将来解答が出るだろう。ホットトピックの一つは、アレルギー・炎症反応・自己免疫疾患など過剰免疫問題と自閉症の関連だ。脱工業化社会でのヒトの生物的環境(土壌菌・人体菌・寄生虫)の枯渇、ビタミンD不足、運動不足やストレス過剰が自閉症を含む一連の問題の根底にあるのではという仮説も立てられている。
このように書くと、「自閉症は親の育て方のせい」という理不尽な偏見に悩まされてきた人々は困惑するだろう。自分が親として悪かったのではないかと。それは違う。そもそも子どもに遺伝的な脆弱性があることは親にはわからないし、環境の危険因子や予防因子もまだ科学的には明らかになっていない。糖尿病や癌のようにエピジェネティクスの詳しい説明がつくようになれば、対処が可能になる。危険因子と予防因子がわかれば、社会政策や家族支援、子育て支援が再調整されることになる。
これらを進めるうえで必要なのは大規模な疫学調査だ。それも子どもが生まれて成人するまで(理想的には高齢化するまで)の人生全体にまたがるものだ。遺伝の諸変数と環境の諸変数(例えば大気汚染、緑化の程度)の影響を追跡していく、ライフコース疫学が必要だ。そこでは脳のイメージング(本書第3章)、細胞レベルでの遺伝環境相互作用の研究、心理学的検査の実施などが必須だ。相当な資源の投入が求められるだろう。英米ではすでにそれが始まっている。先に述べた国や民族による発現の差をエピジェネティクスの観点から明らかにするためには、日本もこの流れに参入していくことが期待される。(中略)

註3 エピジェネティクス DNAの塩基配列の変化を伴わない細胞分裂にも継承される遺伝子発現を研究する学問領域をさす。遺伝的形質の発現が、先天的な遺伝子配列だけでなく後天的な要因によって生じる現象を追究する。

注:i) 引用中の「本書第3章」の引用は省略します。 ii) 引用中の「エビジェネティクス」については、次のWEBページを参照して下さい。「エピジェネティクス - 脳科学辞典」 iii) 以下の例外を除き、引用はしませんが類似した記述が次にそれぞれ示されています。 ①杉山登志郎著の本、「発達障害のいま」(2011年発行)の 第一章 発達障害はなぜ増えているのか (P25~P41)の一部*23 ②鷲見聡著の本、「発達障害の謎を解く」(2015年発行)の [第2章] 遺伝と環境・総論 の 遺伝要因と環境要因を考える――人間の多様性の1つとして捉える (P40~P51)*24

「エピジェネティクス」について、鷲見聡著の本、「発達障害の謎を解く」(2015年発行)の [第2章] 遺伝と環境・総論 の 遺伝要因と環境要因を考える――人間の多様性の1つとして捉える の「1.生まれか育ちか」及び「2.エピジェネティクス――遺伝子分野の革命的概念」の記述又は記述の一部(P52~P56)を上記の例外として次に引用します。

1.生まれか育ちか
昔からよく使われることわざに「蛙の子は蛙」「瓜の蔓に茄子はならぬ」などがある。これらは、親と子の特徴が似ていることを示す例えであり、遺伝要因、すなわち、『生まれ』の影響の大きさを示すものである。ところが一方で、「氏より育ち」「朱に交われば赤くなる」というのも、よく言われる。こちらは、環境要因、すなわち、『育ち』が人の発達成長に大きく関わることを表している。
一見、相反する内容のことわざが、どちらかがすたれる事も無く今日まで伝わってきたのは、どうしてであろうか。古来から人々は、遺伝要因と環境要因そのどちらもが、子どもの成長発達に重要な影響を及ぼす事を感じ取っていたに違いない。
しかし、近年の学術論争を振り返ると、「遺伝か、環境か」という二者択一の中で論争が続いてきた。そこには、遺伝と環境とは、別々の相反する要因であるという大前提があった。自閉症を例にとるならば、以前は、その発症原因を「母親の育て方が悪いことで起きる」という心因論、つまり環境要因説が信じられてきた。それが、1990年代以降、「生まれつきの脳障害」という器質論、すなわち、遺伝要因を重視した説に取って代わられた。
ところが最近、そのような「遺伝か環境か」という二者択一の論議の根底を揺るがす新たなメカニズムが発見された。それは、環境要因が遺伝子に影響を与えて、その働き方を変化させる「エピジェネティクス」というものである1)。この発見は「遺伝と環境は別々の要因」「遺伝要因は変化しない」という既成の概念を覆すものであった。エピジェネクスの登場以来、病気の発症や子どもたちの発達にとって、遺伝と環境の相互作用は非常に重要であることが認識されるようになってきた。
本節では、このような新しい知見が具体的にどのようなものであるがを示し、その上で、遺伝と環境の相互作用の視点から、自閉症スペクトラム(ASD)について論じる。

2.エピジェネティクス――遺伝子分野の革命的概念
従来の遺伝学の考え方では、両親から受け継いだ遺伝子は生涯不変で、遺伝子の働きもまた生涯不変と考えられていた。そして、遺伝子は精密な設計図、それも修正不可能なインクで書かれた設計図に例えられていた。ところが、その遺伝子の働き具合を変化させる「エピジェネティクス」というメカニズムが明らかになった。ある種の遺伝子にはその働きをコントロールするスイッチに相当するもの(メチル化修飾など)があり、その切り替えによって遺伝子の働き具合が変わるのである。このスイッチの切り替えを行うのは「環境要因」で、遺伝子本体を変化させずに働き具合のみを変える。エピジェネティクスの発見は、遺伝要因と環境要因が合わさって機能するシステムが存在することと、遺伝子機能が後天的に変わりうることを、初めて証明したものである。
例えば、生後間もない時期の精神的ストレスによって、ストレス耐性遺伝子(グルココルチコイド受容体遺伝子)のスイッチが切り替わることが、ネズミでは明らかになっている2)(図2-4)。生後すぐに母ネズミから引き離された仔ネズミのストレス耐性遺伝子を調べると、その遺伝子のスイッチはOFFFの状態になっている。ストレス耐性遺伝子が働かないため、ストレスに弱くなり、精神的に不安定になる。そして、その後もOFFの状態が続くため、その仔ネズミが大人ネズミになっても、精神的に不安定な状態が続く。
一方、母ネズミの世話を受けた仔ネズミは、ストレス耐性遺伝子のスイッチがONの状態になってストレスに強くなり、精神的に安定する。そして、いったんONになったスイッチは、大人ネズミになってもONの状態が続き、精神的に安定する。すなわち、幼少期の環境要因が遺伝子の働き方を決め、その後の精神状態に影響を与え続けている。しかし、この興味深い現象は、ストレス耐性遺伝子のみ、あるいは、母ネズミの世話のみでは起こり得ない。遺伝子と環境要因(世話)の両方が合わさって初めて、仔ネズミの精神状態に作用することが可能となる。そして、「三つ子の魂百まで」ということわざのように、生後早期に獲得した特徴が生涯持続するのである。(中略)

エピジェネティクスについての研究は、人においても開始されている。例えば妊娠中の母親が低栄養状態だった場合、生まれてくる子どもが大人になった時に肥満になりやすいことが知られているが、これにもエピジェネティクスが関与している3)。母親が低栄養になると胎児も低栄養状態に陥り、それに対する防衛反応として、胎児のエネルギー節約遺伝子のスイッチがONになる。つまり、低栄養という環境要因が節約遺伝子のスイッチをONに入れ、その後もずっとONの状態が続く。エネルギー節約遺伝子がONになっていることは、低栄養(エネルギー不足)の時には体の活動にとって都合が良い。しかし、栄養が十分にある時には必要以上にエネルギー節約をすることになり、その結果、余分なエネルギーが脂肪として蓄えられる。この場合、直接働いているのはエネルギー節約遺伝子という遺伝要因であるが、その遺伝子のスイッチをONにしたのは低栄養という環境要因である。遺伝と環境、この2つの要因がエピジェネティクスによって結びついて作用し、成人期に肥満になりやすくなるのである。(後略)

注:i) 引用中の文献番号「1)」、「2)」、「3)」はそれぞれ、1) 「エピジェネティクスのオーバービュー」 2) 「Epigenetic programming by maternal behavior.」 3) 福岡 秀興、他「肥満発症にかかわる胎生期環境の影響」『日本臨床』71巻、237-243頁、2013年 です。 ii) 引用中の「図2-4」の引用は省略します。 iii) ちなみに、自閉スペクトラム症の遺伝性のメタアナリシスについて、次の論文を紹介します。

・「Heritability of autism spectrum disorders: a meta-analysis of twin studies.[拙訳]自閉スペクトラム症の遺伝性:双子研究のメタアナリシス」(全文はここを参照して下さい)

BACKGROUND:
The etiology of Autism Spectrum Disorder (ASD) has been recently debated due to emerging findings on the importance of shared environmental influences. However, two recent twin studies do not support this and instead re-affirm strong genetic effects on the liability to ASD, a finding consistent with previous reports. This study conducts a systematic review and meta-analysis of all twin studies of ASD published to date and explores the etiology along the continuum of a quantitative measure of ASD.

METHODS:
A PubMed Central, Science Direct, Google Scholar, Web of Knowledge structured search conducted online, to identify all twin studies on ASD published to date. Thirteen primary twin studies were identified, seven were included in the meta-analysis by meeting Systematic Recruitment criterion; correction for selection and ascertainment strategies, and applied prevalences were assessed for these studies. In addition, a quantile DF extremes analysis was carried out on Childhood Autism Spectrum Test scores measured in a population sample of 6,413 twin pairs including affected twins.

RESULTS:
The meta-analysis correlations for monozygotic twins (MZ) were almost perfect at .98 (95% Confidence Interval, .96-.99). The dizygotic (DZ) correlation, however, was .53 (95% CI .44-.60) when ASD prevalence rate was set at 5% (in line with the Broad Phenotype of ASD) and increased to .67 (95% CI .61-.72) when applying a prevalence rate of 1%. The meta-analytic heritability estimates were substantial: 64-91%. Shared environmental effects became significant as the prevalence rate decreased from 5-1%: 07-35%. The DF analyses show that for the most part, there is no departure from linearity in heritability.

CONCLUSIONS:
We demonstrate that: (a) ASD is due to strong genetic effects; (b) shared environmental effects become significant as a function of lower prevalence rate; (c) previously reported significant shared environmental influences are likely a statistical artefact of overinclusion of concordant DZ twins.


[拙訳]
背景:
自閉スペクトラム症(ASD)の病因は、共有環境の影響の重要性に関する新たな知見のため、最近議論されている。しかしながら、最近の2つの双子の研究ではこれを支持せず、代わりに ASD のなりやすさに対する強い遺伝的影響が再確認された。これは以前の報告と一貫する結果であった。この研究は、これまでに発表された全ての ASD 双子研究のシステマティック・レビュー及びメタアナリシスを行い、そして ASD の定量的計測の連続性に沿った病因を探究する。

方法:
これまでに発表された ASD に関する全ての双子研究を同定するために、PubMed Central、Science Direct、Google Scholar、Web of Knowledge の構造化検索をオンラインで行った。13 の主要な双子研究が同定され、7 つは Systematic Recruitment criterion を満足することにより、メタアナリシスに含まれた。選択と確認戦略の補正、及び適用された有病割合はこれらの研究のために評価された。加えて、影響を受けた双子を含む 6,413 の双子ペアの集団サンプルにおいて測定された Childhood Autism Spectrum Test スコアについての分位数 DeFries‐Fulker 極値分析が実施された。

結果:
一卵性双生児(MZ)に対するメタアナリシスの相関はほぼ完全で、.98(95%信頼区間、.96-.99)であった。しかしながら、ASD 有病割合が5%(ASD の広範な自閉症表現型に即する)に設定された時は、二卵性双生児(DZ)相関は 0.53(95%信頼区間、.44-.60)であり、そして 1%の有病割合が適用された時は、相関は 0.67(95%信頼区間、.61-.72)に増加した。メタアナリシスによる遺伝率の推定値は64-91%とかなり高かった。有病割合が 5 から 1%(07-35%)に低下するにつれて、共有環境の影響が有意になった 07-35%。 ほとんどの部分で遺伝率の直線性からの逸脱がないことを DeFries‐Fulker 分析は示す。

結論:
我々は次のことを実証する:(a)ASD は強い遺伝的効果によるものである。(b)共有環境の影響は、より低い有病割合の作用として重要となる。(c)以前に報告された重大な共有環境の影響は、合致する DZ 双子の過剰包含の統計的アーチファクトの可能性が高い。

注:引用中の「広範な自閉症表現型」については、次の資料を参照して下さい。ただし、この資料では「広範な自閉症発現型」と記述されています。 「発達障害から発達凸凹へ」の「2. ASD の臨床」項

ちなみに、a) ヒトのエピジェネティクスに関する発表例として、論文の要旨(その1その1)を以下に紹介します。 b) 化学物質過敏症と自閉スペクトラム症(発達凸凹を含む)との症状における共通点は、例えば不定愁訴をはじめとした身体症状(他の拙エントリのここ及びここ参照)と嗅覚の過敏(他の拙エントリのここここ及びここ参照)です。

Persistent epigenetic differences associated with prenatal exposure to famine in humans.[拙訳]ヒトの胎児への出生前曝露に関連する持続的なエピジェネティックな差異

Extensive epidemiologic studies have suggested that adult disease risk is associated with adverse environmental conditions early in development. Although the mechanisms behind these relationships are unclear, an involvement of epigenetic dysregulation has been hypothesized. Here we show that individuals who were prenatally exposed to famine during the Dutch Hunger Winter in 1944-45 had, 6 decades later, less DNA methylation of the imprinted IGF2 gene compared with their unexposed, same-sex siblings. The association was specific for periconceptional exposure, reinforcing that very early mammalian development is a crucial period for establishing and maintaining epigenetic marks. These data are the first to contribute empirical support for the hypothesis that early-life environmental conditions can cause epigenetic changes in humans that persist throughout life.


[拙訳]
大規模な疫学的研究は、成人病のリスクが発育初期の悪い環境条件と関連していることを示唆する。これらの関係の背景にあるメカニズムは不明であるが、エピジェネティックな調節不全の関与が仮定されている。ここで、1944-45年のオランダ飢餓の冬中に胎内でこれに曝された個々人が、60年後、曝されていない同性の兄弟と比較して、インプリンティングされた IGF2 遺伝子の DNA メチル化が少なかったことを我々は示した。この関連は周産期曝露に特異的であり、非常に初期の哺乳類の発達がエピジェネティックな特徴を確立し、維持するための重要な期間であることを強化する。これらのデータは、若齢期の環境状態が生涯にわたって持続するヒトにおけるエピジェネティックな変化を引き起こし得るという仮説の経験的支持に最初に寄与した。

注:i) この論文の簡単な紹介はここと次のWEBページを参照して下さい。 「妊娠出産に関わる病気・胎児の健康とエピゲノム」の「妊娠期のエピジェネティクス変化が、子供の将来の健康状態を決める!?」項 ii) 引用中の「DNA メチル化」については、次のWEBページを参照して下さい。「エピジェネティクス - 脳科学辞典」の「DNAメチル化」項。

Methylation of the oxytocin receptor gene mediates the effect of adversity on negative schemas and depression.[拙訳]オキシトシン受容体遺伝子のメチル化は逆境がネガティブなスキーマ及びうつに及ぼす影響をメディエートする

Building upon various lines of research, we posited that methylation of the oxytocin receptor gene (OXTR) would mediate the effect of adult adversity on increased commitment to negative schemas and in turn the development of depression. We tested our model using structural equation modeling and longitudinal data from a sample of 100 middle-aged, African American women. The results provided strong support for the model. Analysis of the 12 CpG sites available for the promoter region of the OXTR gene identified four factors. One of these factors was related to the study variables, whereas the others were not. This factor mediated the effect of adult adversity on schemas relating to pessimism and distrust, and these schemas, in turn, mediated the impact of OXTR methylation on depression. All indirect effects were statistically significant, and they remained significant after controlling for childhood trauma, age, romantic relationship status, individual differences in cell types, and average level of genome-wide methylation. These finding suggest that epigenetic regulation of the oxytocin system may be a mechanism whereby the negative cognitions central to depression become biologically embedded.


[拙訳]
様々な系列の研究に基づき、オキシトシン受容体遺伝子(OXTR)のメチル化が、ネガティブなスキーマ及びその後のうつの発症への増加したコミットメントに及ぼす大人の逆境の効果をメディエイト(仲介)するであろうと我々は仮定した。100人の中年アフリカ系アメリカ人の女性のサンプルからの構造方程式モデリングと縦断データを使用した我々のモデルを検査した。これらの結果によりこのモデルに強い支持が与えられた。OXTR 遺伝子のプロモーター領域で利用可能な 12 の CpG サイトの分析で4つの要因を同定した。これらの要因の1つは、他では関連していないのに、研究変数に関連していた。この要因は、悲観主義及び不信用に関連するスキーマ(これらのスキーマは順にうつに与える OXTR のメチル化の影響をメディエイトする)に及ぼす大人の逆境の効果をメディエイトした。全ての間接的な効果は統計的に有意であり、そして、子ども時代のトラウマ、年齢、恋愛関係の状況、細胞型における個人差、ゲノムワイドのメチル化の平均レベルでコントロール(統制)した後も有意のままであった。これらの知見は、オキシトシン系のエピジェネティック制御が、これによりうつのネガティブな認知の中核が生物学的に埋め込まれるメカニズムかもしれないことを示唆する。

注:引用中の「メチル化」に関連する「DNAメチル化」及び引用中の「CpG」については、共に次のWEBページを参照して下さい。「エピジェネティクス - 脳科学辞典」の「DNAメチル化」項。

(2016年6月4日、2016年6月23日又は2017年6月4日、17日の追記の終了)

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(5)受動喫煙と肺がんとの関連についての発表(2016年10月10日に追記)
2016年8月31日に、国立がんセンターから次の発表がありました。「受動喫煙による日本人の肺がんリスク約 1.3 倍」 この発表によると、日本人の非喫煙者を対象とした受動喫煙と肺がんとの関連について、複数の論文を統合、解析するメタアナリシス研究*25の結果を公表するもので、受動喫煙のある人はない人に比べて肺がんになるリスクが約 1.3 倍になるとのこと。

この発表に対し、JT が次に示すコメントを出しました。「受動喫煙と肺がんに関わる国立がん研究センター発表に対する JT コメント」 一方、このコメントに対し、国立がんセンターからは次の応答がありました。「受動喫煙と肺がんに関する JT コメントへの見解」 ちなみに、上記発表WEBページから次の pdfファイルがリンクされています。「受動喫煙と肺がんとの関連についてのシステマティック・レビューおよびメタアナリシス」 このファイルにおいて、(日本人を対象とした受動喫煙と肺がんの関連の)システマティック・レビューおよびメタアナリシスについて説明されています。この中の、参考1(P15)で、メタアナリシス/システマティック・レビューの証拠(エビデンス)レベルが示されています。

このやりとりはネット上で大炎上、もとい注目されました(例:はてブtogetter)。本エントリ作者には、JT のコメントが、メタアナリシスを理解しないまま作成・発表*26され、国立がんセンターに論破されたように見えます。ちなみに、本エントリのこの項の追加・公開時においては、国立がんセンターからの応答(反論)に対する JT の再反論は、本エントリ作者は見つけることができませんでした。

上記とは別に、このエビデンスレベルの高いメタアナリシス研究を持ち出して、日本人において、受動喫煙により肺がんになるリスクが高くなることを主張する人は、同様にエビデンスレベルの高いシステマティック・レビューにより疾患概念「MCS」の存在が否定されていること[(2)項参照]の主張を受け入れるしかないのでは*27と本エントリ作者は考えます。換言すると、前者を主張する人で、合理的な根拠なしに、後者の主張を頑として受け入れない人はいないことを本エントリ作者は期待しています*28

(2016年10月10日の追記終了、2016年10月14・16・23日の追記開始)

ちなみに、発表と同様なメタアナリシス(解析)を行った結果、否定されたものにホメオパシーのレメディ*29の特異的効果(注:これにはプラセボ効果は含まれません)があります。この関連リンク例は次に紹介します。
①メタアナリシス関連を含むリンク*30:『「ホメオパシー」への対応について*31、「ホメオパシーは効果が無いと判定されている 〜メタ解析の解説〜」、「イケダハヤトさんのホメオパシー紹介記事について
②主に追記時におけるホメオパシーに関する最近の炎上関連リンク:「まだホメオパシーで消耗してるの?イケダハヤトさん ついにニセ医学に手を出す」、「【米】ホメオパシーで幼児10人死亡 400人健康被害 日本でも販売」、「ミツバチのレメディ「エイピス」は何に効く?」、『繰り返されるホメオパシー騒動と「ニセ科学」 本当の問題はどこに?

(2016年10月14・16・23日の追記終了)

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(6)大脳辺縁系の kindling について(2017年2月1日に追記)
他の拙エントリのここにおいて、PTSD又は複雑性PTSDの視点からの大脳辺縁系の "kindling" に関連する引用を紹介しました。ここでは、MCS の視点からの化学的ストレスによる辺縁系の "kindling" について、オーストラリアの資料「Multiple Chemical Sensitivity:identifying key research needs.」(ここ参照)の P27 における引用を利用して、説明を試みます。

Researchers have proposed limbic kindling as a type of neural sensitisation that may occur in MCS where chemical stressors (pharmacological or environmental) are able to induce physiological effects that then are amplified with the passage of time (Bell et al. 1992; Miller, 1992; Antelman, 1994). More recently, it has been recognised that whereas there is evidence for neural sensitisation in chemical sensitivity and MCS, evidence for a limbic kindling component in neural sensitisation is limited (Bell et al., 1999a).


[拙訳]
時間が経つにつれて増幅する生理的な効果を誘発しうる化学的ストレッサー(薬理学的、環境的)という点で、MCS において生じるかもしれない一種の神経性感作としての辺縁系 kindling を研究者達は提唱してきた(Bell et al. 1992; Miller, 1992; Antelman, 1994)。ところが、より最近に、化学物質過敏症(chemical sensitivity)及び MCS における神経性感作、そして神経性感作における辺縁系 kindling のエビデンスは乏しいことが認識されてきた(Bell et al., 1999a)。

注:i) 引用中の「Bell et al., 1999a」はこの論文で、全文は次に示す pdfファイルで読むことができます。「Neural sensitization model for multiple chemical sensitivity: overview of theory and empirical evidence」 一方、引用中の「Bell et al. 1992; Miller, 1992; Antelman, 1994」の紹介は「Bell et al. 1992」を除き省略します。元の資料をお読みください。一方、「Bell et al. 1992」は次に示す論文です。「An olfactory-limbic model of multiple chemical sensitivity syndrome: possible relationships to kindling and affective spectrum disorders.」 ii) 他の拙エントリのここの引用では、kindling を「小さな電気的刺激を長時間受け続けるような電気発火」として説明されています。

ちなみに、この1999年の Bell らの論文(overview)が発表されてから、本エントリのこの部分を書くまでに15年以上経過していますが、MCS の視点からの化学的ストレスによる辺縁系の "kindling" に関する研究の最近に発表された論文は、この追記時点で本エントリ作者による調査では見つかりませんでした。

(2017年2月1日の追記終了)

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(7)MCS、IEI及び/又は機能性身体症候群に関連する論文要旨の紹介(2017年4月15日に追記)
複数の標記論文要旨を以下にそれぞれ紹介します。ちなみに、標記「機能性身体症候群」に関連する「MUS」については、次項を参照して下さい。

Sleep and sleepiness in environmental intolerances: a population-based study.[拙訳]環境不耐における睡眠と眠気:集団ベースの研究

BACKGROUND:
About one fourth of the general population report environmental intolerance (EI) to odorous/pungent chemicals, certain buildings, electromagnetic fields (EMFs), and/or sounds. EI sufferers show various clinical features, of which sleep disturbance is one. Sleep disturbance is common also in the general population, but it is not known whether the disturbance is more prominent in EI sufferers than in individuals who do not experience EI. Therefore, EI was compared on various sleep aspects with referents without EI.

METHODS:
A population-based sample of 3406 individuals, aged 18-79 years, was recruited from Northern Sweden. Sleep quality, non-restorative sleep, daytime sleepiness, obstructive breathing, and nocturnal insomnia were assessed with the Karolinska Sleep Questionnaire. Single questions assessed time slept, amount of hours of needed sleep, and extent of enough time slept.

RESULTS:
All four EI groups, compared to the referents, reported significantly poorer sleep quality, more non-restorative sleep, more daytime sleepiness, more obstructive breathing and higher prevalence of nocturnal insomnia than the referents. Nocturnal insomnia was an important factor for EI groups attributing their most prevalent symptoms to chemicals and sounds, irrespective of distress and certain syndromes. None of the EI groups differed significantly from the referents on time slept, but reported needing more sleep time (the EMF-intolerance group showing only a tendency), and all four groups reported to perceive enough sleep to a significantly lesser extent.

CONCLUSION:
Sleep disturbance and daytime sleepiness are more common in individuals reporting EI compared to normal referents. Moreover, nocturnal insomnia is an important symptom in its own right in various types of EI. This evokes the question of whether or not sleep therapy may attenuate the severity of the EI.


[拙訳]
背景:
一般集団の約4分の1は、臭い/刺激のある化学物質、特定の建物、電磁場(EMF)及び/又は音に対する環境不耐(EI)を報告している。 EI 罹患者は、様々な臨床的特徴を示し、睡眠障害はその一つである。睡眠障害は一般集団においてもありふれているが、EI を罹患していない個人よりも EI 罹患者において障害が顕著であるかどうかは知られていない。従って、EI は様々な睡眠の側面に関して EI 無しの対照群と比較された。

方法:
18~79歳の3406人の集団に基づくサンプル(被験者)を北スウェーデンから集めた。睡眠の質、非回復性睡眠、日中の眠気、閉塞性呼吸、夜間不眠症を Karolinska Sleep Questionnaire(訳注:睡眠のアンケートです)で評価した。単一アンケートの質問で睡眠時間、必要な睡眠時間、充分な睡眠時間の程度を評価した。

結果:
4つの EI グループが対照群と比較して、有意に、睡眠の質が低く、睡眠不全、日中の眠気及び閉塞性呼吸が酷く、そして夜間不眠症の有病率が高かったと報告した。

夜間不眠症は、EI グループにとって、苦痛及び特定の症候群にかかわらず、最も一般的な症状を化学物質及び音によるものとする重要な要因であった。睡眠時について、どの EI グループも、対照群とは有意差がなかったが、睡眠時間がより長いことの必要(EMF 不耐グループ群は傾向のみがみられた)が報告され、そして4つのグループ全てで、十分な睡眠の知覚が有意に少なかったと報告された。

結論:
睡眠障害及び日中の眠気は、通常の対照群と比較して、EI を報告する個々人においてより一般的である。さらに、夜間不眠症は、EI の様々なタイプにおいて、それ自体重要な症状である。このことは、睡眠療法が EI の重症度を低下させるかどうかの論点を喚起する。

注:i) 引用中の「睡眠障害」については、例えば次のWEBページを参照して下さい。「睡眠障害 - 脳科学辞典」、『田ヶ谷浩邦先生に「睡眠障害」を訊く』、「睡眠障害の基礎知識

Comorbidity in allergic asthma and allergic rhinitis: functional somatic syndromes.[拙訳]アレルギー性喘息及びアレルギー性鼻炎における併病:機能性身体症候群

Based on the concept of central sensitisation, the present study tested the hypothesis of comorbidity in allergic asthma and allergic rhinitis with diagnoses of functional somatic syndromes (FSSs), including fibromyalgia, irritable bowel syndrome and migraine. Data were used from the population-based Västerbotten Environmental Health Study (n = 3406). The participants consisted of 164 individuals with allergic asthma and 298 individuals with allergic rhinitis as well as 2876 individuals without allergic or non-allergic asthma, allergic rhinitis or atopic dermatitis. Diagnoses were based on self-reports of having been diagnosed by a physician. Odds ratios (ORs) were calculated from binary logistic regression analysis, both crude and adjusted for age and education. The adjusted ORs (1.87-4.00) for all FSSs differed significantly from unity for both allergic asthma and rhinitis. The results provide support for the hypothesis of comorbidity in allergic asthma and rhinitis with FSSs. Since central sensitisation is likely to underlie FSSs, the present findings raises the question as to whether central sensitisation may also be involved in allergic asthma and rhinitis.


[拙訳]
中枢感作の概念に基づいて、線維筋痛症、過敏性腸症候群及び片頭痛を含む機能性身体症候群(FSSs)の診断を伴うアレルギー性喘息及びアレルギー性鼻炎における合併症の仮説を本研究は検証した。集団ベースの Västerbotten Environmental Health Study(n = 3406)[訳注:環境健康研究です]からのデータを使用した。アレルギー性又は非アレルギー性の喘息、アレルギー性鼻炎又はアトピー性皮膚炎の2876人のみならず、アレルギー性喘息を伴う164人、アレルギー性鼻炎を伴う298人のこの研究の参加者で構成されていた。診断は、医師により診断されたという自己報告に基づいた。(複数の)オッズ比(ORs)は、補正前及び年齢と教育で補正後の二重ロジスティック回帰分析から算出した。全ての FSSs の補正された ORs(1.87-4.00)は、アレルギー性喘息及び鼻炎の両方に対して一致[訳注:ORs=1]とは有意に異なった。これらの結果は、FSSs に伴うアレルギー性喘息及び鼻炎における合併症の仮説を支持する。中枢感作は FSSs の基礎となる可能性が高いので、本知見は、中枢感作がアレルギー性喘息及び鼻炎にも関与し得るかどうかという問題を提起する。

注:i) 引用中の「機能性身体症候群」については、例えば次の資料を参照して下さい。 「4.慢性疲労症候群(CFS)と機能性身体症候群(FSS)」 ii) 引用中の「アレルギー」についてはここを参照して下さい。 iii) 引用中の「n = 3406」は人数を示しています。

(2017年4月15日の追記終了)

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(8)MUS又はパニック症における内受容感覚、心拍知覚等について、その他(2017年4月20日、5月10日、12日、6月4日、30日、7月13日及び22日に追記)
標記MUSは、Medically Unexplained Symptom の略で、「医学的に説明できない症状」と和訳されます。例えば、次のWEBページを参照して下さい。 『「医学的に説明できない症状」って?』 一方、内受容感覚の説明について、貝谷久宜、熊野宏昭、越川房子編著の本、「マインドフルネス -基礎と実践-」(2016年発行)中の大平英樹著の文書「内受容感覚とマインドフルネス」の 身体と自己意識 の「(2)内受容感覚」における記述の一部(P40~P41)を次に引用します。

内受容感覚(interoception)とは、身体の生理的状態に関する感覚であり、皮膚、筋、関節、内臓などから脳へ伝えられる信号によって構成されている(Craig 2002 : 2009)。身体からの信号は、体液性経路、脊髄経路、そして求心性迷走神経経路によって脳にもたらされる。身体信号は、中継点である視床を経由し、前部帯状回皮質、後部島、体性感覚野などの上位の皮質に到達する。さらに、こうした個々の皮質脳部位において知覚された身体の信号は、最終的に右側の前部島において束ねられ(図3)1)、身体の統合的な表象が形成されると考えられており、これを内受容感覚と呼ぶ(Damasio 1994 : Craig 2002 : 2009)。これに対して、上述した視覚、触覚、痛みなどの外的な刺激に由来する感覚を外受容感覚(exteroception)と呼ぶ。(後略)

注:i) 引用中の「図3」の引用は省略します。 ii) 引用中の文献「Craig 2002 : 2009」はそれぞれ次の論文です。 「How do you feel? Interoception: the sense of the physiological condition of the body.」、「How do you feel--now? The anterior insula and human awareness.」 加えて、これらの論文について次のWEBページで言及されています。 「心身症 - 脳科学辞典」の「身体から脳へ」項 iii) 引用中の本「Damasio 1994」に関連する「ソマティック・マーカー仮説」については、次のWEBページを参照して下さい。 「ソマティック・マーカー仮説 - 脳科学辞典」 iv) 引用中の「中継点である視床」については、次のWEBページを参照して下さい。 「体性感覚 - 脳科学辞典」の「中枢機構」項 v) 引用中の「前部帯状回皮質」に関連する「前帯状皮質」については、次のWEBページを参照して下さい。 「前帯状皮質 - 脳科学辞典」 vi) 引用中の「後部島」及び「前部島」に関連する「島」については、次のWEBページを参照して下さい。 「島 - 脳科学辞典」 vii) 引用中の「体性感覚野」に関連する「体性感覚」については、次のWEBページを参照して下さい。 「体性感覚 - 脳科学辞典」 viii) 標記「内受容感覚」について、次の論文(英語)も参照した方が良いかもしれません。ただし、この論文の引用はしません。 「On the Origin of Interoception[拙訳]内受容感覚の起源について」 加えて、次のWEBページ及び資料にも、内受容感覚についての記述があり、参考になるかもしれません。 「心身症 - 脳科学辞典」の「心身症の背景となる心理・性格的要因」項、「情動の気づき,身体の気づきと自律神経による恒常性調整プロセスの関係」 ix) 引用中の「内受容感覚」に加えて、「失感情症」、「失体感症」、「ストレス反応」、「自律神経機能」、「気づき」及び「身体感覚増幅」に関連した資料は次を参照して下さい。 「情動の気づき、身体の気づきと自律神経による恒常性調整プロセスの関係」 x) 引用中の脚注「1)」(P41)については、次に引用します。

1) 内受容感覚は前部島だけで機能局在的に実現されているわけではない。前部島は、前部帯状皮質などとともに、覚醒ネットワーク(salience network)と呼ばれる脳内の大規模神経ネットワークの重要なハブを形成している。内受容感覚も、こうした大規模なネットワークの活動から創発されると考えるのが妥当であろう(Feldman-Barrett & Simmoms 2015)。しかし、そのネットワーク中でも、前部島が特に重要な役割を果たしていることは事実であり、そのため本稿では前部島を中心に記述することとする。

注:引用中の文献「Feldman-Barrett & Simmoms 2015」は次の論文です。 「Interoceptive predictions in the brain.

加えて、マインドフルネス訓練と内受容感覚との関連について、文書の「おわりに――マインドフルネス訓練の目的」における記述(P47)を次に引用します。

おわりに――マインドフルネス訓練の目的

本稿で述べてきた理論的枠組みは、前頭領域などの高次な脳部位に存在する意識がトップダウン的に身体を制御するという発想とは相いれない。本章の理論的枠組みは、脳と身体には、内的モデルにもとづいて、大量の、ノイズを含み、常に揺れ動くような、外界と身体内部からの信号を処理し、生きていくための動的均衡を実現するシステムが実現されており、その動作が自己意識を創発すると主張する。
身体への注意は、この脳と身体のシステムに影響を与える手段のひとつであり、マインドフルネス瞑想訓練で身体が重要視されることには、ここに根拠があるのではないだろうか。このような視点からは、マインドフルネス訓練の目的は、「脳と身体に実現されている内受容感覚と外受容感覚のシステムの動きを洗練させ柔軟かつ強靭にすること」であるといえるだろう(もちろん、現時点では、こうした主張はほとんど仮説の域を出ない。今後、実証的知見の蓄積により、この仮説が検証されるべきである。また、本稿で記述した外受容感覚と内受容感覚の脳と身体のモデルについても、計算論モデルを構築することにより、その動作を具体的に記述することが望まれる)。それにより、われわれは、自己の内外からのさまざまな刺激に対して、常に変化しつつも安定性を保ち、適応的に生きていくことが可能になるのかもしれない。

注:i) 引用中の「外受容感覚」及び「内受容感覚」については、共にここを参照して下さい。 ii) 標記「マインドフルネス訓練」に関連する「マインドフルネス」については、他の拙エントリのここを参照して下さい。 iii) 引用中の「前頭領域」に関連する「前頭葉」については、次のWEBページを参照して下さい。 「前頭葉 - 脳科学辞典

次に内受容感覚に関連した標記MUS、パニック症、内受容感覚のカテゴリー化、内受容感覚とストレス、PTSDにおける内受容感覚、内受容感覚と自閉スペクトラム症及び内受容感覚とソマティック・エクスペリエンスについての論文要旨をそれぞれ以下に紹介します。加えて、内受容感覚とアレキシサイミア(失感情症)の関係についての論文要旨例は、他の拙エントリのここを参照して下さい。

Improving heartbeat perception in patients with medically unexplained symptoms reduces symptom distress.[拙訳]医学的に説明できない症状を伴う患者における心拍知覚の改善は、症状の苦痛を軽減する。

Distortions in interoceptive accuracy have been linked to somatoform disorders. In line with cognitive theories of symptom formation in somatoform disorders, decreases in interoceptive accuracy have recently been observed to co-occur with more severe symptom reports. The current study tested the hypothesis that experimentally increasing interoceptive accuracy should decrease symptom severity in somatoform disorders. Twenty-nine patients with somatoform disorders were instructed in a newly developed heartbeat perception training procedure. Heartbeat perception, as a proxy for interoceptive accuracy, was assessed with a mental tracking task. Although there were no significant differences between the training group and a waiting control group (n=23) regarding increases in heartbeat perception, health anxiety served as a moderator and significant reductions in state symptom reports were observed after training. These findings suggest a relation between lower interoceptive accuracy and the perception of bodily symptoms in somatoform disorders.


[拙訳]
内受容感覚の正確さの歪みは、身体表現性障害に関連している。身体表現性障害における症状形成の認知理論に沿って、より重度の症状の報告とともに、内受容感覚の正確さの低下が併発することが、最近観察されている。本研究において、実験的に向上する内受容感覚の正確さが、身体表現性障害における症状の重症度を低下させるだろうという仮説を試験した。身体表現性障害を伴う患者 29人が、新たに開発された心拍知覚訓練方法を指導された。内受容感覚の正確さの代理としての心拍知覚は、精神的な追跡課題で評価された。訓練群と待機対照群(n = 23)との間に心拍知覚の増加に関する有意差はなかったが、健康不安はモデレータとして働き、そして訓練後に状態症状における有意な減少が観察された。これらの知見は、身体表現性障害における低い内受容感覚の正確さと身体的症状の知覚との間の関係を示唆する。

注:i) 引用中の「モデレータ」は調整役のような意味かもしれません。 ii) 引用中の「身体表現性障害」については、次のWEBページを参照して下さい。 「身体表現性障害 - 脳科学辞典」、「身体症状症(旧:身体表現性障害) - KONPAS」 iii) 引用中の「n = 23」は人数を示しています。 

Interoceptive fear learning to mild breathlessness as a laboratory model for unexpected panic attacks.[拙訳]予期しないパニック発作に対する実験室モデルとしての軽い呼吸困難の内受容感覚恐怖学習

Fear learning is thought to play an important role in panic disorder. Benign interoceptive sensations can become predictors (conditioned stimuli - CSs) of massive fear when experienced in the context of an initial panic attack (unconditioned stimulus - US). The mere encounter of these CSs on a later moment can induce anxiety and fear, and precipitate a new panic attack. It has been suggested that fear learning to interoceptive cues would result in unpredictable panic. The present study aimed to investigate whether fear learning to an interoceptive CS is possible without declarative knowledge of the CS-US contingency. The CS consisted of mild breathlessness (or: dyspnea), the US was a suffocation experience. During acquisition, the experimental group received six presentations of mild breathlessness immediately followed by suffocation; for the control group both experiences were always separated by an intertrial interval. In the subsequent extinction phase, participants received six unreinforced presentations of the CS. Expectancy of the US was rated continuously and startle eyeblink electromyographic, skin conductance, and respiration were measured. Declarative knowledge of the CS-US relationship was also assessed with a post-experimental questionnaire. At the end of acquisition, both groups displayed the same levels of US expectancy and skin conductance in response to the CS, but the experimental group showed a fear potentiated startle eyeblink and a different respiratory response to the CS compared to the control group. Further analyses on a subgroup of CS-US unaware participants confirmed the presence of startle eyeblink conditioning in the experimental group but not in the control group. Our findings suggest that interoceptive fear learning is not dependent on declarative knowledge of the CS-US relationship. The present interoceptive fear conditioning paradigm may serve as an ecologically valid laboratory model for unexpected panic attacks.


[拙訳]
恐怖学習はパニック症に重要な役割を果たすと考えられる。良性の内受容感覚は、初期のパニック発作(非条件刺激 - US)の文脈で体験した時の大恐怖の予測因子(条件刺激 - CSs)になり得る。これら CS の単なる遭遇により、後に不安と恐怖を誘発し、そして新しいパニック発作を突然引き起こす可能性がある。内受容感覚の手がかりへの恐怖学習は、予測できないパニックをもたらすだろうことが示唆されている。本研究は、CS-US 偶発の宣言的知識なしに、内受容感覚 CS の恐怖学習が可能かどうかを調査することを目的とした。 CS は軽度の息切れ(又は呼吸困難)で構成され、US は窒息体験であった。習得(acquisition)中、実験グループは、6回の軽度の息切れの実演を受け、その直後に窒息を受けた。対照グループは試験間の休憩時間により両体験は常に分離された。その後の消去フェーズにおいて、被験者は6回の無強化の CS 実演を受けた。US の予期は連続的に評価され、驚愕性瞬目の筋電図、皮膚コンダクタンス、呼吸が測定された。CS-US 関係の宣言的知識も、実験後のアンケートで評価した。習得の終わりに、両グループは CS に応答した同等レベルの US 予期及び皮膚コンダクタンスを示したが、実験グループは、対照グループと比較して、恐怖が増強した驚愕性瞬目及び CS に応答した異なる呼吸を示した。CS-US に気づかない被験者のサブグループのさらなる解析は、驚愕性瞬目条件付けの存在を、実験グループにおいては確認されたが、対照グループにおいては確認されなかった。我々の知見は、内受容感覚恐怖学習は CS-US 関係の宣言的知識には依存しないことを示唆する。本内受容感覚恐怖学習パラダイムは予期しないパニック発作の生態学的に有効な実験室モデルとして役立つかもしれない。

注:i) 引用中の「宣言的知識」は、言葉で説明できるような知識のようです。 ii) 引用中の「驚愕性瞬目条件付け」に関連する「瞬目反射条件づけ」については次のWEBページを参照して下さい。 「瞬目反射条件づけ - 脳科学

Categorical interoception: perceptual organization of sensations from inside.[拙訳]カテゴリー別の内受容感覚:内部からの感覚の知覚的な体系

Adequate perception of bodily sensations is essential to protect health. However, misinterpretation of signals from within the body is common and can be fatal, for example, in asthma or cardiovascular disease. We suggest that placing interoceptive stimuli into interoceptive categories (e.g., the category of symptoms vs. the category of benign sensations) leads to perceptual generalization effects that may underlie misinterpretation. In two studies, we presented stimuli inducing respiratory effort (respiratory loads) either organized into categories or located on a continuous dimension. We found pervasive effects of categorization on magnitude estimations, affective stimulus evaluations, stimulus recognition, and breathing behavior. These findings indicate the need for broadening perspectives on interoception to include basal processes of stimulus organization, in order for interoceptive bias to be understood. The results are relevant to a wide range of interoception-related phenomena, from emotion to symptom perception.


[拙訳]
身体感覚の適切な知覚は、健康を守るために不可欠である。しかしながら、体内からの信号の誤解は一般的であり、例えば、喘息又は心臓血管疾患においては致死的であり得る。内受容感覚性の刺激を内受容感覚のカテゴリー(例えば、症状のカテゴリー vs. 良性感覚のカテゴリー)に配置することは、誤解の根底にあるかもしれない知覚の一般化効果につながることを我々は示唆する。2つの研究において、カテゴリーへと体系化された又は連続次元に位置付けられた刺激を誘導する呼吸効果(呼吸負荷)を我々は提示した。規模推定、感情刺激評価、刺激認識、及び呼吸行動に関してカテゴリー化することの広範な影響を我々は見出した。内受容感覚のバイアスが理解されるためには、刺激体系の基礎的なプロセスを含めるための、内受容感覚に関する視点を広げる必要があることをこれらの知見は示す。結果は、情動から症状の知覚まで、内受容感覚に関係した現象の広範囲に関連している。

Interoception and stress.[拙訳]内受容感覚とストレス(全文はここを参照して下さい)

Afferent neural signals are continuously transmitted from visceral organs to the brain. Interoception refers to the processing of visceral-afferent neural signals by the central nervous system, which can finally result in the conscious perception of bodily processes. Interoception can, therefore, be described as a prominent example of information processing on the ascending branch of the brain-body axis. Stress responses involve a complex neuro-behavioral cascade, which is elicited when the organism is confronted with a potentially harmful stimulus. As this stress cascade comprises a range of neural and endocrine pathways, stress can be conceptualized as a communication process on the descending branch of the brain-body axis. Interoception and stress are, therefore, associated via the bi-directional transmission of information on the brain-body axis. It could be argued that excessive and/or enduring activation (e.g., by acute or chronic stress) of neural circuits, which are responsible for successful communication on the brain-body axis, induces malfunction and dysregulation of these information processes. As a consequence, interoceptive signal processing may be altered, resulting in physical symptoms contributing to the development and/or maintenance of body-related mental disorders, which are associated with stress. In the current paper, we summarize findings on psychobiological processes underlying acute and chronic stress and their interaction with interoception. While focusing on the role of the physiological stress axes (hypothalamic-pituitary-adrenocortical axis and autonomic nervous system), psychological factors in acute and chronic stress are also discussed. We propose a positive feedback model involving stress (in particular early life or chronic stress, as well as major adverse events), the dysregulation of physiological stress axes, altered perception of bodily sensations, and the generation of physical symptoms, which may in turn facilitate stress.


[拙訳]
求心性神経信号は内臓から脳に連続的に伝達される。内受容感覚は、最終的には身体的な作用の意識的知覚をもたらすことができる中枢神経系による内臓-求心性神経信号の処理を意味する。従って内受容感覚は、脳-身体軸の上向き分岐における情報処理の顕著な例として記述することができる。ストレス応答に有機体が潜在的に有害な刺激に直面したときに誘発される複雑な神経行動カスケードが関与する。このストレスカスケードは、一連の神経及び内分泌系経路を含むので、ストレスは、脳-身体軸の下向き分岐上の通信プロセスとして概念化することができる。従って、内受容感覚とストレスは、脳-身体軸上の情報の双方向伝達を通して関連づけられる。脳-身体軸上の通信を成功させる要因となる神経回路の過度及び/又は持続的な活性化(例えば、急性又は慢性ストレスによる)が、これらの情報プロセスの機能不全及び調節不全を誘発すると主張することができる。結果として、ストレスに関連する身体関連の精神障害の発症及び/又は維持に寄与する身体的症状がもたらされる内受容感覚の信号処理が変更されるかもしれない。本論文では、急性及び慢性ストレス、そして内受容感覚を伴うこれらの相互作用の基礎となる精神生物学的プロセスについての知見を我々は要約する。生理学的ストレス軸(視床下部-下垂体-副腎皮質軸及び自律神経系)の役割に焦点を当てながら、急性及び慢性ストレスにおける心理的要因についても論議する。ストレス(重大な有害事象はもちろん、特に早期の生活におけるもの又は慢性ストレス)、次々にストレスを助長するかもしれない、生理学的ストレス軸の調節不全、身体感覚の変化した知覚、そして身体症状の発生に関与する正のフィードバックモデルを我々は提案する。

注:ちなみに、慢性疼痛患者における交感神経変動と内受容感覚の関係性については、例えば次の資料を参照して下さい。 「慢性疼痛患者における交感神経変動と内受容感覚の関係性

Clinical implications of neuroscience research in PTSD.[拙訳]PTSD における神経科学研究の臨床的な含意(全文はここを参照して下さい)

The research showing how exposure to extreme stress affects brain function is making important contributions to understanding the nature of traumatic stress. This includes the notion that traumatized individuals are vulnerable to react to sensory information with subcortically initiated responses that are irrelevant, and often harmful, in the present. Reminders of traumatic experiences activate brain regions that support intense emotions, and decrease activation in the central nervous system (CNS) regions involved in (a) the integration of sensory input with motor output, (b) the modulation of physiological arousal, and (c) the capacity to communicate experience in words. Failures of attention and memory in posttraumatic stress disorder (PTSD) interfere with the capacity to engage in the present: traumatized individuals "lose their way in the world." This article discusses the implications of this research by suggesting that effective treatment needs to involve (a) learning to tolerate feelings and sensations by increasing the capacity for interoception, (b) learning to modulate arousal, and (c) learning that after confrontation with physical helplessness it is essential to engage in taking effective action.


[拙訳]
極度のストレスへの曝露が脳機能にどのように影響するかを示す研究は、トラウマ性ストレスの性質を理解するために重要な貢献をしている。これには、トラウマを負った個々人が、現在において、不適切及びしばしば有害な大脳皮質下で起こす応答を伴う感覚情報への反応に脆弱である考えを含む。トラウマ性の体験のリマインダー(思い出させるもの)は強烈な情動を支える脳領域を活性化させ、そして、 (a) 動作出力を伴う感覚入力の統合、 (b) 生理的覚醒の調整、及び (c) 言葉におけるコミュニケーション体験の能力 に関与する中枢神経系(CNS)領域における活性化を減少させる。心的外傷後ストレス障害(PTSD)における注意及び記憶の機能不全は、現在を営む能力に支障をきたす:トラウマを負った個々人の「世界において道に迷う」。(a) 内受容感覚の能力を増加させることにより感覚(フィーリング及びセンセーション)に耐える学習、(b) 覚醒を調整する学習、そして (c) 身体的な無力を伴う直面後に有効な行動をとることは必要不可欠であることの学習 に関与する有効な治療の必要性の示唆によるこの研究の含意をこの記事で議論する。

注:i) この引用中の「強烈な情動を支える脳領域を活性化させ」と「中枢神経系(CNS)領域における活性化を減少させる」に関連する「情動に関与する大脳皮質下の脳領域をより活性化させ、前頭葉のさまざまな領域、とくに内側前頭前皮質の活動を大幅に低下させる。」を含む引用は他の拙エントリのここここを参照して下さい。

Alexithymia, not autism, is associated with impaired interoception.[拙訳]自閉症ではなくアレキシサイミアが障害された内受容感覚に関連する(全文はここを参照して下さい)

It has been proposed that Autism Spectrum Disorder (ASD) is associated with difficulties perceiving the internal state of one's body (i.e., impaired interoception), causing the socio-emotional deficits which are a diagnostic feature of the condition. However, research indicates that alexithymia - characterized by difficulties in recognizing emotions from internal bodily sensations - is also linked to atypical interoception. Elevated rates of alexithymia in the autistic population have been shown to underpin several socio-emotional impairments thought to be symptomatic of ASD, raising the possibility that interoceptive difficulties in ASD are also due to co-occurring alexithymia. Following this line of inquiry, the present study examined the relative impact of alexithymia and autism on interoceptive accuracy (IA). Across two experiments, it was found that alexithymia, not autism, was associated with atypical interoception. Results indicate that interoceptive impairments should not be considered a feature of ASD, but instead due to co-occurring alexithymia.


[拙訳]
自閉スペクトラム症(ASD)は、この状態の診断的特徴である社会-情動欠陥を引き起こす自分の身体の内部状態を知覚することの困難(すなわち、障害された内受容感覚)に関連することが提唱されている。しかしながら、内部の身体感覚からの情動の認識における困難により特徴づけられるアレキシサイミアは、非定型な内受容感覚にも関連することを研究は示した。自閉症集団におけるアレキシサイミアの高い割合は、ASD の症状と考えられているいくつかの社会-情動障害を裏付けることを示し、ASD における内受容感覚の困難は併発するアレキシサイミアによるものでもある可能性が高くなっている。この方向の調査の後、本研究はアレキシサイミアと自閉症が内受容感覚精度(IA)に及ぼす相対的な影響を検査した。 2つの実験にわたり、自閉症ではなくアレキシサイミアが非定型な内受容感覚に関連していることが判明した。これらの結果は、内受容感覚の障害が ASD の特徴であると考えるべきではなく、代わりに併発するアレキシサイミアによることを示す。

注:引用中の「自閉スペクトラム症」については、例えば他の拙エントリを参照して下さい。

Somatic experiencing: using interoception and proprioception as core elements of trauma therapy.[拙訳]ソマティック・エクスペリエンス:トラウマセラピーの中核要素としての内受容感覚及び固有受容感覚の使用

Here we present a theory of human trauma and chronic stress, based on the practice of Somatic Experiencing(®) (SE), a form of trauma therapy that emphasizes guiding the client's attention to interoceptive, kinesthetic, and proprioceptive experience. SE™ claims that this style of inner attention, in addition to the use of kinesthetic and interoceptive imagery, can lead to the resolution of symptoms resulting from chronic and traumatic stress. This is accomplished through the completion of thwarted, biologically based, self-protective and defensive responses, and the discharge and regulation of excess autonomic arousal. We present this theory through a composite case study of SE treatment; based on this example, we offer a possible neurophysiological rationale for the mechanisms involved, including a theory of trauma and chronic stress as a functional dysregulation of the complex dynamical system formed by the subcortical autonomic, limbic, motor and arousal systems, which we term the core response network (CRN). We demonstrate how the methods of SE help restore functionality to the CRN, and we emphasize the importance of taking into account the instinctive, bodily based protective reactions when dealing with stress and trauma, as well as the effectiveness of using attention to interoceptive, proprioceptive and kinesthetic sensation as a therapeutic tool. Finally, we point out that SE and similar somatic approaches offer a supplement to cognitive and exposure therapies, and that mechanisms similar to those discussed in the paper may also be involved in the benefits of meditation and other somatic practices.


[拙訳]
ここでは、クライアントの注意を内受容感覚、運動感覚、及び固有受容感覚の経験に導くことを強調するトラウマセラピーの一種、ソマティック・エクスペリエンス(SE™)の実践に基づいたヒトのトラウマ及び慢性ストレスの理論を我々は提示する。内部の注意、加えて運動感覚及び内受容感覚イメージの使用のこのスタイルは慢性及びトラウマティックストレスからもたらされる症状の分解をもたらしうることを SE は主張する。妨害の完了、生物学的に基づく、自己保護的及び防御的な応答、そして自律神経の過覚醒の開放及び調節を通してこれは達成される。SE 治療法の合成されたケーススタディを通して、我々はこの理論を提供する。この例に基づき、我々が中枢応答ネットワーク(CRN)と名づけた皮質下の自律神経系、辺縁系、運動系及び覚醒系により形成される複雑な動的システムの機能調節不全としてのトラウマ及び慢性ストレスの理論を含む、メカニズムに関与する可能性のある神経生理学的な理論的な解釈を我々は提供する。CRN への機能性の復活を SE の方法がいかにして助けるかを我々は実証し、そして、治療ツールとしての内受容感覚、固有受容感覚及び運動感覚への注意の使用の効力はもちろん、ストレス及びトラウマに対処する時の直観的で身体に基づく保護的な反応を考慮する重要性を我々は強調する。最後に、SE 及び類似した身体アプローチは、認知及び曝露療法を補足し、そして本論文において論じられているものと類似したメカニズムが瞑想及び他の身体的な実践の利益にも関与するかもしれないことも、我々は指摘する。

注:i) 引用中の「ソマティック・エクスペリエンス」については、他の拙エントリのここを参照して下さい。 ii) 引用中の「固有受容感覚」については、例えば次の資料を参照して下さい。 「自立活動便り」 iii) 引用中の「トラウマ」については、他の拙エントリのリンク集を参照して下さい。 iv) トラウマの文脈における引用中の「辺縁系」については、他の拙エントリのここ及びここを参照して下さい。  

(2017年4月20日、5月10日、12日、6月4日、30日、7月13日及び22日の追記終了)

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(9)中毒学関連本の読書感想について(2017年6月4日に追記)
過日に拙ブログのミニ情報において記述した、「中毒学関連本の読書感想等」の改訂版を「中毒学関連本の読書感想について」として、再度以下にミニ情報に近い形式で記述します。ちなみに、 a) 用語の説明程度のための引用では、必要に応じてウィキペディアを利用しています。 b) あくまで「読書感想」であり、厳密な引用とは形式が少し異なります。 c) 読書感想のみならず化学物質過敏症関連にまで範囲を広げて記述しています。

小城勝相著の本、『体の中の異物「毒」の科学』(2016年発行)の読書感想をはじめとして、化学物質過敏症を理解するために重要な中毒学を含めて幅広い学問分野が全体にまとまりあがることの視点を加味して、拙ブログ作者の意見を以下に箇条書きで記述します。もちろん英文の各種論文を読むための英語力も必要不可欠です。

①地球上には、私たち人間が合成した化合物を含め、2000万種をはるかに超える化学物質が存在しています(同本の P60)。特定の化学物質における毒性を議論するためには、化学物質の同定が必要です。例えば、アルデヒド(ここを参照)※1という総称の表現では、化学物質が同定されておらず、毒性の議論には不向きです。例えば、(職場における)許容濃度等の勧告(2016年度)(ここを参照)においては、それぞれの化学物質に対し、許容濃度等※2が勧告されています。加えて、一部の化学物質それぞれに SDS(安全データシート、ここを参照、加えてモデル SDS 情報〔ここを参照〕)が存在します。

②同定された化学物質(毒物)の「用量反応関係」(同本の P61、例えばここを参照)が判明しないと、毒性の把握が充分にできないのでは? これに加えて LD50(半数致死量、同本の P67~P69、ここを参照)の情報も必要であると本エントリ作者は考えます。すなわち、化学物質(毒物)は有るか、無いかではなく、どの程度の量(濃度)があり、どの程度の影響がでるのかの量的な議論が重要であると本エントリ作者は考えます(例えば、ここの「はじめに」項を参照)。例えば、a) 最も毒性が強いのはボツリヌス菌がつくる毒素(同本の P68~P69)です。一方、この毒素は、神経伝達物質であるアセチルコリンの分泌を阻害する強力な中枢神経毒である[LD50=0.00001(mg/kg)]ものの、この性質を利用して筋緊張をきたす脳卒中の後遺症の治療に使われています(同本の P69 、ただし、脳卒中の後遺症の治療については、ここ及びここにおける「神経毒素の臨床応用」項を参照) b) 水も過剰に摂取すれば水中毒(ここを参照)になります。

③化学物質(毒物)等の生体異物は、経口、経皮、吸入などの経路を経て体内に取り込まれ、やがて血液中に入って全身に広がっていきます。そのままの状態で組織に毒性を発現するものもあれば、細胞内の酵素によってさまざまな代謝(ここを参照)を受けることで活性化して毒性を発揮するもの、私たちの体が備える解毒システムによって代謝され、ほとんど排泄されるものなど、実に多様にふるまいます(同本の P76)。ただし、アレルギーについては考慮していません。要するに、体内に取り込まれた化学物質は代謝や解毒等、実に多様にふるまいます。例えば、トルエンの代謝については同本の P82~P84 に示されています。

④中毒学において、ここに述べた種差はきわめて重要です。哺乳類同士であれば、DNAの大きさやタンパク質の種類、体を成り立たせている機構等がほとんど同じであるため、ラットやマウスが医学研究においてよく用いられます(ここを参照)。
しかし、それでもなお、上記代謝経路が異なることが稀にあります。たとえば、クロフィブレート(ここを参照)のようなペルオキシソーム増殖剤は、マウスでは肝臓がんを引き起こすが、ヒトではそうした作用はなく、脂質異常症の治療に使われています。(同本の P63、注:「種差」とはラットとヒトとの種差、マウスとヒトとの種差等を指します)

⑤中毒発生防止のために、規制値を定める必要があります。このための基礎となるデータは、疫学調査によります。疫学(ちなみに、疫学用語の基礎知識はここを参照)とは、ヒトの集団に対して健康および病気の原因を宿主や病因、環境の面から包括的に考えて予防をはかる学問であり、いわばマクロレベルの科学です。(同本の P24)

⑥繰り返し述べてきたとおり、環境中に存在するものに対して、ゼロリスクということはあり得えません。「完璧な環境」などというものは夢想にすぎないのだから、安全性の科学的評価に基づいて、現実に見合った制度を定量的に考えることが重要です。(同本の P241) これらを考慮して適切に考えるためには、化学物質のリスクコミュニケーション(例えば資料を参照、ちなみに、この資料の P35 には、「化学物質の毒性は、人工物、天然物に関係なく物質により決まる」についての説明があります)も場合によっては必要であると本エントリ作者は考えます。

ここで少し脱線しますが、エピジェネティクスが注目を集めたきっかけは、疫学研究(論文要旨を参照、ただし、この論文要旨では60年後となっています)によってもたらされた結果だった。1944年の冬、オランダはドイツ軍に食糧封鎖されて飢餓状態に陥った。そのとき妊娠していた女性から生まれた赤ちゃんが50年後、高血圧や2型糖尿病、心筋梗塞などになりやすいことがわかった。胎児期の低栄養が50年も経ってから効果を表す理由の探求がエピジェネティックな効果を考える契機となった。(同本の P205)

注:以下は化学物質過敏症にも大きく関連する記述です。

⑦私たち生物の体は、さまざまな元素からなる分子(ここを参照)によって構成されています。そして、その分子のほとんどは、有機化合物です。私たちの体と相互作用して、好影響や悪影響を及ぼす医薬品や農薬、環境汚染物質などに有機化合物が多いのも、このためです。(同本の P32)。

⑧一部のMCS関連資料(ここを参照)等を読むためには、中毒学の基本的な知識が必要です。

⑨化学物質過敏症(及び/又はシックハウス症候群)は脳や精神疾患と関連する、 a) 脳の機能異常※3ここを参照)、 b) ノセボ(ノシーボ)効果(嫌悪臭におけるノセボ効果:ここを参照、及びマニュアルの「3.4.4. 化学物質過敏状態が引き起こされるメカニズム」項[P53]を参照)、 c) 条件付け(ここここ及びここの P31 を参照)、 d) 化学物質ばく露などの過去の出来事(マニュアルの「11.3. MCS における臭いに対する脳の反応と症状の出現」項[P205~P206]参照) e) 心理社会的ストレスや精神的なトラウマ(ここを参照) f) パニック障害や身体表現性障害の異型、あるいは軽度の心的外傷後ストレス障害 PTSD で説明が可能(ここを参照) g) 突発性環境不耐症(IEI)に予期及びノセボのメカニズムが決定的に関与しているとの主張(ここを参照) h) MCS はありふれた化学物質への直接的な反応というよりは、むしろ嗅覚的な感知の高まり(嗅覚過敏)を伴う覆い隠されたストレス障害、そして関連する行動学的な条件付けであるとの主張(ここ[英語]を参照) 等と関係があります。

⑩マインドフルネス認知療法(ここここ及びここを参照)は MCS 又は化学物質過敏症にも関係があります(ここここ及びここを参照)。加えて、マインドフルネスストレス低減法は MCS にも関係があります(ここを参照)。さらに、上記に関連するマインドフルネストレーニングとアクセプタンス&コミットメント・セラピーは IEI にも関係があります(ここ[英語]の「Changing The Sampling Strategy For Interoceptive Input」項を参照、ちなみにこの論文要旨の拙訳はここを参照して下さい)。

以上を踏まえると、化学物質過敏症に対する何らかの判断を行う際には、幅広い学問分野[例えば、a) 化学、 b) 中毒学、免疫学、疫学、ゲノムや分子生物学と密接する医学、精神医学をはじめとする医学、 c) (薬物)代謝や解毒を含む分子生物学(又は生化学)、ゲノム薬理学や薬物動態学をはじめとする薬学、 d) 脳科学、 e) 臨床心理学]の基本的な知識や常識をまとめあげた後に、これらの知識全体を俯瞰(ここ(12)及び(18)項参照)しながら様々な視点から検討を行い、総合的に判断すると、より適切な判断が可能になると拙エントリ作者は考えます。さらに、これにより、a) 自分が望むようにではなく、あるがままに物事を見る(ここを参照)ことに近づくことができる ii) 物事を何でも簡単に信じてしまう(ここ(10)項参照)方々は、これの防止にも寄与する と拙エントリ作者は考えます。

さらに、余談になりますが、世界中に発信している論文は英語で記述されているので、これらを読むためにも英語の勉強は必須であると拙エントリ作者は考えます。英語の医学論文は PubMed(ここを参照)で検索できます。拙ブログにおいてもこれらの医学論文が多く紹介されています。

注:以下は脚注的な位置付けの文章です。

※1:ちなみに、アルデヒドにはホルムアルデヒド(ここを参照)やアセトアルデヒド(人体においては、お酒に含まれるエタノールの酸化によって生成し、一般に二日酔いの原因だと見なされている)が含まれる(ここの「命名法」の 4 を参照)。また、上記化学物質、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、エタノールは(ここを参照)においてモデルSDS情報が検索できます。加えて、上記本文で示すトルエンも同様に検索できます。これらのSDS情報を読めば、個々の化学物質の毒性を含む性質は千差万別であることがわかります。

※2:許容濃度等を理解するためには、次のWEBページにおけるその性格および利用上の注意を参照して下さい。 「許容濃度等の勧告について - 日本産業衛生学会

※3:化学物質過敏症において、脳の一領域である大脳辺縁系を介した作用機序に着目についてはここを参照して下さい。

(2017年6月4日の追記終了)

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(10)アレルギー疾患における心理的因子の関与について(2017年6月4日、14日に追記)
最初に標記について、秋山一男、太田健、近藤直美著の本、「メディカルスタッフから教職員まで アレルギーのはなし -予防・治療・自己管理-」(2017年発行)の 13. 様々なアレルギー の「13.3 アレルギー疾患と心身医療-アレルギーと心の問題-」における記述の一部(P137~P141)を次に引用します。

13.3 アレルギー疾患と心身医療-アレルギーと心の問題-

アレルギー疾患に対する心理的因子の関与については古くより記載があり,すでに2000年余りも前にヒポクラテスは,喘息発作の出現に怒りや敵意などの感情が関与し得ることを指摘していた.近年では精神分析学者のアレキサンダー(Franz Alexander, 1891~1964)が心理的因子を強く受ける7つの代表的疾患をあげており,その中にアレルギー性疾患として喘息とアトピー性皮膚炎が入っている.このように以前よりアレルギー疾患に心理的因子が強く関与していることが指摘されている.
さらに,最近の疫学的および実験的臨床研究によって,心理的ストレスによって生じた不安,抑うつ,怒り,悲しみ,暗示等の情動刺激は神経系,内分泌系を介して気管支喘息,アトピー性皮膚炎,アレルギー性鼻炎等のアレルギー疾患の発症や経過に影響を及ぼしていることが明らかになっている.また,基礎的実験によって,神経線維と肥満細胞の連絡,アレルギー反応の条件付け,アレルギー反応での神経ペプチド・グルココルチコイドの役割などが 心身相関の機序として具体的に解明されてきている.

13.3.1 臨床研究
アレルギー反応の心身相関について検討した臨床研究では,バラの花粉で喘息発作が起こるという婦人が造花のバラでも発作を起こしたことから,暗示または条件付けによっても喘息発作が出現することが報告されている1).また,喘息発作のきっかけとして風邪,気象の変化に次いで心理的ストレスがあげられている.さらに,うつ病や精神的な問題があると喘息のコントロール不良や頻回の救急受診になりやすいことが報告されている.
アトピー性皮膚炎と心理的ストレスとの関係については,1/2~2/3の症例で心理的ストレスが主たる増悪因子であったとする報告がある.精神的不安はかゆみを起こす血中のヒスタミンを上昇させる.アトピー性皮膚炎では,皮膚の掻痒感などの不快感に加え顔面を含む皮膚の露出部に病変が出現するために,患者はより一層精神的に不安定となり,満足のいく社会生活や対人関係を保持していく上で重大な障害となる場合も少なくない.アトピー性皮膚炎患者は 内面に問題を抱えていることが多く,治療にあたっては,適切な身体治療に加え,患者の心理面にも配慮した治療が必要である.蕁麻疹でも同じように不安や暗示等の精神状態が.発症や経過に関係することがわかっている.
アレルギー性鼻炎についても花粉によって誘発される鼻症状が心理的な葛藤が加わると増悪することが報告されている,また.アレルギー性鼻炎の発症または再発の諸条件についてみると,風邪,疲労,睡眠不足などの身体的因子,および季節の変わり目,気温の変化などの外界的因子もあげられるが,焦燥,不満,心配,不安,緊張などの心理的条件も無視することができないといわれている.

13.3.2 アレルギー性疾患の心身医学的側面の特徴2)
アレルギー性疾患と心理学的側面については3つのカテゴリーにまとめられる.これら3つのカテゴリーは相互に無関係でなく,しばしば相互に関連し合っている.
①ストレスによりアレルギー性疾患が発症,再燃,悪化,持続する症例(狭義の心身症)
心理社会的ストレスがアレルギー性疾患の悪化因子あるいは発症因子の1つとなっている場合である.この場合,生活上の変化(出産,結婚,離婚,転居,就職,転職,進学,近親者の病気や死など)や日常生活のストレス(家庭,職場,学校での対人関係の問題,持続的な勉学や仕事の負担など)が疾患の発症や再燃に先行してみられる.また心理状態(不安,緊張,怒り,抑うつなど)と症状の増減との間に密接な相関が認められる.
②アレルギー性疾患に起因する不適応を引き起こしている症例
アレルギー性疾患でも特に,気管支喘息,アトピー性皮膚炎では,慢性再発性に経過し改善の見通しが立ちにくいことが少なくなく,しばしば治療にかかる肉体的,精神的,時間的,経済的負担が大きい.それらによって,患者に著しい心理的苦痛や社会的,職業的機能の障害が生じ 心身医学的な治療の対象となる場合がある.症状として,睡眠障害,対人関係障害,社会的状況の回避や引きこもり,学業や仕事の業績の低下,抑うつ気分,不安などがみられる.
③アレルギー性疾患の治療・管理への不適応を引き起こしている症例
心理社会的要因によって医師の処方や指導の遵守不良などが引き起こされ,アレルギー性疾患に対する適切な身体的治療や管理を行うことが妨げられ,治療や経過は著しい影響を受ける.症状として,ステロイド治療をはじめとした薬物や処置に対する不合理な不安・恐怖,症状のコントロールに対しての無力感,医療あるいは医療従事者に対する強い不信感などを認める.これらによって,治療の遅れや不適切な自己管理の危険がある.

13.3.3 アレルギーと心理的因子
一般にストレスをストレスとして認知せず,あたかも何事もなかったかのようにふるまうような,ストレスに対して適切に対処できていない患者に重症化・難治化がみられやすく,全身性ステロイド薬の離脱が困難になる場合が少なくない.心理的因子は,体質的基盤の上に症状を形成する因子として重要な役割を担っている.その関与の仕方としては,準備因子,誘発因子,持続増悪因子の3通りに分けられる.
準備因子: それのみではアレルギー発症には至らないが,その上に様々な誘発因子が加わることでアレルギー疾患を引き起こすような身体的条件(発症準備状態)をつくり出す因子である.準備因子としては,不安や怒りなどの情動または愛情や依存といった欲求を抑圧した状態,自分の感情に気づかなかったり,言葉で表現できない状態(失感情症),あるいは自己主張ができず周囲の期待に必要以上に応えようとする過剰適応パターンがあげられる.
誘発因子: 発症準備状態ができあがった上に加わることで,アレルギー疾患を発症させるような因子である.これには,不安,怒り,悲しみといった情動があげられる.
持続増悪因子: 不安や抑うつなどの2次的な感情を引き起こし,その感情に伴う身体的変化がアレルギー症状を悪化させるという悪循環を生み出す因子をいう.

13.3.4 アレルギー疾患の心身医学的治療3)
日本アレルギー学会からアレルギー疾患の診断・治療ガイドラインが出版されている.アレルゲンの回避,薬物療法,減感作療法,などの治療法が患者の病気の重症度に応じて組み合わせて行われるが,心身医学的治療についても以下のように述べられている.
心理的因子の関与が大きい患者の治療においては,心身医学的治療が必要である.面接を中心とした心理療法,自律訓練法,認知行動療法,家族療法などがなされる.
ところで面接は受容,共感,支持が基本であり,面接によって悲しみや怒りの感情が発散され,心身相関への気づきが深まり,対人関係や日常生活の問題点が明らかにされる.不安やうつを伴っている場合,抗不安薬や抗うつ薬を併用すると有効な場合がある.現在,最も多く使用されているベンゾジアゼピン系抗不安薬は,抗不安作用に加えて鎮静,筋弛緩作用をもっている.したがって,呼吸抑制作用と筋弛緩作用は,低換気による炭酸ガスの蓄積を助長するために,喘息の大発作や増悪時には使用しない.抗うつ薬は,選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI:selective serotonin reuptake inhibitors)やセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI:serotonin & norepinephrine reuptake inhibitors)などが推奨されている.これらの治療はアレルギーの治療と同時に行う必要がある.精神面の改善とともにアレルギー症状の改善がみられる.
現実のストレスが強い場合には,家庭や職場の環境調整や生活指導を行い,リラックス方法として自律訓練法などを指導し,習得してもらう.患者のパーソナリティの問題のほうが大きい場合には,心身医学を専門とする医師に紹介するか,心理療法士や精神科医とのチームアプローチを行う.

13.3.5 心理医学的治療の意義
心理(こころ)がアレルギー疾患の病態に関与していることが多くみられる.アレルキー疾患の治療においては,身体的治療に加え,不安,抑うつ,悲しみ,怒り等の精神状態に対する対処が重要である.このことについては近年のアレルギー疾患治療ガイドラインにも取り上げられている.通常の標準的治療を行っても症状が改善しないときは日常生活のあり方や対人関係についての心理的側面を考慮する必要がある.心身両面から病態を把握し,各人に応じた適切な治療を行うことにより症状の改善につながる.

注:i) この引用部の著者は久保千春です。 ii) 引用中の「1)」は次の資料です。 「Mackenzie, J.N.:The production of the so-called "rose cold" by means of an artificial rose, Am. J. Med. Sci., 91, 45-57, 1886.」 iii) 引用中の「2)」は次の資料です。 「久保千春:第13章 アレルギー疾患と心の問題.臨床医のためのアレルギー診療ガイドブック(責任編集 西間三馨・秋山一男,一般社団法人日本アレルギー学会編), pp. 514-517, 診断と治療社, 2012.」 iv) 引用中の「3)」は次の資料です。 「久保千春:心身医学.喘息予防・管理ガイドライン2012(日本アレルギー学会喘息ガイドライン専門部会監修), pp. 246-248, 協和企画, 2012.」 v) 引用中の「神経ペプチド」については、次のWEBページを参照して下さい。 「神経ペプチド - 脳科学辞典」 vi) 引用中の「グルココルチコイド」については、次のWEBページを参照して下さい。 「グルココルチコイド - 脳科学辞典」 vii) 引用中の「心身相関」については次のWEBページを参照して下さい。 「こころとからだ」 加えて、引用中の「心身相関」に関連する「心身症」については、次のWEBページを参照して下さい。 「心身症 - 脳科学辞典」 viii) 引用中の「リラックス方法」及び「自律訓練法」については、共に次のWEBページを参照して下さい。 「気軽にリラックス」 ix) 引用中の「情動」については、次のWEBページ「情動 - 脳科学辞典」及びメンタライジングの視点から他の拙エントリのここを参照して下さい。 ix) ちなみに、アレルギー疾患の心身医学的治療についての論文(PubMed要旨はここ、全文はここ、この論文についての日本語での紹介はここをそれぞれ参照して下さい)があります。

加えて、ストレスと喘息の関係について、宮本昭正監修・編集、森田寛・灰田美知子・保澤総一郎・庄司俊輔著の本、「ナース・患者のための喘息マネージメント入門」(2017年発行)の 2 喘息の予防 の 3-2. 二次予防と三次予防 の「(8)ストレスと喘息」における記述の一部(P67)を以下に引用します。

(8)ストレスと喘息
感情変化などが喘息の発症、継続、悪化要因となるときは行動要因があり、生活習慣の乱れ、睡眠不足、不規則な生活などが問題です。免疫・内分泌系を介する要因には、ストレスと感冒があります。迷走神経が気管支平滑筋に一定の緊張を与えることも喘息に影響します。

注:i) 同本におけるこの引用部の直下に、心理的ストレス及び情動ストレスについての記述があります。ただし、引用はしません。 ii) 引用中の「感情変化」に関連するかもしれない「喘息症状に対する臭いの関係についての信念」については、ここを参照して下さい。

一方、マインドフルネスの視点からの喘息におけるマインドフルネスストレス低減法(MBSR)の適用について、貝谷久宜、熊野宏昭、越川房子編著の本、「マインドフルネス -基礎と実践-」(2016年発行)中の榧野真美著の文書「心身医学とマインドフルネス」の 心身医学領域におけるマインドフルネスの効果 の「(3)呼吸器疾患」における記述の一部(P210~P211)を以下に引用します。

Pbert et al.(2012)は、気管支喘息患者に MBSR を施行したところ、肺機能検査上の改善は認められなかったものの、施行前と施行後1年後では、喘息症状が有意に改善しており、レスキューの使用量や知覚されるストレスも有意に減少し、QOL が向上したことを報告している。気管支喘息の治療においては、症状のコントロールはもちろんのこと、疾患に患者が適応していくことも重要な要素といわれている。以前より、喘息発作により受けるストレスが高いと、QOL が下がり、薬物療法のアドヒアランスや喘息のコントロールも悪化すること、客観的指標に合致しない過剰な呼吸困難感が憎悪することなどが報告されているが(Carlson 2012)、Pbert et al. は、MBSR により、思考、感情、感覚を、別個のものとして正確に識別し、症状に対する評価の変化や反応性の低減などを介して、コーピング能力が向上したことが症状の改善に寄与した可能性を述べている。(後略)

注:引用中の論文「Pbert et al.(2012)」は他の拙エントリのここを参照して下さい。これに関連して、引用中の「QOL」は生活の質のことです。 ii) 引用中の「Carlson 2012」は次の論文です。 「Mindfulness-based interventions for physical conditions: a narrative review evaluating levels of evidence.」 iii) 引用中の「MBSR」はマインドフルネス・ストレス低減法(Mindfulness-Based Stress Reduction)のことです。 iv) 引用中の「QOL」は生活の質(Quality of Life)のことです。 v) 引用中の「レスキュー」は喘息発作時に迅速に喘息症状を鎮めるための発作治療薬のことのようです。 vi) 引用中の「アドヒアランス」については、次のWEBページを参照して下さい。 「アドヒアランス - 薬学用語解説」 vii) 引用中の「コーピング」については他の拙エントリのここを参照して下さい。

加えて、喘息を含むアレルギー疾患と心理的因子とに関係するかもしれない複数の論文要旨を以下に紹介します。これらにはここで紹介した論文も含みます。

(1) The relationship of asthma and anxiety disorders.[拙訳]喘息と不安障害との関係

OBJECTIVE:
This article reviewed the child and adult medical literature on the prevalence of comorbid anxiety disorders in patients with asthma. Theoretical ideas regarding the relatively high comorbidity rates are presented along with a model describing putative interactions between anxiety disorders and asthma.

METHOD:
A search of the literature from the last 2 decades using MEDLINE by pairing the word, "asthma," with the following words: "anxiety," "depression," "panic," and "psychological disorders." We located additional research by screening the bibliographies of articles retrieved in the MEDLINE search.

RESULTS:
Both adult and child/adolescent populations with asthma appear to have a high prevalence of anxiety disorders. In child/adolescent populations with asthma, up to one third may meet criteria for comorbid anxiety disorders. In adult populations with asthma, the estimated rate of panic disorder ranges from 6.5% to 24%. However, most studies are limited by small samples, nonrepresentative populations, self-reported asthma status, and lack of controlling for important potential confounders such as smoking and asthma medications. There are also limited data on the impact of anxiety comorbidity in patients with asthma on symptom burden, self-care regimens (such as monitoring peak expiratory flow, taking medication, and quitting smoking), functional status, and medical costs.

CONCLUSIONS:
There appears to be a high comorbidity of anxiety disorders in patients with asthma. The prevalence and longitudinal impact of anxiety comorbidity needs to be examined in a large population-based sample of children, adolescents, and adults with asthma. If a high prevalence of comorbid anxiety disorder is documented and if this comorbidity adversely affects the self-efficacy and self-care, symptom burden, and functioning in persons with asthma, then it will be important to develop treatment trials.


[拙訳]
目的:
この記事では、喘息を伴う患者にける併存不安障害の有病割合に関する子ども及び成人の医学文献をレビューした。比較的高い合併症割合に関する理論的アイデアは、不安障害と喘息との間の推定相互作用を記述するモデルと共に提示される。

方法:
MEDLINE を使用して過去20年間の文献を、単語「喘息」と、その後の単語「不安」、「うつ」、「パニック」及び「精神的障害」を組み合わせて検索した。我々は、MEDLINE において検索された記事の参考文献をスクリーニングすることにより、我々はさらなる研究を位置づけた。

結果:
成人及び子ども/青年の喘息を伴う両集団は、不安障害の有病割合が高いように思われる。喘息を伴う子ども/青年集団においては、最大3分の1が共存不安障害の基準を満たしているかもしれない。喘息を伴う成人集団においては、パニック障害の推定割合は6.5%~24%の範囲である。しかし、ほとんどの研究は、小さいサンプル(被験者数)、代表しない集団、自己報告された喘息状態、そして喫煙と喘息薬物治療等の重要な潜在的交絡因子の制御の欠如によって制限される。喘息を伴う患者における症状の負担、自己ケアのレジメン(ピークフローの監視、投薬治療及び禁煙等)、機能状態及び医療費に合併症が及ぼす影響に関するデータも限られている。

結論:
喘息を伴う患者の不安障害の高率の併存があるように思われる。喘息を伴う子ども、青年及び成人の大規模な集団ベースのサンプルにおいて、​​不安の併存症の有病割合及び縦断的影響が調査される必要がある。併存不安障害の有病割合が高いことが実証され、かつこの併存が喘息を伴う患者の自己効力感及び自己ケア、症状の負担、そして機能に悪影響を及ぼすならば、治療試験を開発することが重要であるだろう。

注:引用中の「不安障害」、「パニック障害」については、他の拙エントリのリンク集を参照して下さい。ただし、「不安障害」に対する用語は「不安障害(不安症)」です。

(2) Psychosocial stress and asthma morbidity.[拙訳]心理的なストレスと喘息の罹患率(全文はここを参照して下さい)

PURPOSE OF REVIEW:
The objective of this review is to provide an overview and discussion of recent epidemiologic and mechanistic studies of stress in relation to asthma incidence and morbidity.

RECENT FINDINGS:
Recent findings suggest that stress, whether at the individual (i.e. epigenetics, perceived stress), family (i.e. prenatal maternal stress, early-life exposure, or intimate partner violence) or community (i.e. neighborhood violence; neighborhood disadvantage) level, influences asthma and asthma morbidity. Key recent findings regarding how psychosocial stress may influence asthma through Posttraumatic Stress Disorder, prenatal and postnatal maternal/caregiver stress, and community violence and deprivation are highlighted.

SUMMARY:
New research illustrates the need to further examine, characterize, and address the influence of social and environmental factors (i.e. psychological stress) on asthma. Further, research and innovative methodologies are needed to characterize the relationship and pathways associated with stress at multiple levels to more fully understand and address asthma morbidity, and to design potential interventions, especially to address persistent disparities in asthma in ethnic minorities and economically disadvantaged communities.


[拙訳]
レビューの目的:
このレビューの目的は、喘息の発生率及び罹患率に関連するストレスの最近の疫学的及びメカニズム的研究の概要及び議論を提供することである。

最近の知見:
個々(すなわち、エピジェネティクス、知覚されたストレス)、家族(すなわち、出生前の母体ストレス、人生早期の曝露、又は親密なパートナーの暴力)又はコミュニティ(すなわち、近所の暴力、近所の不利益)レベルのストレスはいずれにせよ、喘息又は喘息の罹患率に影響することが最近の知見は示唆する。心的外傷後ストレス障害、出生前及び出産後の母親/介護者のストレス、そしてコミュニティの暴力及び極貧を通して、心理社会的ストレスが喘息にどのように影響するかもしれないかに関する最近の主な知見が強調された。

概要:
喘息に及ぼす社会的及び環境的要因(すなわち、心理的ストレス)の影響をさらに調査し、特徴付けし、対処する必要性を新しい研究は示す。さらに、喘息の罹患率をより十分に理解し、対処するための複数レベルのストレスに関連する関係や経路を特徴づけ、そして可能性のある介入、特に少数民族や経済的に恵まれない地域社会の喘息における持続的な格差への対処をデザインするために、研究と革新的な方法論が必要である。

さらに、アレルギー疾患と機能性身体症候群とに関係する論文要旨を以下に紹介します。

(a) Comorbidity in allergic asthma and allergic rhinitis: functional somatic syndromes.[拙訳]アレルギー性喘息及びアレルギー性鼻炎における併病:機能性身体症候群

Based on the concept of central sensitisation, the present study tested the hypothesis of comorbidity in allergic asthma and allergic rhinitis with diagnoses of functional somatic syndromes (FSSs), including fibromyalgia, irritable bowel syndrome and migraine. Data were used from the population-based Västerbotten Environmental Health Study (n = 3406). The participants consisted of 164 individuals with allergic asthma and 298 individuals with allergic rhinitis as well as 2876 individuals without allergic or non-allergic asthma, allergic rhinitis or atopic dermatitis. Diagnoses were based on self-reports of having been diagnosed by a physician. Odds ratios (ORs) were calculated from binary logistic regression analysis, both crude and adjusted for age and education. The adjusted ORs (1.87-4.00) for all FSSs differed significantly from unity for both allergic asthma and rhinitis. The results provide support for the hypothesis of comorbidity in allergic asthma and rhinitis with FSSs. Since central sensitisation is likely to underlie FSSs, the present findings raises the question as to whether central sensitisation may also be involved in allergic asthma and rhinitis.


[拙訳]
中枢感作の概念に基づいて、線維筋痛症、過敏性腸症候群及び片頭痛を含む機能性身体症候群(FSSs)の診断を伴うアレルギー性喘息及びアレルギー性鼻炎における合併症の仮説を本研究は検証した。集団ベースの Västerbotten Environmental Health Study(n = 3406)[訳注:環境健康研究です]からのデータを使用した。アレルギー性又は非アレルギー性の喘息、アレルギー性鼻炎又はアトピー性皮膚炎の2876人のみならず、アレルギー性喘息を伴う164人、アレルギー性鼻炎を伴う298人のこの研究の参加者で構成されていた。診断は、医師により診断されたという自己報告に基づいた。(複数の)オッズ比(ORs)は、補正前及び年齢と教育で補正後の二重ロジスティック回帰分析から算出した。全ての FSSs の補正された ORs(1.87-4.00)は、アレルギー性喘息及び鼻炎の両方に対して一致[訳注:ORs=1]とは有意に異なった。これらの結果は、FSSs に伴うアレルギー性喘息及び鼻炎における併存症の仮説を支持する。中枢感作は FSSs の基礎となる可能性が高いので、本知見は、中枢感作がアレルギー性喘息及び鼻炎にも関与し得るかどうかという問題を提起する。

注:引用中の「n = 3406」は人数を示しています。

(2017年6月4日、14日の追記終了)

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(11)ネットにおけるエコーチェンバーについて、その他(2017年6月4日に追記)
標記についての複数の論文要旨を以下に紹介します。

① 「The spreading of misinformation online[拙訳]オンラインでの誤報の拡散」(注:PubMed要旨はここを参照して下さい) この論文の「Significance」及び「Abstract」における記述を次に引用します。

Significance
The wide availability of user-provided content in online social media facilitates the aggregation of people around common interests, worldviews, and narratives. However, the World Wide Web is a fruitful environment for the massive diffusion of unverified rumors. In this work, using a massive quantitative analysis of Facebook, we show that information related to distinct narratives––conspiracy theories and scientific news––generates homogeneous and polarized communities (i.e., echo chambers) having similar information consumption patterns. Then, we derive a data-driven percolation model of rumor spreading that demonstrates that homogeneity and polarization are the main determinants for predicting cascades' size.

Abstract
The wide availability of user-provided content in online social media facilitates the aggregation of people around common interests, worldviews, and narratives. However, the World Wide Web (WWW) also allows for the rapid dissemination of unsubstantiated rumors and conspiracy theories that often elicit rapid, large, but naive social responses such as the recent case of Jade Helm 15––where a simple military exercise turned out to be perceived as the beginning of a new civil war in the United States. In this work, we address the determinants governing misinformation spreading through a thorough quantitative analysis. In particular, we focus on how Facebook users consume information related to two distinct narratives: scientific and conspiracy news. We find that, although consumers of scientific and conspiracy stories present similar consumption patterns with respect to content, cascade dynamics differ. Selective exposure to content is the primary driver of content diffusion and generates the formation of homogeneous clusters, i.e., "echo chambers." Indeed, homogeneity appears to be the primary driver for the diffusion of contents and each echo chamber has its own cascade dynamics. Finally, we introduce a data-driven percolation model mimicking rumor spreading and we show that homogeneity and polarization are the main determinants for predicting cascades' size.


[拙訳]
意義
オンラインソーシャルメディアにおけるユーザー提供コンテンツの幅広い利用可能性は、共通の関心事、世界観及びナラティブに基づいた人々の集約を促進する。しかしながら、World Wide Web は未確認の噂の大規模な拡散のために有効な環境である。この研究では、Facebook の膨大な量的分析を使用して、別のナラティブ-陰謀説や科学ニュース-に関連する情報が、同様の情報消費パターンを持つ均質で分極化したコミュニティ(エコーチェンバー[共鳴室])を生成することを示す。それから、均質と分極化がカスケードサイズを予測するための主要な決定要因であることを実証する噂の広がりのデータ駆動パーコレーションモデルを引き出す。

要旨
オンラインソーシャルメディアにおけるユーザー提供コンテンツの幅広い利用可能性は、共通の関心事、世界観及びナラティブに基づいた人々の集約を促進する。しかしながら、World Wide Web(WWW)はまた、アメリカにおいて最近、単なる軍事的訓練が新しい内戦の開始として知覚されたと判明した Jade Helm 15 のケース等、しばしば急速で大規模であるが、信じやすい社会的反応を誘発する根拠のない噂や陰謀説を急速に普及させる。本研究では、徹底的な定量分析を通して誤情報の拡散を支配する決定要因を我々は取り扱う。特に我々は、Facebook のユーザーが科学と陰謀のニュースという2つの異なるナラティブに関する情報をどのように消費するかに焦点をあてる。科学と陰謀の話の消費者はコンテンツに関して類似の消費パターンを示しているが、カスケードダイナミックスは異なることを我々は見出した。コンテンツに対する選択的な曝露は、コンテンツ拡散の主要なドライバー(追い立てるもの)であり、均一なクラスター、すなわち「エコーチェンバー」の形成を生じる。実際、均質性は内容物の拡散の主要な要因であると思えて、各エコーチェンバーはそれ自身のカスケードダイナミックスを有する。最後に、我々は噂の拡散を模倣したデータ駆動パーコレーションモデルを紹介し、カスケードサイズを予測するための均質性と分極性が主な決定要因であることを示す。

注:引用中の「パーコレーションモデル」については、例えば次のWEBページを参照して下さい。 「パーコレーション理論を用いた市街地の防災性評価

② 「Echo Chambers: Emotional Contagion and Group Polarization on Facebook[拙訳]エコーチェンバー:Facebook 上での情動の伝染とグループの分極化」(注:PubMed要旨はここを参照して下さい) この論文要旨を次に引用します。

Recent findings showed that users on Facebook tend to select information that adhere to their system of beliefs and to form polarized groups – i.e., echo chambers. Such a tendency dominates information cascades and might affect public debates on social relevant issues. In this work we explore the structural evolution of communities of interest by accounting for users emotions and engagement. Focusing on the Facebook pages reporting on scientific and conspiracy content, we characterize the evolution of the size of the two communities by fitting daily resolution data with three growth models – i.e. the Gompertz model, the Logistic model, and the Log-logistic model. Although all the models appropriately describe the data structure, the Logistic one shows the best fit. Then, we explore the interplay between emotional state and engagement of users in the group dynamics. Our findings show that communities' emotional behavior is affected by the users' involvement inside the echo chamber. Indeed, to an higher involvement corresponds a more negative approach. Moreover, we observe that, on average, more active users show a faster shift towards the negativity than less active ones.


[拙訳]
Facebook 上のユーザーは、彼らの信念システムを信奉する情報を選択し、そして分極したグループ、すなわちエコーチェンバーを形成する傾向があることを最近の知見は示した。このような傾向は情報のカスケードを支配し、そして社会関連問題に関する公開討論にひょっとして影響するかもしれない。この研究では、ユーザーの情動や約束(engagement)を説明するコミュニティの利害関係(interest)の構造的進化を我々は探究する。科学と陰謀のコンテンツを報告している Facebook 上のページに焦点を当て、毎日のソリューションデータを3つの成長モデル、すなわち、Gompertz モデル、Logistic モデル、Log-Logistic モデルに適合させることによって、2つのコミュニティのサイズの進化を我々は特徴づける。全てのモデルは適切にデータ構造を記述しているが、ロジスティックモデルが最も適合している。それから、グループダイナミクスにおけるユーザの情動状態と約束との間の相互作用を我々は探求する。我々の知見は、コミュニティの情動的な行動がエコーチェンバー内のユーザーの関与により影響されることを示す。実際に、より高い関与度がよりネガティブなアプローチに対応する。さらに、平均的には、よりアクティブなユーザーが、アクティブでないユーザーよりも恒常的な懐疑主義(negativity)への速い移行を示すことを我々は観察する。

注:引用中の「エコーチェンバー」についてはここを参照して下さい。

(2017年6月4日の追記終了、以下適宜追加)

ちなみに、ネット上の「エコーチェンバー」からの情報は偏っている(分極している)可能性が有るのでくれぐれもご用心下さい。これの見極め方に関するネット情報の例を以下に紹介します。

健康・医療情報、何を信頼したらいいの? - apital
役に立つ情報を見極めるには? - apital
検索上位が正しいわけではない - apital
情報は多ければ多いほどいいのか - apital
広告に潜む問題は - apital
あやしい科学の見分け方 - warbler's diary
「ダメな科学」を見分けるための大まかな指針」のポスター - うさうさメモ
「それってマジ?」な科学・健康情報を見るときのチェックリスト(科学をあんまり勉強したくない人向け) - うさうさメモ
標準医療を否定する“ニセ医学”に注意せよ―内科医・NATROM氏インタビュー
ネットの“ニセ医学”に要注意! 自衛手段を現役の医師に聞いてみた
「ニセ医学」に騙されないために————危険な反医療論や治療法、健康法から身を守る!
なぜ「ニセ医学」に騙されてしまうのか? 『「ニセ医学」に騙されないために』著者・NATROM氏インタビュー
「トンデモ」な健康情報には見分け方がある
文系でも「化学」の知識を身につけておくべき3つの理由
「統合医療」情報発信サイト

加えて参考として、ネットからの医療・健康情報の入手状況に関する調査例を次に示します。

ネットの医療情報、4人に1人がうのみ…「だまされないための5項目」確認を - yomiDr.

さらに、信念システム(belief system)が患者の方々に導入される例について、次に示します。
① MCS における信念システムの導入について、論文「Multiple chemical sensitivity (MCS)--differential diagnosis in clinical neurotoxicology: a German perspective.[拙訳]多種化学物質過敏状態(MCS)- 臨床神経毒性学における鑑別診断:ドイツの視点」の要旨を次に引用します。

The multiple chemical sensitivity syndrome (MCS) is a new cluster of environmental symptoms which have been described and commented on for more than 15 years now in the USA. In the meantime it has also been observed in European countries. The main features of this syndrome are: multiple symptoms in multiple organ systems, precipitated by a variety of chemical substances with relapses and exacerbation under certain conditions when exposed to very low levels which do not affect the population at large. There are no lab markers or specific investigative findings. In our view, MCS is not a separate clinical syndrome but a collective term. A very small part of the patients in question may actually exhibit a somatic or psychosomatic response to low levels of a variety of chemicals in the environment. For another part, even if the MCS symptoms are induced by chemical substances in the environment, the basic hypersensitivity is a psychological stress reaction. In the third and largest group, the patients have been misdiagnosed, i.e. a somatic or psychiatric disease has been overlooked. There is a fourth group of patients in whom there is no evidence of any exposure at all but instead a belief system installed by certain physicians, the media and other groups in society. This paper tries to describe the neurological and neurotoxic aspects of MCS problems and to illustrate it with examples of an alleged outbreak of chronic neurotoxic disease caused by pyrethroids in Germany. Research strategy should establish clearly determined diagnostic criteria, agreement on the use of specific questionnaires as well as clinical and technical diagnostic procedures, prospective clinical studies of MCS patients and comparative groups as well as experimental approaches.


[拙訳]
多種化学物質過敏状態(MCS)は、現在米国において15年以上にわたって記述され、そしてコメントされている新たな環境症状群である。その間、ヨーロッパ諸国でも観察されている。この症候群の主な特徴は、集団全体に影響を与えない非常に低いレベルに曝露された時に、特定の状態で再発及び悪化を伴う様々な化学物質により引き起こされれる、多数の臓器系における多数の症状である。ラボマーカー又は特異的な調査の知見はない。我々のレビューでは、MCS は別々の臨床的症候群ではなく、集合的な用語である。問題における患者の非常に小さな一部は、環境中における低レベルの様々な化学物質への身体的又は心身相関な応答を実際に示すかもしれない。もうひとつの一部に対しては、たとえ、MCS 症状が環境中の化学物質によって誘発されたとしても、基本的な過敏症は心理的ストレス反応である。第 3 の、そして最大のグループにおいては、患者は誤診されている、すなわち身体又は精神疾患が見落とされている。暴露のエビデンスが全くなく、かわりに、特定の医師、メディア、そして社会における他のグループによって導入された信念システムのエビデンスがあることにおける、第 4 のグループの患者が存在する。この論文では、MCS の問題の神経学的及び神経毒性の側面の説明を、そしてドイツにおけるピレスロイドに起因する慢性神経毒性疾患の発生の主張例を伴った説明を試みる。明らかに決定された診断基準、臨床及び技術的な診断手続きはもちろん、特異的なアンケートの使用に関する合意、実験的なアプローチはもちろん、MCS 患者及び比較するグループの前向き臨床研究を、調査戦略として確立するべきである。

注:i) 引用中の「ピレスロイド」については、例えば次のWEBページを参照して下さい。 「(2)家庭用防除剤の種類」の「ピレスロイドとは」項 ii) 引用中の「メディア」と「導入された信念システム」に関連するかもしれない、a) (電磁波過敏症における)「メディア報道」と「ノセボ効果」については、ここ及びここを b) 化学物質への応答におけるメディアの警告の影響については、他の拙エントリのここを それぞれ参照して下さい。 iii) ちなみに、a) 引用はしませんが、上記論文より前に発表された 、MCS をこの4つに分類した論文を次に示します。 「Multiple chemical sensitivity syndrome: a clinical perspective. I. Case definition, theories of pathogenesis, and research needs.」 b) 上記「信念システム」に関連するかもしれない、「様々な医学的な情報も正しく理解されるとは限らず、聞き手の思い込みによるバイアスがかかる。」ことについては、他の拙エントリのここを参照して下さい。

(適宜追加終了)

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(12)重症薬疹と HLA(Human Leukocyte Antigen)の関係及びアレルギーにおける経皮感作について(2017年6月8日に追記)
最初に前者について、複数の資料を以下に紹介します。

医薬品による重篤な皮膚障害に関するゲノム研究について *32

ちなみに、スギ花粉症と HLA の関係については、以下の記述、論文要旨及び論文をそれぞれ参照して下さい。最初に、斎藤博久著の本、「Q&Aでよくわかるアレルギーのしくみ」(2015年発行)の P68 における記述の一部を次に引用(『 』内)します。 『日本人の約30%はスギ花粉と結合しにくいHLA型であることがわかっています』 加えて、上記論文要旨及び論文(それぞれ英語、拙訳はありません)を次に紹介します。 「Japanese cedar pollinosis and HLA-DP5.」、「Structural Basis for the Specific Recognition of the Major Antigenic Peptide from the Japanese Cedar Pollen Allergen Cry j 1 by HLA-DP5

抗原提示等の上記メカニズムの一部が類似しているかもしれない、がんペプチドワクチン療法のメカニズムの概略については、例えば次のWEBページ(ここ及びここ)を参照すると良いかもしれません[注: a) がんペプチドワクチン療法は承認されておらず、標準治療ではありません。一方、治験は実施中です。 b) 臨床でみられるがんは非常にずる賢く、免疫から逃れまくっている可能性が高い(参照参照 *33参照 *34)ことをこれらのページは説明していないことをご留意下さい]。加えて、 HLA に関する説明を含む資料は次を参照すると良いかもしれません「HLA の基礎知識 1」(注:この資料で HLA のクラス分けが示されるように、がんペプチドワクチンは HLA クラス I[キラーT細胞〔CTL〕]に関係する一方、スギ花粉症では HLA クラス II[ヘルパーT細胞]〔参照〕に関係します)。

次に、後者について以下に紹介します。先ず、概要について、斎藤博久著の本、「Q&Aでよくわかるアレルギーのしくみ」(2015年発行)の 第3章 アレルギーは皮膚から起こる? の『Q1 「アレルギーが皮膚から起こる」って本当なのですか?』における記述の一部(P72)を次に引用します。

(前略)これまでアレルギーは免疫の過剰反応によって起こると考えられてきましたが、そのきっかけは皮膚にあることがわかってきました。
それは、アトピー性皮膚炎ばかりではありません。食物アレルギー、花粉症、気管支ぜんそくなど、皮膚とはあまり関わりがなさそうなアレルギーも、発症のきっかけは皮膚にあることが、最近の研究で明らかになってきたのです。
原因として考えられるのは、皮膚バリアー機能の低下です。
バリアー機能がうまく働かないと、皮膚からアレルゲンが侵入し、免疫の過剰反応が起こりやすくなります。そうやってまずIgE抗体がつくられると、その情報は記憶されますから、同じアレルゲンに反応するようになります。(後略)

注:i) 引用中の「免疫の過剰反応」に関連する「アレルギー反応」については、次のWEBページを参照して下さい。 「アレルギー反応」 ii) 引用中の「IgE抗体」については、次のWEBページを参照して下さい。 「IgE抗体」 iii) 引用中の「アレルゲン」については、次のWEBページを参照して下さい。 「アレルゲン」 iv) 引用中の「皮膚からアレルゲンが侵入し、免疫の過剰反応が起こりやすくなります」に関連する「経皮感作」については、次を参照して下さい。

加えて、標記経皮感作における二重抗原曝露説については次の資料を参照して下さい。 「二重抗原曝露仮説*35 さらに、a) 標記経皮感作における抗原提示細胞としての表皮ランゲルハンス細胞、真皮樹状細胞については、次の資料を参照して下さい。 「ランゲルハンス細胞-過去、現在、未来」、「皮膚免疫における樹状細胞・マクロファージの役割」 b) 上記抗原提示細胞が抗原提示してからのアレルギー反応の概略については、例えば次のWEBページを参照して下さい。 「環境化学物質がアレルギーに及ぼす影響とメカニズムの解明にむけて」の「◆アレルギー反応における免疫担当細胞の役割」項

(2017年6月8日の追記終了)

(13)多種類の化学物質に対する感受性の個人差について(2017年6月25日に追記)
化学物質の違いによって発症機構がすべて異なることを含む標記個人差について、日本臨床環境医学会編の本、「シックハウス症候群マニュアル 日常診療のガイドブック」(2013年発行、日本医師会推薦)の Ⅱ.診断の手順 の 6.化学物質過敏症との相違 の「3)個人差要因に関する考え方」項における記述(P48)を次に引用します。

3)個人差要因に関する考え方
前述したように,化学物質過敏症は,一般的な中毒の概念では説明できないような微量な化学物質曝露によって生じることから,同一環境においてすべての住人に発症することは稀である.あらゆる疾患は,遺伝要因と環境要因の相互作用で発症すると考えられているが,本症も化学物質曝露という環境因子がその発症に大きく関わっていることは間違いないが,その化学物質に対する感受性には,当然個人差が存在する.飲酒に強い弱いがあるのは,アルコールに対する遺伝的感受性が個々で異なるからであり,「感受性の違い」「異物代謝機能の違い」を決定づける要因の1つとして,本症発症に関する「疾患感受性遺伝子の検索」は重要な研究対象である.本邦においてもこれまでに複数の異物代謝酵素系(薬物代謝酵素)の遺伝子多型と本症発症との関連性の有無について調べられているが,グルタチオンーS-トランスフェラーゼ(GST)や神経障害標的エステラーゼ(NTE)の遺伝子多型と本症との関連性について研究がなされている.化学物質過敏症の発症機構の解明に関して,遺伝学的解析が鍵になることを示唆する研究報告であるが,仮に異物代謝酵素系の遺伝子多型が本症と深く関わるとするならば,個々の化合物の違いによってその発症機構がすべて違うということも意味しており,今後の大きな課題である.

注:i) この引用部の執筆者は坂部貢です。 ii) ちなみに、a) MCS の potential case と control の genotype(遺伝子型) を比較した論文を次に紹介します。 「Case-control study of genotypes in multiple chemical sensitivity: CYP2D6, NAT1, NAT2, PON1, PON2 and MTHFR.」(全文はここを参照して下さい) b) 日本人の化学過敏集団を対象とした遺伝子型分析についての論文については、エントリ「何かで何かが起きる(つづき) - 忘却からの帰還の最下位部」を参照して下さい。 c) 地球上には2000万種をはるかに超える化学物質があるとの説はここを参照して下さい。 iii) 加えて、引用はしませんが、日本人におけるシックハウス症候群と NTE の関連についての論文を次に紹介します。 「Association of sick building syndrome with neuropathy target esterase (NTE) activity in Japanese.」  一方、NTE の活性について、次の資料「シックハウス症候群感受性候補遺伝子の機能解明と疾患モデル動物開発」の「1. 研究開始当初の背景」項における記述の一部を次に引用します。

研究代表者らは有機リン等の被爆が主原因とされるシックハウス症候群の患者単球において、Neuropathy Target Esterase(以下NTE)の活性が健常者に比べて高いことを 2013年に報告した。一方、NTEに有機リンが結合し、NTEとの複合体が形成された後に、そのアルキル基が離脱すると遅延性の OPIDN(organphosphate-induced delayed neuropathy)を引き起こすとも言われていたが、まだその詳細は明らかでなかった。(後略)

注:i) 引用中の「Neuropathy Target Esterase」及び「OPIDN」については、それぞれ次の資料を参照して下さい。 「Neuropathy target esterase(神経障害標的エステラーゼ) 遺伝子導入マウスの作製」 ii) ちなみに、資料「有機リン剤」には、一部の有機リン剤中毒の症状として認められている難治性の遅発性末梢神経障害に関する記述があります。その一方で、次の資料もあります。 「成人の有機リンへの低レベル暴露による長期神経学的、神経心理学的、精神医学的影響についての声明(P8)

(2017年6月25日の追記終了)

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エントリ仮公開後の追記

(A)改訂・バージョンアップ関係
(1) 2015-02-04 の初回仮公開
本リンク集を Ver. 0.2 で仮公開しました。

(2) 2015-04-26 の改訂
Ver. 0.25:文章の追加・削除・修正のマイナーな改訂をしました。

(3) 2015-06-07 の改訂
Ver. 0.28:文章の追加・削除・修正のマイナーな改訂をしました。

(4) 2015-09-05 の改訂
Ver. 0.30:文章の追加・削除・修正のマイナーな改訂をしました。

(5) 2016-01-04 の改訂
Ver. 0.31:項目「余談」の追加及びここここにおいて、追加を含む文章の追加・削除・修正のマイナーな改訂をしました。

(6) 2016-01-13、2016-03-24、2016-05-28 の改訂
Ver. 0.32:ここ及びここにおいて、項目の追加を含む文章の追加・削除・修正のマイナーな改訂をしました。

(7) 2016-06-04、2016-06-23、2016-07-15・16、2016-07-28、2016-08-01 の改訂
Ver. 0.33:ここここ及びここにおいて、項目の追加を含む文章の追加・削除・修正のマイナーな改訂をしました。

(8) 2016-10-10・14・16・23 の改訂
Ver. 0.34:ここにおいて、項目の追加を含む文章の追加・削除・修正のマイナーな改訂をしました。

(9) 2017-01-13・23、2017-02-01・24、2017-03-29、2017-04-15・20・24、2017-05-10・12 の改訂
Ver. 0.35:ここここ及びここにおいて、項目の追加を含む文章の追加・削除・修正のマイナーな改訂をしました。加えて、ここここ及びここにおいて項目の追加を含む文章の追加・削除・修正のマイナーな改訂をしました。さらに、ここ及びここにおいて文章の追加・削除・修正のマイナーな改訂をしました。

(10) 2017-06-04・08・14・17・25・29・30、2017-07-09・13・19・22 の改訂
Ver. 0.36:ここここここここ及びここにおいて、項目の追加を含む文章の追加・削除・修正のマイナーな改訂をしました。加えて、ここここここ及びここにおいて文章の追加・削除・修正のマイナーな改訂をしました。


ちなみに、この項はこのエントリ本公開後には削除(全面改訂)予定です。

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*1:William J Rea 医師の流れを汲む医師の方々は「多種類化学物質過敏症」と称するようです

*2:本エントリ公開の頃には収まっていました

*3:ちなみに、このマニュアルにおける化学物質過敏症に対する見解を示した記述(P51)を「3.4.1. 疾病概念」項から抜き出して次に引用します(『 』内)。 『化学物質過敏症の疾病概念自体が未確定ですので、現時点では客観的な臨床検査法や診断基準も確立されていないところです。』

*4:ちなみに、平成28年(2016年)に作成され、ここで紹介した pdfファイルにおける記述の一部を以下にリンク又は引用します。 a) 最初に、化学物質過敏症の概念について、同ファイルの「1. 概念」項における記述は他の拙エントリのここを参照して下さい。 b) 加えて、化学物質過敏症の臨床検査について、同ファイルの「6. 臨床検査」項における一部の記述を次に引用します(『 』内)。『本症の確定診断に繋がる客観的検査は未だ存在しない。しかし、患者の多くが「嗅覚過敏」に伴う不快な症状を訴えることから、嗅覚伝導路・大脳辺縁系に関する脳科学的評価方法が最近注目を浴びている。』 c) さらに、化学物質過敏症(本態性環境不耐症)又は MCS における、脳科学と関連する化学物質が刺激となって生じる感覚モデルの注目点について、マニュアル「科学的根拠に基づくシックハウス症候群に関する相談マニュアル(改訂新版)」の「11.3. MCS における臭いに対する脳の反応と症状の出現」項における記述の一部(P205~P206)を次に引用します(『 』内、注1:この引用部を含む引用は他の拙エントリのここを参照して下さい)。『近年、Nordin らのスウェーデン等の北欧と日本の Azuma らは、化学物質が刺激となって生じる感覚モデルに注目しています。このモデルでは、有害と認識された物質に対する大脳辺縁系を介した作用機序に着目しています。』 注2:これらの引用中の「大脳辺縁系」については、例えば次の pdfファイルを参照して下さい。「ストレス反応の身体表出における大脳辺縁系 - 視床下部の役割」 一方、情動の視点より例えば次のWEBページを参照して下さい。「恐怖する脳、感動する脳」の「情動と脳」及び「恐怖情動の神経回路」項 さらに、他の拙エントリのここも参照して下さい。

*5:すなわち、誘発試験のシステマティック・レビューのことです

*6:注:本レビュー対象外の研究を含む

*7:この論文の要旨及び論文の「Discussion」における記述の一部の引用については、他の拙エントリのここを参照して下さい。

*8:この訳注が誤解を招かないように他の拙エントリを参照して下さい(念のためです)。

*9:この報告書には、2015年度の日本における化学物質過敏症に関する調査研究が含まれるようです。この報告書の公開元はここの(G)項を参照して下さい。

*10:ちなみに、この資料の著者らが作成した以前の関連資料は、本エントリ内で重複するかもしれませんが、次に紹介します。『特発性環境不耐症(いわゆる「化学物質過敏症」)患者に対する単盲検法による化学物質曝露負荷試験』、「特発性環境不耐症の臨床所見 ―シックハウス症候群との比較―

*11:この論文は、2015年前半における化学物質不耐症に関する調査結果をまとめたものとの位置づけが可能かもしれません。著者はデンマーク又はスウェーデンで仕事をしているようです。ただし、(d)の報告書と比較すると、発表時期の関係上か?、次の論文は考慮されていません。「Cortical activity during olfactory stimulation in multiple chemical sensitivity: a (18)F-FDG PET/CT study.

*12:ちなみに引用はしないものの、以下に複数の論文の要旨例を示すように、自閉スペクトラム症やADHD等の発達障害のみならず、様々な精神疾患、メンタルヘルス、治療法の一種である認知行動療法、マインドフルネス(他の拙エントリのここ参照)及びEMDR(眼球運動による脱感作と再処理、他の拙エントリのここ及びここ参照)においても、「情動調節」に関連した研究があります。「Fronto-Limbic Brain Dysfunction during the Regulation of Emotion in Schizophrenia.[拙訳]統合失調症における情動調節中の前頭-辺縁脳機能不全」、「Emotional dysregulation in those with bipolar disorder, borderline personality disorder and their comorbid expression.[拙訳]双極性障害、境界性パーソナリティ障害及びこれらの併存症表現における情動調節不全]」、「Emotion regulation, physiological arousal and PTSD symptoms in trauma-exposed individuals.[拙訳]トラウマに曝露された個々人における情動調節、生理学的な覚醒及び PTSD 症状」、「Emotion dysregulation in hypochondriasis and depression.[拙訳]心気症及びうつ病における情動調節不全」、「Relation between emotion regulation and mental health: a meta-analysis review.[拙訳]情動調節とメンタルヘルスとの関係:メタアナリシスレビュー」、「Trajectories of change in emotion regulation and social anxiety during cognitive-behavioral therapy for social anxiety disorder.[拙訳]社交不安症に対する認知行動療法中の情動調節及び社交不安における変化の軌跡]」、「Mindful Emotion Regulation: Exploring the Neurocognitive Mechanisms behind Mindfulness.[拙訳]マインドフルな情動調節:マインドフルネスの背後にある神経認知メカニズムの探求」、「Integrating neurobiology of emotion regulation and trauma therapy: reflections on EMDR therapy.[拙訳]情動調節とトラウマ治療法の神経生物学の統合:EMDR治療法の反映」 一方、他の拙エントリにおいても、例えば「少しの情動喚起で闘争モードになってしまう」(ここ及びここ参照)について紹介しています。また、用語「情動調節」についての説明は、他の拙エントリのここを参照して下さい。

*13:このWEBページ中の記述【多種化学物質過敏症患者と健常者におけるゲノム全域SNP(single nucleotide polymorphism)の比較により疾患関連遺伝子を明らかにする】に関連して、日本人のゲノムワイド関連分析(GWAS)における重要なポイント例について、服部成介、水島-菅野純子著、菅野純夫監修の本、「よくわかるゲノム医学 ヒトゲノムの基本から個別化医療まで」(2011年発行)の記述の一部(P71)を次に引用します(『 』内)。 『GWASにおける重要なポイントは,疾患群と対照群との間で,集団の均一性が保たれていることである.日本人の起源として,朝鮮半島,南方および北方からの3つのルートで渡来した人々が考えられている.特定の集団に偏って発症する疾患の解析を行った場合に,対照群の選び方は大変困難となる.』

*14:ちなみに、これと異なる見解については、次のWEBページを参照して下さい。 「子供のがん」、「成人のがん」 ちなみに、これらのWEBページへのリンク集は次のWEBページを参照して下さい。 ジェイクくんのなっとく!電磁波の「ジェイクくんのなっとく!電磁波 -解説集-」項

*15:ちなみに、電磁波の専門的な用語の解説は次のWEBページの「ジェイクくんのなっとく!電磁波 -解説集-」項においてリンクがあります。ここにはWEBページ「電磁波過敏症」へのリンクが含まれます。

*16:これらの誘発研究におけるシステマティック・レビューにより、疾患概念である電磁波過敏症の存在に対する評価が可能と考えます。

*17:このリンクの URL では、資料の最初のページが表示されます

*18:メディア警告により実現すること

*19:このレビュー中の Table II によると、この論文は二重盲検法であるようです

*20:さらなる補足説明:世界の常識によると、疾患概念であるMCSの存在を証明する責任があるのはこれを提唱している臨床環境医なので、William J Rea 医師等はこれを証明するための二重盲検法による誘発(負荷)試験を考案したのでしょう

*21:ちなみに、このトータルボディロードという考え方は、本エントリ作者は肯定しません。次の資料でも上記「総身体負荷量説」は批判されています。『特発性環境不耐症患者(いわゆる「化学物質過敏症」)の発症における心理負荷』 一方、長期の児童虐待により、脳に器質的な変化(ダメージ)が生じうることに関しては、次の pdfファイルを参照して下さい。「子育て困難を支援する“愛着障害の診断法と治療薬”の開発 ~発達障害や愛着障害の脳科学的研究~

*22:本エントリ作者は自閉スペクトラム症の発症には遺伝要因と環境要因が複雑にからみあっていると考えています。ただし、環境要因は化学物質のみとは限りません。

*23:「糖尿病」と「エピジェネティクス」がキーワードになっています。ちなみに、次の pdfファイルの P7 に「大多数の発達障害は多因子モデル」、「エピジェネティックスとは」シートがあります。

*24:「エピジェネティクス」がキーワードになっています

*25:論文の要旨はここ参照

*26:このツイート(注:95%信頼区間についてはこのツイート参照)で代表されるように、コメントにおいて、「いずれの研究も統計学的に有意でない結果を統合したもの」、「科学的に説得力のある形で結論づけられていない」等と主張しています

*27:ただし、このシステマティック・レビューが不適切であると証明できる又はシステマティック・レビュー発表後に、この結論をひっくり返すような知見が得られた場合等を除きます。ちなみに、この項の追加・公開時までの本エントリ作者の調査によると、このような知見を見つけることができませんでした。参考までにここを参照して下さい。

*28:このような人の主張には一貫性がなく(すなわち、非合理的にメタアナリシス、システマティック・レビューの可否を判断して)、説得力に欠けると本エントリ作者は考えます。一方、①坂部医師を好意的に紹介する人が、坂部医師を総括責任者とする報告書をどのように評価するのか ②石川医師、宮田医師を好意的に紹介すると同時に、坂部医師も好意的に紹介する人は、化学物質過敏症をどのように理解しているのか(他の拙エントリのここを参照、加えて②は他の拙エントリのここと同様な構図であると本エントリ作者は考えます) 両方に本エントリ作者は興味をもっています。

*29:ここにおける最後のリンク先又はここにおける最後のリンク先参照

*30:ちなみに、この主張をする人は、この特異的効果を否定しないと、一貫性を保てないと本エントリ作者は考えます。

*31:ページ中の文献番号 1 の論文がメタアナリシスに該当します。

*32:ちなみに、日本語の他のWEBページは例えばここを、日本語のエントリは例えばここを、英語の他の資料は例えばここをそれぞれ参照して下さい。注:最後の資料は PubMed では検索されません。

*33:これは、幅広く記述されているようですが、論文ではなくただの英語のWEBページです

*34:これは、PD-1、PD-L1及びCTLA-4に限定した記述のようです

*35:ちなみに、後者の経皮感作に関連する「茶のしずく石鹸」の事例については次の資料を参照して下さい。 「加水分解コムギ含有石鹸に事例